『秋風』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あの時は…あぁ、そうだ。文化祭に向けての買い出しをしつつ、後輩とだべりながら町を歩いてたんだったな。
そんで…、なんでオレがそっちを見たかは、あんま覚えてねぇけど。本当になんとなく、道路の方に目をやって…。
黒猫と、それに気付いてないらしいダンプを見た。
気付いた時には、オレは、後輩のポケットから魔道具をひったくっていた。
魔道具に認められた所持者以外だったんで、世界の時の流れを止めることはできなかったが…時の流れを遅くすることはできた。
オレの足は最悪 轢かれてもいい。だからどうか、黒猫だけは。
俺が向かいの歩道に飛び込んだのと、ほぼ同時くらいだったか。
時間の流れが戻り、ダンプが走り去った。
夏場だったら肩でも擦りむいていただろうが、秋物のコートを着ていたおかげで、オレは負傷せずに済んだ。黒猫も…。
……いない?
まさかと思って後ろを見たが、道路に赤色は見当たらなかった。
…まぁ、猫は俊敏だし、野良猫ともなれば人間への警戒心は高いだろうからな。オレがダンプに気を取られている内に、何処かに去ったんだろう。
そうこうしていると後輩が駆け寄ってきたんで、勝手に使ったことを謝りつつ魔道具を返した。歩道に飛び込んだ衝撃はこの道具もきっと受けたはずだが、幸い傷や破損はなかったようだ。
もう道路に飛び出すんじゃねぇぜ。今回のように、誰かが助けてくれる補償はねぇんだから。
(「ティマセル学園」―天遣 空妖―)
ひんやりと心地良い風が、頬を撫でながら私を追い越してゆく。カーテンとそれを通る光とをゆらゆら揺らしながら。
そして、滑らかで鮮やかな赤を黒く濁らせながら。
夏も今日ももう終わりなのかしら。別れというものはいつだって寂寥を感じるわ。カーテンコールを受けたって二人で舞台に上がる事はもう出来ないもの。
でも、季節は巡るように輪廻があるから。今度は貴方が道を外さないように祈ってあげる。恋した貴方への私からの花向け。色褪せた世界を彩ってくれたお礼。
彼女は空の薬莢を片手に、風に揺れる木々の音と闇の中に紛れて。悲しそうに小さく笑った。
『秋風』
冷たい秋の風が吹き……
その冷たさが私の体と心に染み込む。
………嗚呼、もう秋なんだな…。
「――あれ、違法調査ですよね」
昼下がりのカフェバーで待ち合わせよう、と一方的に約束を取り付けられた僕は、開口一番に上司を問い詰めた。
とある探偵事務所の、事務バイト募集。
将来司法の道に進みたい僕は、これからの実務経験に期待していたのだが――待ち合わせのカフェバーまでの道中、偶然見かけた上司の現行犯を目撃した。
「おぉ、新人ちゃん。初出勤から飛ばすねぇ」
テーブルの上にはワインボトルとナポリタン。おまけに、彼の食べ方に問題でもあるのか、ワインの染みやケチャップが付着したペーパーナプキンが散乱していた。
昼間から、仕事中であるにも関わらず飲酒を隠そうともしない上司に、この先が思いやられると頭を抱える。
「さっき、市の総合病院の医師にカルテらしきものを見せてもらってましたよね――しかも警察官を装って」
まさに犯罪のオンパレード。彼の倫理の崩壊具合は、このテーブルの散らかりよりも酷いものだった。きつく睨む僕を見て、ニヤニヤとしながら彼はワイングラスを傾ける。
「いいねぇ、青いねぇ。まっすぐな新風が来たねぇ」
不思議と通報する気は起きなかった。
司法を志す者としては、不適切な犯罪の黙認。
それでも僕は、彼の魅力に取り憑かれてしまったのだ。
――ひと夏の終わり、僕の母が轢き殺された。
発見時は道路で一人流血して倒れていたのだと、目撃者の証言を警察から聞いた。轢き逃げ事件。犯人は行方知れずのまま、捜査は難航していた。
「……僕、自信がありません」
普段はうざったいくらいお喋りなのに、彼は黙って僕の言葉を待っている。きっと彼が待つのは、ありふれた不安の吐露ではない。僕の「決意表明」だと、思った。
腹を決めて、彼と向き合う。
彼もまた、僕をまっすぐ見据えていた。
「――母の仇は、僕が討つ。手段は選ばない」
季節が必ず移ろうように。
僕の正義に固執した青い信念は、色を変えた。
「新人ちゃん、変わったねぇ――嫌いじゃないよ」
「……必ず犯人を見つけ出します」
それは冷ややかな、秋風。
2024/11/14【秋風】
秋風
夏はすぐに過ぎてしまう
気だるい暑さのこすけど
その終わりはとても寂しくて
短い季節の命のよう
暑い夏よさよならと君がいう前に
消して逃げない心を確かめ会おう
二人で。
秋風
田舎道
そよぐ小川に
とんぼがキスをする
朱い鳥居
17時の音楽
ひぐらしが「帰ろう」と鳴く
小春日和
すり抜ける秋風
ひさしぶりの我が家
夏は長くいたはずなのに
もうすっかり寒くなってきた。
秋風がもう冬を連れてくる。
まだまだ寒くしないでよ。
─────『秋風』
秋風
近所の大きなお寺の中を通った。おにぎり屋さんへの近道。
澄んだ空気が心地いい。広い境内では、色づいて落ちた葉をお坊さんが丁寧にほうきで掃いているところだった。「こんにちは」とお互い軽く頭を下げる。
境内を歩いていると、ちょうどお布施箱の前が空いていたので、手を合わせることにした。十円を入れて手を合わせる。このお寺は馬頭観音を祀っている。馬だけに、早く願いが叶うらしい。いまは特に何も思いつかなかったが、手を合わせるだけでも心の中に静かな安らぎが広がるのを感じた。
通りへ抜ける小路を歩いた。おにぎり屋さんは通りの向かい側。小さなお店なので、お昼時は外に行列ができる。今日は4人並んでいた。最後尾に並んだ。
買い物袋を手にした客が扉を開け、外の客とひとり、入れ替わる。扉が開いているそのわずかな時間、店内の香ばしい香りを、秋風が行列の僕たちに運んでくる。それが、「早く、早く」と、いっそう食欲をそそる。
暑く湿った空気の夏でもなく、寒さで震えながら待つ冬でもなく。少し乾いてほんのり冷たい秋だからこそ味わえる、この感覚。
地球温暖化の気温上昇で、秋が短く感じられる今日此の頃。秋風が届ける、この一瞬の時間が愛しい。
肌寒さと恋♡の
落ち着いた季節の中で
秋の風が混ざり合いながら
恋♡するふたりを包み込む
空から風に乗り
たくさんの
枯葉が舞い散る
それは
過去とのさよならをした合図
地面に落ちた
枯葉を一枚すくい上げ
そこに
何文字かのメッセージを書く
そして
枯葉を空高く飛ばす
また過去が
寂しい想い出に変わる
忘れないよ
秋風が身に沁みる
もう少しで
本格的な冬が到来する
秋風
長い長い夏を吹き飛ばしてすぐに冬を連れてくる
君のせいで秋がないんだぞ〜
(秋風)
それは例えば図書館で
窓には今日の
空の色
それは例えば午後の海
君には君の
頬の色
それは例えば写真の中で
こぼれていった
未来の光
6 秋風
#秋風
秋風というものを意識したことがないです。
ここ群馬は、夏の暑さは日本でもかなり上位、冬は雪が降らない代わりに強風で乾燥肌が加速することで有名です。そんな夏と冬に挟まれた控えめな秋の風なんて、冬に比べたら無風に等しいのです。
近年は夏が延びて、それでいて冬はちゃんとやって来るので、さらに秋を感じることが少なくなってしまいました。
りんご狩りにでも行こうかなぁ。
〜秋風〜
新しい風が吹いてきた
さぁあらたな始まりだ
不安しかないけど
自分を信じれるのは自分だけだから
信じて進んでいく
風の流れとともに
時も流れていく
失うものもあるし、あらたな仲間も増えていく
その風に乗って
新しい流れへ飛び込んじゃお!
秋風
最近の風は冷たくて秋風なのか冬風なのかあんまわかんない。めっちゃ冷たい。けど夏にはやく冬なってほしーなーって待ち侘びた風やって思ったら心地よく感じる。
人肌恋しーねー
イライラする、モヤモヤする。
スマホで憂さ晴らしするも、余計にストレスが募る。
何をする気分でもない。何もしたくない。
バッテリーが熱くなったスマホのような脳みそ。
まるで使い物にならない。
そんな熱くなった顔に冷たい秋の空気が触れている。
『秋風』
夕暮れ時の公園で、佳奈はひらひらと落ちる赤い葉を見つめていた。肩にかかる冷たい風が、彼との記憶を一つ一つ引き出してくるようだった。
「寒いね、秋ってさ」佳奈が独りごちるように呟いたその瞬間、後ろから声がした。
「ほんとだな、秋は冷える」
驚いて振り向くと、そこには彼――陽一が立っていた。肩にかけたコートの襟を掴みながら、微笑んでいる。
「…陽一くん」
「久しぶりだな」
佳奈は思わず言葉を飲み込んでしまった。目の前にいる陽一は、まるで昨日もここで会っていたかのような顔をしているのに、彼が最後に佳奈に「さよなら」を告げたのは、もう一年も前だった。
「なんでここにいるの?」
「君と同じだよ。秋になったら、なんとなくこの公園に来たくなるんだ」
「……まだ、覚えててくれたんだ」
「忘れるわけないよ」陽一は静かに言った。「君と歩いたこの道、あのとき見た夕焼け、全部…」
佳奈は目を伏せた。この一年、何度も陽一に連絡を取ろうとしたけれど、彼はすでに手の届かない場所にいるとわかっていた。それでも、秋になるたびにここに来れば彼に会える気がして、足を運んでしまうのだ。
「またこうして会えるとは思わなかった」陽一が少し照れくさそうに言った。
佳奈は無理に笑って「そうだね」と返したが、胸の奥が苦しくなる。彼がいるのに、手を伸ばせば届きそうなのに、何かが遠い。それが何なのか、自分でも分からなかった。
「覚えてる? あの時、君がコーヒーをこぼして、私のスカートが真っ黒になったこと」
陽一は「おお、覚えてるとも。焦ったなあ、あれは」と笑った。佳奈も懐かしさに胸が温かくなった気がしたが、その温かさが切なさに変わるのを感じた。
「ねえ、佳奈」陽一がふと真剣な顔になって、彼女を見つめた。「君のこと、俺は…」
その言葉に佳奈は驚いて、陽一の顔を見返した。しかし、彼の姿は風に溶けるようにかすみ始め、次の瞬間には、そこにはただ赤く染まった木々と秋の冷たい風だけが残されていた。
「……陽一くん…?」
佳奈はそこに立ち尽くし、何度も何度もその名を呼んだが、答える声はもうなかった。
「秋風」
こっち見てるでしょ
生徒玄関なんて人が沢山いるのに
君の視線だけすごくわかる
あ、今絶対目合ったよ
いつからかな
こんなに君と目が合うようになったのは
勘違いしちゃうじゃん
秋風が吹く少し寒くなった放課後
今日朝の秋風はいつもより暖かく、まるで学校を休んだ僕のことは慰めているようだった。風にも慰められてしまう僕はどれだけ間抜けな人なのだろうか。
秋風
風で季節の変わり目を知る
秋風に吹かれると
もうすぐ冬なのだと感じる
その変化に文句を言いながらも
どこか少し楽しいような
ワクワクした気持ちになるうちは
まだ生きていたいと思えているんだなと思う
秋風になびかれた君の髪もその横顔も唯一無二。
他の人には見せないでよ。