狼星

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テーマ:狭い部屋 #203

僕は朝起きると狭い部屋に閉じ込められていた。
昨日の夜のことはよく覚えていない。
酒を飲んでいたどこまではうっすら覚えているが、
酔い過ぎたようだ。
ここはどこだ?
今何時だ?
場合によったら会社に電話もしなきゃいけないな……。
なんて思いながら体を起こそうとしたが、
腕をなにかにガッチリ掴まれている。
いや、腕だけじゃない。
足もだ。
「やっと起きたか」
そこに図太い声が聞こえてくる。
「だ、誰だ」
「誰だとは失礼な。
 酔い潰れていたから保護してやったんだ」
そう言って顔をのぞかせたのは、
鍛えられた体をした強そうな男だった。
僕の細い体なんてすぐ折ってしまいそうだ。
そう考えただけでもゾッとして
「すみませんでした!」
すぐに謝った。
「でもどうしてこんなにガチガチに?」
「どうしてって……覚えていないのか?」
「は、はぁ……。全く……」
男は呆れた顔をして僕に言った。
「こうでもしないと犯罪起こしそうだったから」
「は??」
「お前…、知らないのか? 
 自分が酒に酔っ払うとどうなるか」
「は、はぁ……」
男は大きなため息をつくと
「まぁ、いい。気分が良くなったら出ていけばいい」
そう言って、僕を縛っていたものから開放する。
「す、すみません……。
 なんだかご迷惑をかけたようで……」
「いや、お前。昨日すごく落ち込んでいたから……。
 俺もたくさん酒を出しすぎちまった。悪かったな」
強そうな見た目をしているが案外優しい、
男に出会った。

6/4/2023, 12:51:54 PM