狭い部屋』の作文集

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狭い部屋』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

6/4/2023, 1:23:48 PM

僕の胸の中には小さくて狭い、僕だけしか入れない部屋がある

人混みの中で一人になりたいとき、寂しくて現実を忘れたいとき、いつでも僕はそこへ行く

部屋ができてから、もう長いことたつから、そこに入るのも慣れたもんさ

えっ、もしかして引いてる?

君だから話したんだけどな

だからいつもぼんやりしてるのかって?

僕ってそんなにぼんやりして見える?

心はいつも忙しいんだけどな

6/4/2023, 1:22:20 PM

【狭い部屋】


自分でも馬鹿な事をしているって、本当は判ってる――



その日バイトも入れず丸々予定を空けていた私は、ちょっとした模様替えも兼ねて朝から部屋の掃除をしていた。
要らない紙類を纏め、普段はフローリングワイパーで適当に済ませている床もしっかり水拭きし、サボりがちだった窓やサッシを磨いて――などとやっていると、ワンルームの狭いアパートにも拘らず何だかんだで半日以上を掃除に費やしてしまった。
しかしここで一休みしてしまうと一気に疲労が押し寄せてくる気がして、そのまま夕食の準備に取り掛かる。

(昨日のうちに買い出し行っといて正解だったな)

調理の合間にダイニングテーブルにクロスを掛け、グラスと銀のカトラリーを二人分並べ花瓶に生けた花を置く。すると引っ越し当初から使い続けてきた古びたダイニングテーブルが、ちょっとしたフレンチ・レストランに大変身を遂げた。
サラダにチーズとパンの盛り合わせ、彼の好きな煮込みハンバーグ――そんなありふれた私の料理もまるでプロの仕事に……は言い過ぎにしても、このセッティングのお陰でいつもより格段に美味しそうに見えるのは紛れもない事実。まして今日は恋人の誕生日、頑張って料理した甲斐があったというものだ。

「演出って、やっぱり大事よね……」

そろそろ良い具合に冷えたであろうシャンパンを冷蔵庫から取り出しグラスに注ぐと、黄金色に煌めく泡と香りが弾けた。

「うん、バースデーディナーとしては上々! やれば出来るじゃない、私」

セッティングや料理の出来栄えを明るい声音で自画自賛してみても、私の心が満たされる事はない。
今夜一緒に過ごすはずだった人物が、私の元へ来る事はもう不可能なのだという事実も、わざわざ二人分の料理なんか用意したところで結局食べるのは自分独りきりなのだという現実も、判り切っていたからだ。

「誕生日、おめでとう」

そう呟いて独り席に着いた私は作業のように料理を口に運びながら、ここに来る事のない恋人、そして彼と共に過ごした日々を思う。
とは言えこれといってドラマチックな展開だとか、波乱があった訳でもない。小さな幸福と、他人にとっては下らない程度のちょっとした不満……そんなごくごく普通の日常の積み重ねこそが、私達の全てだった。
初めて彼を招き手料理を振る舞った時、大喜びしてあっという間に平らげてくれた事。そんな彼を見た自分の方が嬉しくて幸せな気持ちで満たされた事。
柔軟剤の匂いが気に入ったんだと言いながら、どさくさ紛れに後ろから抱き付いてくる事。
二人きりの時は、案外喋らない事。
私が愚痴れば、よしよしと頭を撫でてくれる事。落ち込めば、下手っぴな手品で元気付けようとしてくれた事。
彼が先にシャワーを浴びると、決まって高い方のフックにヘッドを掛けてしまい、後から入る小柄な私はいつも地味に困っていた事。
ネクタイを結ぶのが下手な事。
寝癖だらけの髪を、いつも適当に濡らすだけで済ませる事。
革靴の踵を平気で潰す事。
そして何度それらを注意しても直らない事。
――大好きな所も、正直ちょっと苛々する所も、もう会えない今となっては全てが愛しい。

ここまで思い返して、彼によって与えられてきた沢山の思いと幸せを、改めて実感した。
だが同時にこれからも続いていくと信じていた、彼との暖かく優しい平穏な日々が、実はこんなにも脆く儚いものだったと思い知らされてしまったのだ。
眼からはいつしか涙が溢れ、止めどなく頬を伝い落ちていた。

「……これから先も直接『おめでとう』って言いたかったよ」



死んだ男の誕生日を祝おうなんて、君馬鹿なの?



(え……!?)

ふと何処からか、彼のそんな呆れ混じりの憎まれ口が聞こえた気がして、私はそっと心の中で自嘲する。
自分でも馬鹿な事をしてるって、そんな事本当は判っている。でも……

この狭い部屋にはまだ、彼の物も匂いも思い出も沢山残っているから。もう二度と会えないんだって、頭では判っていても全然受け入れる事が出来ないんだよ。

「私を置いて逝くなんて、馬鹿はそっちじゃん」

涙で滲んだ時計の針は零時に接近し、今日の終わりを告げようとしていた。

6/4/2023, 1:21:35 PM

羽を切られた小鳥はもう空へは飛べない

羽はあるけれど狭い部屋に
閉じ込められた鳥も空へは出られない

ひとの温もりを知った小鳥は
空に飛び立つことを望んでいるのだろうか

この狭い部屋で愛され続けて小鳥は幸せか
擦り寄るきみは
なにを想って今日も鳴くの

_狭い部屋

6/4/2023, 1:18:04 PM

部屋は狭いに越したことない。掃除も楽だし落ち着くし、なにより物が増えなくていい。私には布団とタオルと蔵書があればそれでいい。

6/4/2023, 1:16:27 PM

水滴がどこからか落ちてきた。
そこで誰かが泣いている。気持ちが溢れてしまったのだろう。でも、人は泣いて成長できる。次がきっとある。

6/4/2023, 1:14:19 PM

「あ、あー。す、好きです…」
声が小さいかな?
「あの、前から気になってました」
ちょっとストーカーっぽい?
「付き合ってもらえませんか?」
断られそう…。

ヒトカラを装って『告白の練習』
どうしよう、練習でも上手くいかないよぉ

#狭い部屋

6/4/2023, 1:14:18 PM

狭い部屋


物が多くて狭い部屋。わたしの部屋です。

元々はそんなに小さな部屋ではなかったのに、だんだんに物が増えてしまったの。

使わない物捨ててスッキリさせたい。簡単そうで、でも出来ないのよね。

心の整理が先かな。

6/4/2023, 1:12:41 PM

『狭い部屋』

錆びた鉄の扉
円形でくすんだ金属のノブを回す

重たそうに見えた扉は
意外に軽く開いた

そこからさらに
くるりと螺旋階段が続いている

ひんやりとして 気持ちいい

螺旋階段を降りていき
一番下までたどり着き
足をつくとそこは
唖然とするほど狭いスペースだった

薄暗い部屋の片隅に目をこらすと
床に膝を抱えてうずくまっている
小さな女の子が居た

声を掛けると
顔を上げてこちらを見た

その顔には
見覚えがあった

紛れもない
幼い頃の私だ

感情のない虚ろな目
顔色も青白く
まるで生気が感じられない

私は思わず
ぎゅっと抱きしめた

幼い頃の私もしがみついてきた

体の奥がきゅんとなり
胸がいっぱいになった

涙が止めどなく流れ

気付くと2人で
声を上げて泣いていた

私 ただ 抱きしめて欲しかった
私 ただ 寄り添って欲しかった
私 ただ ずっとこうして泣きたかった

狭い部屋の片隅
2人の私は
ただ 大声で泣き続けた

泣き疲れて 眠る
その瞬間まで

ただ
抱きあって
大声で泣き続けた

ただ…ただ…

6/4/2023, 1:08:37 PM

《狭い部屋》

狭い—捉え方はさまざまだけど

何処となく閉鎖的な印象が強い

もしそこから抜け出せるのなら

その人の強さは計り知れない

6/4/2023, 1:08:18 PM

狭い部屋
ここが1番落ち着く場所だ
世界は広い、そして色々なものに溢れている
だけど、自分は埋もれていく
荒波に揉まれ
だから、自分を守ってあげないと
この狭い狭い部屋で
狭くたっていいんだ、満たされているから
広い世界だからこそ、狭いところを大事にしないと
狭いからこそ、みえるものもあるんだよ
広くて狭いこの部屋で

6/4/2023, 12:56:37 PM

狭い部屋が好きだ。
自分の手の届く世界。
自分で管理できる空間。
なんて心地良い。
人間関係も同じ。
最低限の自分が必要とする人がいればいい。
私には大きな容量など必要ない。
その方が心は広く持てるから。

「狭い部屋」

6/4/2023, 12:55:51 PM

『箱庭の少年(はこにわのしょうねん)』

僕の親は異常だ。
執拗に僕に執着してくる。
ある日は「学校以外で外には出てはダメだ」と
ある日は「勉強以外してはいけないと」と
ある日は「友達は選びなさい」と

またある日は「お前が生きる意味は私達の為だ」と

ずっと作られた箱庭で暮らしてきた僕は、外の世界など知らぬまま。
ずっと作られた僕で居続けた。
ずっと勉強しつづけるのが当たり前だと思ってた。
ずっと親に管理されるのが当たり前だと思ってた。
ずっと親が優しいと思ってた。

でも、違った。
ある日友達からこんな本を貰った。

「箱庭の少年」

その本はある主人公が毒親に侵されていく。という話だった。
読めば読むほど主人公に共感していった。
もはや僕がモデルになった話なのではないかと思った。

その本の主人公は最後に箱庭から脱出することが出来た。
家出だ。
そうか、そうすればいいのか。

その本を持って僕はその夜、家出を決行した。
走って走って走って走って走って
ネオンの町並み、見知らぬ食べ物、見たことのない人々。
僕は興奮した。
これから僕はこんな世界で生きていけるのかと思うと心臓が張り裂けそうだった。

走り疲れた僕は、帰る場所もないので一旦近くのコンビニに入った。
冷たい空気が身体中に染み渡っていく。この感覚か。友達が言っていたのは。
暇なので近くにあった雑誌を手に取った。そこには知らない情報が沢山あった。
読めば読むほど面白く、すぐに最後のページにいってしまった。
すると、最後のページから何かが抜け落ちた。
不思議と気になり、拾い上げた。
すると、それは「箱庭の少年」の最後のページだった。

「__箱庭の少年は捕まりました。親は逃げ出すことも想定内だったのです。」
後ろから声が聞こえる。血が爆発する。頭がフラつく。
どうやら僕はまだ箱庭の中にいるみたいだ。


お題『狭い部屋』

※執拗(しつよう)=頑固に自分の考え、態度を譲らないこと。

6/4/2023, 12:54:33 PM

昔、広い部屋に憧れていて
両親が家を建てる時に
子供はわたしのみだった為
自分の部屋をかなり広くしてもらいました
そこで暮らしてみて思ったんですが
広いと落ち着かない
広すぎて寒い
部屋の掃除がめんどくさい
等の発見があり
ようやく学習した次第です
もうね
狭い部屋バンザイ

6/4/2023, 12:51:54 PM

テーマ:狭い部屋 #203

僕は朝起きると狭い部屋に閉じ込められていた。
昨日の夜のことはよく覚えていない。
酒を飲んでいたどこまではうっすら覚えているが、
酔い過ぎたようだ。
ここはどこだ?
今何時だ?
場合によったら会社に電話もしなきゃいけないな……。
なんて思いながら体を起こそうとしたが、
腕をなにかにガッチリ掴まれている。
いや、腕だけじゃない。
足もだ。
「やっと起きたか」
そこに図太い声が聞こえてくる。
「だ、誰だ」
「誰だとは失礼な。
 酔い潰れていたから保護してやったんだ」
そう言って顔をのぞかせたのは、
鍛えられた体をした強そうな男だった。
僕の細い体なんてすぐ折ってしまいそうだ。
そう考えただけでもゾッとして
「すみませんでした!」
すぐに謝った。
「でもどうしてこんなにガチガチに?」
「どうしてって……覚えていないのか?」
「は、はぁ……。全く……」
男は呆れた顔をして僕に言った。
「こうでもしないと犯罪起こしそうだったから」
「は??」
「お前…、知らないのか? 
 自分が酒に酔っ払うとどうなるか」
「は、はぁ……」
男は大きなため息をつくと
「まぁ、いい。気分が良くなったら出ていけばいい」
そう言って、僕を縛っていたものから開放する。
「す、すみません……。
 なんだかご迷惑をかけたようで……」
「いや、お前。昨日すごく落ち込んでいたから……。
 俺もたくさん酒を出しすぎちまった。悪かったな」
強そうな見た目をしているが案外優しい、
男に出会った。

6/4/2023, 12:49:46 PM

『bottleneck』

宮沢 碧


まただ、またここにいる。

私は今隘路に立たされている。
どの道に行ってもいい予感はしない。
どの道かは出口なのなかもしれない。
初めは希望の方が強く前に進む気力もあったはずなのに疲れてと繰り返しに一筋の光を信じる心さえ薄れてきた気がする。もはやここは出口などなく、いつまでも右か左かまっすぐかその選択肢の連綿なのではないか。

はじめは勢いで走ったり、泣きそうになって座って一日、怒りで走り出して、まだまだ!と走り出す時もあって、自分の中はこんなにも力強い感情があることに気づいた。

いずれの道も正解じゃない気がする。
戻るか?でも進まないことにはここに留まることになる。

ここは不思議な場所なのだ。お腹もすかなければ、トイレに行く必要もない。仕事をする必要もなければ、おそらく寝る必要もない場所なのだ。習性として寝てしまうが。疲れも肉体的なものじゃない。心の疲れなのだ。飴が食べたいと思えば降ってくることがある。すごい場所なのだ。

上には何かあるのだろう、全景を見てやるとそう思って壁をよじ登ろうとしたが、垂直に聳える壁に素手とスニーカーでは勝負にはならなかった。上があれば下だって、それも素手でどうにかなるものではなかった。

本当は、ここにいたっていいのかもしれない。
ずっとここに座っているのだっていいのかもしれない。

今がいつかもわからない。周りがどうなっているかもわからない。他に誰かいるかもわからない。

多分誰もいない。そう決めてしまうのは、きっと心が弱ってるからなのかもしれない。自分のためにも誰かと合流しよう、これは出る確率を上げる希望だ。誰か座り込んでいる人がいたら手助けして励まし合って一緒に出よう。素晴らしい、これは偽善感だ。ならば適応能力でここに住むか。心を分析する。

心はフラットに。焦るのは良くない。

また泣くか?もう散々泣いた。今日は歩きたい。


右か、左か、前に行くか、後ろに進むか。どちらも真っ白なはずなのに、仄暗い。どこまでいっても真っ白な壁。

『心をはかる場所』

そんな気さえした。心に向き合え。心の声を聞け。徹底的孤独に向き合う。

壁の白と対象的に自分の心は実に多様な色をしていた。
実際、自分の心がこんなに豊かな色をしていると初めて気づいた。絶望色、強い光に、薄暮。

いつ閉じ込められた。いつ、ここにいることに気づいた。気づいた時にはここにいた。よく考えたらこの部屋のことは知っていた。ここは無機質なのにどこか懐かしい。

落ち着け。心はフラットに。困った時こそそういうふうに自分に言い聞かせる。

まだここで座ってる気分じゃない。一生ここにいたい気分じゃない。それだけはわかってる。

ビジョンを持て。成功して、ここを出るビジョン。出たら何をしたいのか。

それは何度もさまざまなものを思い描いた。

そして、そのうち本当にそれはしたいことなのか、ここの圧倒的壁感に気圧されて萎んでいく。そんな程度の願いではダメだ。本当にそう言われてる気がした。

心をフラットに。

心を篩にかける。本当に望むものは何か。

本当に自分に向き合うとはこういうことなのかもしれない。

いつか出口に辿り着く。いつかも辿り着かない。
どちらかはわからない。

本当はわかってる、ここが本当はそうなんじゃないかと。ここが広くも狭く、複雑で単純な自分の心の中に似てる事。

ここは一生自分が向き合うところ。ここは自分の中の部屋。心の中の出来事なのだと。


気がつくと何度でも辿り着く、ここは心の部屋。


2023/06/04

お題 狭い部屋

6/4/2023, 12:49:42 PM

─狭い部屋─

この狭い部屋からは出られない。

何故なら、色々な存在に塞がれているから。

いくら変えようと頑張っても、何も変わらない。

変えられない。変化と言う言葉とは真逆の部屋。

きっと私は、『自分が本気で抜け出したい』と、

願うまで変えられない。抜け出せないだろう。

この“日常”と言う名前の部屋から。

変わらない繰り返されるこの部屋から。

いつか抜け出せる程、

『抜け出したい』と思えるようになりたい。

ただそれが、今願う私の願い事。


いつか私も、この日常から抜け出したいです。
でもこの日常を壊す勇気がないから、抜け出せないんですけど。
この何の変哲もない日常を壊す予定日はあるので、それまでに勇気がでますように。
壊すと言っても、私の中で日常を失くすだけですから。
以上、作者より

6/4/2023, 12:49:23 PM

SF。VRTuber(未来のVTuber)。300字小説。

世界は広く

 暗く狭い換気抗を登っていく。
「宇宙放射線は基準値を下回ってますが、地上は未踏のジャングルに覆われています。人類が地下に潜って数百年、未知のウイルスがいる可能性も……」
 相棒のカメラロボの警告を無視して進む。
「未踏、未知、結構。それを撮って流してこそのVRTuberだぜ」
 俺の自己顕示欲と冒険心を満たす為に。そして狭い部屋のような地下都市の、更に狭い部屋のベッドの上で寝ている俺の大事なファンに『世界は広い』と見せてやる為に。

「『amatsukaze』の行ってみよう! さて、今日の配信は予告通り地上のジャングルだ!」
 タブレットから賑々しい音楽と映像が流れる。覗き込む少年の目が輝き、頬が薔薇色に染まった。

お題「狭い部屋」

6/4/2023, 12:46:56 PM

狭い部屋

小さい頃から
自分の部屋はなかった

今でもない

ラジオ体操が
できればいいかな

書斎みたな部屋
憧れた

広いと逆に
落ち着かないかも

狭い部屋
瞑想にはいいかも

狭い部屋
彼、彼女といちゃつくには
いいかも(笑)

6/4/2023, 12:40:29 PM

広い部屋より狭い部屋の方が
落ち着く
まるでパズルのように・・
はまっていく家具
テレビの位置を決めたら、ソファーを
置いて、その前に机を置く
ある程度、置けたら完成
今日から、ここは私達のお城

6/4/2023, 12:40:27 PM

狭くて暗い部屋は無機質で、何の感情も湧かなくていい。部屋に散らかった紙や壊れた思い出の品も、暗ければ見えない。
唯一何も散乱していないベットの上で膝を抱え、俺はただ日々が過ぎるのを待っていた。
もう何もする気が起きなくて、いっそこのままこの部屋で最後を迎えればいいとさえ思った。
振り払われた手と無関心だとでも言うような冷たい瞳、そうなると昔から知っていたはずなのに諦めず縋りついていた自分がその瞬間、無意味とかした。
嗚呼、これから何をすればいいのだろう。
思えば人生の大半を俺は無駄にすごしたのではないだろうか。遠く輝く背中に手を伸ばし続ける日々は、滑稽でしか無かったのではないか。
ぐるぐると回る思考と負の感情が頭を埋めつくし、締め切られた部屋の空気を重くする。
真っ暗だな。何も見えない。もうここで一生を過ごそうか。そうだ。それがいい。そうすれば二度と傷つかずに済む。狭い部屋に一人膝を抱えて過ごし、傷つくこともなければ悲しむこともない。なんと幸せな終わり方だろう。
本格的にそう考え始めて、ならもう眠ってしまおう。そう思った時、
ガチャ
と、扉を開ける音が部屋に響いた。

「うっわ。何この部屋めちゃくちゃ散らかってんじゃん!」

ガコと何かと何かがぶつかる音がするが、光の眩しさで目が開けられない。突然聞こえてきた声に驚きながらも、入ってきた人物を確認しようと薄く目を開く。
視界に飛び込んできた人物に、俺は情けなくも唖然としてしまった。

「君の今の顔、鳩が豆鉄砲食らったってやつだね!」

思い切り歯を見せて笑う男は、後ろからの光も相まってまるで神か救世主のような登場の仕方だった。
その光の眩しさが目に痛くても、まじまじと彼の顔を見てしまう。
ずっと何も言わない俺に流石に気まずさを覚えたのか、男は首に手を当ててから

「げ、元気?」

とはにかんだ。元気なわけねぇだろ。と返そうとした喉は何日も閉じこもっていたためか掠れて声が出ず、それに対し彼は眉間に皺を寄せる。
散らばった紙や物をかき分けるでもなく、彼はズカズカと俺の狭い部屋を進みベットの前まで辿り着いた。
それ、結構値段する物なんだぞ。と床に落ちている踏まれた数々のものを思いながらも彼の顔をうかがう。
近くに来たことで暗くなり見えなくなった彼の顔が、なんとなく歪んでいる気がした。

「…あのさ、君こんな狭い部屋に閉じこもるタイプじゃないでしょ。」

この部屋に入るための鍵はどうしたとか、この狭い部屋はマンションの部屋の一室なんだぞとか。言いたかったことは多くあれど、彼の一言で俺は何も言えなくなってしまう。心配しているんだと声色からでもわかってしまったから。
ボスっとベッドに片膝を乗り上げた男は、這うように俺の近くまで来る。殴られるのだろうかと身体に力を入れたが、衝撃はいつまで待っても来ることはなく。代わりに散乱した部屋がはっきりと見えるようになった。

「君、遮光カーテン禁止ね。部屋くらすぎ。」

隣に片膝を立て座り、後ろの窓に背を預けた男の顔が呆れたように見える。
先程までの暗くてジメジメとした気持ちの悪い部屋が、光と窓を開け放ったことによって爽やかな空気に変わった。
部屋、狭くないな。他に思うとこあるだろと言われるかもしれないが、俺の第一の感想はそれだった。

「君の部屋が狭いわけないだろ。ここ月何万の部屋だと思ってんだ馬鹿。」

その場に立ち上がった男がふんっと鼻を鳴らして窓の外を眺める。ほら絶景だぞ。と言われるままに窓の外へと目を向けた。

「世界は広いんだ。こんな狭い部屋でジメジメカタツムリのように過ごすんだったら、僕のやりたいことリスト第一位の世界一周旅行にでも付き合ってもらうぞ。」

ベットで立つなんて行儀が悪い。よく見ればドアの外にはでかいスーツケースが横たわっていた。
キラキラと輝く太陽が、広くて暖かい青空が、光を反射するビルが、緑の木々が、目の前の友人が。全てが俺の気持ちを軽くするのに十分なものだった。

「ほら用意!飛行機取ったんだからな!」

ベットから降りて振り向き、律儀にも手を差しのべてくる友人に思う。馬鹿はお前だろ。と。そして、いつまで経っても適わねぇなと。
自然とこぼれた笑みに友人が固まっている間に、俺は差し出された手を力強く握った。


【狭い部屋】

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