『箱庭の少年(はこにわのしょうねん)』
僕の親は異常だ。
執拗に僕に執着してくる。
ある日は「学校以外で外には出てはダメだ」と
ある日は「勉強以外してはいけないと」と
ある日は「友達は選びなさい」と
またある日は「お前が生きる意味は私達の為だ」と
ずっと作られた箱庭で暮らしてきた僕は、外の世界など知らぬまま。
ずっと作られた僕で居続けた。
ずっと勉強しつづけるのが当たり前だと思ってた。
ずっと親に管理されるのが当たり前だと思ってた。
ずっと親が優しいと思ってた。
でも、違った。
ある日友達からこんな本を貰った。
「箱庭の少年」
その本はある主人公が毒親に侵されていく。という話だった。
読めば読むほど主人公に共感していった。
もはや僕がモデルになった話なのではないかと思った。
その本の主人公は最後に箱庭から脱出することが出来た。
家出だ。
そうか、そうすればいいのか。
その本を持って僕はその夜、家出を決行した。
走って走って走って走って走って
ネオンの町並み、見知らぬ食べ物、見たことのない人々。
僕は興奮した。
これから僕はこんな世界で生きていけるのかと思うと心臓が張り裂けそうだった。
走り疲れた僕は、帰る場所もないので一旦近くのコンビニに入った。
冷たい空気が身体中に染み渡っていく。この感覚か。友達が言っていたのは。
暇なので近くにあった雑誌を手に取った。そこには知らない情報が沢山あった。
読めば読むほど面白く、すぐに最後のページにいってしまった。
すると、最後のページから何かが抜け落ちた。
不思議と気になり、拾い上げた。
すると、それは「箱庭の少年」の最後のページだった。
「__箱庭の少年は捕まりました。親は逃げ出すことも想定内だったのです。」
後ろから声が聞こえる。血が爆発する。頭がフラつく。
どうやら僕はまだ箱庭の中にいるみたいだ。
お題『狭い部屋』
※執拗(しつよう)=頑固に自分の考え、態度を譲らないこと。
6/4/2023, 12:55:51 PM