『私だけ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私だけ
みんな思ったことがあること。
私だけこんなに不幸。
私もそう思ってる。
私だけ。
みんなは笑ってるのに。
私だけ。
私は人生の半分以上引きこもりだ。
普通とか多数派の人よりは境遇は不幸だと思う。
でも不幸なのはあなただけじゃない。
って言われても
いいじゃん!
って思う。
だってそう思うんだもん。
自分が1番不幸でいいじゃん!
そう考えた方が楽な時もある。
毎日同じようなことの繰り返しで正直つまらなく感じる時もあります。
でも、小さな幸せを探してみたり、自分で幸せと思えることをやってみたり、試行錯誤して生きています。
教室にコウモリが飛び込んできた
飛び回るコウモリに
みんな焦って床にしゃがみこんでる
わーわーキャーキャー
でも私は椅子に座ったまんま
私だけ
落ち着いていた
落ち着いていたつもり!
コウモリって超音波出して飛んでんでしょ
ぜったい私にぶつかってこないよね
コウモリを信じたよ
結局コウモリはカーテンに引っ付いて
それを先生が捕まえて
外に放ったのでした
「私だけ」ってテーマ見てたら思い出したこと
私はなににでもなれる。努力すれば、叶わない夢なんてない。本気でそう思ってしまうほどには、自分の能力について自信満々だった。だが、後からこれが小中学生特有の錯覚だと知った。
だから私は人一倍努力した。自分が何者にもなれないのなら、生きた証を残すためには優秀でなくてはいけなかった。この世に何かを残す才能は努力した先で開花するものだと信じた。
大学生になっても私はすべてのことを必死にこなした。誰よりも努力してきたつもりだった。だが、どれだけ努力しても成績はすべて最高評価にはならなかったし、遊んでばかりの同級生よりもレポートの評価が悪いこともあった。
そんなことが続いていくうちに、私だけが無能であるかのように思えた。周囲の人たちはきっと将来何者かになって、誰かから愛されて、称賛されて、幸せに生きていけるのだと思った。どう頑張っても自分はその一人にはなれないのだと本気で思った。
だが、社会に出てからは変わった。唯一内定をもらえた会社で必死に働いていくうちに、営業成績はみるみる伸びていった。今まで蓄えてきた知識が年上の方と話すときの雑談のタネになった。博識な人だと勘違いされると、それだけで信用してもらえた。仕事をするのが楽しくなった。仕事が始まれば、学びの人生は終わりだと思っていたが、そうではなかった。人との接し方や、コミュニケーションの取り方は社会人になrないとわからなかった。
入社してから数年経って、多くの後輩を育てたあと社長から直々に呼び出しされた。社長からの話というのは、これから入社してくる新人研修の担当をしてもらいたいとのことだった。やっと、やっと多くの人の記憶に残る仕事ができるのだと思った。迷うことなく喜んでその仕事を引き受けた。
新人研修の担当が私に変わった途端、会社の業績はみるみる良くなっていった。きっとこれが、私だけにできる仕事なのだと初めて自分の人生を誇りに思うことができた。
私だけ
きっとこの世界を、この目で、この気持ちで見られるのは私しかいない。
どれだけ同じ場所に立ったとしても、どれだけ同じ気持ちだと言葉を使って確かめても、この世界をこうやって見れるのは私だけの特権だから。
どれだけ世界を憎んでも、どれだけ世界を愛しても、目に映る世界は人それぞれで、みんな自分だけの世界が広がっているんだ。
私だけ
私だけを
「だきしめて」
「いいわけにして」
「すくいにして」
「きらいにならいで」
私だけと
「けんかして」
「つきあって」
「こいにおちて」
「んーっていいあって」
「しりあって」
「てをつないで」
私だけ、って独占するには、君は素敵すぎるから
君の好きなことばあそびで、プロポーズしてみるんだ。
今はうまくいかなくても
私だけは君を
「あきらめずに」
「いいわけせずに」
「しなずに」
「てをつかみつづけることを」
「るーてぃんにするんだ」
何度でもどんな方法でもつたえるね。
愛してる。
とある女の日記
⚪︎月×日 天気☔️
タイトル「こんなことになってるの私だけ?」
『他にもっと俺よりも好きになれる人が現れるよw』
このフレーズに病むのは何度目だろうか。
私は、彼氏からの“おちょくり”に心底悩まされていた。どんな話をしていても、どんな返しをしても、必ずこの「俺よりいい人現れるよアピール」で会話が終結してしまう。今、私があなたを好きだという気持ちは土足で踏み躙られ、なかったことにされ、この恋は恋としてカウントされないと宣言されたようなものである。
おかしい。何かがおかしい。自分の気持ちが恋愛感情であると気づくのにかなりの時間を要し、さらに互いの気持ちを確かめることにも常人の数倍はかかったと記憶している。そんなこんなで、やっとの思いで成就させた代物だ。恋愛とは、このように片一方がもう片一方の人間に対して偏愛を寄せる営みなのか。少なくとも映画やドラマで見てイメージしていた恋愛とは程遠い恋人ライフを送っている気がする。杞憂であってほしい。
友人に言わせれば“こちらの好意を人質に取られて弄ばれているだけ”である私の恋愛。果たして幸せなゴールへと導かれるのか。見ものである。
なんで私だけと周り妬んでいると、どんどん辛くなるよ。そんな思いは捨てちゃおう。寝て起きて自分の生活に集中しているうち、きっとそんな思いは消えていって…。自分の等身大の生き方をできるようになるだろう。そう信じている。
~私だけ~
こんなに家があって
あんなに明かりが灯ってる
一つ一つに人が住み
全然別の人生を送ってる
だけど 私だけ そこにいない
それらを遠くから見てる
なんとなく気になりながら
それらに近づくことなく
遠くから
~遠い日の記憶~
自分の一番古い記憶は何だろう
写真の風景や家族から聞いた話が混じって
初めての記憶はどれだか分からない
分からないけど
一番に近い遠い日の記憶はある
ベランダから見た建物とか
大好きだったお菓子とか
いつも歩いていた緑道とか
今も好きなもの 気になるものが
同じだと気づいたら
ちょっと くすぐったくなった
~空を見上げて心に浮かんだこと~
通り雨を避けて雨宿り
もう大丈夫と外に出た途端
また降りだすのはやめて欲しい
まぁ、話のネタになるから
いいんだけど
いいんだけど もうちょい待って
そんなに降らないで
「久しぶり」
2年ぶりに再会した貴方は相変わらずだった。髪型も喋り方も、笑った時にすぐに手を叩く癖もあの時のまま。少しも2年の月日が経ったことを感じさせない。
「まさかうちの新たな取引先にお前が勤めてるなんてな」
「ね、私もびっくりした」
劇的な再会をしたのは私の会社のエレベーターホールの前だった。フロアガイドを眺めていた男性に、ご案内しましょうかと声を掛けた。その男性こそが、まさかの元彼である貴方だったなんて。
「ぜんぜん知らなかったよ。でもまぁ、俺ら別れた時がギリ大学生だったからお互いの就職先なんて知らないよな」
彼の言うとおりで、私達は大学の時に付き合い、そして別れた。4年になったばかりの春のことだった。その後はお互いどうなったかも今の今まで知らなかった。共通の友人がいたわけでもなかったし、何だかんだで忙しない日々が続いていたから。だから、まさかこんな形で再会するなんてびっくりした。
「元気にしてる?」
「うん。そっちは?」
「毎日営業まわりで大変だよ。怒られてばっか。心折れそう」
そう言う割には彼はどこか生き生きしている。きっと仕事が楽しいのかな。そんなふうに思った。何事にもポジティブで、一生懸命で。だから私は好きになった。この僅かな時間話しただけで、あの頃のことが鮮明に蘇る。そして今も未だ、彼のことをほんのり慕う自分がいることに気付いた。
「まぁ若いうちは色々経験しとけって先輩が言うからさ。当たって砕けろで頑張ってる」
「あはは、なんかそーゆうとこ貴方らしい」
「本当、それ自分でも思うわ。いやぁ、お前と話せて良かったよ。今度ちゃんとゆっくり話そうよ」
「いいね」
気取った返事をしてみせたけれど、内心は胸が高鳴っていた。と同時に確信してしまった。私はまだ、貴方が好きだということに。また会う約束をしてくれるということは、少なからず相手も気持ちがあるということだ。まさか私のことを、ずっと思っていてくれたのかな。変な期待をしたら駄目なのに自分に都合のいいように考えてしまう。駄目だ、思い上がるな。へらりと笑って相槌を打ちながら、一応は自分を牽制する。でもそれは正しかった。次の彼の言葉が私に冷や水を浴びせた。
「俺、来月結婚するんだ。だから会うのはそれ以降でいいかな?」
目尻を思いきり下げて、頭を掻きながら彼が言った。唐突すぎで、私は今どんな顔をしてるんだろう。目の前に笑った彼がいるけれど、同じように笑えてるんだろうか。
まるで私だけがここに取り残されているような感覚。きっと2年前から私は立ち止まっていたままだったのかもしれない。今日の今日まで彼の連絡先を消せないままでいたのがその証拠だ。自分が思うよりずっと、こんなに未練を感じていたなんて。
「お幸せに」
祝福の言葉をなんとか紡ぐ。彼はもう一度照れくさそうに笑った。その大好きだった笑顔は、私にはもう残酷にしか映らない。
私だけ、置いてけぼり。
私だけ
ヒトほど、いつまでも親に頼り
いつまでも子を守る動物はいない。
ヒトほど、親の立場や環境、性格が
子に影響する動物もいないだろう。
ある意味、親の責任も重く、互いに
執着している。
親(子)の幸せは、子(親)次第と言っても
いいほど。
かくいう私も、我が子に執着中。
私がどっぷり支えている今、私が
いなくなれば、娘は途端に不幸に
なるだろう。
それじゃあ、私だけじゃダメなんだ。
娘を守ってくれる他の人が現れて
娘が守りたい大事な人ができること。
私だけじゃなく、他の大事な人が
娘のそばにいることで 、
娘は幸せに、そして強く生きて
行けるだろう。
#27【私だけ】
一人暮らしをしたら
やりたかったことのひとつ。
カルピス飲み放題。
濃いめにして贅沢に。
ちょっぴり薄めでさっぱりと。
好きなように作って
好きなように飲めちゃう。
なんて贅沢…!
狭いキッチンで
マドラーはないから
菜箸でくるくる混ぜて
ついでに自分もくるくる回って
私だけの世界で
私のためのだけのカルピス。
戸棚に隠してある桃のカルピスも
私だけのものだぁ!!
昨日のテーマ《遠い日の記憶》がタイムアップでギリギリ間に合わなかったので、今日の分《私だけ》と合わせて2本立てで投稿します。
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昨日のテーマ
《遠い日の記憶》
あっという間に日が暮れる冬とは違い、夏の夕暮れはずいぶんとゆっくりだ。
冬は濃いオレンジと影絵のように建物が黒く見えるコントラストが見事だけれど、夏は淡いピンクから青に変わっていく雲のグラデーションが美しい。
こんな空を見ていると、いつもあの時のことを思い出す。
それは遠い日の記憶――幼い頃の大切な思い出。
その年の夏休み、わたしと兄は父方の祖父母の元に預けられた。
弟を身籠もっていた母はその頃ちょうど臨月で、出産のため実家に里帰りしていた。
祖母は母と生まれてくる赤ん坊の世話だけで手一杯で、まだ幼い兄とわたしの面倒までは見きれないだろうということで、父方の祖父母を頼ることになったのだ。
父方の祖父母は伯父一家と同居していて、年の近い従兄弟もいる。
兄もわたしも、夏休みは彼らと一緒にたくさん遊ぶんだと、それはそれは楽しみにしていた。
最初の数日は、確かに楽しかった。
しかし、程なく従兄弟達はわたしを持て余すようになった。
男兄弟で育った彼らにとって、まだ小さくて一緒に遊べる内容も限られるわたしを扱いかねてしまったのだろう。
そして、その日、従兄弟達は兄と一緒に、わたしを置いてきぼりにして遊びに行ってしまったのだった。
その日はお祖母ちゃんは病院の日で留守だった。
伯母さんも町内会の用事で出かけてしまっていた。
だから、わたしを置いていこうとしても怒る人はいないと、彼らはそう考えたらしい。
「母さんも祖母ちゃんもすぐ帰ってくるから」
「そうそう、ちょっとの間だけだからここで待ってるんだぞ」
「ついてきちゃダメだからな!」
口々にそう言ってわたしを置き去りに外に飛び出していく従兄弟達と兄に、わたしは泣きながら追い縋った。
しかし片や小学生男子、片や幼稚園に上がったばかりの女児。
必死で追いかけたものの、走り去る彼らの背中はあっという間に遠離っていく。
追いかけてくるわたしを撒こうとしたのもあるのだろう。
彼らは闇雲にあちこちの角を曲がって走っていく。
おかげで、わたしが1人で取り残された時にはそこがどこなのか、帰り道がどちらなのかも分からなくなっていた。
完全に置いていかれた。
誰かに道を聞きたくても、お祖母ちゃん家の住所はおろか、電話番号さえも覚えていない。
このまま帰れないかもしれない。
そんな恐怖と絶望に泣きながら、わたしはとぼとぼと来た道を引き返した。
兄達の背中を追いかけるのに夢中で、周囲の景色なんか見ていなかった。
曲がり角に差しかかっても、自分が来た道がどっちかなんて分からない。
勘に任せて曲がったり直進したりを繰り返していく。
途中、すれ違った大人の人から親切に声をかけられたりもしたけど、相手が善人なのか悪人なのかの区別もつかない。
母からは常日頃から「知らない人についていかないこと」と厳しく言われていたこともあって、わたしは「大丈夫です」と答えることしかできなかった。
てくてく歩いている内に、わたしは公園に辿り着いた。
お祖母ちゃん家の近くの公園ではない。
ブランコと砂場しかない、狭くて小さな公園だった。
真夏の暑い日ということもあってか、遊んでいる子供の姿もない。
わたしはそこで水道を発見し、自分がとても喉が渇いていることを自覚した。
蛇口は少し固かったけど、頑張って捻って水を出した。
最初はぬるかったけど、暫く出していたら少し冷たくなってくる。
それを手で掬うようにして必死に飲んだ。
上手に飲めなくて手どころか顔や服までびしょびしょになってしまう。
それでも渇きは癒され、火照った腕や足も冷却されて、少しだけホッとした。
もしかしたら伯母さんやお祖母ちゃんが探しにきてくれるかもしれない。
でも、ずいぶん遠くまできてしまったから、見つけてもらえないかもしれない。
期待と不安がシーソーみたいに行ったり来たりする。
わたしは零れ落ちる涙を手の甲で拭いながら、木陰のベンチによじ登った。
ずいぶん歩いて疲れてしまっていた。
探しにきてもらえなかったら、また自分で歩いて帰り道を探さなきゃならない。
そのために、少しでも休んでおこうと思ったのだ。
そうしてどのくらい経っただろう。
炎天下の中、走ったり、たくさん歩いたりしたことで、相当疲れていたのだろう。
わたしはいつのまにかベンチで寝こけてしまっていたらしい。
子供達に帰宅を促すチャイムの音楽とアナウンスで目が覚めた。
濡らしてしまった服はすっかり乾いているけど、足はまだくたくたで、とても歩き出す気にはなれない。
それに、もし帰ったって、また兄や従兄弟達から邪魔者扱いされるかもしれない。
「おかあさん……おうちにかえりたいよぅ……」
夕暮れ時。
1人きりの公園。
自分を置いて走り去っていく兄と従兄弟達。
帰り道は分からず、帰れるかも分からない不安。
そうしたあれこれが一気に押し寄せて、わたしは堪えきれずに嗚咽と泣き言を漏らした。
お祖母ちゃん家に来てからずっと張り詰めてた気持ちが、ここへきてぽっきり折れてしまったのだ。
「見つけた!」
そんな時だった。
聞き覚えのある声が、狭い公園に響き渡った。
顔を上げてそちらを見れば、それは見知った少年だった。
お祖母ちゃん家の近所に住む彼は、従兄弟の友達で、わたしも何度か遊んでもらったことがある。
意地悪ばかりする、所謂『悪ガキ』な従兄弟達と違い、彼はいつでも優しくて親切で、わたしは彼が大好きだった。
知った顔を見たことで、これで帰れると安堵したわたしの涙腺は決壊し、そのままわんわん泣きじゃくった。
駆け寄ってきてくれた彼にしがみつくと、あやすように頭や背中を撫でてくれる。
彼は早く泣き止めと急かしたりすることなく、安心させるようにただ「もう大丈夫だよ」と何度も声をかけて、気の済むまで泣くことを許してくれた。
それから、ようやっと泣き止んだわたしは、彼におんぶされて家路を辿った。
手を繋いでもらえば自分で歩けるって言ったけど、あっさり却下されてしまったのだ。
「ほら、見て、一番星」
「どれ?」
「あの、ピカピカしてるやつ」
おぶわれながら、彼の言う方角を見る。
彼の肩越しに見た空は、ピンクから青へのグラデーションがとても綺麗で、その中に一際輝く星が見えた。
あれが金星で、あっちが火星で――時折立ち止まりながら説明してくれたけど、まだ小さかったわたしにはさっぱり分からなくて。
でもいろんな色で溢れてる空の色と、その中でキラキラ輝くお星さまが綺麗だなと、それだけはずっと心に残った。
帰ったら、当然ながら大騒ぎになっていた。
幼い子供が何時間も行方不明になっていたんだから無理もない。
従兄弟達も兄も、伯母さんやお祖母ちゃん、果てはお祖父ちゃんや伯父さんにまでがっつり怒られることとなった。
わたしもちょっとは怒られたけど、こっちは殆ど被害者扱いだったから、程々で解放された。
見つけてくれた近所のお兄ちゃんは、それを機にちょくちょく遊んでくれるようになった。
ずっと妹が欲しかったんだと笑いながら。
大きくなって、妹枠からの脱却にはとても苦労したけど、これには従兄弟達が何くれとなく協力してくれた。
おかげで今、彼はわたしの夫として共にある。
夏の帰省の度に懐かしい思い出話としてこの迷子の件が話題に出され、従兄弟達が渋面を作るのもお約束。
今となっては、わたし達の縁を結ぶきっかけになったと感謝すらしているのだけど、それは兄や従兄弟達には内緒の話である。
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今日のテーマ
《私だけ》
「え、もしかして、私だけ?」
みんなで夏祭りに行こう。
仲の良い友人達でそんな話で盛り上がったのは終業式のこと。
だというのに、いざ当日になって待ち合わせ場所に着いたと思ったら、まるで示し合わせたみたいに次から次へとグループLINEに「行かれなくなった」というメッセージが舞い込んできた。
バイトで欠員が出て呼び出された。
家族が体調不良になった。
親戚に不幸があった。
食中りで動けない。
遠方の親戚が訪ねてきたが、親が不在で相手をしなきゃならない。
どれも理由を聞けば仕方ないと思えるものではあるけど、全員が全員ドタキャンってどういうことよ!?
実は気づかない内に私が何かやらかして、みんなから避けられてるんだったらどうしよう。
内心動揺しながらも、私はみんなに「しょうがないよね、気にしないで」と返信した。
それ以外に返信しようがないとも言う。
改札からは電車が到着する度に多くの人が吐き出されてくる。
浴衣姿の人や、甚兵衛を着た男の人、楽しそうな親子連れの姿――いずれもお祭り目当ての人達だろう。
ここのお祭りは規模も大きめで、毎年人出も結構ある。
お祭りの後半には小規模ながら花火も打ち上げられるので、それを目当てに来る人も多い。
わたしはスマホをポーチにしまいながら、これからどうしようかと頭を悩ませた。
せっかくのお祭りだけど、だからといって1人で回るなんて気には到底なれない。
かといって、ここまでわざわざ足を運んだのに、そのままトンボ返りするのも悔しい気がする。
お祭りの会場に向かう人の流れを見るともなしに眺めながら迷っていると、ポンッと肩を叩かれた。
「かーのじょ、もし1人なんだったら、良ければ一緒に回らない?」
「友達待ってるんでお断り……って、え?」
いかにもナンパですといった口上で声をかけられ、反射的にピシャリと断りかけた私だったけど、振り返った先にいたのはものすごくよく知る人物で、断り文句は途中で消えた。
笑いながら立っていたのは同じクラスの男子――それも、私の好きな人だった。
終業式の日にお祭りの話が出た時、そういえば近くに彼もいた。
というか、お祭りの話題を振ってきたのは彼だった。
もしかしてという思いと、まさかという思いが、頭の中で行ったり来たりする。
内心ではすっかりパニックになっていたけど、驚きすぎて逆に反応ができない。
たぶん、私は今、超真顔になってると思う。
「あー、ごめん……実は、みんなに根回しした」
「根回し」
「あの時、本当は誘おうと思ったんだけど、出遅れて……」
「え、待って、つまり、どういうこと?」
「だから、その……一緒に祭りに行きたくて……2人で回りたくて、そっちの友達らに事情話して譲ってもらった。たぶん彼女達も本当は近くにいるんじゃないかな。もしオレが断られたり、おまえが迷惑なようだったら、彼女達と合流もできると思う」
こんな誘い方しかできないチキンでごめん。
とても恥ずかしそうに、照れ顔でそんなことを言う。
これは一体何のご褒美だろうか。
いや、友人達にどこかから見られてるんだとしたら、ある意味罰ゲームに近いかもしれない。
でも。
だけど。
そうだとしても。
こんなチャンスはきっともう二度とない気がするのも事実で。
友人達はみんな私の気持ちを知っている。
きっと、だからこそ彼のお願いに快く協力したんだろう。
私が絶対に断らないって、絶対に喜ぶって、分かってるから。
「それは、つまり……自惚れてもいいってこと、なの?」
「そう思ってくれていいです。ダメかな?」
「ううん、嬉しい……」
たぶん今の私は、屋台のりんご飴にも負けないくらい真っ赤な顔をしてると思う。
彼もまた、同じように真っ赤な顔をしているからお互い様かなと思うけど。
嘘の理由でドタキャンした友人達には、あとでしっかり説明してもらおう。
こっちもいろいろ根掘り葉掘り聞かれそうだけど、そうしたら存分に惚気てやればいい。
そうして、私達は、2人で連れ立ってお祭りの会場へ足を向けたのだった。
私だけ
私は水色のランドセルを背負うたった一人の小学生だった。
小学校に入学する前、ランドセルを選ぶためショッピングモールに家族で行った。男の子は黒、女の子は赤が定番で他の色は異端と言っていいほど珍しかった。実際、私が入学する前まで、その小学校に赤以外のランドセルを背負っている子はいなかった。
だけど私のなかでは、どの色にするかはっきりと決まっていた。それは水色だ。理由は単純で、水色が大好きだったから。きれいで可愛くて、お店に並んだ水色のランドセルを見て、私にはやっぱりこれしかないと確信した。
その場で両親に水色がいい、と伝えた。両親は困ったような顔していて、その日買うのは保留となった。その晩、家族会議が行われた。両親は赤色にした方がいいんじゃないかと言っていた。誰も水色なんて背負ってないし、ランドセルの色が原因でいじめられるかもしれない。
親の説得は私にとって納得のいくものではなかった。みんな赤色だからそれに合わせろというのは理屈が通っていない。店には赤以外の色があるのに選べないなんておかしい。それになんとなくランドセル独特の赤色が好きじゃなかった。嫌いなものを六年間使い続けるのは無理だった。
それに、いじめられるかもしれないというのもよく分からなかった。まだ起こっていないことを、どうして心配しないといけないのだろう。それにランドセルの色ごときで、いじめてくる人間なんてこっちから願い下げだと思っていたくらいだ。
父は早々に折れたが、母は心配が尽きなかった。みんなと一緒じゃないといじめられるかもしれない。長く続いた攻防の末、私は水色のランドセルを勝ち取った。
私は水色のランドセルが大好きだった。6年間それで学校に通ったことを誇りに思っている。水色のランドセルは私だけだったが、そんなのちっとも気にならなかった。いじめられることもなかった。
大人になった今、街ではいろんな色のランドセルを背負った子どもを見かける。
水色、ピンク、ラベンダー、ブラウン。どの子も似合っていて素敵だなと思う。二十年前、私だけのお気に入りはみんなの普通になっていた。だけど、それがすごく嬉しい。
私だけは…ずっと私でありたい
あなたは今、猫かぶってる?
家での自分でも完全に素でいられてる?
どれが自分の素かわかってる?
自分の心に嘘ついてない?
私は、よく嘘つくんだ…
なんにも信じられなくて、なんにも信じたくなくて…周りに流されて、こんな自分はいらないのかなぁ。
私だけはちゃんと自分のことを理解してあげたい…
私だけは私の味方でありたい
どうしようもない感情の時、世界で、私だけが取り残されていると思うことがある。
そんなことは、ないんだけどね。
《私だけ》
周りが決めた、普通って何なの?
周りに合わせることができない自分に
生きる権利があるのだろうか。
こんな事になるのなら、
生まれて来なければよかったのに…
気にし過ぎ
なの?
あ。
今
あの人
溜息ついた。
今
あの人
ドアを
勢いよく開けた。
今
あの人
目が怖かった。
イライラしてるのかも。
―――あれ?
他の人は
何で普通にしてるの?
何とも思わないの?
気が付かないの?
あの人
何を
イライラしてるんだろう?
わたし
何かしちゃったかな。
#私だけ
君の正体を知っているのは、多分地球上で僕だけだよ
ごまかしてもムダだよ
もうバレてるから
君は、一人ぼっちの僕を孤独から救い出すために、神に遣わされた天使なんでしょう?
背中の羽、僕にはちゃんと見えてるから
テーマ:私だけ #247
この世界が滅亡したとして
私だけ生き残ったら。
その世界で何をしよう。
誰もいない中で
私は生きていけるのだろうか。
何もかもが崩壊した中で
私は生きられるのだろうか。
自ら命を断つことはしないとおもうけど。
だからといって幸福はないだろうな。
真っ暗な世界を彷徨って、
やがて枯れ葉のように朽ちていく。
誰にも知られることの無く
ひっそりと。