『海へ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「私さ、明日この町、出ていくんだ」
『…ふーん』
「何よ、そのそっけない感じ!」
「心配するとか寂しいとか言えないの??」
『…いや、、』
「サイテー」
……懐かしいな。この砂浜。
昔、君とここで喧嘩したよね。
忘れもしない。君が町にいる最後の日だった。
あの時の僕は、君に会えるのが最後だって…
認めたくなくて、信じたくなくて。
嫌だって言いたかったけど、
言葉が詰まって言えなかった。
『好きだぁー!!!!!!!!!』
思いっきり叫んだ。
届かなくてもいい。聴こえなくてもいい。
何十年経っても、君を想ってるって
この波に乗せて、言いたいんだ。
ー海へー
海へ
海の果てを人は知らない。
海の底を人は知らない。
私のこの愛の行く先は、どこへ辿り着くだろう。
けれど待つのには、もう疲れてしまったから。
せめてこの愛を海に流してしまおう。
溶けて、混ざって、泡となって美しく消えてしまえ。
お題『海へ』
主様を水の都・ヴェリスにお連れしたことがある。
「悪魔執事の主の情操教育にいいのでは?」とフィンレイ様が言ってくださったおかげで、3歳だった主様ととある貴族のプライベートビーチに行ったのだった。
これはそのときの記憶。
衣装係のフルーレに手伝ってもらい、水着にお着替えした主様が登場した。その場にいた執事たちは全員両手で口を覆い、それからたっぷり3秒は置いて「かわいい……」とため息混じり。
その気持ちもよく分かる。俺も屋敷で水着を試着したお姿を見て膝から崩れ落ちた。ツーピースのデザインは、トップスがパフスリーブになっていて、そこにボリュームがあるので幼児体系特有のぽんぽこおなかをカバーしている。パンツもかぼちゃを彷彿とさせるラインで、こちらもまた体型補正として申し分ない。
そんな俺たちの視線などどこ吹く風、主様は早く海に入りたくてウズウズしている。
「主様に日焼け止めはもう塗った?」
フルーレに声をかければ、はい、と軽やかな返事。
「念入りに塗りましたから。さぁ、いつでも海へどうぞ」
楽しそうに歌う波しぶき。
真っ白に焼けた砂浜。
空高く響くカモメの鳴き声。
そして俺の左手には主様の右手。
俺にとって、この状況が楽しくないわけがない。いつものように片膝をついて主様を抱え上げようとした。
「さぁ、行きましょう。主様」
しかし主様は俺の抱っこを拒否する。
「どうされたのですか?」
「わたし、あるきたいきぶんなの」
近頃は前にも増して自己主張がはっきりしてきたので、それが間違った主張(例えば誰かを傷つけたり貶めたりするようなもの)でなければ、割と何でも聞き入れている。
「そうでございますか。それでは波打ち際まで一緒に歩きましょうね。足元にご注意ください」
キュッ、キュッ。
2、3歩歩くと足元で音が鳴り、主様の表情がぱあぁっと輝いた。
「きれいな砂浜は歩くと音が鳴るんです。お気に召していただけましたか?」
主様はコクコク頷きながら何度も何度もその場で足踏みを繰り返している。その様を浜辺待機組も水中待機組も頬を緩めながらのんびり見守っているらしく、誰も急かしたりなどしない。
しばらく足音を堪能していた主様も、いよいよ穏やかな波打ち際へと歩き始めた。
しかし主様は水面まで僅か1メートルほどのところで立ち止まってしまった。
「ふぇね、かえりゅ、」
「どうされたのですか?」
しゃがんで目の高さを主様に合わせると、今にもシーグラスのような涙がこぼれ落ちそうになっている。
「こわいぃぃぃ! かえるうぅぅぅ!」
主様が大泣きしていると、そこに、ザザーン、と大波がきた。危ないと思い咄嗟に抱きしめたけど、波が引いてしまえばふたりともずぶ濡れで……主様はきょとんとしている。
「主様、怖かったですか?」
このことがトラウマになったら可哀想だなぁ……という俺の思いは、いい意味で裏切られた。
「ううん! たのしい! わたしもふぇねすもびっしょり!」
いつになく大はしゃぎで、キャハキャハと笑っていらっしゃって、海にお連れしてよかったと心の底から嬉しくなった。
その日はお昼寝も忘れて遊んだので、夕方はぜんまいの切れたオルゴールのように静かになった。旅程は1週間、最初から飛ばしすぎたかな?
これは俺と主様の、大切な思い出。
お題『鳥のように』
――いつか、自由に飛んでみたいね。
――あの鳥みたいに?
――うん。あの鳥みたいに。
いつか。自由に。
あの日見た、美しい鳥のように。
いつか。いつか、飛んで。
自由に。
気楽に。
軽やかに飛ぶ、あの鳥のように。
ここではないどこかへ、飛んでいけたら。
――ねぇ。いつか、一緒に飛んでくれる?
――うん。飛ぼうね。
――約束だよ。
いつか、一緒に。
並んで飛び立った、あの鳥のように。
いつか、飛ぼうね、と。
一緒に。
二人で。
楽しそうな、あの鳥のように。
もっと、優しい世界へ。
――ねぇ。せーの、だよ。
――うん。せーの、ね。
「「せーの」」
いつか、自由に。
いつか、一緒に。
飛べば飛べる、と。
ここではない、どこか。
ここよりもっと、優しい場所へ。
あの鳥のように。
この屋上から。
二人で、並んで。
「せーの」の合図で、手を……。
手を、離せば、飛べた。
屋上の、フェンスの外側。
二人、並んで。
「せーの」が合図。
一緒に。
約束。約束をした。約束だから。約束が……。
落ちていく。
落ちていく。
一人で。
約束したのに。
手を、離せなかったから。
今からでも、この手を。
手を、離して。
間に合わなくても。一緒に。
約束を。
いつか。いつか、自由に。
軽やかに。美しく。
あの鳥のように。
あの鳥のように、飛びたかった。
「せーの」で飛んで、落ちていく。
巣から落ちた、飛べない鳥のように。
もう、あの鳥のようには、なれなかった。
―END―
全部終わったら、全部捨てて海へ行こう
あなたは脚のあいだから
私は指先から、血を流しながら
行こう
そう陽が私に言ってくる
青白く光る波打ち際を
サンダルを脱ぎ捨てて
帰ると母に砂を落とせと怒られるんだ
それでもまた行こう
世界
「噂には聞いている」
一匹の沢蟹がそう言った
他の沢蟹よりも一回り大きく、頭も良かった
今、何一つ不自由のない世界で
その一匹は確かめたかった
「さあ行くぞ」
※海へ
111
海へ1人で来た。波の音を聞きながら、青い海をぼーっと眺める。それだけでも、夏を感じられる。
海の水を全て飲み干してしまいたいと
一度だけ強く思ったことがある
そこに懐かしい町がある
助けたかった人がいる
結界のように押し寄せる波を踏みつけて
届かない手を伸ばしたことがある
海へ行くときは必ずといってもいいほど
太陽がついてくる
お節介な気もするけどそれがまたいい
そんな海と太陽は人を元気にしてくるれる
波のさざめきと太陽の眩しい光で
だから僕は
バイトで疲れたり 学校で疲れたり 人間関係で疲れたら
まずは海へ向かう
嘘のように頭も心も軽くなる
まぁ、海に1人でいくのに抵抗のあるひともいるはず
だけど太陽と海と自分を合わしたら3人だから寂しくなんかない。
暑さが毎日飽きる事なく押し寄せてくる
『海へ』
行けば 少しは身体も心も癒されるだろうか
磯の匂い
波の不規則にたゆたう様子
哀愁漂う誰かの忘れもの
なんとなく拾ってしまう貝殻
家族と楽しく過ごした記憶
そういえば昔
よく父が連れて行ってくれた海があったな
あれはどこの海だったのだろう
もう父に聞く事はできないけれど
これからもずっと忘れられない海だ
小学生の頃、友達と自転車で川沿いに海まで行こうとしたことがあるんだ
でも途中で道が川から離れちゃってどうにもならなくて
おまけに道に迷っちゃって、たまたまあったバス停の路線図を見て、それを参考にして帰って来たんだよ
今考えると、あの川はもう少し大きい川につながってるだけで、海はもっとず~っと先で、自転車で行ける距離じゃないんだけどね
海へ
上京して初めて海へ行った日。
驚いた。
私の知ってる海とは全然違う。
灰色の砂浜、散る波飛沫。
岩の多い足場。
潮の香りは確かにするのに
海へ来たという実感は湧かなかった。
白い砂浜に、穏やかな波。
愛犬の散歩がてら走り回った浜辺。
私の知る海はそんな姿で、
それが海の全てだと思っていた。
だけど、これも、海。
海は世界中どこにでも繋がっているはずなのに
なんだか全然違うものに見えた。
友人はこの海が当たり前だと言った。
私の海とは違う。
でも友人にとっての海はこれだ。
世界にはもっと違う海があるのだろうか。
私の知らない海も、空も、川や山も、
世界にはいっぱいあるのだろうか。
ぐるんと、世界が回ったような気がした。
有りそうでないもの
無さそうであるもの
なーんだ?
海から生まれて
今の現在まで
絵画、音楽、詩、物語、映画、生きかた…
全て想像で、リアルで、
笑って、怒って、泣いて、ドキドキの渦
海から生まれたのに
まだ海には帰れないのは
なぜ。
海へ
ジリジリと照りつける太陽。聞こえてくる、波の音おカモメの鳴き声。
磯の匂いが、海に来たと思わせてくれる。
右手に水鉄砲を持ち、後ろにいる友人たちに声をかけた。
「さぁー、海へレッツゴー‼︎」
掛け声と共に、太陽で熱くなった砂浜の上を駆け抜ける。
段々と近づいてくる、海。顔がにやけて仕方がない。
そして、海へとダイブ。水飛沫が上がり、鼻と口に海水が入った。
ゆらりと起き上がり、水鉄砲を太陽へと向ける。
「夏はまだまだこれからだー‼︎」
その言葉と同時に顔に水がかかった。友人たちの一斉射撃。
少しは待って欲しい時思ったが、いや、違う。
時間は待ってはくれない。今を、この瞬間を遊び尽くせ。
今から丁度十年前、僕がまだ十六歳だった時の話。その頃の僕はまだ思春期で、膨張する自我と対話する日々であった。激変する人間関係や、ぼんやりと見えてきた将来に対する不安に眠れない夜を幾度も重ねた。そんなある日の夜、僕はとうとう寝床に収まって居られず家を飛び出た。漠然とした不安が何処からか襲いかかってきそうで、逃げるように歩いた先にあったのは海であった。
月を反射している広大な海面、さざめく波の音。暑い八月の海の淋しげな一面を見て僕は少なからずセンチメンタルを感じた。胸いっぱいに潮風を吸い込んでいた時、波の音に混ざって妙な音が聞こえた。耳を澄ますとそれは音というより、女性がさめざめ泣く声のようだった。少しばかりの恐怖と大きな好奇心を抱いた僕は、若者のご多分に漏れずその声の主を探した。
そこには彼女が居た。暗い海辺に座りながら、声を殺すように泣いていた。白いワンピースがよく似合う、黒髪の女の子であった。私は心配というよりも野次馬根性で、歳も対して離れていないであろうその子に声をかけた。
「ねぇ、どうかしたの?」
しかしその女の子は静かに泣くばかりで、何ら返答を寄越さなかった。その反応を想像していなかった訳では無いが、途端につまらなく感じて僕はその場を去ろうとした。
「行かないで……」
少し枯れた可愛らしい声が聞こえた。振り返ると、その女の子にシャツの裾を握られていた。
「近くにいて……」
それを聞いて僕はとにかく緊張してしまい、従うように女の子の横に座った。知らない人と二人きりでただでさえ混乱しているのに、あろうことか横に居た女の子は震えながら僕の手を握って来た。僕は心臓の高鳴りを抑えられず居心地が良いんだか悪いんだかわからない思いをした。
でも、すぐに邪な感情は消え去った。僕と手を繋いだ女の子は、堰き止められていた感情が一気に流れ出すように、声を荒げて泣き始めた。それは、本当にやるせのない思いが沸き立つ声だった。僕も冷静になり、そこからしばらく波の音を彼女と黙って聞き続けた。彼女が泣きつかれて眠ったのはそこから数十分程経った時だった。
翌日、どうやら僕も眠ってしまっていたようで、強烈な日差しに起こされるのは不快だった。昨夜の一事を思い出し周囲を探ったがどこにも彼女は居ない。何だったのかと思い、そこで足元に書き置きが残してあることに気づいた。それは、砂浜に指で掘られたであろう文字。
有難う
また会えたらいいね
結局それ以来彼女とは一度も会えていない。あの海岸にも何度か訪れたが、居るのは花火をしている集団くらいだった。
これは十年前の話。久しぶりに地元へ帰ってきて、思い出した一夏の不思議な青春。思い出参りに、僕はまた夜の海へ向かった。あの頃と変わらず波のが聞こえる。
すると、昔何処かで聞いたことのあるような可愛らしい声で……
「あれ?君って……」
海へ
たった一度の海の思い出
もう叶わない恋だとわかっていた頃
彼は、私をうみに誘った
一緒に子供のように泳いだりはしゃいだり。
最後に2人で見た夕日は今でも頭の中で 鮮やかに蘇る
そのあとすぐに私は病気に、そして彼は、外国に転勤になった
あれから10年。いつも変わらない病室の窓の景色
今日もぼんやり眺めていた時懐かしい声がした。
「久しぶり」
それは、あの時海に誘ってくれた彼だった。
10年ぶりの再会
10年ぶりに私の恋の歯車が動き出す
海へ一人で向かうこの時が好きだ。
誰かの意志でなく、自分が行きたいから。
遊ぶんじゃなく、ただ静かに波の音を耳に入れたいから。
行けば何かありそうで、
何かを忘れられそうで、
まだ海は見えないけどドキドキしてる。
自転車の後ろに乗せられて、風を切りながら坂道を下ってゆく。どこに行くの?という私の問いかけに彼は叫べるとこだよと元気よく答えた。
数十分前、私は教室で1人で泣いていた。そうしたらいきなりドアが開いて彼が入ってきた。辞書を取りにきたらしい。今まで彼と話したことは片手で数えるほどしかなかった。タイミングがなかったからだと思う。彼はいつもクラスの中心にいて、沢山の友達と賑やかに過ごしていた。笑いが絶えなくて、その周りの人たちも常に笑っていて。悩みなんかなさそうだった。私みたいにつまらないことでいつまでも頭を悩ませているような人じゃないということは見ていてなんとなく分かった。
その彼が、私の涙を見ると、突然手を引き教室を飛び出した。言われるがまま初めての“ニケツ”を促され、彼の自転車に運ばれる。外は今日も快晴で夏らしい空をしていた。これから行く所は叫べる所らしい。私がただなんとなく、大声を出したいだなんて呟いたから。彼はその願いを叶えるために自転車を走らせてくれる。だんだんと風が海のそばのそれに変わってきた。見えてくる青い絨毯。太陽に反射してきらきらして見える。とても綺麗だなと思ったら、それがそのまま口から出ていた。
「きれー!」
「って、ちょい!まだ叫ぶの早いって!」
「だって綺麗なんだもん!」
海も空も優しい青い色をしている。私達の制服の紺色よりも鮮やか。けれどどこか優雅な青。本当に、この青色を見つめて叫んだらとっても気持ちよさそう。私のちっぽけな悩みなんて、海の中に呑み込まれてしまえ。
「もっと飛ばして!」
掴まっている彼の肩を軽く叩く。スピードがぐんと上がった。全然怖くはない。むしろとってもいい感じ。海についたらなんて叫ぼうか。まずは彼に向けてのありがとうを大きな声で叫びたいな。
(……after 8/14)
海?
そう、海。海行こうよ。
唐突だな。こんな時期に?そもそもこの場所からはー
わかってるよ。ここを出て、自由になったら一緒に行こうよ。
…自由、ね。
嫌?
いや…ちょっと、想像できないだけだ。
そう?まぁ確かに、お前には似合わないかもね。
だったら誘うな。
かも、だよ。行ってみなきゃわかんないでしょ?
わかったわかった、お前は言い出したら聞かないからな。
やった、約束!
…あぁ、約束、だ。