『真夜中』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「真夜中」
作¦村村真琴
真昼間に真夜中の歌を聴いた。踊り出したくなって泣けてくるそんな忙しい歌。名もないアーティストの曲だが昼間が夜に感じる。落ち着く曲。今日もそんな曲を路地裏の陰で聴いた。ただそれだけ。なのにどうしてこんなにも不幸なのだろう。大好きな曲なのに昼が夜に変わるのが嫌だな。と思う。
『真夜中』
時計の針が深夜2時を回った。
外に出て見上げた空には、ちょうど半分こした月がぼんやりとした雲の合間から見え隠れしている。
「さて、今日は何を作ろうかな」
光の当たらないもう半分の方の月に目を凝らしながらそう呟くと、店主は店に明かりを灯した。
昼間は人通りの多いこの通りも、この時間になると人っ子1人、猫1匹見当たらない。
店の明かりも家の明かりも落ち、耳を澄ませばどこかの誰かの寝息さえも聞こえてくるような静けさに、辺りが包まれている、
街灯が等間隔に照らすレンガ造りの通りを、男は顔も上げずに歩いていた。
頭の奥でまだカンカンカンと踏切の音がしていた。電車が通った風が鼻先を掠めた感覚も、まだ鮮明に残っている。
どこをどう歩いてここまで来たのだろうか。
男はふと足を止めた。明かりを灯しているはずの街灯が1本、男の足元だけを暗くしている。周りを見ても、暗いのはそこだけだ。
ただ電球がきれてしまっただけで、そんなことはよくあることだと頭では理解していても、込み上げてきたものを抑え込めるほど心は冷静ではなかった。八つ当たりの感情を拳に込めて、そのまま電灯の柱にぶつける。
ぶつけた怒りや悔しさや情けなさは、あとからじわじわと痛みとなって増していった。足元の暗闇が滲んでいくのが男には分かった。
そんな時、どこからか風が吹いた。それもただの風ではない。気にする余裕もなかった空腹を否応なしに思い出させるような、おいしい匂いを乗せた風だった。
ぎゅっと両目をかたく瞑り顔を拭った男は、その風に導かれるように再び歩き始めた。
「いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ」
〝お好きな〟といっても、カウンターだけの店内に椅子は3つだけだ。手前から、丸いクルクルと回る橙色の椅子、低い背もたれのある木製の椅子、そして滑らかな光沢のある古い革製の椅子の順に並んでいる。
虚ろな目を赤くした男性客は一瞬考える素振りをしたあと、入り口に一番近い橙色の椅子に控えめに腰を下ろした。
「この時間、外は冷えたでしょう。これは紅茶なんですが、ほんの少し生姜を入れました。よろしければ」
俯き加減の男性の視界に入るように、店主はそっとカップを差し出す。
立ち上がる湯気をしばらくぼんやりと見つめていた男性だったが、やがておもむろに目の前のカップに手を伸ばした。
強張っていた男性の表情が、紅茶を口に入れた瞬間少しだけ和らいだ。
「何か食べていかれますか」
2杯目の紅茶を注ぎながら、店主は尋ねた。
「……あの……この匂いって」
男性が遠慮がちにカウンターの中を見回す。
「あぁ、これですかね──」
店主は鍋の蓋を開けて、カウンターの向こうに見えるように少し傾けた。
「さっきとったばかりのお出汁です。いい香りでしょう。うちの店の料理は基本、これを使って作ります。よろしければ、これを使って何か軽めのお食事でも作りましょうか」
店主の言葉に一瞬間を置いた後、男性は小さく頷いた。
「何か食べたいものはございますか」
その問いに男性が首を横に振る。そして掠れた声で「おまかせします」と呟いた。
それを聞いた店主の口元に笑みが浮かぶ。
「承知しました」
玉ねぎを切る音が心地よく耳に響いた。冷蔵庫から取り出された卵が、ボウルの中で手際よくかき混ぜられていくのをぼんやり眺める。
紅茶を飲んで身体が温まり、気が抜けたからか、さっきからたびたびお腹が鳴る音がしている。
男は2杯目の紅茶を飲み干し、空腹を紛らわせる。
思えば朝から何も食べていなかった。どうりで腹もへるわけだ。
そうこうしていると、どこからか一風変わった鍋が出てきた。大きなお玉に鍋の取っ手が付けられたような、不思議な作りだ。
その上で煮込まれた具材の上に、溶いた卵がたらりと回し入れられる。そんな店主の手際の良さに見とれていると、あっという間に小ぶりの丼ぶりが目の前に置かれた。
「今日は卵料理の気分でしたので、親子丼にしてみました。熱いので、気をつけてお召し上がりください」
「──いただきます」
輝くような半熟卵に待ちきれず、冷まさないままに口に運ぶ。案の定、口の中で具材を転がして熱さを逃がさなければならなかった。
食べる間、男は一言も喋らなかった。ボロボロと頬を伝う雫がカウンターに落ちるのにも構わず、男はただ口に丼をかき込み続けた。
そんな男を見ても店主は何も言わなかった。ただ、空になっていた男のカップに3杯目の紅茶をそっと注いだ。
「ごちそうさまでした」
そう机に置かれた丼ぶりには、米ひと粒も残っていない。
「本当においしかったです」
「ありがとうございます」
店主が微笑むと、男性も少しぎこちない笑みを返した。
きっと今夜はもう大丈夫だろう。
わずかに上がっていた肩を、店主はひっそりと下ろした。
「また食べに来てもいいですか」
「もちろんです。またお待ちしております」
心からの願いを込めて、店主は微笑んだ。
店を出て、男は再び明かりの消えた街灯の下で足を止めた。そして、頭上の空を仰ぐ。
暗い街灯の向こうに月が見えた。ちょうど半分に割ったような月が小さく浮かんでいる。
こうして月を見上げたのはいつ振りだろうか。街灯の光がないおかげか、月の欠けた部分もうっすらと見てとれた。
男は、店に入る前の出来事をすごく遠くのことのように感じた。
ただ、それと同じくらい、この先の未来もずっと遠くにある気がした。
男は深く長い息を吐く。
身体の中を空っぽにしてしまった男は、先の見えない暗がりの中に、1歩踏み出し歩き始めた。
真夜中
夏のサンタクロースほど、暇な者はいないだろう。
そりゃ、だって。
彼らの仕事は、正直夏にはないも等しい。
そんなこんなで。
今日も今日とて、サンタクロースは真夜中に宴を開いていた。
とはいえ、サンタクロースは年齢的にも「おじいさん」にあたる。酒もほどほどにせねば、命も縮むというもの。
「いやー、最近のノンアルコールは、すごいのう」
「いやいや、やっぱり本物の酒が一番じゃよ」
「しかし、これならいくらでも飲めそうではないか」
「まあ、今季は暇じゃから、二日酔いをしても、バチは当たらんじゃろう」
「ほぉっほぉっほぉ。それもそうですな」
その姿を、トナカイたちは小さな隙間から眺める。
「また、サンタのじいさんたち、お酒飲んでるよ」
「子供たちは、到底想像もしてないだろうね、サンタクロースの泥酔姿なんて」
「あれ、でもあれって、ノンアルなんだよね? なんで二日酔いとか言ったり、ほんとに酔っ払ってるの?」
「そりゃ、キブンってやつじゃないかな」
トナカイたちは、思う。
なんと、ロマンのないことか。
麦酒飲む 父の喜ぶ 背中見て 糖尿病でも 飲みたいわけだ
涼し風 感じる窓辺 ハムスターは 私と共に 夢見まどろむ
蝸牛 見てふと我を 振り返る ゆっくり歩けば 幸せ来たる
『真夜中』
真夜中は静か。
草木も眠ってる。
ふと目が覚めて思う。
もう少し眠れば
君に会える土曜日がやってくる。
一週間お疲れ様でした自分。
明日はとことん楽しもう。
清々しい疲れと、待っているご褒美の
真ん中の時間の中で
そっと噛みしめる、静かな幸せ。
心を照らして
スキ キライ
花占いみたい
深い闇に咲く
幾重にもなる
花弁を数えて
眠りたいのに
月が照らして
ゆりかごの中
揺られている
私を見つけて
心を見つめて
眠れない夜は
『真夜中』
お題:「真夜中」
「とっぷり」という擬音が好きです。
日暮れと湯船くらいにしか使わない、あの夜の言葉が大好きです。
思うに、夜にはなんだか粘り気があるのです。街中の夜空はなんだか薄くてざらついているけれど、ふと空を見上げ、その暗さに初めて気がついた、あの時。チューブからそのまま絞り出してべったり塗りつけたような夜闇は、確かな質量を持って私を包み込むのでした。
熱くはった湯船に身体を沈め、やがて波紋が収まった時。温みはさらりとした湯水を介して私の体を包みます。まとわりつく火照りに大きく息を吐けば、窓から冷気が肌を撫ぜてくれるのが心地が良く、ゆっくりと目を閉じました。
誰もが眠るこの静寂に、暗闇と温もりに浸かる真夜中が、私は一等好きなのです。
「真夜中」
二人が出会える場所
絡み合う身体、溶け合う感情
もう堕ちるとこまでいこう...
陽とともに消える二つの影
純黒の夜に逢いましょう
「真夜中」
静かな夜に聞こえる音たち
まだ寝ることのできないものたちの魂
陽の光はあともう少しだよ
「真夜中」
寝静まった街に走る一台の車
どこへ向かっているのだろう
せめてサイレンは真夜中モード
を付けてください
一気に朝が来ます
〜鯖缶のコーナー〜
朝から3つも書いてしまいました。
今日は近くの小学校で運動会の
ようです。
最高気温が昨日よりも高くなるよ
うです。
熱中症に気をつけたいですね。
鯖缶は屋外の仕事をしていて仕事の
半分ほどは日に当たっています。
この季節に少し日焼けしておくと
夏本番は少し肌も慣れているせいか
何とか乗り切れます。
適度の日焼けは免疫力を高めるそう
です。
皆さまもどうかご自愛くださいませ。
「真夜中」
夜になり、眠りにつこうとする。
でもいざ、布団に潜ると考え事が多く中々眠れない。
そんなこんなで毎日、真夜中に寝る。
早くこんな生活も終わればいいのに。
なんて事を毎日考えてる。
だから、僕は眠れない。
こんな真夜中に連絡したら
君の迷惑になるかなって
そう考えると連絡できなくて
君からの連絡がないのも
君も同じように考えてくれているから
真夜中
しんと静まりかえる
まるで
何もないかのよう
あるのは
自分の
素直な気持ち
ほら
聞き逃さないで
小さくとも
芯の通った
心の声を
独り暮らしの頃、真夜中は怖かった。
急に身体が動かなくなる、いわゆる金縛り。
目が開けられないのに、見知らぬ人が寝ている自分のまわりを歩き回っている感覚。
身体中を虫が這っているような感覚。
夢だか現実だかわからなくて、朝になると夢だったような気がして、それでも不快感と恐怖感だけはしっかり残っていて…
そんな夜がたくさんあった。
娘が産まれてから、それはピタッとなくなった。
金縛りも、見知らぬ人も、虫たちも、もうやってこない。
夢だか現実だかわからない、何ともいえないあの感覚は、もうやってこない。
だから安心。もう夜は怖くない。
夜泣きで起こされようが、布団を乗っ取られようが、寝相が悪い娘に蹴られようが。
むしろ現実を実感できて安心。
娘に守られているのかもしれない。
追記
真夜中のタイトルに導かれて、独り暮らし時代の夜中の嫌な感覚を思いだし、上記を書いてみたが、そのあと気になって調べた。金縛りは、睡眠麻痺といって、その間に人の気配を感じたり何かが身体の上に乗っている感覚も、睡眠麻痺の間によく起こるそう。10代~20代に起こりやすい、不規則な生活をしていると起こりやすい、とも書かれていた。当日自分は20代で変則勤務をしていた。そういうことだったのか。
【真夜中】
やさしい夜がやってくる
眠れない僕は
散歩に出かける
花も眠る
草も眠る
木も眠る
人も眠る
街も眠る
眠れない僕は
眠らない真夜中と
手をつないだ
【真夜中】
それでは、今日はイメージの世界が2つに分裂した話を書きましょう。
気がつくと、私はまた白い世界に横たわっていました。
確か、甲冑さんが亡くなって、足元の亀裂から落ちて───
何故かまた白い世界にいる。
(どういうこと……?)
とにかく、私はまだ死んでいないようです。
何だか疲れて、ぼんやりしていると、
「あれ?君、誰?」
突然声をかけられました。
振り向くとそこには派手な髪色をした少女がいました。
服は私と同じ白いワンピースでしたが、私のとは違い、彼女のはフリルがついて、ふわふわした、可愛いワンピースでした。
髪色は、色とりどりのわたあめのようで、パステルカラーが目立ちました。
「あの、あなたは……?」
私が尋ねると、彼女は輝くようにニコッと笑って言います。
「あたし?あたしはラギーだよ!」
ラギーからはいくつもの話をききましたが、驚いたのは、世界が分裂したという話でした。
「あたしも急なことでビックリしてる。あ、でも、黒の世界には行ってはいけないよ」
「え、それはまた何で?」
彼女はどこか遠い目をして言いました。
「とても暗いところなの。真夜中みたいにね。あなたにはまだ危険だよ」
真夜中の静寂を
好きでいられるのは
必ず朝が来ることを
知っているからです
# 真夜中
真夜中…
何かを引きずる音で目が覚める。
この音は、以前から度々聞こえていて、私の中でずっと謎だった。
か、最近になり、やっと音の正体がわかった。
帰宅してふと屋根を見上げたら、猫と目が合ったのだ。
ヤツは屋根の上を、ほふく前進していた。
【真夜中】
世界を覆う真夜中の暗黒は、甘い甘い香りと共に
アナタをしばしの安息へと導く。
…そして朝は爽やかな笑顔と共にそれを奪い取っていく。
だから朝は嫌いだ。
真夜中
真夜中、
シーンとしている。
中々
眠れない。
スマホ見たり
本を読んだり
何度も寝返りする。
こんな夜もあるよね!
真夜中は、世界の揺籃期。
人を夢と云う「匣」に閉じ込めて、
朝へと連れてゆく、それまでの時間。
真夜中のドライブは精神リセットができる
私は時々考え事に夢中になる