題 秋風
「寒いっ」
ベンチで座って公園デートをしていた私たち。
秋風が一筋ピュ〜っと私たちの間を通り抜けた。
「大丈夫?どこか入ろうか?」
横にいた彼氏がすぐに上着を脱いでかけてくれる。
もう、相変わらず優しいんだから。
私は笑顔で彼氏に頷く。
「うん、どこかカフェに行きたいな♪」
「いいよ、行こうっ」
彼氏は微笑むと、私の手を取って歩きだす。
ゆっくりいつも歩いてくれる。
慈しむように楽しそうに私の顔を見る。
・・・そんなに私の顔見たって楽しいことなんてないだろうに。
でもね、私も彼氏の顔をみていると嬉しくなっちゃう。
ウキウキして、思わず腕に思い切り飛びつく。
「えっ?何?」
彼氏が照れながら私を少し驚いたように見る。
何だかウキウキして仕方ないから飛びついちゃったんだけど・・・素直に認めるのは恥ずかしいな・・・。
そう思った私は、
「えっと、寒くて!・・・うん、やっぱ秋は、寒いよね」
「そうだね、寒かったらもっとくっついていいよ?」
とことん優しい彼氏。
「ありがとっ」
嬉しくてぎゅううっと腕を抱きしめて彼氏に満面の笑みを向ける。
「あ、それ無理・・・」
「え〜?!無理って何よ?」
私が彼氏がそっぽ向いたのを見て抗議の声を上げると・・・。
「違うって、可愛すぎて直視できないの・・・」
「あ・・・」
直球な彼氏の言葉に、私の方が今度は照れてしまう。
「・・・そういうこと言われると照れるんだけど・・・」
「うん、分かってる。僕も照れてる・・・」
なんて言って歩みを止めてしまった私たち。
お互いに視線はあさっての方向で照れあってるけど・・・。
さっきの秋風の寒さはどこへやら。
ひんやりした凍えるような寒さは消えていっていつのまにか全身はポカポカ暖まっていたんだ。
11/14/2024, 1:27:11 PM