「みてよ、今日の空!」
バルコニーに出ていた彼女が、室内にいる俺を見るべく、くるりと振り返る。
風呂も終わって飯も食った俺は、室内のカウチソファにゆったりと座り、リラックスしながらバルコニーではしゃぐ彼女を見守る。
「ねえねえ、一緒に見ようよ、とっても綺麗なんだから!」
ガラス窓越しでも分かるほど、満面の笑みを浮かべた彼女は天にむかって指をさす。
最近、どうも曇りの日が続いて星が見れない状態だったたから、今日みたいに澄みきった夜空に輝く星が見れて嬉しいんだろう。
「いや、俺は遠慮しとくよ。仕事で疲れてるから。」
「そっか…うん、わかったよ!」
野外と屋内の壁を経て聞こえてきた彼女の声は籠っていた。彼女は再び、バルコニーに手を乗せて星空を眺める。
月明かりに照らされる彼女の長い髪と、部屋明かりにうっすら照らされた艶やかな背中は形容しがたい美しさを感じる。
「…綺麗だ」
「えっ?外からだと何を言ってるのか聞こえないよー!」
今宵は月も星も綺麗だが、月も星も美しい彼女を引き立てる添え物にしかみえない。
こんな俺は、きっと彼女のぞっこんなのだろう。
1/16/2024, 3:00:37 PM