『病室』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『病室』
子供服を売っていた当時
子どもしか罹らない肺炎をこじらせたわたしが
入院したのは
昔は結核の専門病院だったと
祖母や伯母たちが
『結核に罹ったのか』と大騒ぎした
二人部屋の窓際をあてがわれ
埋め立てられた海は窓から遠かったけれど
名残の松並木を通る風が心地よかった
これは僕が小学生の頃の話だ
僕の母は僕が生まれた頃から病気がちで入退院を繰り返していた
僕が3年生になった年の夏休みにもひと月近く入院した
母が入院している病院は家からそれほど遠くなかったので、僕は毎日自転車で母の顔を見に行った
特に用事があるわけではなかったけれど、母の顔を見ると安心した
「公ちゃん、もう帰るの? 今来たばかりじゃないの」
と、着いて5分と経たずに帰ると言い出す僕に母はクスクス笑いながら呆れていた
そんな母の顔が見られれば十分だった
母の病室から西側の突き当りに、特別室と札の掛かった部屋があった
名前の札は入っていなかった
母の病室から帰る方向とは逆なので部屋の前を通ることはそれまで無かったが、その日は何故かその部屋が気になり部屋の前まで行ってみた
ドアが10cmほど開いていたので、そっとその隙間から中を覗いた
すると、白い髪をきれいに束ねた品の良さそうなお婆さんがベッドにちょこんと腰掛けて僕に向かって手招きした
まさか人が居るとは思わずビックリしたが、とても優しそうなお婆さんの柔かい声が僕を安心させた
「坊や、こっちへいらっしゃらいな
美味しいキャンディーがあるのよ」
もちろん、キャンディーが欲しかった訳では無かったが、何故が逆らえない気がして静々と部屋の中へ導かれるように入って行った
「坊や、どなたかのお見舞い? 偉いわねぇ じゃあ、こちらの素敵な包み紙の方のキャンディーをあげましょうね」
と、お婆さんの柔かそうな白い手がキャンディーを差し出してくれたけれど、僕は受け取らなかった
「知らない人から物を貰っちゃいけないんだ」
と答えると、お婆さんはとても哀しそうな顔で
「坊やは偉いのねぇ…」
と残念そうに呟いた
僕はとても悪いことをした気持ちになり
「え〜と、え〜と、本当はダメなんだけど、ひとつだけなら…」
とそのキャンディーを受け取った
「坊やは優しいのねぇ… また遊びにいらっしゃいね」
ととても嬉しそうにお婆さんは微笑んだ
そのキャンディーはそれまで見たことのない美しい包装紙で包まれていた
きっと外国製のものだったのだろう
帰り道中身のキャンディーは口に放り込み、その包装紙はきれいに折り畳んでポケットに大事にしまった
家に着くとすぐに、大切な物をしまってある宝箱の中にその包装紙をそっと入れた
それから毎日母の顔を見た後はそのお婆さんの部屋にも寄るようになった
特に話をするわけでもなかったが、毎回違った模様のキャンディーやチョコレートをくれた
そして
「坊や、また明日もいらっしゃいね」
と優しく微笑んでくれた
宝箱にしまった包装紙がかなりの数になった頃、母が退院した
最後の日は父や姉が一緒だったので、そのお婆さんさんにお別れの挨拶が出来なかったことが心残りだった
帰りの車の中で、初めてそのお婆さんの話をした
すると母が不思議そうな顔で言った
「えっ?あの特別室は誰も入院していないわよ もう長いこと用具室としてしか使われていないもの
いやぁね、公ちゃんたら、お母さんを怖がらせようとしてるの?」
と母は僕を冷やかした
そんな筈はなかった
だって、毎日お婆さんにあっていたし、証拠の包装紙だって大事に取ってあるのに!
家に着くと一目散で部屋に駆け上がり、宝箱を取り出して中を確認した
ためた包装紙は確かにそこにあった
「やっぱり!」
急いで母に見せようと思ったが、ふと思い留まった
もしかしたら、お婆さんの姿は僕にしか見えなかったように、この包装紙も母には見えないのかも知れない…
あのお婆さんは、何故だかは分からないけれど、僕にだけ気付いて欲しかったんだ…
この出来事は僕だけの心の中にしまっておいた方がいいんだ…
リビングからは家族の久しぶりの賑やかな声が聞こえてくる
「公一、早く降りて来なさい せっかくお母さんが帰って来たんだから
皆でケーキを頂こう」
と父の嬉しそうな声がした
これが、僕が小学生の時に体験した不思議な病室の思い出だ
『病室』
あの人は今、どんな毎日を過ごしているのだろうか。
この真っ白な天井を見つめながら、
そればかりを考えている。
貴方と出逢えて、本当に幸せだった。
この哀しく、苦しい世界を生き延びて来た意味があった。
私はもう先に逝くけれど。
あの世か、来世か。
いづれまた、会いましょう。
貴方の世界が、何時までも何処までも、
彩に溢れますように。
『病室』
気が付くと病室にいた。
周りには家族らしき人と、よくわからない人と、一人の男の子が立っていた。
男の子は僕にこう言った。
「ごめんなさい!僕のせいで、、、、!」
「、、、、、、?大丈夫やで、、、、?」
「僕のせいで、、、お兄ちゃん車に轢かれちゃったんだよ!ごめんなさい!」
「そうなん、、、?全然大丈夫やで!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「大丈夫やって!笑」
その時よくわからない人が抱きついてきた。
「ほんまに良かった、、、、、死んだらどうしようかって、、、、、心配やった。」
「、、、、、、、?ごめんな、、、、誰だか分からんくて、、、どういう関係なん?」
「恋人やで、、、、笑」
「そうなんや、、、、、分からんけどイケメンやな!僕こんなイケメンと恋人やったん?!」
「んふっ笑そうやで〜?まああんなことやこんなこともしてなくはないかもしれんよ?」
「がちか、、、、、でもなんかSっぽそう」
「ちな、はるちゃんが彼氏よ?笑」
「あ、僕が彼氏やったん?」
「そーそー。俺の名前は冬弥」
「とーや!」
「記憶なくなっててもその呼び方なんや笑」
「前もこの呼び方やったん?」
「とうやじゃなくてとーやって感じやったからな。」
「ちなどっちがタチなん?」
「俺やけど」
「ちょ待って待ってw僕が彼氏やんな?」
「そやで?」
「で、僕がネコなん?w」
「そやで?」
「おかしいやろw彼氏なのに攻められとるやんw」
「んふっwたしかにw」
「はるちゃん可愛いな〜」
「えっ、、?///// 」
「めちゃ照れるやんw変わらんなあw」
「いや、急に可愛いとか言うんが悪いやん、、、//////」
「それにしても照れすぎよ?w」
これに関してはとーやが悪くない?///////普通に死ぬって////
「はるちゃん記憶ないのに俺のこと好きじゃん!笑」
「好きよ!なんか、、、、、直感的に好きなんよ!」
「惚れてるもんな?笑」
「待って、僕が彼氏よな?口説かれてる?笑」
「口説いてないわ笑」
「口説かれてる!笑」
一旦終わります!最高すねwBLは世界を救u(殴
記憶喪失です!どうしてもBLで書きたくてwBLはこれで二回目くらいかな、、?前のも完結してないんだけどねw
でも最初のほうの男女の恋愛は完結しているのでぜひ見てほしいです!
さよ~なら~
病室
それは怖かった事と嬉しい事、どっちもあった場所。
まずは怖かった事から。
ある時、おじいちゃんが入院した。その時はまだ小さくて、どうして入院したのかは今も分からない。ただ、点滴によって赤黒くなった腕と、やせ細ったおじいちゃんを見て、怖くなった事は覚えている。
次は嬉しい事。
ある時、妹が生まれたのだ。俺よりも4歳年下の小さい赤ちゃん。赤くて、丸っこくて、すやすや眠っていた。俺は不思議で、可愛くて、大事にしようと心に誓った事を昨日の事のように覚えている。
病室って喜怒哀楽が詰まってるな。人によって、場面によって、全然皆の雰囲気が違う。酸いも甘いも噛み分けられるようになりたい。
5
妹の病名は
白血病
だった。
体調が悪くて
クリニックへ行ったが
そのまま
大きい病院へ
救急車で運ばれたらしい。
あと少し
病院へ来るのが
遅かったら
危なかった。
現代は
薬物療法で
治せる
病気になっている
という。
がん治療の進歩に
感謝しつつ
それでも
何で妹が?
という思いに駆られて
涙が出る。
#病室
数年前に、忙しいときにぶっ倒れて3カ月会社を休んだ。うち二ヶ月強は絶食だった。胆石ともう一つやっかいな病気が併発していた。内科の医者はヤブだった。入院中はずっと寝てた。それまでを取り戻す勢いで寝ていた。病室には毎日パートナーがきて、ずっとついててくれた。二人して今でも、あのときはパートナーが仕事をしていなくてよかったという話になる。夏のクーラーがまあまあ効いてる個室で、私は延々と寝て、パートナーはそばで本を読んでいたそうだ。パートナーの話がツボに入ると笑っちゃってすごく痛くて、でもやめてよっていいながら笑ってた。アレはアレで必要な期間だったんだろうけど、絶食で体力落ちまくって、医者は許してない。
いつもと同じこの景色。
もう見飽きた
3ヶ月前まではとなりにいたあの人
いつの間にかいなくなっていた。
次隣に来るのは
余命3ヶ月の
少女。
病室の窓から見えるいつもの景色
中でも私の目には輝いて見える「あの場所」
病室から出られず、ずっと行ってみたいあの場所
いつかは行ってみたい
あなたの大切な場所、思い出の場所はどこですか?
病室には、様々な人がいる私も含めて… 私は白血病で余命宣告をされている私はあと3ヶ月も、持たないらしい。 ~~~~~~3ヶ月後~~~~~~ 私は白血病が治っていつもの暮らしに戻った
お題「病室」(雑記・途中投稿)
病院……ほとんど行った事ないんだよなぁ。交通事故で救急車呼ばれて検査受けたぐらい? いや顎の皮膚縫ってもらったことはあるけど。車が飛び出してくるな。
めちゃくちゃ性格悪かったし。
ということで本題の病室。お見舞いにしか行った事ない。それでも最後に行ったのいつだ。
十年以上前に父方の祖母のお見舞いに行ったのは覚えているけど……。
その後っていつだ。
話の面白い可愛がってくれていた親戚が長らく入院していたけど、お見舞いにも行かなかったしお葬式にも行かなかったし。周りで唯一登山する人だから話を聞きたかったんだけど。血縁的には割と遠いはず。(家系図よく知らない)
一昨年亡くなった父方の叔母(父の兄嫁)は折からの流行のCOVID-19で制限が掛かっていたし。まあその頃に新幹線の距離へ転勤していたのはある。
病室。
病室に
お母さんがいた。
もう亡くなったから
過去形。
距離が遠くても
笑顔が見れれば
良かったのに。
「病室」
いつの間にか僕は、やけに綺麗な部屋に居た。
確か
"肝試しをする為に、友達と山奥の廃病院を散策していた"
という所までは覚えている。
ふとスマホを見ると、もうすぐ午前三時をまわる頃になっていた。
生憎、僕と友達は学生で、今日は平日である。
"早く帰らないと"
と、声をかけようとしたが、どこにも姿が見当たらなかった。
一応、探しに出掛けようと思い、扉に手をかけ、開けようとした。
だけど、開かなかった。
最初は、建付けが悪くて開きずらいのかと思って、勢いよく引っ張ってみたりしたものの、一向に開く気配がない。
僕は、得体の知れない部屋に閉じ込められてしまった、という訳だ。
仕方なく、周りを観察してみる事にした。
周りを見渡すと、どこもかしこも白一色、
例えるなら、手を付けていないキャンバスのような部屋だった。
中央には、真新しいベッドが1つと、
一般人にはよく分からない機材が山積みになっていた。
やっとの事で捻り出した結論は、
"ここがなにかの病室であり、前に人が居た"という憶測だった。
病室であれば、部屋が綺麗な事とよく分からない機材が多いことに合点が行く。
(執筆中)
ピュンピュン…
ゲーム音だよな
誰がゲームしてるのかな
カーテンで見えない相手に
思いを馳せたり
普段と違う景色
非日常を楽しむことも出来る
でも病気に対する恐怖は消えないわけで
不安な気持ちはどんどん大きくなってく
こんなに命と向き合うなんて
今までなかったからな
自分がそんなに簡単に死ぬとはね
思ってなかったってわけ
いつも死にたい死にたい
言ってるくせにね
とりあえず明日の手術の恐怖から
逃げるから
ここに私がいること言わないでね
出張先から帰京する新幹線の中で、私は何度もスマホの時計を確認する。もう間に合わないとわかっているのに。
病院の面会時間ギリギリに彼女の病室に飛び込むと、彼女はベッドの上に穏やかな表情でよこたわっていた。
「すまない。」私が言うと、彼女は「何で謝るの?見て?」と、彼女のとなりで、おくるみにくるまれた小さな命を私に見るよう促した。
私がのぞき込むと、赤ん坊はすやすや眠っている。
「抱っこしてみる?」
すでに上半身をお越し赤ん坊を胸に抱いた妻が言う。私はうなずいて、そっと、そして最上級に壊れやすい大切なものを扱うがごとく、我が子を抱いた。
「ママのお腹からやっと出てきてくれたな。生まれてきてくれてありがとう。私が君のパパだ。よろしくな。」
妻のもとに子供をかえすと、私は妻に言った。
「よく頑張ってくれたね。ありがとう。体調は大丈夫かい?立ちあえなくてすまない。」
「仕方ないわ。この子が早く私たちに会いたいって、予定日より3日も早くなってしまったんですもの。
でね、この子の名前なんだけど…。」
面会時間を大幅に過ぎてしまい、看護師がさすがに注意をしにやってきた。
「後は電話で。また明日、何としても来るから。」
私は後ろ髪をひかれつつ、幸せをかみしめながら帰途についた。
お題「病室」
《病室》
昨日夕方、彼に私を大切にしたいと言われた。
私はその言葉への心からの歓喜と、今自分が闇の者として疑われている状況から誤解ではないかと湧き出る不安でぐちゃぐちゃになって、彼の前から逃げ出して部屋で一晩泣き明かしていた。
それでも涙を流しきって、心の澱も全てとは言えないけれど流れ去った。
気が付けばカーテンからは夜明けの光が差し込み、小鳥達の声が聞こえてきた。
大丈夫。昨日何も言わずに走り去った無礼を謝って。またいつものように彼と毎日を過ごそう。
まずは腫れた目を冷やしがてら顔を洗おうかと廊下を歩いていると、バン!と凄い勢いで彼の部屋の扉が開いた。
驚いて立ち止まると、その勢いのままに彼がよろめきながら部屋から出てきた。
私は腫れた目を見られないように両手で目元を隠しながら彼を見た。
眉間に寄りながらも下っている細い眉。その下の目は見開かれ、目尻と頬は赤く染まっている。
さあ、言おう。
おはようございます。昨日は突然走り去ってしまって本当にごめんなさい。と。
そう口を開こうとした時。
身体のバランスを崩しながら彼が私の両肩に手を置き、俯きながら呟いた。
「よかった…。」
私はまた、目に涙が溜まるのを感じた。
不安にさせちゃったのかな。もしかして、心配してくれたのかな。
両肩から彼の熱が伝わる。
ん?
ふとそこで、まさかと思った刹那。
彼が私に覆いかぶさるように上半身を傾けた。
「っ…わ!」
よろけながらも何とか自分の背中を壁へ付けるように持っていき、彼の身体を支える。
その身体に触れて、まさかが確信になった。
「ちょっと! 凄い熱じゃない!」
こんな体調でずっと私が部屋から出てくるのを待っていたの?
どうしてこんな無理をするの?
心配から語気が荒くなった私の顔を見て力なく微笑んだ彼を、私は何とか支えつつ彼の部屋に誘導した。
==========
寝室に寝かせた彼をお医者様に診ていただいたところ、熱は高いが汗は出ているし他に異常はないので、しばらく寝ていれば治まるそうで。
ひとまずホッとした私は、看病のために今は病室となっている彼の部屋で過ごしていた。
額の濡れタオルが温くなったら取り替え、せめて首元だけでもと汗を拭う。
手が空くと昨日の事が頭を掠めるけれど、彼の体調を考えるととてもそれどころではない。
そうして夜も近くなった頃。
「…ここは…?」
小さく掠れた声が耳に届いた。どうやら彼が目覚めたみたい。
「あなたの寝室です。今朝、熱を出して倒れたんですよ。」
彼の目が覚めた事に安堵して、答える。
替えの濡れタオルと水差しを手にしながら枕元に置いた椅子に座り、彼の顔を見る。
その目は完全には開いてなくて、まだぼんやりとした様子。
「そうか…ごめんなさい…。」
小さく謝る彼。悪いのは、私なのに。
今日、私が通りかかると同時に飛び出してきた彼。
昨日急に泣き出し走り去った私を、彼はずっと待っていてくれたのかも。
そんな負担を掛けたのは私なのに、謝ってくれる。
だから、もう負担にならないように努めて明るい声で私は言った。
「謝らないでください。それよりゆっくり眠って、早く良くなってくださいね。」
起きているうちにと水差しから水を飲ませ、額の濡れタオルを替える。
顔の赤みは、今朝に比べれば少し引いてきてる。
「すみません、熱を診ますね。」
それでも一応と、体温を大まかに知るために彼の首元に手のひらを当てる。
よかった。少しだけど熱は引いてる。
すると彼が寝返りを打ち身体をこちらに向け、首元の私の手のひらをそっと自分の手で包み込み、彼の頬に誘導した。
ぱさりと落ちる、彼の額の濡れタオル。
その突然の事に、私の胸が煩く鳴り響く。その鼓動が、胸から全身へ熱を伝える。彼の熱の高さが分からなくなるくらいに。
そうして、彼は呟いた。
「行かないで…。お願いだから、僕を置いて行かないで。僕の傍にいて…」
私を見つめる彼の目は、熱に浮かされているからかとろんとしている。にも関わらず、視線には揺るぎのない力があって。
重ねられた手は私の手のひらを離すまいと、優しくも固く力が入っている。
そうだった。
彼は三年前、家族皆を失った。
自分を疎んでいた兄姉も、反乱分子と見做された彼を帝国に引き渡せなかったからと処刑され。
乳母と立場を偽って彼を傍で守ってくれていた実のお母様も、その兄姉に殺された。
そうだね。あの時、誓ったはずだ。
彼の傍にいられるなら、何でもいい。殺されても構わない。
例え失った家族の穴埋めだとしても。
それを思えば、その苦しみの穴埋めなんて容易い。
昨日の言葉に心乱されて、彼に負担を掛けている場合じゃない。
私は彼の頬に当てられた手のひらを更に深く触れ、視線をしっかりと合わせ、できる限りの笑顔で答えた。
「離れたりしません。傍にいます。ずっと。」
あなたが、それを求める限り。
私は、心の中で新たな誓いを立てた。
すると彼は、心底嬉しそうにふにゃりと力なく微笑んだかと思うと、そのまま眠りに付いた。
その安心しきった彼の寝顔に、私はその笑顔への幸せと自らの決意への覚悟で泣きそうになりながら、空いてる手で彼の額に濡れタオルを当て直した。
ー病室ー
流れ流れて
辿り着くとも
一所おれぬ
世の哀しさに
言の葉遊びの
波打ち際に
病室
消毒のにおい
白い壁
カーテンに仕切られ
空が見える場所はまだマシで
ただ天井を見上げる
見つめる点滴が酷くゆっくりに感じ
やっと終わっても次がやってくる
ただただひたすら帰りたかった
何度入院しても
慣れないものだ
「病室」(一行詩)
今までの人生を見直す機会となる場に
◆
一人寂しさを改めて知る場となり
◆
幼き心 寂しさのミニカーにぬいぐるみよ
◆
つまらぬ 人生の先輩と一緒にぼやく
◆
点滴投与中に考えているのは今後の生活と治療費
病室
懐かしいな
もうすぐ6年経つ
色んな病室を経験したけど
どれもぼんやりとしか覚えてない
狭かったあのベットも
窓の広かったあの部屋も
記憶はあるのに
だいぶ遠のいた気がする
一番長くいた病室は
とても古い建物だった
窓には、格子があった
初めはなんだこれって思ってたけど
過ごしていくうちに気づいた
あぁこれは文字通り
命を守るための格子だ
この格子があるから
私たち患者は飛び降りれないんだ、と
その建物はもう建て変わって
綺麗になったはず
あの格子も
きっと新しい病室にはもうない
古いゆえの直接的な構造だ
当然改良されていく
戻りたい場所では無い
でも
私は多分一生あの場所を忘れない
私だけの場所ではないけど
何にも変え難い記憶と結びついた場所