『相合傘』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
相合傘
仕方ねぇから、入れてやるよ
いつも無愛想な彼からの提案に
戸惑う
じゃあ、入れてもらおうかな
私は雨が嫌い
でも、こんな風に彼と並んで歩けるなら
悪くは無いかな
駅に着くまで2人並んでゆっくりと歩く
以前の分析の続きをしようと過去の日記帳を開いた。
クリムゾン色の日記帳は大学から新入社員時代のものだったが、今回のミントグリーン色の日記帳は高校生時代のものだ。
日記帳には、友人や部活のこと、学校の行事など、懐かしい事柄が書かれている。
やれ、毎週小テストだらけで嫌だの、購買のパンがすぐ売り切れるだの、今日の日付を基に出席番号で当てられる日だと思ったのに、月日の掛け算してくるとか意味わかんないだの、そんな愚痴すらも微笑ましく思えてしまう。
以前よりも穏やかな気持ちで頁を捲っていると、相合傘のマークが目に入った。
相合傘の下には、自分の名前と当時憧れていた先輩の名前が入っている。
その先輩は、サッカー部の部長で学校一のエースだった。誰よりも速いパスやシュートは美しく、多くの得点に貢献していた。
スポーツの才能だけでなく、学問でも学年一の秀才であり、キリッと整った顔立ちや容姿も併せ持っていた。
天は二物も三物も一人の人に与えるようだ。
そんな天から愛される先輩は、女生徒の間でも、熱狂的なファンクラブが出来るほど人気な人だった。
私は、ファンクラブに入ることはしなかったが、密かに恋心を抱いていたクチだ。有り体に言うと初恋の人だ。
相合傘が書かれたその頁に恐る恐る目を通してみると、そこでは当時の夢見る夢子ちゃんな文章が猛威を振るっていた。
やれ、お付き合いをしたらテーマパークでデートしたいだの、下の名前で呼んでほしいだの、オソロの物を持ちたいだの、当時の女の子らしい願望が書き綴られている。
それだけならまだ恋を知らない乙女の妄想故、「情状酌量の余地あり」と耐えられたのだが、ファーストキスの願望を詳細に書いてあるのを見た瞬間、情状酌量という盾が粉々に打ち砕かれた。
妄想乙女が暴走し過ぎている。
恥ずかしい。猛烈に恥ずかしい。羞恥心で墓が立つレベルだ。
私はミントグリーンの日記帳を慌てて閉じると、歴代の日記帳が並んでいる中にそれをねじ込んだ。
私の手から離れた日記帳は何食わぬ顔をして、歴代の日記帳と並んでいる。今さっき与えた衝撃など無かったかのように、キレイなミントグリーン色だけを見せて無害なふりをしている。
ミントグリーンの日記帳もアウトだ。
私はがっくりと肩を落とした。
クリムゾン色の日記帳に引き続き、ミントグリーン色の日記帳にまで、羞恥心を煽られるとは思いもしなかった。
過去の自分からの攻撃は、どうしてこうもクリティカルヒットするのだろう。
頭を抱え深い溜め息をついてみるが、胸に巣食うモゾモゾとした感じは一向に収まる気配がない。
もう一度深呼吸をすると、脳裏にヨレヨレの白衣を着た見慣れた男性の姿が浮かんだ。
研究所の主にして私の上司──博士だ。
円らな瞳に手入れの甘い眉。
髭のない口元には薄っすらとシワが入り、一回り以上年上であることを感じさせる。
いつも適当に後ろに撫でつけた黒髪には、白髪が数本混じっていたりもする。
整った顔立ちをしている方なのだか、全体的に野暮ったく見えてしまうそんな人だ。
「…博士もこういう経験あるのかな?」
自分よりも一回り以上年上で、性格も穏やかな博士ならば羞恥心に苦しめられることはない気がする。
「今度聞いてみようかな?」
博士ほどの人になれば過去に恥ずかしいことなど存在しないのかどうか。また、どうすれば羞恥心に勝てるのか、是非インタビューしてみなくては。
お茶の時間の楽しみが出来たと、内心ホクホクしながら脳内のタスクに「博士に羞恥心についてインタビューする」と書き込んでおく。
書き終えた瞬間、ふと、ある疑問が脳裏を過った。
「博士って初恋あったのかな?そう言えば、ご家族の事を話していることもない気がする。ご結婚ってされてたっけ?」
プライベートに踏み込むのは気が引けるが、こちらもいつか聞いてみたいので脳内のタスクに小さく書き込んでおくことにした。
『相合傘』
先週ね、晴れた日に青年同士で一つの日傘に入ってるのを見かけてなるほどなぁって。
雨の相傘ってだいたいどっちも濡れるじゃない?仲が良ければ肩が濡れた背中が濡れたとうるさいし、微妙な仲だと離れて濡れるし、身長差があったら気遣った方が多く濡れるし。雨がしのげれば十分なのに、お互い何かを譲り合って奪い合って濡れた量だけ疲労する。二人だけの空間にきちんと収まっていればね、許し合って認め合って相合わさって歩けるのかもね。そんなこと思うたびに、俺はいいからお前が使えって走り出したトトロのカンタの思い切りを素晴らしいなって思ってた。
だから、一つの日傘で和やかに歩く二人を見て、誰も濡れない相合傘に感心しちゃった。これから夏の日差しが強くなれば結局日陰の奪い合いなのかもしれないけど、穏やかな晴天を相合傘で歩けることはとても素敵な光景だった。
相合傘
水無月なのに、降り続く雨…梅雨の合間の久しぶりの青空で、太陽が眩しく輝いている…念の為に、傘は用意してあるけれど…
夕方、帰支度をしていると、雨粒がポツポツ窓を叩き始めた…玄関に着いた頃には、急に本降りになっていた…その軒下には、あの人が、困り顔で空を見上げていた…どうしたものか躊躇したけれど、見過ごすことも出来なくて、駅迄、送っていくことを提案した…あの人は、嬉しそうに、ありがとう、って云ってくれた…それから、近くの駅迄一つの傘に二人寄り添い乍ら、歩いた…何時も遠くから見ているだけのあの人とこんなに、近い距離で、心臓が止まりそうなくらい…雨音よりも、ドキドキが激しい…時折交わす言葉も、上の空になりがちで…
【相合傘】
「あなたがいたから」、傘を忘れたふりして隣に押しかけ、家まで送ってもらう。雨の日だから、こんなわがままも水に流してもらえるでしょ?
相合傘
梅雨
この季節になるとたまに見かける
学生同士お互いに肩濡らしながら歩いている様子なんて
初々しくて微笑ましい
でもやっぱり1シーズンに何人か僕だけに見える組み合わせがある
あぁ、あの人もそうなんだ
ん?あぁ、、、よく見るともう一人いるじゃん
2人やったのね
突然の雨
一つの傘に
二人で入る
駅までの道のり
嬉し恥ずかし
相合傘
相合傘
友だちと相合傘してて、
私は自分の肩が濡れる側。
単純に太ってるから幅を取る。
鉄を七秒炙るだろ、それを柔いところに押し付ける
そしたらぷしうと音がするなり、白く固まり焦げ臭くなる
明日には橙色のちまい蚯蚓が、その次にはチーズの生菓子が、その場で立ち代わりめくるめく、国家のように変態していくだろう
蓋ができれば軈て抜け落ち、そこは赤い丘のできる
そして3年すればまた、なだらか白い土地になるんだな
お前を頼ってきたのではないよ、
お前は只マシな敵であるのだよ
お前は人間ではないよ、
お前は型落ちの妥協案なのだよ
長い間ハッキリとしてやれなくて本当に済まなかった…
だからどうか言わせてくれ。
あまり傲慢になるなよ、
お前には何の価値もないんだから。
◆
お前のせいで出来た数十の傷が力こぶのように腫れて痛む。
過敏になった患部は風にも涙を垂らして、暑い夜にも涼めない。
しばらく一年は、神経痛が忘形の友となるだろうね。
信頼のシの字も知らなかったのだよ。
あまりにもお前らはわたしの邪魔をするものだから、そして恐ろしや自覚もないようだから。
ほら、ご覧。お前の節穴でも見えるか。
なんと醜いことだろう!
呼吸を乱れさすのは簡単だが、その責任は、どうなるんだね、その姿は、快楽だけには貪欲なのに、避妊すらしない浮世人とは、何が違うのかね…
恨むぞ貴様ら、3年経っても、なだらかでも。
小さい頃から、『穴に飛び込んで』ブラジルに行くことが夢だった。
バカな事だと周りから散々言われたが、少なくとも私は真剣だ。
そして今、私は夢を叶えようとしている。
目の前にある穴はブラジルまで通じる予定の穴だ。
嘘をつくなと怒る方もいるかもしれない……
だが私は成し遂げた。
もちろん人力ではない。
普通に掘るだけでも重労働だし、り掘るだけをしては生活もできない。
だから私は機械工学を学び、作ったのだ。
地球の裏側まで掘り進めるモグラ型掘削機を。
だがそれでも足りない。
地球の内側は熱い。
なんでも6000℃くらいで、太陽の表面温度くらいはあるそうだ。
もし穴が通じていても、中心部を通るだけで消し炭になり、ブラジルには行けない。
なので作った。
太陽の炎にも耐える、耐熱服を……
これで安心、あとは穴が開くのを待つだけ……
感慨にふけっていると、目の前のモニターが掘削完了のシグナルを出る。
このシグナルはモグラ型掘削機が、地球の裏側まで掘り進めたことを意味する。
これでブラジルまで穴が繋がったわけだ
ありがとう、モグラ123号。
あとは落下するだけで、ブラジルに行ける。
だが飛び込む直前で、怖気ついてしまった。
絶叫系がダメなのだ
何事も経験だと、一度だけ乗ったジェットコースターの事を思い出す。
アレは地獄だった。
ここに来て行きたくないと思い始める
だが私は首を振って思い直す。
ここまで来て中止なんてありえない
こういうのは、勢いだ。
思い切って飛び込む
内臓が上に押し上げられるような嫌な感触とともに、私は落下する。
とんでもない勢いでどんどん落ちていく。
しばらくすると、落ちているのか、浮いているのか、感覚が麻痺してなにも分からない。
だが私は何も心配してない。
なぜなら私の計算は完璧だから。
ブラジルに着くまで40分くらい。
空気抵抗があるから、もう少しかかるだろうが、それは誤差の範囲――
あっ空気抵抗を計算に入れるの忘れてた。
このまでは重力の向きが変わったとき、勢いが足りずブラジルまでたどり着けなくなってしまう。
悩んでいる間も、私はどんどん落下していく……
このままでは、私はずっと落下したままどこにも辿り着けなくなってしまう
だれか助け――
◆
衝撃が体を伝う。
何が起こったか分からず、体を起こす。
すると目に入って来たのは、見慣れた寝室だった。
夢だったらしい。
椅子に座って寝て、椅子からずり落ちたようだ
正直悪夢だったので助かった。
汗をびっしょりかいて、気持ち悪い。
シャワーを浴びよと立ったところで、庭が視界に入る。
庭には穴があった。ブラジルまで通じている穴――
出はもちろんなく、子供の頃、ブラジルまで掘り進めようとして、諦めた穴だ。
頑張って掘ったのだが、ある時不注意で穴に落ちてしまい、それ以来落ちる感覚がトラウマだ。
埋めたかったのだが、親がもったいないと言って、夏にプールとして使っている。
この穴を通じていたら、ブラジルまで行くかって?
無理、精神が持たない。
落下はもうコリゴリだ。
【相合傘】
土砂降りの雨が降る
きっとどこかにいる主人公が
悲しんでいたりしているのだろう
でもそれは僕では無い
だってきみを持つ僕はこんなにも
浮き足立っているのだから
隣に駆け寄ってきたきみが
折り畳み傘を持っていることもわかっている
僕がわざと傘を忘れたこともきみはわかっているかも
同じ傘で手が届きそうな距離にいたかったから
形にできない想いさえきみに届けば良いな
2024-06-19
相合傘
背の高いあなたと低い私
傘を忘れたあなたと傘に入ると手が吊りそうになってしまう
それに気づいたのかあなたはそっと傘をとって私を引きつけた
そういうところに惹かれたのかもしれない
あなたの左肩は少し濡れていて
ありがとうと小声で言った
色とりどりの花が、色を失ったビル街の雨雲の下に咲いている。
一人一人で忙しなく乱れているのをどこか滑稽に思いながら私はエレベーターでフロントまで降り、カバンから折り畳み傘を取り出した。……が、外を見る限りどうやら雨が強いようだ。こんな風雨じゃ折り畳み傘なんて無力だろう。ぼんやりと空を見ると、しばらくすれば弱まりそうだった。はあ、とため息を吐きスマホを取り出そうとした瞬間、後ろから色鮮やかな色が私の手元を染めた。
「よ。困ってる?」
「……横溝君。フロントで傘を開かないの」
「ハハッ、お堅い氷川様の仰せのままに〜。けど俺はツンケンしてるかっこいいお姫様のために傾けてるんだぜ?」
へらりと茶髪の彼が笑う。ステンドグラスの模様が描かれたビニール傘を持ったいけ好かない彼は、肩を竦めながらのらりくらりとクサイセリフで躱す。私はその言葉の一つ一つに顔を顰め、指先で傘を退ける。
「変な冗談はよして。そういうのは好きな子にでもやりなさい」
「だから今やってるだろ」
は、と声が漏れた。
その声を食べるように、彼は私の口を手で覆ってから彼自身の手の甲へキスを落とし笑う。
あまりにも非現実的で、信じられなくて。
だけど。
仕方ないから、今日はステンドグラスみたいなその傘に入ってあげることにした。
雨は、そろそろ止みそうだ。
相合傘
車での移動が多いから
傘はいつも持っていても
多少の雨なら走って建物の中に入る事が多い
傘は必ずとっておきのお気に入りを買う
そうすると雨の日も気分がいいから
じゃぁ 何故使わないかって?
盗まれた事が2度もあるからよっ!!
傘ドロボウのやーつ!
もし見つけたら胸ぐら掴んで
それからあーして こーして
わたし 逮捕される???
ん?お題と関係なくないか?
雨燦々
偶然雨が降って
傘を忘れてきて
走ろうかどうか迷って
そこへ
君が
君が
来て
傘に入れてくれた
雨様様
楽しそうな君の声が
かき消されるけど
僕の心音は
悟られないから
雨よ
雨音よ
今日ばかりは
恩に着るぜ
お題:相合傘
※既出作品より
相合傘。
背の高い
2人が
相合傘だと
傘が狭くなるかな?
2人でくっつくのも
めちゃくちゃ
楽しそう。
65cmの傘で
2人で
お出かけしよう。
その時までに
【雨の曲】を作ってね。
悪い記憶ばかり思い出す
全て投げ出したくなる
貴方に逢いたくなる
話したくなる
もう一度
【記憶】
疲れた、ねむい、やりたくない
休みたい、
相合傘
君がどう思ってるかなんて
わからないからこそ
お似合いだね
そんな他人の言葉に助かる
―――きっと誰だってやった事あるだろ?
黒板に書かれた日直の名前に相合傘を書き足して
現実になれば なんて願って
恥ずかしくってすぐ消して
そんな甘酸っぱい想い出
やったところで何にもならないのわかってるのに
……ちょっとだけだから
すぐ、消すから……
イタズラに手が動いて君との間に傘を描く
「…っ、何してんだろ」
書き終わり、ふと、正気に戻る
「消そ、」
チョークで汚れてない手で黒板消しをつかみ消そうとした
その瞬間
その手が誰かによってとめられた
「えっ?」
「ストップ 。 なーに、可愛いことしてんの?」
顔を覗き込まれとっさに逸らす
――見られた、見られた… 見られた…!
恥ずかしさとか色んなものが込み上げて一気に顔が赤くなる
ち、違うって言わないと、
「え、いや、なにも、なく、て、」
動揺し、体ごと逃げようとする俺をつかんで、彼女は言う
「ふーん何も無いんだ、てっきり可愛い可愛い相方くんが、やーっと私のこと好きだって言ってくれるのかと思ったのに」
ざんねん、なんて言いながらも掴んだ手は離そうとしない
それどころか顔を覗き込もうとしてくる
今、顔なんて見られたら、赤いのがバレバレじゃないか
俺が、
俺が君のこと好きなのが、バレバレじゃないか…!
必死に抵抗するけど彼女に勝てそうもなくて
俺の涙目なった目と君の楽しそうな目が合う
「ねえ、それで…?」
「…へ?」
「私に言うことあるんでしょ?」
期待に満ちた彼女の目が
楽しそうな彼女の口元が
密着した手から伝わる彼女の温度が
その全てが俺に「すき」を自覚させる
あぁ、負けた
俺の負けだ
「っ!おれっ、君が…
お題:『相合傘』
相合傘…
何を書くよ?
ノートの端っことかに書くアレなのか
それとも一つの傘に好きな人と二人で入るアレなのか
どちらにしろあまり思い入れがなさすぎて書けなかった
とりあえず真っ先に浮かんだのは
雨の日の送迎で利用者と一緒に入るアレだった
甘酸っぱさの欠片もない