『美しい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
美しい世界ってどんな世界?
争いや戦争や地震がない世界
みんなが平和に過ごせる美しい世界
差別やイジメも。
三日月。
私の中に化け物がいる。
私の中に怪物がいる。
そいつらは、時として人を襲い、人を食らう獣だ。
どれだけ泣き叫んでも、どれだけ助けを乞おうとも
そいつらは、決して助けなどしない。
ただ、血を、肉を求め、骨の髄までしゃぶり尽くすだけ。
どれだけ愛しく思ってる人でさえも、愛しくて、愛しくて
何よりも大切な人でさえも、血と肉がなくなるまで
そいつらは、しゃぶるのを貪るのをやめない。
私は醜い。
醜くて、醜くて、どうしようもない。
私の中の化け物を、怪物を殺せたのなら
こんな私であっても美しくなれるのだろうか。
化け物さえ、怪物さえいなければ、
私は誰からも愛されるような、可愛い娘になれただろうか。
それでも、どれだけそうありたいと願っても、
私の中の化け物は、怪物は死なない。
決して、死ぬことも、殺されることもない。
死ねない、殺せない、それが私の中に棲む化け物なんだ、怪物なんだ。
化け物は、怪物は、可愛い娘だけを
美しい娘だけを好んで食す。
それは、私の中の負の感情がそうさせているのだろうか。
可愛い娘が、美しい娘がこの世界からいなくなれば、
私という醜い存在であっても、生きていることが許される。
私の中に化け物が、怪物が棲んでいても、
世界に存在することが許される。
そんな思いから、私の中の化け物は、怪物は
可愛い娘、美しい娘だけを食っているのだろうか。
可愛い娘の、美しい娘の血は、肉は美味。
極上の美味さと、程よい甘みがある。
一度それを口にしてしまえば、普通の羊や牛などの肉は
一切喉を通らなくなってしまうだろう。
可愛い娘の血と肉も、美しい娘の血と肉も
魔の血と肉ではないか、と疑ってさえしまう。
私の中に棲む化け物や、怪物のような魔物でなくても
一度口にすれば、それを忘れることはないであろう。
中には、人でありがならもそれを求める輩も出てくるはず。
嗚呼、私と人とはなんら代わりはないのか。
欲望というものも、醜いところも、似ているのではないのか。
私が人を食らうように、人は羊や牛を食らう。
人とは異なるものであろうとも、命を食らっていることに変わりはないだろう。
そう考えてしまえば、私が人を食らうことも
思っていたよりも、重罪ではないのかもしれない。
そう考えれば、少しは楽になるような気がする。
醜いままでいても良いような気がする。
そう思うのに、なぜか今日も私は美しいものを、可愛いものを。
目にするばかりで、私が醜いことを妬む。
可愛い娘になりたいと、美しい娘になりたいと言う欲望は消えない。
いつか、可愛い娘を、美しい娘を食い続ければ
私自身も可愛い娘に、美しい娘になれるのではないかと願いを込めて
今日も私は人を食らうだろう。
いつものように。
そして、目の前の固体から悲鳴が消えた。
言葉は美しい
たとえ其れが
人をいとも簡単に死に至らせる刃になろうとも。
荒れた呼吸に釣られて揺れる裸体は、まるで白い砂浜そのもので。目は離せないのに二度と触れてはいけない宗教画のようだった。
汗ばんでいた肌はふわりと花の香りが匂い立つ。
名前を呼ぶと、にこりと微笑を浮かべた彼女に震える。強がる少年の部分を一気に踏破して、1人の男にしてしまう蠱惑的な美貌。むしゃぶりつきたくなるほどの甘やかな無垢。
1枚脱いでひと晩過ごしただけでどうしてここまで君は変わるのか。
美しい文章というのが、どうも納得いかなかった。誘われて入った文芸部はそれを知っている人間ばかりの集まりだったので、そこに私の居場所はあまりなかった。
とはいえ、その審美眼を育てなければ良い文章は書けない。と顧問の先生が仰っていたので、仕方なく文豪達の真似をしてみたりした。自分でもよく分からぬままに書いた作品が褒められたりして、独り歩きする文章に気持ち悪さを感じた。
ある日のことだった。いつものように物真似の文章を書いていた私に、ある機会が訪れた。放課後、偶然に図書室を訪ねていた同級生に、作品を読ませてくれないかと頼まれたのだ。
その同級生は、名前を琴子といった。肩甲骨の辺りまで伸ばした髪が特徴的で、それ以外にはあまり印象に残らないような人間だった。
自分の作品を読ませるというのは、つまり自分の脳みそを覗かれるようなものなので、私は初め渋い顔をして断っていた。しかしながら、彼女があまりにもしつこいので、一つだけならと了承した。
実を言えば、この時の私は期待に満ち溢れていた。人よりは確実に多くの文を書き、まがりなりにも名文、あるいは美文と呼ばれる類のものを参考にしてきたのだ、素晴らしいと褒めそやされることはなくとも、まずまずの反応が見られるはず。
そんな私を知ってか知らずか、琴子さんは原稿用紙を食い入るように見つめて、一枚、また一枚と読み進めていった。最後の一枚を読み終わるまで、随分と長いことそうしていたように思えたけれど、都合十分ほどの時間しか経っていなかった。
待つのがいたたまれずに、自ら、どうだった? と感想を促した。琴子さんは、悪い意味に捉えないでほしいんだけどと前置きをして、
なんか、空っぽだね。と言った。
その一言で、私が積み重ねていた空虚な自信はジェンガのように崩れていった。
これではいけない。私の中にふつふつと何かが沸き起こった。それは復讐に似た感情であり、過去の自らと決別するための覚悟であった。
それから、私は琴子さんを満足させるだけの文を書こうと躍起になった。目の前の人間一人納得させられずして何が物書きかと自分に言い聞かせながら、書いては読ませ、読ませては書いてを繰り返した。それは小説であったり、詩であったり、ときには戯曲の形式を取ったものもあった。
そうして過ごしていくうち、私は琴子さんがとても美しい人であることに気づいた。文字を追う眼差しも、口許を隠して笑う仕草も、その全てが美しく思えた。メダカを好まぬ人間が鰭の美しさを語れぬように、数理に疎い人間が美しい数式を解けぬように、触れようとしないだけで、美しいとはそこここに眠っているものなのだ。
「これで終わり?」
琴子さんは続きを探すように原稿用紙を蛍光灯にかざした。彼女の奇怪な行動に、図書室の利用者達が遠目からこちらを見ている。
「そんなことやっても続きは出てこないよ」
「これは、新手の告白だったりするの?」
どうだろう。思ったことを連ねただけで、毎度訪れて勝手に読んでいるのは、彼女の責任だ。
「というか、君って一人称『私』だっけ」
「癖が抜けない」
文豪達は、『私』というもう一人の私を持っている。そうやって彼ら彼女らは、自らの美しくない部分を文にしたためて切り離しているのかもしれない。
「言うならちゃんと言ってよ。文じゃ聞いてあげないからね」
琴子さんは原稿用紙を整えてこちらに突き返した。今日もだめだったらしい。
この時間が終わらなければいいのにと安易な表現で気持ちをまとめてから、僕は原稿用紙を折り畳んだ。
春に咲く桜。あれはとても美しい。色も鮮やかな桃色、そして風が吹けば舞う花びら。散って地に落ちてもなおその鮮やかさは踏まれるまで色褪せることはない。
夏に咲くあさがお。あれもとても美しい。梅雨にも負けず力強く咲き、さまざまな色を私たちに見せてくれる。私もあの力強さを見習いたいものだ。
秋に咲くイチョウ。あれもとても美しい。黄色に染められたあの葉は木についていても、地に落ちてもなおイチョウの存在感は変わらない。道路際に落ちた葉を眺めるのもいい。
冬は見えないところで春に備えている木や植物が美しい。厳しい冬の寒さに耐え、春に綺麗な花を咲かせたり、葉がのびのびと成長する。
忙しい毎日にひとつの美しさを見出すことで一つ得をした気分になる。貴方も明日なにか美しいと思うものを身の回りで探してみてはいかがでしょうか?
「美しい」
今日のお題は「美しい」だ。語尾が「い」で終わっているから形容詞だ。つまり、今日は「美しい」何かについて書けばいいということだ。だが、私には「美しさ」が何なのかがよくわからなかった。
「美しさ」について考えるために、まず「美しい」に修飾される単語を具体的にイメージしてみた。「美しい景色」、「美しい顔」、「美しい音色」などを思い浮かべた。これらの単語から推測するに、美しさとは視覚や聴覚を通して感じられるものなのだろう。
次に、「美しさ」をより具体的に定義するため、「美しくないもの」について考えた。ここでは、「美しい」の対義語である「醜い」や「汚い」から連想されるものを思い浮かべた。「汚物」、「ドブ」、「醜女」あたりだろう。
…………眠くなってきた
……続きはまた明日…zzzz
Liebe Fern
冬の早朝。積もった雪の表面を朝日が照らしてキラキラと輝いているのが美しかった。早起きして得した気分。
美しい
夜麻登波 久尒能麻本呂婆
多多那豆久 阿袁加岐 夜麻碁母礼流
夜麻登志宇流波斯
倭は 国の真秀(まほ)ろば
畳(たたな)づく 青垣 山籠れる
倭し美(うるわ)し
大和は 真に秀でた国だ
たたみかさなる 青々とした垣根のような山々に囲まれる
大和こそ本当に美しい
古事記
倭建命
(日本武尊ヤマトタケルノミコト、
大和武命) 読めるうた
大和は奈良南部or日本全体?!
大和政権は畿内、大阪、京都等も含む?
昔の大和は、さぞかし美しいかったんだろな! 徳博🥺
通算84作目
もっと読みたい♡887記念号
人は皆、必要以上に「美しい」に拘る
無論「美しい」の対となる言葉は『醜い』だが、
何故人は皆この「美しい」に拘るのたろうか…?
そもそも、「美しい」や『醜い』なんて
所詮は概念でしか無い。
それにも関わらず皆「美しい」に執着する。
美しいものは美しいものを「美しい」といい
時には醜いものにも『美しい』と言う
けれど醜いものは醜いものを『醜い』といい
美しいものを『美しい』と言う。
そう、決して醜いものは醜いものを
『美しい』と言わないのだ。
醜いものはどれ程足掻いても『醜い』からだ。
「美しい」と『醜い』は対である
「光」と『闇』の様に。
美醜とは表裏一体なのだ。
ならば「美しい」に拘っている者は
「美しい」に拘ると同時に
『醜い』にも拘っているのでは無いか
題名:美しい
『フレンチクルーラー』
僕らはいつも冷蔵庫の前に立って ほどよい甘さを求めてる ポケットに手を入れて 退屈のふりをする
フレンチクルーラーのくるくる タイヤみたいできれいだな でも食べたらもうない ほんのりした寂しさが コーヒーを淹れなきゃと慌てて沸かしたお湯みたい
「わたし、『美しい』って言葉が、大っっっ嫌いなの」
午前6時。
まだ夜の闇が続いている。
キャンプに来た僕らは、湖畔のほとりにキャンピングカーを停めて、ベンチに座りコーヒー片手に語らっていた。
「へぇ、それはどうして?」
「だって、『美しい』があるなら、その対には必ず『醜い』があるじゃない。
わたしは、どちらかというと『醜い』側の人間だったから……」
「そんなことないよ」
「……あなたは私の味方でいてくれるからそう言ってくれるだけ。……とにかく、そんな対比がどうしても生まれてしまう『美しい』って言葉が、どうしてもだめなの」
「そっか」
空が、白みはじめた。
湖畔の水平線から、朝日が顔を出さんとしている。
水平線近くの空は燃えるような曙色に光って、その曙色を溶かすように、天に向かって空色とのグラデーションが広がっている。
「……わぁ」
彼女は、その壮大な光景に見惚れていた。
もちろん僕もそうだ。
『美しい』
#4 美しい
人間は、美しいものに惹かれると思う。
かくいう私もそんな人間だ。
初めて貴方を目にした時のことを
今でも覚えている。
ある夏の教室で、
斜陽に照らされた貴方の横顔があまりにも美しくて
戸惑うことを知らず、声をかけた。
貴方は見ず知らずの私に
優しく微笑み返してくれたのよね。
恋に落ちるのは、必然だったのかもしれない。
なんて。
美しい宇宙
沢山の惑星が散りばめられた空間である宇宙は
絶妙なバランスで存在している
その中の一つ
わたし達のいる地球🌏
地球もまた
沢山の動植物が
絶妙なバランスで存在している
この絶妙なバランスは
美しくて不思議なエネルギーによって保たれている
バランスが乱れると
元に戻そうとするエネルギーが働く
人の精神バランスが乱れると
経済が乱れる
経済バランスがみだれると
人口がみだれる
人口バランスが乱れると
人間達はお互いに戦い始める
これが自然の法則なのかもしれない
美しくて不思議な
未だかつて解明されていないエネルギーの
バランスは
善良な精神をもって整えると
決意しよう
未来を輝かせるために
綾
辛くて眠れない夜、窓から見える月が、なんとも美しく見える。
【美しい】
自然のものは美しい
人間と違って争わず醜さを知らない
人間と違って世界を汚さない
だがその自然さえも人間は汚してしまう
人間という生き物は醜すぎる
自然とは正反対だ
だが人間は美しくあろうとする
美しく着飾る
人間の努力や姿勢は美しく素晴らしい
自然には真似できないことだ
人間は知恵を使って
これからも美しくあろうとするだろう
だから人間は醜くも美しい
∮美しい
みんな思い浮かべてるって信じてる。
「生きろ、そなたは美しい」
"美しい"
「ここだ」
久々の休日、午前の殆どをボールペンやクリップ、付箋等文房具の買い足しに使い、あと数分で約束の十一時を回る頃に大我の元へ行くと「行きたい所がある」と医院近くの真新しい外装のカフェに連れ出された。
大我がカフェの扉を開けると、カランカラン、というベルの音と共に、店内から紅茶の良い香りが漂ってきた。
「いらっしゃいませ」
と、エプロンを身に付けた男性がカウンターから声をかけてきた。胸元の名札を見ると、この人が店主らしい。
見た目は、大我より数個上くらいだろうか。落ち着いた声色や口調から、精神年齢が実年齢より十歳程高い事が伺えた。
店内を見渡すと、装飾品が少なめで統一感があり間接照明で柔らかな雰囲気が醸し出されている。
店内を軽く観察していると「空いている席へどうぞ」と促され、カウンターから少し離れた二人席のテーブルに向かい合わせで座る。着席すると、大我が口を開いた。
「去年の十月にできたカフェでよ、本当は去年の内に連れて来たかったんだけど、タイミングがなくてだいぶ遅れた」
「そうだったのか。済まなかった」
よく周辺を散歩している真面目なこの人の事だ。きっと開店から数日後辺りに来ていただろう。そうでなければ「去年の内に連れて来たかった」なんて言葉は出てこない。
それなのに去年の秋頃から一週間程前までできる限りオペの予定を入れて、去年の後半は共に居る時間が極端に少なかった。自身への憤りと、スケジュールと照らし合わせて今日を選んでくれた大我への申し訳なさが押し寄せてくる。
「そう思ってんなら、今日一日でこれまでの埋め合わせをしろ」
そう言いながらメニュー表を渡される。開くと、豊富な紅茶の茶葉に紅茶以外の飲み物、数種のケーキに隅の方にクッキーが書かれていた。表に書かれているメニューの半分程だろうと思っていたので驚いた。
それとメニュー表の三分の二程が紅茶で、扉が開かれた時に紅茶の香りが漂ってきた理由が、紅茶をメインにしているからだと分かった。
「決まったか?」
「ダージリンとスポンジケーキにしようと」
「俺はカモミールとクッキー。因みにここのクッキー凄ぇ美味い」
ダージリンに合うか分かんねぇけど、と付け足す。
ダージリンとクッキーの組み合わせは聞いた事ない。だが、大我が絶賛する程だ。どのような味か気になる。
「ならスポンジケーキを止めて、クッキーにしよう」
「は?いいのかよ」
驚いた声色で聞いてくる。
「貴方がおすすめだと言っているものだ。気になるのは道理だ」
大我の口振りから察するに、恐らく何度も訪れているのだろう。何度も来た事のある者のおすすめに外れは無い。
「分かった」
すみません、とカウンターの方を向いて片手を上げて店主を呼び、各々の紅茶と二人分のプレーンクッキーを注文する。
「レジ横にケーキとかクッキーの持ち帰りあっから」
そう言ってレジの方を親指で差す。本当にこの人は。
「……んだよニヤニヤしやがって。んな顔でこっち見んな」
「済まない」
等と雑談をしている内に、頼んでいた二人分のクッキーと双方の紅茶が運ばれてきた。とても良い香りが鼻腔をくすぐる。
蒸らす為に、先にクッキーを食べる。
「どうだ?」
「……あぁ。貴方の言う通り、とても美味しい」
サクサクとしているが、バターの種類や分量に拘って作っているのだろう、しっとりともしていて口の中の水分が持っていかれない。その上甘さ控えめで、クッキー単体でもいける。やはりこの人のおすすめに従って正解だった。
「そ。気に入ったみてぇでなにより」
視線を落とすと、テーブルの上に置かれた二つの砂時計の内、大我の近くに置かれている方の砂時計の上の砂が無くなった。
「じゃ、お先に」
ダージリンはカモミールより蒸らしの時間が長い。カップに注ぐと、口元に持っていきカモミールティーを一口。
「……」
カモミールティーをカップに注ぐ仕草と飲む所作が──こう言うのは失礼だが率直に言って──いつもの大我とは違って美しく、思わず息を飲んで見惚れてしまう。
「……い。…おい」
怒気のこもった大我の声に、はっ、と我に返る。
「ん」
テーブルの上を指す。指先を辿ると、俺の近くに置かれていた、もう片方の砂時計の上の砂も無くなっていた。慌ててポットを両手に持ってカップに注ぐ。礼を言うと、再びカップに口を付けてカモミールティーを口に含み「ふん」と鼻を鳴らした。
患者相手の時のように素直に受け取れば良いものを。そういうところは全く変わらないな。
そう思いながら、ダージリンを一口含む。特徴である蜜のような香りが口の中に広がり、鼻に抜ける。数秒ダージリンの風味を楽しむと、クッキーを一枚手に取って一口食べる。
ダージリンにクッキー、意外と合うな。
なるべくお店で出す紅茶全てに合う味になるように試作を繰り返したのだろう。店内や紅茶の淹れ方だけでなく、クッキーにも相当な拘りを感じた。店主は自分が思った以上に拘りを持った人だと脱帽する。
「どうだ、気に入ったか?」
「あぁ、とても。近い内にまた来たい」
「てめぇなら気に入ると思った」
は、と鼻を鳴らして得意げに言う。その顔から、どこかほっとした表情が見て取れた。
そうは言っても、俺が本当に気に入るか心配だったのだろう。
するとまた、むすっとした顔でこちらを見てくる。
「てめぇ、何考えてやがった」
「別に、何も」
「本当か?」
「ただの思い出し笑いだ」
そう言って誤魔化すと「あっそ」と不貞腐れた声色で言ってクッキーを手に取って食べ始めた。
心の中で微笑みの声を漏らしながら、俺もクッキーを一枚手に取り食べた。
「みてよ、今日の空!」
バルコニーに出ていた彼女が、室内にいる俺を見るべく、くるりと振り返る。
風呂も終わって飯も食った俺は、室内のカウチソファにゆったりと座り、リラックスしながらバルコニーではしゃぐ彼女を見守る。
「ねえねえ、一緒に見ようよ、とっても綺麗なんだから!」
ガラス窓越しでも分かるほど、満面の笑みを浮かべた彼女は天にむかって指をさす。
最近、どうも曇りの日が続いて星が見れない状態だったたから、今日みたいに澄みきった夜空に輝く星が見れて嬉しいんだろう。
「いや、俺は遠慮しとくよ。仕事で疲れてるから。」
「そっか…うん、わかったよ!」
野外と屋内の壁を経て聞こえてきた彼女の声は籠っていた。彼女は再び、バルコニーに手を乗せて星空を眺める。
月明かりに照らされる彼女の長い髪と、部屋明かりにうっすら照らされた艶やかな背中は形容しがたい美しさを感じる。
「…綺麗だ」
「えっ?外からだと何を言ってるのか聞こえないよー!」
今宵は月も星も綺麗だが、月も星も美しい彼女を引き立てる添え物にしかみえない。
こんな俺は、きっと彼女のぞっこんなのだろう。
きみの首筋にアンタレスが光っている。
アンタレスとはさそり座の心臓にあたる赤い星。きみの白く美しい首筋に隠れているホクロのことを、僕は勝手にそう呼んでいる。
いつも髪を下ろしているから、ここにホクロがあることを知る人は少ないだろう。
でも後ろの席の僕は知っている。髪をかきあげるその時に垣間見えるその一等星を。
「ちょっと」
気がつけば、きみは怪訝な顔でこちらを向いている。
「何?」
「今見てたでしょ」
「何が?」
「私のこと」
「見てないよ」
「うそつき」
きみはまた前を向いてしまった。
……うん?
なんで真後ろにいる僕が見ていることに気づいたんだ?
きみの机の上で何かがキラッと光る。手鏡だ。
僕は知らなかった。その手鏡で、きみが僕の様子を見ていたことを。
【お題:美しい】