『秋風』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
夏が少しずつ過ぎていって、朝になんとなく温かい飲み物を用意するようになり、それを心地よく感じるようになった季節の移り変わり。あの人とお揃いで買ったふたつのマグカップのうち、ひとつはまったく使われないでいるのに、私はその片割れをずっと使い続けている。
あの人に未練があるわけじゃない。お互いによく話し合って、納得してその結果、私たちはやっぱり合わなかった。二人でいるのに、ずっと寂しかった。でも今思い返せば、その寂しさこそが二人でいた証かもしれないと思うようになった。
別れて一人になって私は、寂しいと思うことが減った。あの人がいなくても生きていけるんだって事実が、たまに寂しい。あんなに愛していたのに。
人は誰かと一緒にいるから、寂しくなるんだ。きっと一人だと寂しいことすら忘れてしまうんだ。
秋風……漂う季節はどこですか。
まじで
帰ってきて欲しいね
(冬の方が好きだけど)
秋風
風が吹くのは好きじゃない。
髪がボサボサになるから。
ワックスとか何もつけてないしササっと直せるんだけどめんどくさい。
【秋風】
急な冷え込みに
よ~やく替えた冬服に
汗ばむ日々
耐えきれずに上着を脱ぐと
汗ばんだ身体に
ヒンヤリと吹き付ける風が気持ちいい
約2秒
そんな童話あったなぁなんて
想いに浸る事も許されず
再びの着衣を余儀なくされ
一気に下がった体温と
ヒートショックなんて言葉に震える
秋風
題 秋風
「寒いっ」
ベンチで座って公園デートをしていた私たち。
秋風が一筋ピュ〜っと私たちの間を通り抜けた。
「大丈夫?どこか入ろうか?」
横にいた彼氏がすぐに上着を脱いでかけてくれる。
もう、相変わらず優しいんだから。
私は笑顔で彼氏に頷く。
「うん、どこかカフェに行きたいな♪」
「いいよ、行こうっ」
彼氏は微笑むと、私の手を取って歩きだす。
ゆっくりいつも歩いてくれる。
慈しむように楽しそうに私の顔を見る。
・・・そんなに私の顔見たって楽しいことなんてないだろうに。
でもね、私も彼氏の顔をみていると嬉しくなっちゃう。
ウキウキして、思わず腕に思い切り飛びつく。
「えっ?何?」
彼氏が照れながら私を少し驚いたように見る。
何だかウキウキして仕方ないから飛びついちゃったんだけど・・・素直に認めるのは恥ずかしいな・・・。
そう思った私は、
「えっと、寒くて!・・・うん、やっぱ秋は、寒いよね」
「そうだね、寒かったらもっとくっついていいよ?」
とことん優しい彼氏。
「ありがとっ」
嬉しくてぎゅううっと腕を抱きしめて彼氏に満面の笑みを向ける。
「あ、それ無理・・・」
「え〜?!無理って何よ?」
私が彼氏がそっぽ向いたのを見て抗議の声を上げると・・・。
「違うって、可愛すぎて直視できないの・・・」
「あ・・・」
直球な彼氏の言葉に、私の方が今度は照れてしまう。
「・・・そういうこと言われると照れるんだけど・・・」
「うん、分かってる。僕も照れてる・・・」
なんて言って歩みを止めてしまった私たち。
お互いに視線はあさっての方向で照れあってるけど・・・。
さっきの秋風の寒さはどこへやら。
ひんやりした凍えるような寒さは消えていっていつのまにか全身はポカポカ暖まっていたんだ。
今日は、凛先生とお出かけだった。晴天だぁ〰️✨️
また、十二単衣を着せてもらいました🎵スタッフさんに、『お手伝いお願いします(._.)』と、言ったら、
『其処に書いてあるから、勝手に来て下さい😊』と、あしらわれたの。『それに、私たち、お昼休みだし。』
凛先生は、毅然と大丈夫です!!と、言ってのけた🌟✨️私は、何回も着たことがあるから大変さはよく知っていた(^_^;)
私も、出来ることしますから!!と、凛先生、仰って下さい😊!!と、おばさまに負けないように強気で言った。(-_-)
でも、全部がやさしい風景じゃないことくらい知っています…から。凛先生は、トリセツ見ながら、一生懸命に頑張って下さいました☺️
私も出来ることは、やった(^_^;)でも、袴が、……(^_^;)!!私は、他のスタッフさんに泣いて頼んだ(T_T)『助けて下さい😊!!』
『凛先生、あんずちゃん、大丈夫やて。(^_^;)』と、言われた。お昼休みのスタッフさんが、私が泣いているのをみかねて、他のスタッフさんを呼びに行って、おばさまは、やっぱり、ランチ帶🍱らしい。他のやさしいスタッフさんのお姉さんが来られた凛先生は、ホッとされていた。スボンと違い袴って、一人では、ムリなんだ。
白衣、袴、打掛、✖打掛で。扇を持った。
袴は、私は、足が短いからなかなか一辺には、ムリだった。少しずつ、足を上げて、あんずちゃん、右足上げれる??と、凛先生言われ、次は、左足ねと。
そして、スタッフさんのお姉さんが入って下さり、凛先生に思いきり体重をかけた。アハハハ、すみません(^_^;)どんだけ、足が長いの〰️平安時代の方〰️(+_+)と、心で叫んだ。
凛先生は、引きずるように着るんだヨ✨️とアドバイスをして下さいました☺️なるほど〰️🤔イメージ✖イメージ✨️
そっか、確かに時代劇はそうかも〰️🤔スタッフさんのお姉さんがイスを持って来て下さり、私は、イスに座り、写真を゙凛先生に撮ってもらったの。
お姉さんが『専属のカメラマンみたいネ☺️🎵』と言われた。アハハハ、申し訳ありません。(^_^;)
私は、イスもない時代だからどうせなら、扇使って大谷選手になろう!!🌟✨️🎵と、思ったの(笑)
凛先生、ソレイイねぇ〰️✨️と、言われた。スタッフさんのお姉さんが『お兄さんは、ノセるのが上手いなぁ〰️✨️』と言われた。
ボール⚾️ないけど、大谷選手とデコピンUo・ェ・oUちゃんに、『届け!!』と、イスに座ったまま、カキーンと打った✨️ ホームランだと、イイなぁ〰️🌟✨️
あとは、凛先生に頼んで🙏大好きななにわ男子の大西流星君のようなポーズで、パチリ📸と撮ってもらったの🎵
すご〰️く大変だったけれども、スタッフさんのお姉さんや凛先生の頑張りもあって何とか出来ました。🤗感謝💐✨️です。
ちゃんと、お礼をスタッフさんのお姉さんに言って後にした。
『凛先生が、お茶飲むね。』と、言われた、『あんずちゃんも大変少しの時間だけれども、大変だったでしょう??』と言われた
凛先生は、笑顔がよく似合う✨️
私は、ほんの少しの時間だったけれども、平安時代の方はずっとなんだよね~🤔そんなこと考えられなかった、私。
凛先生は、新しい風景をよく見せて下さる☺️素敵だなぁ〰️✨️
川柳も負けたって当然なんだ😌
夜に、TVでなにわ男子の歌を聴いて、大西流星君に、キュンキュンしつつ、何処かジンワリと泪が潤んだの🥺
凛先生、何時もありがとうございます😊✨️💐✨️
終わり
すっかり秋めいてきましたね。まだぽかぽか陽気な時間帯もあるが、時折吹く風の冷たさが秋を感じさせる。秋風を浴びると、どこか寂しい気持ちになるのは私だけだろうか。秋のなんとも言えないクールさというか、別れがある訳でもないのに物悲しくさせられる。秋という季節は一瞬で過ぎ去る。気がつけば冬になる。本格的に寒くなる前に、このなんとも言えない気持ちを秋風と共にもうしばらく味わおうではないか。
この季節
朝起きると
家の前の道路に
やまぼうしの枯葉
このあたりは
隣もお向かいも
建売りの住宅街
業者が植えた植木が
4軒分かたまって
盛大に落ち葉を落とす
秋風がそよと吹くだけで
乾ききった枯葉が
カサッと1枚落ちてきた
ほうきとちりとりで
どんどん掃いていく
ナイロン袋にこんもりと枯葉
にぎって にぎって
砕ける音を楽しむ
: 秋風
程よく冷たい秋風が
頬を撫で行く黄昏時
夕日も心なしか寒いようで
茜色が澄み切って見える
肌を覆うとろみがかった光は
シルクに包まれたようで心地好い
夕日の色も、光の暖かさも
私は本当に大好きだ
子供の頃、よく母と散歩した並木道
カサカサ踊る葉っぱが面白くて
散歩の足が進まないと
よく二人で笑ったっけ…
あの頃と見る場所は違うけれど
変わらず夕日はいてくれる
秋風が、娘の髪を燻らせる
いつものように夕日に
バイバイと右手を振ったら
お腹がすいたの歌が始まる
繋いだ手はこんなに小さいのに
ぎゅっと握る強さと温かさは
二人の絆の重さを教えてくれる
そうだ、母と娘の誕生日に
お揃いのマフラーをプレゼントしよう
何色がいいかしら…
秋風が葉っぱを優しく転がした
桜月夜
好かれたい訳ではないけど
ただ嫌われたくなくて
人前では明るくいた
無理に馴染もうとして
居たくない場所に自ら向かった
真面目だと言われた
優しいと言われた
それ故期待された
嬉しかったんだ
でも応えられなかった途端
周りは冷たくなった
わかった気がするよ
自分が間違ってたんだろう
その周りの期待も失望も
僕自身が作り上げてしまったんだ
見渡してみなよ
優しいふりをして
誰かを悪者にして
群れてる奴らばかりだ
もう嫌われたっていいよ
陰口だって嫌味だって
好き放題言いなよ、
帰り道そんな事をずっと考えてたんだ
秋風に落ち葉が舞って
冷たさに少し背筋が伸びた気がした
引きこもりなんだけど
たまに外にでると
景色の美しさにはっとしたり
風の温度の違いに
明日も外に出よう、と思うのだけど。
なかなか元気が出ない。
躁と鬱の感情に翻弄される。
それはまるで女心と秋の空。
〈秋風〉
秋風…
そういえばパブロンのCMまだ観てないなぁ〜
【秋風】
枝から揺られて落ちた落ち葉が
そよそよと旅に出る
何にも無かったはずの今日に
同じ景色しか見たことが無かった瞳が
輝く世界を知った
それが浮遊感による錯覚だとしても
これほど心地よい感覚なんて
これほど色付いて見える景色なんて
人生で1度きりだろう
着地点が灰色の硬い地面だとしても
2024-11-14
ようやく涼しくなった。
暑すぎず寒すぎずちょうど良い秋風。
散歩にもってこいだな しないけど
散歩じゃなくて掃除したくなる しないけど いやたまにする
過ごしてやすすぎて脳みその動きが鈍くなってだらけちゃう
もったいない
明日は何しようかな?
秋が好きだね
あなた。
大人になってから
気付いても遅いけど、
秋風は背中を押してくれる。
どんどん大きくなる影。
日が落ちる。
暗闇が広がって。
見た目を変えていく。
何度も何度も、
世界が変わった。
「君待つと 吾が恋ひ居れば 我が屋戸の 簾動かし 秋の風吹く」
教わったばかりの和歌を無意識に音読していた。飛鳥時代の気候は知らないが、現代の異常気象と張るほど酷暑の夏があったとは思えない。つまり秋も今よりずっと早かったんだろう。
生きた時代も暮らした場所も、歌を詠んだ時期も性別も立場も、何もかもが違う額田王と自分をシンクロさせるのは不可能としか思えない。それなのに、俺は今、額田王の気持ちが理解できる。タイムリープできたとして、共に秋風を受けながら語り合える自信がある。
残念ながら俺の家は気密性が高いつくりになっており、隙間風はおろか、台風の時ですら風の音に恐怖を感じることはない。簾を揺らす風音に恋人の来訪を感じ取れるような環境的要素はない。だが代わりに俺は現代の文明の利器を手にしている。その文明の利器に、恋人のメッセージの到着を知らせる通知が全く届かないのだ。ポイント欲しさに友だち登録してしまった公式さんや、学校の仲間たちからの通知はひっきりなしに届くというのに……。
終わりか。終わりなのか。
「秋風」は「秋」を「飽き」と掛けることで別れの隠喩表現にもなる。寒々しい秋風と別れ……音だけでなく雰囲気そのものがしっくり来る。もっとも、額田王の歌の秋風は別れとは無関係らしいから、その点は俺と額田王で思いを共有することができない。胸躍らせながら恋人を待つ額田王、くっそー、うらやましい。
恋多き女性だったらしい額田王に、ぜひ聞いてみたい。俺の何がダメだったのか。この恋は終わるしかないのか。
「何かあった?」
何度も送信しかけては挫けているメッセージ。また指先で打ち込み、しばらく眺めてから削除する。いっそ何もしなければフェイドアウトするだけで、傷は浅いのかもしれない。ただしモヤモヤを抱え続けていくことになる。何がいけなかったのか。この思いを永遠にリピートするのは苦しいように思える。かと言って再起不能の傷を負いたくはないし、最後に決定的に憎み合うのも美しくない。
どうしたものか……。
スマホをテーブルに置き、俺は静かに腕を組んだ。俺が年下だからつまらなかった?大学が忙しい?バイトで毎日夜遅いとか?具合が悪い?実家で何かあった?スマホが壊れた……
普通に考えたら、どれもない。下手な言い訳にしかならない理由ばかりだ。
つまり秋風なんだ。別れ。
ツンと鼻の奥が痛む。でも、泣くくらいなら前向きになりたい。そうだよ、悲しいけど、幸せも味わった。同級生となら行かないような場所にもたくさん行った。背伸びして買ったプレゼントに喜んでくれて、バイト先に会いに来てくれて、塾の頃の延長で勉強も教えてくれて。幸せだった。いい思い出に……、
涙が落ちる。思い出か。もう新しい思い出は増えない。そう思うと前向きになどなれるわけもなく、鼻の奥の痛みは喉元まで広がった。本気で好きだったんだ。思い出の中でしか会えないなんて辛すぎる。タイムリープできるなら半年前に戻りたい。額田王と語り合うより先に。俺の決死の告白を受け入れてくれた、あの日に戻りたい。そしてこんな結末にならないように、もう1度、イチからやり直したい。
………
しばらく声を殺して泣いた。やっと少し落ち着き、たまっているはずの通知を確認する。
あ。
指先が忙しく画面上を滑る。俺はスマホを握り締めたまま家から駆け出し、路上に彼女の影を見つけた。
「……久しぶり」
落ち着きを装ったものの、完全に鼻声だ。泣き顔は見えない距離だと思ったけれど、これじゃあバレバレかもしれない。
「……ごめん」
小さな謝罪の声が胸をえぐる。やっぱり終わりか。
「ごめんなさい」
もう1度謝った彼女が、ゆっくりと近づいてくる。叩かれる?身構えた俺に、戸惑いを残しつつ、ゆっくりと抱き着いてくる彼女。ふわりといつもの香り。ヤバい、また泣きそう。
「無理、しないでほしいの。嬉しいけど」
ぎゅう、と引き締められる腕。冷たい夜風の中、2人の体温が混ざり合い、温もりを作り始める。
「バイトばっかり。塾もやめちゃって。わたし、これじゃ、君を幸せにできない」
そんなことない。幸せでしかない。なんて言えば分かる?伝わる?
「でも、……別れたくない。ごめんなさい」
泣きじゃくる彼女。いつもだったら、彼女が謝ってきたらそっと頭を撫でてあげるんだ。そして、いいよって言ってあげる。
でも、彼女が望むなら、たまには。
「嫌だ。別れるなんて許さない。すげー寂しかったんだから」
俺は思ったとおりに拗ねてみた。そして、彼女に負けない強さで抱き締め返した。
ヒュウと耳元を掠めた秋風。恋は難しい。飛鳥時代の昔から人の心を捉え続けるこの命題。いつか別れがくるのかどうかなんて分からないけど、今は……。
「……君待つと」
声に出てしまったらしい。彼女はフフッと胸の中で笑った。
「吾が恋ひ居れば 」
彼女の涙声。それから2人で秋風の中、涙声を重ね合わせた。
「我が屋戸の 簾動かし 秋の風吹く」
《秋風》
通学路🚸🌳
風に乗って落ち葉がひらり🍂
好きな人の頭にのかった
そのことで友達と騒いでいるときの
君のくしゃりとしたような笑顔
萌える、いや萌えないとおかしい
なんなんだ秋風、神?
こんな漫画にありそうな展開、
めったに見れないよ?
いいんですか?こんなにいい思いして
という気持ちになったある秋の日の出来事💘
_秋風_
消毒液の匂い
白で統一された部屋
オシャレの欠片もない患者服
唯一の楽しみは窓から見える景色のみ
『絵になるね』
そんな言葉を幼なじみに言われた
いつもなら趣味のカメラを構える彼がカメラを持たずにそこに居る
軽く10年は見ない光景だ
『スマホで撮影する?』
『“院内での撮影は御遠慮ください”って書いてあってさ』
『書いてなかったら撮ってた?』
『もちろん』
問いかけに二つ返事で答える彼に清々しさを覚える
それと同時に…ルールを守る彼が“いつもの彼じゃない”みたいで不安になった
『私よりカメラを見てる方が多かったのにね』
『残したかったんだよ、綺麗なもの全部』
貪欲に…どんなものでも撮影していた彼が
それでお金を稼げる腕の持ち主が
たかが幼なじみが精神を病んだくらいで趣味を机に置く
ベッドの上にいる“オタル アカリ”には現実味がない
『…今もおばさんのような人を撮りたい?』
薄い掛け布団ごと身体を丸め膝を抱え彼に問う
中学生の頃…まだ普通の子達のように学校に通えてた時
彼は…“シマヅ テルヒコ”は自身の母親が出演した映画を、遺作を鑑賞した
その時自分も隣に居た
物心ついた頃から隣にはテルヒコが居た
近所に住んでるお兄ちゃん的な存在だった
そんなテルヒコの母親は女優で
妊娠中に病を患い子の生命を優先にした人だと聞いた
その妊娠期間中に撮ったノンフィクションの家族愛がテーマの映画だ
段々と弱々しくなり細くなる身体
時折糸が切れたように光を失う瞳
それでもなお、子に何かを遺そうと膨れた腹に語りかける
来てくれてありがとう
『いや、アレは俺っちには撮れない』
テルヒコは少し考えてから答えた
『アレは“撮影者(父さん)”と“演者(母さん)”と“小道具(俺っち)”が居て成り立つ現実で…芸術では無いから』
遺作であり名作と言われた古い映画
母子ともに健康のハッピーエンドなんて何処にもない
あるのは医者の宣告通り…母体がもたないという現実
そして殆どの時間を他人としか過ごしてない息子がそこに居る
『俺っちのカメラじゃリアルは撮れない、全部芸術になる』
『芸術でも良くない?』
『んー…そこは拘りというかリスペクトかな』
リアルなものを芸術に落とし込むのはダメなのか…
アカリにはよく分からない
『フラッシュバックの方は?』
今度はテルヒコが問いかけた
アカリはとある事故に…いや、テロに巻き込まれた事で精神を病み入院していた
現実味のない事が日本で起きて…何人もの人が亡くなってしまった
今でも悲鳴が頭に響いて動悸と過呼吸に襲われ倒れる事もある
『ぜんぜん』
『酷いのも?』
『うん、学校も中退』
『オソロイじゃん』
『でも私は仕事もしてないよ』
せっかく入れた自由度の高い大学も中退
入院初期は連絡をしていた友人も今じゃ音沙汰なし
大好きなオシャレもショッピングも出来ない
『でも生きてて嬉しいよ』
両親が仕事の合間を縫って会いに来てくれるだけありがたい
こうして幼なじみが週に一回…最近はほぼ毎日来てくれるだけありがたい
独りになった人も居るのだろうに…
比べれば全然幸せだろうに…
『私は苦しいよ』
酷い言葉が口から零れてしまう
涙がポロポロ溢れてしまう
せっかく“生きてくれて嬉しい”って言ってくれる人が居るのに
せっかく“生きてる”のに
こんなにも生命が重たく…己が軽い…
『こんなんじゃ皆みたいになれない』
『それぞれのペースがあるから大丈夫だよ』
父親は仕事で不在で…母親は病気で亡くなって…そんな彼に放つ言葉じゃない
『沢山の人に迷惑かけてる』
『誰かのお世話になるのは悪い事じゃないよ』
母親の大親友だから、という理由で他人に預けられていた彼に放つ言葉じゃない
『パパにもママにも邪魔だと思われてるかもしれない』
『そんな事ないよ、大切にしてるから会いに来てくれるんだよ』
彼が返す言葉はあまりにも重くて
『こんなんじゃ親孝行なんて出来ないもん』
自分はあまりにも弱くて
『こんなんじゃ誰からも愛されないよ』
苦しい
『俺は愛してるよ』
全てがノイズみたいに聞こえる
『…嘘…』
『嘘じゃない』
『…カメラの方が愛してる癖に』
15年隣に居たのだ
彼が見続けてたものを隣で見ていたのだ
『それはそうかもしれない』
へんに嘘をつかない事も知ってる
『…そこは嘘でも君の方がって言うべきでしょ?』
『いや、ココで嘘ついたら本音全部パーじゃん』
『…それは…そう…』
『だろ?』
あまりにも清々しい彼の態度に出かけた嗚咽も引っ込んだ
それと同時に先程の言葉に罪悪感を抱く
『…さっきはごめんなさい』
『ん?謝るところあった?』
なのに彼はこの調子
『…テルヒコも辛い事たくさんあるのに…』
『え〜それ含めて俺っちだしな〜』
『…強いね…』
『ども〜☆』
『…軽いね…』
『重い方が良いかな?』
『うん、少しは真剣に悩むべきだと思う』
『手厳しい意見…』
コロコロと表情を変える彼にクスリと笑いが誘われた
未だにポロポロと涙は零れ…鏡を見たら再度落ち込むくらいには不細工な顔に仕上がってる
なのに笑ってしまう
『あーぁ…恋バナとかないの?テルヒコ』
『無いよ?』
『面会時間終わるまでにそーいう経験思い出してよ、気分上がるじゃん、恋バナ』
『無茶振りにも程があるけど…なんかあるかなぁ…』
腕を組み長考に入る彼を眺める
自分と違い…テルヒコは社会に出てはいる
きっと出会いも多いだろう
…
『…私って結婚できるのかな…』
『どした?急に』
『こんな状態じゃ嫁の貰い手ってつかなくない?介護が確定してるもんだしさ、白馬に乗った優しい王子様とか言ってられる身分じゃないじゃんね』
『そんなもんなのかね、愛の力ってもっと凄いイメージあるよ』
『現実はそんな甘くないでしょ〜…愛の力だけじゃ衣食住も出産育児も老後も乗り越えれないよ、二人の力を合わせてこそじゃん?』
『金ありゃ解決じゃん』
『金持ちで病気ごと愛してくれて結婚出来るほど信頼できる人ってのはポンと現れないんだよ』
『じゃあ俺と結婚する?』
…
『は?』
『愛してるし嘘つかない、子育ての経験は無いけど金はあるし貯金もある、あと幼なじみ補正で義両親と仲良し』
『いやいやいやプロポーズにしては軽すぎるでしょ?“する?”で決まるもんじゃないじゃん』
『じゃあ明日婚約指輪持ってきて真剣に重ためのプロポーズするよ』
『それはそれで嫌!綺麗な夜景が見えるレストランとかでサプライズが良い!』
『任せろ、良いのを計画する』
『待ってこの時点でサプライズじゃない!』
看護師さんの“病室で騒がないで下さい”という注意を頂くと同時に面会時間が終わりを告げる
『ヤダヤダヤダこんなプロポーズ嫌だもっと可愛い服着てる時が良かった!』
『読んでたファッション誌の最新号持ってくるよ』
『嫌な初めての奪われ方した〜嫌だ〜』
『ほんじゃまた明日ね〜』
スタコラサッサと病室から出てったテルヒコの背中にアカリの喚き声と看護師が宥める声が届く
紅葉も進み冬がチラリと覗くというのに
秋風は吹かない
〜あとがき〜
秋風が吹くって言葉の意味に“飽きが来る”ってのがありまして
ちょっとした恋愛小話をサクッとさせて頂きました
展開早めでポンポン駆け抜けたけど個人的には“可愛い2人だな”と思ってます
アカリちゃんはPTSD持ってますがテルヒコと居る時は軽い情緒不安定で終えられてますね
愛の力ってやつカナ
秋風をまとって
冬風を迎えよう
寒いかどうかは、あなた次第。
小説
迅嵐
冬も近づき、防寒具が手放せなくなってきた今日この頃。
おれはジャンバーをチャックを最大限上げ、秋風の冷たさをやり過ごそうとしていた。
「迅ー!」
「おー嵐山」
手を振りながらこちらへ来る嵐山は、ダッフルコートにマフラーと防寒バッチリだった。
その場にいるだけでモデルのように出来上がっているのが凄い。本物のモデル顔負けだろう。それだけ嵐山にはダッフルコートとマフラーという組み合わせが似合っていた。
「待たせたか?」
「いや、今来たとこ。行くか」
おれ達は並んで歩き出す。ふと、嵐山の指先が赤くなっていることに気がついた。
「嵐山、手袋は?去年のまだ出さないの?」
「うーん、まだ大丈夫だと思ったんだが…確かに冷たい」
嵐山は今更気がついたかのように自らの赤くなってしまっまた手を見つめる。
「しょうがないなぁ」
おれは満更でもなく嵐山の手をとる。
「こんなに冷たくなっちゃって…ほら、これでいいだろ」
嵐山と手を繋ぎながら、ジャンバーのポケットに入れ込む。嵐山の手がじんわりと温かくなってきたような気がした。
「どう?あったかい?」
「…あったかい」
「もう片方は自分であっためてよ」
触れ合う肩が温かい。ポケットの中できゅっと握ってくる手が可愛くて、おれはニヤける顔を少し嵐山から背けた。
…迅は知らない。俺がわざと手袋を付けないことを。
気がついたのは去年のことだった。俺が手袋を忘れると、いつも手を繋ぎながらポケットに入れる。彼は自らの行動に気づいていないようで、俺は悪知恵を働かせてしまった。
手袋を忘れれば、迅と手を繋げる。
手を繋ぎたいなんて、子供らしいと思われることが恥ずかしくて中々言えなかった。断られたらと思うと怖くて尚更言えなかった。
そこから俺は間隔を開けながら手袋をわざと忘れていった。すると迅は律儀に毎回手を繋ぎ、ポケットに入れてくれる。
きっと迅のことだから、いつかこんな愚行はバレてしまうに違いない。
でも、バレてしまうまで、その時まで、俺はこの温かさに触れていたいんだ。
…って嵐山は考えてるんだろうな。
嵐山がわざと手袋を忘れていることに気がついたのは三回目あたりの事だった。元来嘘をつけない素直な性格だから、なんとなく気がついた。
でも言わない。こんなに可愛いことをしてくれているのに、おれが言ってしまうと二度としてくれない未来しか視えないから。
そんなのもったいない。だからおれは言わない。
ねぇ嵐山、言わないからさ、ずっとおれと手を繋いでいようよ。
「あったかいね嵐山」
「?あぁ、あったかい」
わざと手袋を忘れて迅と手を繋ぐことに少しだけ罪悪感を感じながらもやめられない嵐山准と、わざと忘れていることに気がついているけれど手を繋ぎたいのは自分もだから好都合だと何も言わない迅悠一