睦月

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『狭い部屋』

錆びた鉄の扉
円形でくすんだ金属のノブを回す

重たそうに見えた扉は
意外に軽く開いた

そこからさらに
くるりと螺旋階段が続いている

ひんやりとして 気持ちいい

螺旋階段を降りていき
一番下までたどり着き
足をつくとそこは
唖然とするほど狭いスペースだった

薄暗い部屋の片隅に目をこらすと
床に膝を抱えてうずくまっている
小さな女の子が居た

声を掛けると
顔を上げてこちらを見た

その顔には
見覚えがあった

紛れもない
幼い頃の私だ

感情のない虚ろな目
顔色も青白く
まるで生気が感じられない

私は思わず
ぎゅっと抱きしめた

幼い頃の私もしがみついてきた

体の奥がきゅんとなり
胸がいっぱいになった

涙が止めどなく流れ

気付くと2人で
声を上げて泣いていた

私 ただ 抱きしめて欲しかった
私 ただ 寄り添って欲しかった
私 ただ ずっとこうして泣きたかった

狭い部屋の片隅
2人の私は
ただ 大声で泣き続けた

泣き疲れて 眠る
その瞬間まで

ただ
抱きあって
大声で泣き続けた

ただ…ただ…

6/4/2023, 1:12:41 PM