お題:「真夜中」
「とっぷり」という擬音が好きです。
日暮れと湯船くらいにしか使わない、あの夜の言葉が大好きです。
思うに、夜にはなんだか粘り気があるのです。街中の夜空はなんだか薄くてざらついているけれど、ふと空を見上げ、その暗さに初めて気がついた、あの時。チューブからそのまま絞り出してべったり塗りつけたような夜闇は、確かな質量を持って私を包み込むのでした。
熱くはった湯船に身体を沈め、やがて波紋が収まった時。温みはさらりとした湯水を介して私の体を包みます。まとわりつく火照りに大きく息を吐けば、窓から冷気が肌を撫ぜてくれるのが心地が良く、ゆっくりと目を閉じました。
誰もが眠るこの静寂に、暗闇と温もりに浸かる真夜中が、私は一等好きなのです。
5/17/2024, 9:24:42 PM