『海へ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『海へ』
柔らかい月の光が辺りを照らす。
ざあざあと音を立てながら浜辺に押し寄せる波に、ふと関心に向いた。かすかに逡巡を巡らせてから海へ足を進める。
熱帯夜にふさわしい生ぬるい海水が足にまとわりついた。
思い浮かべるのはかつて隣に立っていた人。
今はもういない、あなたのこと。
お題「海へ」(雑記)
だから海は見るものであって。と、とりあえず書いてしまうぐらいには、海って泳ぐ場所の印象が強いのか。
数年連続でコミケに行っていたから海は見るものだと思っている……って前のお題にも書いたな。違う話にしよう。前のお題「夜の海」(その時も途中投稿のままだった気がするけど)で書かなかった内容でも。
ドラクエの作曲家の人が「日本に三拍子の歌はなかったけど、唯一海の歌だけは三拍子だから、ドラクエも海の歌は三拍子にした」って文章をどこかで読んで、海は三拍子の印象がある。
ドラクエはシリーズ一作も知らない。呪文はパルプンテ以外ほぼ知らない。ベホイミって呪文は知っているけど効果は分からない。パルプンテは今は亡き2ちゃんねるのまとめで「嫁に愛してると言ってみる」をよく読んでいて(他は鬼女板も割とよく読んだ気がする。友やめはまとめサイトで当時挙がっていた全作読んだのかな?)そのスレで「愛してる」を言った時の反応(=効果)が分からないという理由からパルプンテと呼ばれていて覚えた。
不倫されていて離婚を決めたり、無反応だったり照れたり辛辣だったりとなかなかバラエティに富んでいた記憶。
三拍子といえばマリみて第一作目からワルツの印象があるんだけどまあそれはさておいて。
童謡?の「海は広いな 大きいな」で始まるあの歌は戦時中に海外への憧れを持たせるのを目的に作られたって話を思い出す。
低学年向けに作られていたのが幸いして戦争色は割と薄く、戦後は戦争色の濃い四番五番が削除されて、戦争とはあまり関係のない三番までが残されたらしい。
だから「行ってみたいな よその国」で終わる。
海へ、というとタビネズミだったか、ハーメルンの笛吹きよろしく集団自殺するネズミがいた覚えがある。
個体数が増えすぎるとそういう反応をするらしい。
他の海……アニメ「七つの海のティコ」の話は書いたっけ?
あらいぐまラスカルやアルプスの少女ハイジと同じ世界名作劇場シリーズなのに、なぜか名作劇場シリーズの一作なのに、そのシリーズ名に反してオリジナル脚本な上に、題名にもなっている主役のティコ(シャチ)が途中で死ぬとんでもない話だったらしい。
私が小学校四年の時に放送されていたんだけど、歌以外何一つ覚えていない。歌を覚えているのは、カセットテープに録音して車の中で聞いていたからに他ならない。
一応後年にアニメの一話を絵本様にした本は買って読んだんだけど内容忘れた!笑
あとは「不思議の海のナディア」も書いてなかったっけ書いたっけ。いや書いた気がする。「海底二万海里」とかいう有名なSF小説を元に大幅な改変を加えたアニメ。NHKが版権を持っているんだけど、制作は今は亡きガイナックス。
映画を中国か韓国に外注したら完成度が低すぎて、仕方なく借金して作り直したんだけど、その借金はエヴァの時にやっと返したらしい。
こちらは全く話を知らない。主人公ナディアと「魔女の宅急便」のトンボみたいな造形の主人公の話のはず。(名前忘れた)
まあガイナックスの庵野は手塚プロの後ジブリにいたからね。(巨神兵の場面を手掛けた事で知られる)
一度見てみたい……と思いつつそのまま。こちらも同じ理由で歌だけは覚えている。
海……シティーハンターの海原神を出すのはさすがに強引か。エンジェル・ダストは確か海の上(客船)の話だったけど。
まだ海坊主の方がマシか。
ただこれを書くと海のトリトンを思い出すけど。あれは……敵だっけ? 何か出て来た気がする。
そういえば今年初め、南港で三井商船ミュージアムという期間限定のイベントが開催されていた。
規模としては小さかったんだけど、商船シミュレーターで遊べたのは面白かった。タンカーやらモーターボートやらから有名な客船のさんふらわあ号を選んだんだけど、操縦席からは外観が見えないという当たり前の事実に操舵開始後に気づいて残念だった。モーターボードとか小型船舶の方が小回りが効いて面白いらしい。
アンケートがあったし、そのうち常設展ができるはず……はず。
何より小説のネタに豪華客船の内部案内が見られたのが一番良かった。笑。
神戸海洋博物館も行ったな。内裏飾りの創作雛人形を目当てに。神戸ポートタワーの真下にあるんだけど、当時は改修工事中だった。
錨が巨大でびっくりした。旗の意味を知ったのはどこだっけ? 神戸海洋博物館ではなかった気がする……。
どこかの美術館だったかなぁ。国際基準で旗の色とかが決まっているって紹介していて、一覧を調べた記憶だけはあるんだけど。手拭いか何かに載っているって言ってて、じゃあ買えば良かったと思った思い出。MOSAICとかそんな感じの施設だったかなぁ。忘れた!
結論。海は見るもの。
海へ
子供の頃、嫌な事やケンカした後はいつも海に行っていた。海は良い。怒りや悩みが消えて穏やかな気持ちになる。
ただそのせいで、次の日謝りに言ったら気持ち悪がられてたな、、、。ただ悪くはなかった。清々しい気分だった。
今でも時々海に行きたいと思う。昔のようには行かないが広い海を見ていると自分の悩み事が些細な事のように感じられるんだ。
ミーンミンミンミンミン
「そうだ!!海へ行こう!!」
「急すぎません?」
「急げば直通!!さあ私らの夏は始まったばかりだ!」
「テンション高いて……」
ざーーーざーーー
じゃぽーーん
「海だーーーーーー!!」
「海だね」
「海なんだからもっとはしゃごうよーー
おりゃ!水かけてやるー」
「冷た、」
「やめてー無言で水かけてこないでー笑」
「楽しい」
「でしょー!?海って楽しいんだよ」
そよそよ
「海風が気持ちいいね」
「うん、でも水着持ってくれば良かったーー
めっちゃ濡れたもん着替えあるから良いけどー」
「ねぇ見て、海の家の服」
「うわ、あれはっーーーー着るか!」
「あはっ、似合ってる最高」
「どう?ちゃんとファインディング・ニモ?」
「おけい、ニモニモ」
「ねえこれめっちゃ暑いやばい汗かいてきた」
「バスの中でもそれでいてよー笑」
「いやだーーーーーー」
「今日楽しかった?」
「そこそこ」
「そこそこですか。」
「今日楽しかった?」
「とても」
「とてもですか。」
「「海最高」」
「そうですか、」
「そうですね、」
「笑み、こぼれてますよ?」
「あら、あなたも同じ顔ですね」
ふふふって笑いあって夕空を見る
「綺麗だね」
「そこそこね」
「また海行こうね」
「ね」
「また来年も」
海へ
今日のお題。海へ。
「…空、綺麗だね」
「うん」
「もうすぐ海、着くね」
「そうだね」
もう、怖くない。
だって、僕らは一人じゃないから。
―SEKAI NO OWARI “RPG”より
海へ
海は苦手だ
こどもの頃 溺れかけ
足をクラゲに傷つけられた
大海原に出れば 頼れるものは何もない
息を吸う為に必死に動かすつま先の下の先は
光も届かない深海が広がっている
人間には生身で到達できない世界とを行き来し
100年以上の歳月を生きる鯨の目には
神秘性と 底しれない恐怖を感じる
それでもたまに 夜の海に行きたくなるのは
ここから生まれたという本能なのか
折角、海へ来たのにやることがない
完全に目的を見失ってしまった
ていうか忘れてきたのである
海パンを
家に
今朝、歯磨きしていた時
ハッと気づいたのです
あれ?そういえば
俺、もう何年も海に行っていないじゃん、て
思い立ったが吉日で
タンスに眠る海パンを叩き起こして
天気予報をチェックすると
今年一番の暑さです、だって
望むところだ、と車に飛び乗り海を目指す
昔はオレンジレンジのロコローションだった俺も
今ではすっかり井上陽水に呼ばれているような気がする
海へ来なさい、つって
僕も大人になったなあ、とか思いながらも
夏ソングの懐メロどもを手下に車をぶっ飛ばす
こうして遙々、海へ来たわけなんです
よっしゃ、泳ぐぞとバッグを漁ると
ないんですね、海パンが
こんなことなら履いてくれば良かった
でも流石にこんだけ海の家やら並んでいたら
一件くらいは海パンおいてあるやろ、と
何食わぬ顔で海パン忘れてない人を装って全店舗回ったけど
置いてないんですね
そんなわけでジーパン姿でジリジリに焦げた砂浜に座りこんで
たゆたうサザナミを汗だくで眺めているわけなんです
日よけもレジャーシートもない
ビールも飲めないしビーチバレーにも参加できない
今年一番の暑さは37度まで上がるらしい
なるほど、命に関わる危険な暑さってこんな感じか
インド人もびっくりだな
望むところだ、バカ野郎
北に住んでるインド人は
海を見たことないやつもいるんだろうか
そんなことはどうでもいい
俺は一体何しに来たのだ
とにかく俺は
海へ来たのだ
靴を靴下ごと脱ぎ捨てる
灼熱の砂に足を突っ込む
汗でしおれたTシャツを脱ぎ捨て
ジーパンの裾を持ち上げ
助走をつけて
雄叫びをあげながら
砂音は加速して
突き抜ける空と
真っ青な海へ向かって
高く高く
今、飛び込む
『海へ』
自転車に乗って
夜の海に行く。
俺の誇らしさをずっと奪い続けてきたものを捨てに。
捨ててやりたかったのに、いつまでも捨てられずにいたもの。
それは鏡。
銀色の金属がレースのように縁取られ、長細くカットされたガラスの石が散りばめられている。
ラジコンカーが欲しいと言った年、母が俺にくれたもの。
「女の子はね。みんなお姫様なの。
あなたもこの鏡を見ながら、きれいなきれいなお姫様になるのよ。」
鏡の前でセミロングに伸ばされた髪をときながら、母は俺にこの呪いをかけ続けた。
その髪は今はショート。半年前に勝手に切ってやった。
怪しい空模様。
台風が近づいているのだ。
俺は鏡を海の遠くに投げ捨てて、
波の音に紛らわせ
「わ─────!!!」
と叫んだ。
波は鏡と俺の声を呑み込んだ。
何度も何度も叫んだ。
鏡にさよならを言う前に、
俺は荒れる海から吹く風を受け止めるように、両手を広げた。
俺は今、鳥のように自由だ!
裏返しに不安がやってくる。
やはり少し怖いのだ。
母に見限られてしまうのが。
それでも俺は間違っちゃいない。
この気持ちを強く、握りしめて俺は立つ。
60作突破記念
「海へ」
7/15 20作 7/27 30作 8/4 40作 8/14 50作
突破記念の続き。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
◯作突破記念とか言っているがあくまで目安でけっこうてきとうに発動。
反応に関係なく自分が楽しいのでやってる企画。
インターバル的なもの。
あの大きな廻り続けるものに回収されることは、母なる海へ戻るようなものなのでしょう。
俺も、貴女も、あの大きな廻り続けるものから分化した魂です。それが俺たちの故郷であり、最終目的地です。
分かっていただきたいのは、魂を回収されることは悲しいことではなく、魂にとっての救済なのだということです。
貴女はその時、最後かつ最高の、魂の安寧を得るのです。
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海へ
あまり人通りのない抜け道を通っていつも腰掛けている岩場にいく。サンダルを脱ぎ、足を海の中に入れる。暫くするとするりと足になりかが触れた。あー、今日も来てくれたのか。
「こんには。晋作」
「なぁ…いつになったら、こっちに来てくれるんだ?」
「第一声がそれか……何遍も言ってるだろ。行かないってば」
「ふん。つまらんな」
ばちゃっと水面を尾鰭が叩いた。
当たるからやめろ。
「つまらん。つまらないな」
「飛沫が当たるからやめてくれると助かる」
「しらん」
そう言いながら、俺の膝の上に乗らないでください。
重いし、めっちゃ濡れる。
「重い」
「ふん」
胸元に顔を埋めるわ。額を肩口に擦り付けるは、本当に可愛い事で…
彼を助けたのはもう何年になるか…いつも通り海辺を散歩していたら網に引っかかっている彼がいた。彼は普通の人とは違い。下半身が異様だった。翡翠のように美しい鱗と魚のような尾を持っている。平たく言えば“人魚”だった。
「俺の肉を食べれば、俺と一緒になれるのに…なんで、なってくれないんだ?」
「君に痛い思いをして欲しくないね」
「…あんたと一緒にいられれば、我慢できる」
「晋作」
「あーあ、アンタが俺を食べてくれないから……俺が人になるしかないかね」
「それはダメだ」
「なんでだ」
「君の美しい子の脚を見れなくなるのは…惜しい」
彼の綺麗な脚を撫でる。本当に綺麗だ。
「んっ」
「君が海の中を自由に泳ぐ姿も好きだしね」
「だったら、もっと近くで見てくれよ」
両手を首に回してぐいっと顔を近づけられる。
本当に綺麗だ。
「あんたが好きだ…俺だけのあんた…」
あぁ、私はあと何回君の誘惑に勝てばいいんだろうか…
そろそろ負けそうで怖いよ。
蕩けた顔を着ているくせに、その瞳は虎視眈々と獲物を狙っている。
海へ帰る
水音は胎内の音
いつか灰になって空に溶け水になって地に降りて
川に流れ
また海へ帰る
あなたと過ごした海へ行く。
海の匂い 海の色 海の音 海の冷たさ
全ての要素があなたを思い出させるから私は海へ行く。
海へ向かう途中
豪華客船が港に寄港していた
とてつもない大きさだ
さまざまな国籍の方々が
笑顔で観光を楽しんでいるようだ
船に乗る機会はほぼ無いが
豪華客船の優雅な船旅は憧れる
海の上のホテルはどんなものだろうか
船を見上げながら想像する
秋 月 駆
の 光 け
海 の 出
誰 導 し
も く て
い ま 僕
な ま ら
く に は
て 船 夏
一 出 の
服 か 海
す な に
な
る
恋人たちが終着駅に辿り着いて電車を降りると、青空が広がっていた。そして潮の香りが鼻をくすぐる。
目映い日差しに目を細めた。
「暑いですね」
「そうだね。じゃあ、まずは宿に向かおうか」
青年は自分の荷物と持ち、立ち上がるついでに彼女の荷物を持って歩みを進める。
「あ、カバン……」
「これくらい持つよ。じゃあ、俺についてきて」
恋人たちが向かう場所は、以前、青年が職場の人たちと訪れたことのあるところだった。
道なりに歩いていくと、少しずつ聞こえる波の音。道をぬけると、そこには海岸が広がっていた。
「わ、きれい……」
彼女の瞳に映るのは透明度の高い青い水。その海の光が反射して、彼女の瞳はいつもよりキラキラ輝いているように見えた。
そして、その光景は彼女の視線を釘付けにする。
青年はそんな彼女を見つめて、嬉しそうに微笑む。この後に待っていることも楽しんでもらえるといい。そんなふうに思った。
「宿に着いたら荷物を置いて、ここにまた来よう」
「はい!!」
旅行は始まったばかりだ。
おわり
九十九、海へ
海へ
今年の夏は猛暑ですがあなたは元気そうだ。
私は今でもあなたと会った時の感動を今でも忘れられない、飲み込まれそうになるほどの大きさと広さに、永遠と錯覚するほどの長い長い地平線、自分がどうでも良くなるくらい綺麗で、泣いてしまった。
今凄く頑張っていることがあるから、それが落ち着いたらまた電車に乗るよ。あの時のような晴れた日に、また
【海へ】
言葉を捏ねて突付いて切って貼って。体裁を整えて見返して。どうにか形になったものを、畳んで硝子の小瓶に詰めて、そっと海へ流す。
誰かに届くだろうか。
拾ってくれるだろうか。
読んでもらえるだろうか。
それとも誰にも届かずに、読んでもらえないまま海底に沈み、知られず埋もれていってしまうのだろうか。
ネットに作品を上げる行為は瓶入りの手紙を流すのに似ている気がしている。
皿洗いを終えて廊下に出ると、裏返しになったパジャマが脱ぎ散らかしてあった
他にもズボン、下着が投げてあり、脱衣所へと続いている。
すべて裏返しである。
いつも器用に裏返すものだから、感心してしまう
一体誰の仕業であろう。
なんて聞かなくても決まっている。
娘の百合子である。
今年から高校生になったと言うのに、服を脱ぎ散らかす癖は未だに直らない。
何度も言っているのだが、本人はどこ吹く風。
苦労するのは本人だって言うのに、百合子は少しも分かってくれない。
『親の心子知らず』ということわざが身に染みる、今日この頃。
私達は百合子を甘やかし過ぎたのかもしれない
百合子は四人兄妹の末っ子で甘えん坊だ。
お兄ちゃんとお姉ちゃんから可愛がられ、本人も実に甘え上手。
クラスでも人気者らしい。
でもそれが通用するのは子供の間だけ。
社会に出たら、甘えても誰も助けてくれないのだ……
いや、でも百合子ならあるいは、なんとかなるかも……
我が娘ながら、本当に甘えるのだけは上手なのだ。
とはいえ、しつけは大事。
『兄ちゃんが困ってるから、せめて下着だけは片づけろ』と言い続けた結果、なんとか下着だけは片づけるようにはなった。
今日は脱ぎ散らかしているけど……
急いでいるらしい。
友達の家に遊びに行くので急いでいるらしいが、ゆっくり服を着ても、そんなに時間は変わらないだろうに……
よっぽど遊びに行くのが楽しみなのだろう。
そういえば夏休み中、毎日遊びに行っているけどだ大丈夫なのだろうか?
先方は迷惑してない――わけないよなあ……
だって百合子は元気いっぱいだもの。
勢いあまって物を壊しているかと思うと、心配で仕方がない
やっぱり今度菓子折りでも持って行かせよう。
百合子は『必要ないって言われた』って言ってるけど、大人には大人の付き合いがあるのだ。
娘の将来について考えながら服を回収していると、脱衣所の扉が勢いよく開く。
現れたのは、よそ行きの服に着替えた百合子だ。
百合子は私の存在に気が付くと、ヒマワリのように笑う
「母さん、行ってくるから」
「待ちなさい」
「しゅ、宿題ならやったよ」
「そうじゃないわよ、ほら服が裏返しになってる」
「ホントだ」
百合子はその場で脱いで、服を裏返してから着る。
高校生になったんだから、もうちょっと、こう、慎みを……
いや言うまい。
それよりも言うべきことがある
「迷惑かけちゃだめだからね。
騒ぎ過ぎないようにね」
「はーい」
「お菓子貰ったら、ちゃんとお礼を言うのよ
いいわね?」
「もー、分かってるから、母さん」
百合子は一瞬私の小言に嫌な顔をする。
私だって言いたくもないけれど、百合子の事が心配なのだ。
小言が多くなるのは、愛情の裏返し。
それを理解してくれる時はくるのだろうか?
「それから――」
「行ってきます」
これ以上小言はいらないとばかりに、百合子は玄関へと走り去っていく。
引き留めようかと思ったけど、やめておく。
これ以上言っても聞く耳をもたないだろう。
それに友達を待たせるのも悪いしね。
でもね、百合子。
人の話は最後まで聞くべきなの。
ほら、あなたが着ている服。
前後が逆になってる。
昼の賑わいが嘘のように闇に沈む浜辺は静まり返っている。
さざ波の音をBGMに、そっと線香花火に火をつけた。
/「海へ」