イオリ

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秋風

近所の大きなお寺の中を通った。おにぎり屋さんへの近道。

澄んだ空気が心地いい。広い境内では、色づいて落ちた葉をお坊さんが丁寧にほうきで掃いているところだった。「こんにちは」とお互い軽く頭を下げる。

境内を歩いていると、ちょうどお布施箱の前が空いていたので、手を合わせることにした。十円を入れて手を合わせる。このお寺は馬頭観音を祀っている。馬だけに、早く願いが叶うらしい。いまは特に何も思いつかなかったが、手を合わせるだけでも心の中に静かな安らぎが広がるのを感じた。

通りへ抜ける小路を歩いた。おにぎり屋さんは通りの向かい側。小さなお店なので、お昼時は外に行列ができる。今日は4人並んでいた。最後尾に並んだ。

買い物袋を手にした客が扉を開け、外の客とひとり、入れ替わる。扉が開いているそのわずかな時間、店内の香ばしい香りを、秋風が行列の僕たちに運んでくる。それが、「早く、早く」と、いっそう食欲をそそる。

暑く湿った空気の夏でもなく、寒さで震えながら待つ冬でもなく。少し乾いてほんのり冷たい秋だからこそ味わえる、この感覚。

地球温暖化の気温上昇で、秋が短く感じられる今日此の頃。秋風が届ける、この一瞬の時間が愛しい。

11/14/2024, 10:55:02 PM