『涙の理由』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
唐突に、前触れもなく流れる涙の理由が分かったなら、あたしたちはもっと幸せになれたかもしれない。
でもそれはきっと寂しくつまらないことだと、そう思うのは、あたしがここを漂っているせいだろうか。
「涙が涙腺から出てくる仕組み、その涙が出た経緯、そもそも涙が目から出ることによる体への効果……」
まぁ、まぁ。ひねくれて考えれば、今回のお題も、誤解曲解多々可能よな。某所在住物書きはスマホを凝視しながら言った。
画面にはソーシャルゲームのガチャ画面と、「石が足りません」の無慈悲。
約250連であった。すり抜けであった。
「大丈夫」
まだ泣く痛みではない。物書きは無理矢理笑った。
「数年前溶かした有償石より傷は浅い」
――――――
私の職場に、そこそこ長い付き合いの先輩がいて、その先輩はなかなかに低糖質低塩分料理が上手。
食材とか電気代とかを、半々想定で払ったり持ってったりすると、ヘルシーなわりにボリューミーな、ランチだのディナーだのをシェアしてくれる。
いつから始まったか、どうやって始まったかは、不思議とよく覚えてる。
コロナ禍直前。先輩の、個チャのメッセージだ。
『飯を作り過ぎた。食いに来ないか』
当時私は職場に来たばっかりの1年生。
転職先が、ブラックに限りなく近いグレーな職場だって少しずつ気付き始めて、
私も正規雇用になったらノルマ課せられるんだ、
私もあと数ヶ月したら、売りたくない商品無理矢理売らなきゃいけなくなるんだ、
って、ドチャクソに、疲れて、参ってる頃。
副業禁止のくせに、非正規は安月給。
アパートの家賃とか電気代とか、その他諸々でキッツキツだったから、
後先考えないで、食費とガス代節約の目的で、先輩に教えてもらった住所の部屋を訪ねた。
それが最初のシェアごはんだった。
「ウチの仕事は、人間関係はつらいか」
たしか、一番最初のメニューはチーズリゾット。
お米の代わりにオートミール、牛乳とかコンソメとかの代わりにクリームポタージュの粉末スープを使った、簡単に作れる低糖質レシピだ。
「お前の代わりも、勿論私の代わりも、ウチの職場には大勢いる。部下を消耗品程度にしか思っていない上司は事実として居るし、使い潰されて病んで辞めていく新人など、何人も見てきた」
味も香りも、心の疲労のせいで覚えてない。付け合せも何かあった気がするけど、記憶にない。
「過剰で長いストレスは、本当に、科学的な事実として、頭にも体にもすごく悪い。
無理だと思ったら、長居をするな。遠くへ逃げて、次を探せ。心の不調が体に出てくる前に」
ただ、
参っちゃってる私を見通した先輩の、言葉の平坦だけど優しい透過性に、ちょっと、興味を持ったのは確かだった。
「私が言いたいのはそれだけだ。……悪かったな。突然チャットで呼びつけて、美味くもない自炊飯に付き合わせて」
で、リゾットをスプーンですくって、とろーり溶けるチーズを眺めて、口に入れて、
美味しい、あったかい、
これをわざわざ、私のために作ってくれたんだ
って思った途端、突然、ぶわって涙が出てきて。
「席を外した方が良いか?それとも、ここでこのまま、私が一緒に飯を食っても構わない?」
ボロボロ泣いた理由は、正直よく分かんなかった。
「ここに居て」
これが、先輩とのシェアランチだの、シェアディナーだのの始まり。最初の最初。
「また、ごはん食べに来ても、いい?」
それから数年、悩み相談にせよ生活費節約にせよ、何回も何回も。
先輩の部屋に現金だの食材だの持ち込んで、低糖質低塩分メニューを作ってもらっては、一緒に食べてる。
「次回からは100円から500円程度、材料費の半額分、別途負担してもらうが」
その先輩がどうも、ちょっとした勘でしかないけど、近々東京を離れて、雪国の田舎に帰っちゃう、かもしれなかった。
「それでも良いのであれば。ご自由に」
原因は、先輩に最近やたら粘着してくる、8年前先輩の心をズッタズタに壊した元恋人。
いつの世も、ヨリ戻したい縁切りたいの色恋沙汰って、唐突だし、理不尽だと思う。
朝起きたらいつも泣いている
目が腫れているから学校に行く時はめんどくさい
なんで泣いているんだろう
夢で泣いていたんだと思うけど
いつも夢を覚えていない
でもこれだけはわかる
誰かに会いたい
その誰かはわからないけど
会いたい
なぜだ
思い出せ
思い出せ
なぜか今日は涙が出なかった
〈涙の理由〉
弱さなんて見せたくない
それでも涙が零れることがある
涙の理由は聞かないで
恥ずいから
悔しいから
黙る私を許して
いつかちゃんと話せる日まで待っていて
涙の理由。今日なにか忘れてるなと思ったら日記を書くの忘れた。
で涙の理由ね。なんかそういう歌があったな。涙の数だけ強くなれる、って理由じゃなくて数だった。
年を取るとどうでもいいことで涙が出るようになるんだよな。涙腺が脆くなってるってやつだ。単純に肉体が劣化している。年を取るって悲しいね。
ただ肉体面だけじゃなくて精神面でも脆くなってるんだよな。労働に老後の不安。もう生きてるだけで涙が出ますよ。
そんな生きてるだけで死にたくなる状況でも泣かずに生きていかないといけない。辛いけど耐えないとな、なんて言ってると鬱になりそう。
適当に感情を発散させることは大事だよね。泣きたいときは泣いていいってのは誰のセリフだったか。
君が泣いていた。理由を教えてと言っても、泣きじゃくるばかりで教えてはくれなかった。
自分が不甲斐ないとか、頼りないとか思わないで、泣いている君も綺麗だなと思う自分は多分ずるい性格をしている。
だって分かりようがないじゃないか、お互い違う人間なんだから。
……って考え方も、大分ずるいかな。
涙の理由
これを読んでいる皆さんへ。
こんにちは。 または、 こんばんは。
Rです。
まぁ、今回も僕の事?について話していきたいなと思います。
また長くなるかもしれませんし、誤字脱字が目立つかもしれませんが、よろしくお願いします。
僕は趣味で作曲しています。
ですが、上手くいきません笑
まぁそうですですよね、初心者ですし、言葉も上手く表せられない。
ですが、やっと自分らしい曲が出来上がりました。
誰に聞かせるようなものでは無いですし、自分で納得が出来るまでやり直したりしてます笑
とある日の朝...
朝目覚めて窓を開けました。
朝日で目を細めていたら、心地良い秋風と共に秋の匂いが鼻にかすめました。
ふと部屋に人の気配がしましたので、振り返ると男の子が椅子に座っていました。
僕は驚きました。
ですが、どことなく昔の僕に似ているなと思っていました。
男の子が僕に「ねぇ、あれ聞かせて?」と指を指していました。
なんの事だろうと男の子が指している方を見ましたら、1つのレコードでした。
それは先程申した僕が作った曲が刻まれているものです。
僕は男の子に問いました。
「レコードなんて今時の子が聞くものなの?」
男の子は言いました。
「僕は前から聞いていたよ?」
やっぱり僕に似ています。僕も昔からレコードで聞くのが好きでした。なんというかレトロな感じが好きだったので。
僕は男の子の願いを聞きました。
少し恥ずかしいなと思いながら、レコードを再生しました。
レコードは僕が、紡いだ音を優しく奏で始めました。
男の子は目を閉じ僕が紡いだ音に耳を澄ましていた。
レコードは僕が紡いだ音色を奏終わった時、男の子は口を開いた。
「めっちゃ良い!これいつ出すの?!」
男の子は興奮気味に僕に問いかけた。
「残念ながらそれは出さないよ。」
男の子はムスッと頬を膨らませた。
「めっちゃいいのに...」
僕は男の子に言いました。
「この曲が良いって言ってくれて。良かったらもう一個のレコードにとってあげようか?」
僕の問に男の子は答えた。
「大丈夫!このレコードはお兄さんの大切な人にあげて?」
僕が困惑していると男の子は続けて言った。
「もうそろそろお家に帰らないと!」
と言い、男の子は部屋の扉を開け「じゃあね。未来の僕。」と言い扉の向こうへ行ってしまった。
僕はすぐに後を追ったが、男の子はそこにいなかった。
僕は部屋に戻ってレコードをかけながら電話をした。
「あ。もしもし母さん?今元気にしてる?」
レコードは僕が紡いで作った曲を静かに流し続けた。
すいません💦
また長くなってしまいました。
ここまで読んでいただき有難うございます。
また読んで頂けると、作者もRも喜びます。
ではまたの機会に会いましょう。
※この物語はフィクションです
涙の理由
教室の隅で一人泣いている彼女。涙の理由は、このクラスの全員が知っている。彼女は一ヶ月前からいじめられている。今日は靴がないみたいだ。学校のスリッパを履いている。いじめのターゲットになったら、もう誰も止められない。担任も多分、わかっているだろう。
早く親に言って、不登校になるか転校した方がいい。でないと傷が深くなるばかりだ。
あの子が学校に来なくなったら、次のターゲットは私だろうか?
私がターゲットになったら、やる事は一つ。私に憑いている死神に、リーダー格の彼女を消してもらう。それで終わる。罪悪感?そんなものない。私が命令して、死神が殺す。これで十人目だ。
少しいじめられることを期待もしている。正当な理由なく人殺しはしたくない。
さ〜待ってるよ。
◯◯ちゃん、、、。
遠い空を見上げて、なぜかわからないけれど、涙が溢れた。
どうしてだろう。
何もなかった、この感情に理由なんてもの、僕には。
だからこそうまく行かなかった。
僕ら二人を繋いだのは、あの日突然湧き上がってしまった感情だけだったんだ。
スマートフォンの画面には、大好きな人と並んで笑顔を見せる新郎の姿。
その後に届く、通知音。
「また、三人で遊びたいよ」
そりゃそうだろう、だって。
遠いあの夏の日を思い出し、僕は胸が締め付けられた。
三人で最後に遊んだのは、いつだったか……。
涙の理由
【逆さに読んでもok】
ざあざあ、ざあざあ。
目の前を落ちていく、滝のような水の流れを眺める。冷たい風に乗って弾けた飛沫が顔に飛んでくる。もはや拭うのも払うのも、避けることすら面倒で、胡座をかいて腕を組んで薄目になりながら待つ。
ざあざあ、ざあざあ。
時折天を仰いでみるけれど、頭上は舞い上がる飛沫のせいで白く煙っていて何も見えない。下の景色も似たようなものだから、結局正面を見るしかない。
まったく、いつまで待てばいいんだ。
ざあざあ、さあさあ────ぴたり。
「お、やっと泣き止んだか」
わざとらしく肩をすくめて、世話が焼けるぜなどと思ってもいない言葉を吐く。すると靄の向こうから、銀色の髪と翡翠の着物を靡かせて竜神の娘がやって来た。綿雲に乗った彼女は真っ黒な目を潤ませたまま、嗚咽をこぼしている。
「今年はまたよく泣くなぁ。人間どもがきゃんきゃん吠えてるぜ」
「だって」
「あー待て待て。泣くなよ。たまには御天道様にも仕事させねぇとバランスが崩れちまうからな」
しゃくりあげる小さい鼻を指先でつまめば、これ以上は下がらないくらいに眉が下がる。長い袖に手を隠して、さらに顔半分を隠してしまえば目しか見えなくなった。
「んで? 何をそんなに泣いてんだよ」
「昨日ね、水不足で困ってるって聞いて悲しくなって」
「うん」
「役に立ちたかったの。でも、降ってほしかった場所じゃなかったみたいで、でも時間差で落ちていっちゃうから止められなくて、それで、またやっちゃったって……ごめんなさい」
ついに目すら見えなくなった。顔を伏せて微かに震えているのは、泣くのを我慢しているせいだろう。
竜神一族は総じて涙もろい。些細なことで感動するし、しょうもないことで地の底まで落ち込むし、しょっちゅう目頭を押さえて涙を堪えている。
一族の長ともなればコントロールできるらしいが、まだまだ幼い娘には無理な話。おまけに、かなりのお人好しで歴代随一の降水量を誇る。人間が言うところの“変な天気”をもたらしているのは彼女で間違いない。
「やっちまったもんはしょうがねぇだろ。つうか、運び屋の風太郎はどこに行ったんだよ。平等に届けるのがあいつの仕事だろ」
「『こんな重いもの運べるか!』って、どこかに行っちゃった……。今は台風を作るのが楽しくて仕方ないみたい」
「あの野郎」
風神一族の問題児──風太郎は、よその国から流れてきた風にちょっかいをかける悪趣味をもっている。
あの一族は気まぐれで有名だから半分諦めてはいるが、そんなことしてる暇があるならついでに運んでくれればいいのにな。気の利かねえ奴め。
少し落ち着いてきたらしい彼女が顔を上げて、今度は俺に対して申し訳無さそうな顔をする。
「ごめんね。私のせいでライちゃんも怖がられちゃうね」
「いや俺様は雷神様だからな? 怖がらせてなんぼなんだよ」
「でも、私が泣けば泣くほど打ち鳴らす太鼓が増えるでしょ?」
「そりゃあな……でもほら、別にいつも鳴らすわけじゃねえし! どっかの問題児と違って、俺様は予定通りに仕事するしな!」
事実だから肯定しようとしただけなのに、じわりと潤んでいく目を見て慌てて取り繕う。こっちの状況を慮る必要なんてないのに、優しい彼女は俺のことを心配して憂いてくれる。
「そんな心配すんなって。やってるうちにコツが掴めてくるさ」
慰めではなく、彼女なら近いうちに完璧な仕事ができるようになると確信している。そう信じている俺の言葉に、彼女は力なく笑った。
「どうだろう……あのね、私、一族の皆に『出来損ない』って言われてるの。せめて降水量くらい調整できないのかって」
「できたら苦労しねえよって言い返せ」
「迷惑かけてばっかりで、失敗ばっかりで……私、ライちゃんにも見限られたらどうしむ!?」
めそめそと後ろ向きなことを垂れ流してる顎を鷲掴む。両側から押された柔らかい頬が唇を押し上げて、なんとも情けない顔になった。その上、驚いて目を丸くしているもんだから、まあ可笑しくて吹き出してしまった。
「ばーか。おまえに叩かれたところで痛くも痒くもねえよ」
見様見真似の拳を振り上げてぽこすか叩いてくるけど、元が優しいのに暴力なんてできるわけがない。真っ赤な顔して抵抗する彼女に、馬鹿げた質問の答えを返す。
「安心しろよ。どんな理由で泣いてようが、俺様はずっと隣にいてやっから。おまえこそ、ゴロゴロうるさくてやだーとか言うなよ」
雨と雷なんてお似合いだろうが。けらけらと笑ってやれば、黒目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちていく。
あーあ、また雨が降っちまうなあ。
暗い部屋で一人佇むキミの涙のワケは、教えてくれなかった。
悲しいことがあったんだろうけども、頼ってくれないのだろうか。僕は一人ため息をついた。
今言えないのならまだいい。
いつか、笑い話になった時でいいから、キミの涙のわけを教えてくれないだろうか。
涙の理由はいっぱいあれど、どうせ流すなら嬉しい涙の方がいい。
と、目薬を差しながら思う。
この世には
簡単に話せることと
そうでないことがある。
そうでないものは心の内に秘めて
鎖と鍵をかけている。
その気持ちを伝えようと試みると
鎖が心を締め付けてきつく痛い。
僕は"まだ言うべきでない"からきつく痛むのかと思ってた。
機会を伺えば伺う程
鎖と鍵が厳重に頑丈になっていくのを感じる。
本音を話せば涙が出てくる。
そこそこのプライドはある僕。
人前では上手く泣けないし
泣くのは弱い自分を見せるようで嫌だった。
高校入学
高校生活では絶対に人前では泣かない
強くなると決めた。
それは1ヶ月で終わりを迎えた。
僕は上手く話せない。
上手く伝えられない。
伝えられなければ
僕が苦しいことを抜け出す道はない。
閉ざされた暗い塀の中
僕の心を強くしここから抜け出す術を
誰かに教えて欲しい。
僕の涙の理由。
はらはらと舞い落ちる花、孤独を紛らわせる花達。
綺麗な花だね。そう言ってくれた君の瞳は美しく、生き生きとしていた。
あれ。何かが熱く溢れている。なんでだろう、生き生きとしている君を見ていると、涙が溢れてくる。
温もり
「進めておけ。いいな?」
「うん、分かった」
私の部屋に訪れ、ヴァシリーは次の任務の資料を渡してから言葉少なにそう言って立ち去った。
机に向かい、資料に目を通す。内容は数日後に、西の国にある背教者たちの拠点一つを殲滅するというものだった。その指揮官にヴァシリーの名前があった。
(そういえば、ヴァシリーとの付き合いは十年くらいになるんだっけ……)
ふと、私は十年前の出来事を思い出す。
私の故郷は、教会と対立している背教者たちによって滅ぼされた。両親は目の前で殺され、私も同様に殺されかけていた。
地に倒れ、抵抗する私に馬乗りになった男が高くナイフを振り翳した時だった。
「邪魔だ」
瞬間、男の胸が細剣に貫かれる。男はナイフを落とし、細剣が引き抜かれるとその身体が横に倒れる。返り血が全身に飛び散り、呆然とする私。
「娘、名は?」
「……ミル」
「そうか」
その人は無表情で剣をしまうと、私のことを抱き上げた。そうして、間近で目を覗き込まれる。その青い瞳は綺麗だったけど、何処までも冷たくて私のことは見えていないような気がした。
私のことを値踏みするように見つめた後、その人は小さく口角をあげた。そうして彼は近くにいた騎士に声をかける。
「先に戻る。後は片付けておけ」
「はっ」
そして、私を抱えたまま彼は歩き出す。殺された両親にお別れも言えないまま。
「ミル。お前は今日から俺が面倒を見てやろう」
「……」
「どうして黙る?嬉しくないのか?」
「保護するなら、別に教会に預けるだけでいいはず。なのに、何であなたが私の面倒を見るの?」
「ほう。俺がただの聖職者だとは思わんのだな」
楽しげに笑うその人を私は静かに見つめる。視線に気づいたのか、青い瞳がこちらを見た。
「思わない。それなら、こうも簡単に人を殺すはずが無いから。仮に聖職者だったとしても、あなたはきっと神様なんて信じていないでしょう?」
すると、それまで笑っていた彼はふっと笑みを消した。そうして、私を抱きかかえる腕に力がこもり、私は彼の胸に頭を密着させる形になる。
「随分と強気だな、ミル。親が殺されて、悲しくないわけでもあるまいに。何故、泣かない?」
「……多分、心が追いついてないから。本当にお父さんとお母さんは死んじゃったんだって……まだ、実感が無いから」
「だが、お前は親を殺したあの男に殺されかけていた」
どくり、と心臓が大きく跳ねる。目の奥が急に熱くなって視界が滲む。今になって死の恐怖がすぐそこにあったことを実感したから。
「……」
「ミル。俺は決して優しくは無い。このような戦いの場を好み、気の向くままに行動する。お前を拾ったのもただの気分だ」
「それでも」
私は涙声になりながら、訴えた。
「あなたは私の命の恩人。だから、着いていく」
その後にヴァシリーから手当を受け、彼が騎士団の中では幹部にあたる執行官の名を持っていることを知るのはすぐだった。
それからというもの、彼の下で武器の扱いを学び、私に合う得物を見繕ってくれた。何やかんやで彼は面倒見の良い人では無いかと思ってしまうのは、私だけかもしれないけど。
(……あの時は本当に気紛れだったのかもしれないけど、本当に感謝しているんだ)
資料に最後まで目を通し、ページを閉じる。そうしてヴァシリーに任された任務に向かうために支度をする。
少しでも彼の役に立てるように。救われた恩返しをするために。
言えない、言える訳がない
だって、会えなくなるのが寂しいから泣いてるなんて知られたら恥ずかしさで真っ赤になりそう
[あれ?泣いてるもしかして悲しい?]
気づかれた、、、
引っ越しなんて聞いてない、、
なんでせっかく一緒に進学できたのに
一緒に先生になれると思ったのに
[最後まで聞けよ、お別れじゃない]
[え?お別れしないの?]
キョトンとなった安心
[うん、大学生だから、親元を離れて、一人暮らししたいって親に頼み込んだら条件付きだけど許可もらった。]
さっきまでの不安と悲しみ返してよ
本気で不安になったじゃん
[それ本当なの?]
[うん、本当は大学でのサプライズにしたかったんだけど泣いちゃったからね〜]
悔しいな〜
[何騙されてるの?嘘泣きだよ〜]
やり返しい気持ちがあったから
[ひど〜じゃあ悲しくなかったんだ]
悲しくないなんて言ったら嘘になるけど
[ショックだったけど泣くまではね〜]
[大学行っても仲良くしようね、]
[おう!約束な]
[うん約束ね]
お題[涙の理由]
No.58
涙の理由
火曜の夜、仕事でへとへとになって一人暮らしの部屋に帰った。夕食を作る気力も食欲もなくて、座り込んでクッションを抱えているとインターフォンが鳴った。
誰とも会いたくない。無視しているとまた鳴った。続いてまた。
「気持ち悪いな……、今ごろ誰よ」
恐る恐るモニター画面を覗くと、彼だった。
「何で今日来るの!?」
約束なんてしていない。スマホは電源を切っていた。帰ってと言いかけた時、ドアの外で歌うような彼の声がする。
「居るんでしょ〜、開けてよ。お土産あるよ」
止めて恥ずかしい! 零れる涙も引っ込んだ。タオルを引っ掴んでごしごしと顔を拭って、急いでドアを開けた。
「大きな声出さないでっ!」
顔を背けながら不機嫌に言うと、のんびりした声で彼が言う。
「だって返事なかったから〜。目、赤いね?」
「た、玉ねぎ切ってたからっ」
しまった。もうちょっとマシな言い訳はなかったのか。だけど本当の涙の理由なんて言いたくない。
私が玄関で体をこわばらせていると、彼はさっさと靴を脱ぎ、私の横をすり抜けるようにして部屋に上がり込んだ。
「ちょっと待ってよ!」
「ほら、これ好きでしょ」
私の目の前に彼は薄茶色の箱を差し出した。
「それは……」
私の大好きなスフレチーズケーキのホールが入った箱だった。思わずじっと見つめていると、彼はその箱を軽く揺らした。
「ハロウィンバージョンだって」
私は久しぶりの好物の誘惑に負けて、彼を追い返せなくなった。
このチーズケーキの優しい味にはコーヒーよりも紅茶が合う。
熱い紅茶を淹れている間に、彼がホールケーキをカットしてくれた。たっぷり大きくカットした方を私によこし、彼はその半分ほどの大きさのを自分の分にする。
「こんなに食べられないよ……」
「大丈夫、今日ほとんど食べてないんだろ」
同じプロジェクト仲間の彼にはお見通しか。それ以上抵抗する気力もなくなり、小さなテーブルで向かい合って、チーズケーキをもそもそ食べ始める。口に含んだケーキはじゅわっとほどけて溶けていく。しっとりふわふわで甘さ控えめのチーズケーキは空っぽの胃に染み込むようで、とてもとても美味しかった。
半分くらい夢中で食べて一息つくと、彼は言った。
「俺はあの案も悪くなかったと思うよ。でもチーフは要求が高い人だから」
「……慰めなんか、いらない。やるわよ」
「そうだね。彼を唸らしてやりな」
彼はケーキを再び食べ始め、私も黙って残りのケーキに取りかかった。私が食べ終わったのを見届けると彼はさっと立ち上がり、
「じゃ、終電あるうちに帰るわ。また明日な」
「ん……」
喉の奥がつっかえたみたいになって、ありがとうの言葉が出ない。子どもみたいだ。彼はそんな私の頭をぽんぽんと軽く叩いてから帰って行った。
私は玄関ドアの鍵を閉めに行き、そこにしばらく突っ立っていた後、部屋に戻り、急いでベランダの窓を開けた。夜の空気が熱っぽい顔に冷たい。サンダルを縺れるように履き、手摺りに駆け寄って外を見下ろした。
街灯の下、遠ざかっていく彼の後ろ姿が見えた。じわりと温かい涙が滲んで彼の姿がぼやける。手のひらで目元を擦る。
背が高くてほっそりした彼のことを、私は時々冗談で足長おじさんと呼んでいた。彼はおじさんなんて、と嫌がっているけど、ぴったりだと思う。その後ろ姿に呼びかける。
「土曜日はグラタン作るからね」
グラタンは彼の好物だから。一緒に食べたらもっと美味しくなるから。
私の声は思ったより大きく夜の町に響いた。彼は驚いたように立ち止まって振り向くと、ベランダの私を見つけて大きく手を振った。
よく見えないけれど、きっと顔いっぱいで笑ってくれているんだろう。私の足長おじさんはそういう人だ。
「ありがとう」
私はさっき言えなかった言葉をそっと呟いて、大きく手を振り返した。
#53
お題
『 涙の理由 』
なんでお前が泣くんだよ
別れを告げたのはそっちだろ??
泣きたいのはこっちなんだ
なんで?俺お前に尽くしたよな??
結婚の約束だってしたじゃないか
あぁ、この日が来てしまった
あなたは何も悪くないよ
ごめんね、理由は言えないの、
言ってしまったら全てがこぼれ落ちそうで...
泣いたらいけないのに、こぼれ出てくるのは何故なの?
怒るわよね...急にこんなこと言われても
でもごめんね...余命半年だから
どうして理由を言わないんだ
なんでだよ、俺じゃダメだったのか......??
じゃあ、なぜ泣く
#涙の理由
はじめに理由のある涙は
下心…
真の涙には
あとから理由がつくもの…
『END ROLL』
私が泣いている意味なんて
わからないのでしょう?
優しい貴方が
私にかける言葉は
優しすぎて残酷なの
私が泣いている意味なんて
わからないのでしょう?
優しい貴方を
傷つける言葉を
言ってしまったのは私のせい
私が泣いている意味なんて
わからないのでしょう?
大好きな優しい貴方を
私の過去の言葉が
小指の赤い糸を断ってしまったの