『沈む夕日』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
沈む夕日
空が茜色に染まる
黄昏時
現世と隠り世の境界が曖昧になる時
全てのものがオレンジ色に染まる時
月と太陽がお別れをする時
その時
寂しさで世界を覆わぬように
幸せを閉じ込めるように
空が二色に染まる時
月と星が世界を見守ってくれる
目の前には、海が広がっている。
行き場もなく、歩いて歩いて歩き続けて、着いたのがこんな浜辺だ。流されて来たのだろう、藻屑や割れた瓶のかけらや砕けた貝殻が、打ち上げられている。
オレの住む地域に、海水浴場やプライベートビーチみたいな、洒落た浜辺はほとんどない。今日、オレがやって来たここも、そういう浜辺だ。
だからこんなにも汚らしく、打ち上げられたものが散乱している。
ため息をつく。オレは何をやっているのだろうか。
家に帰りたくないからって、こんなしょうもない浜辺に来るなんて。
素直に帰る気もせず、オレは砂浜に降りる。
少し歩いただけで、靴の中がじゃりじゃりと音を立てる。
砂浜の砂って、こんなに図々しくて鬱陶しいのか。オレは思う。
まるで、オレの周りの人みたいだ。どこからか現れて、図々しく間を詰めて、そのうち裏切ってどこかへ行く。人ってそんなもんだろう。
右の頬がジクジク痛む。
オレは黙って、砂浜を歩き続ける。
日が傾いているようだ。
ゴミにまみれた足元の砂が、うっすら橙に色付いて見える。
はあ…。本当にオレは何をしているんだろう。
八方美人だろうと、人を利用して、上手く世渡りしていってやると決意したのはオレ自身じゃないか。
砂浜は、取るに足らない、いらないもので散らかっている。海藻の切れ端が散らかり、流木が点在し、糸や紐が絡まって落ちている。
「あっ、日が沈むよ!めっちゃ良いタイミングじゃない?!」
いつの間にか、他にも浜辺を歩く人間がいたようだ。
高校生くらいだろう女子が、隣を歩く男子に話しかけている。
「この風景で今度、絵を描いてよ!彫刻じゃ、こういうのは再現できないからさ。私、君の…絵が好きだから、君の絵で見たいな!」
「…うん、描けそうならね。」
対して答えた男子の声はそっけない。
それを気にしていたのかいないのか、女子は海の方に目を向け、「わあ、綺麗だね…」と感嘆の声を上げる。
「ねー、この風景を描くなら、どんなタイトルにするの?ちなみにね、私なら『沈む夕日』かな?」
「…んー、そうだね……僕なら、『溺れる夕日』かな…」
はしゃいだ明るい女子に対して、哀しさを含んだような、淡々と陰気な声で答える男子。温度差のひどい会話になんとなく耳を傾けていると、沈む夕日が少し気になってきた。
オレも海の方に目をやった。
海が赤橙に染まって、ぽっかりとまん丸な赤い“夕日”がゆっくりと地平線に沈んでいく。
でも、オレには、“沈む”というよりは“溺れる”…いや、夕日が海に引き摺り込まれていくように見えた。
夕日が、ゆっくり、確実に、否応なく、海に引き摺り込まれていく…。…この景色は綺麗なんだろうか。
「…日の入りってゆっくりだね……そろそろ戻らない?良い気分転換になったし!」
「………え、あ、うん。そうだね。帰ろうか」
そんな会話が視覚の端で、聞こえた気がした。
早く帰らなきゃ。
そう告げる脳とは裏腹に、オレはじっと沈む夕日を見つめ続けた。
夕日が完全に引き摺り込まれるその瞬間まで。
『沈む夕日』
砂浜に座って、沈む夕日を見ていた。
じりじりと水平線へ消えて行く太陽。
時間とともに色合いを変える空。
輝き始める月と星々。
雄大な景色を見ていると、自分はなんてちっぽけな存在なんだろうと思い知る。
「綺麗だね」
「……そうですね」
そうだ、景色に気を取られて忘れていたけれど、隣にも人がいたんだった。
「さて……」
太陽が完全に水平線の彼方へと消えると、隣に座っていた男性が徐に立ち上がる。
「何処へ行くんですか?」
「いや、ずっとここに居る訳にもいかないからね」
「……そうですね」
確かに、いつまでも砂浜に座ったままではいられない。
すでに太陽は沈んで、夜になってしまった。
「一緒に行くかい?」
ついほんの夕日が沈む前に出会った人だから、悩む。
でも綺麗な景色をそのまま綺麗だと言えるこの人は、きっと悪い人ではないだろう。
だからこの人についていくことを決めた。
「……よろしくお願いします」
「うん、よろしく」
空には見覚えのない星々と、太陽に負けないくらいに輝く2つの月が私たちを照らしていた。
沈む夕日
夕日が沈み、濃紺へと変わる空にひときわ眩しく輝く一番星を見ながら、駅からバスに乗り換える。
郊外へ向かうバスの中は、私と同じように仕事を終えた人達で、いつもごった返している。
この時間はひときわ混むけど、早く家に帰りたい。
やすみたい。
だから、混んでいるのがわかってこのバスに乗る。
バスの中の人は降りていって、少しずつ減っていく。
座れるようになった帰りのバスに揺られて、私は再び窓から空を見た。
この沈む夕日の空と夜空へと変わる前の空。
この時間が好きだ。
境目は曖昧で、それでいて混ざり合うようで完全には混じり合わないふたつの空。
この時間は、特になんの意味もなく日々を過ごしている曖昧な私を包み込むようで、なんだか安心する。
なにか成功を目指して走らなければならないと思わせるほど輝く昼の太陽は、今の仕事に、生活に疲れた私には眩しい。
そうかと言って、夜になったから必ず身を休めて眠りに落ちなければならないと思わせる月の光が照らす夜空も、寝付けない私には、少し眩しくて落ち着けない。
だから、
どちらでもいい。
曖昧なままでいい。
そんな気になるこの時間は、私にとって癒やしの時間になる。
『沈む夕日を追いかけ続ければ、夜来ない説〜』
「止めて」
「は? 何すかトイレすか?」
「テレビ」
あっ、と運転席の男が短く叫ぶ。対向車が横切る風の音だけが車内を満たし、サービスエリアは視界の隅に遠ざかる。
「はあ……? 見てたのに」
「うるさい」
「ええ……機嫌わる」
げっそりした様子で音楽をかけ始める。
車窓越しの水平線に確かに見えた。
――夕日が昼を連れてくんだよ。
「だから夕日を追いかけたら夜は来ない!」
私の暮らす田舎の村には、丁度西の方角に立入禁止の神社があった。
蝉がクラクラしそうなほど鳴く8月の上旬のことだ。
「夕日だ!」
そう言った幼馴染を必死に追いかけていた。
いつも私よりずっと足の遅い彼が、獣のように神社の階段を登り、森の獣道をかき分けていく。上がりきったような息の拍と、高揚で鳴る心臓の動きはほぼ同じだった。
本殿らしきものが彼の肩越しに見える。よろよろと数歩、直後に本殿前の一面の彼岸花に倒れ込む。
「ヒロ、帰ろう? 疲れたよ……」
――彼の姿はどこにも無かった。
常人では有り得ない速さで夕日を追った彼はきっと逢魔時に長く居すぎたのだ。
私の足がもう少し速かったらと思うとゾッとする。
でも同時に、一抹の好奇心もある。
だって
地平線の向こうにいる彼は、とても幸せそうだもの。
【沈む夕日】2024/04/07
西に太陽が沈んで東に月が見えますわ的な昔の詩が好きでした。
沈む夕日
仕事を終えて自転車を走らせる。
自転車置き場から買い物の荷を抱え
マンションのエレベーターを上がる。
6階の扉が開き廊下に出ると
沈む夕日が目に飛び込んでくる。
燃える赤と群青で織り成す西の空が
あまりにキレイで目を細める。
手が塞がっていなかったら
写真を撮って娘に見せるのに。
娘の大好きな夕焼け空。
明日も晴れるよ。
沈む夕日を眺めながら
僕は君への愛を語る
いつもそばにいる訳じゃない
だからこそ
言えるときに言う
沈む夕日は君みたいだ
明日は晴れる
オレンジがそう教えてくれる
沈む夕日のように
君の命は消えていった。
最期の最期まで君は幸せだと言っていた。
2024/4/7 沈む夕日
【沈む夕日】
あぁ 1日が終わる
今日は 宿題を忘れて
友達とけんかして
なにもかも 上手くいかない日
真っ赤な空が なんだか虚しい
あぁ 1日が終わる
終わりがあれば 始まりがある
必ず 明日は来る
前を向いていれば いいこともあるかな
オレンジ色に 向かって歩く
300字小説
彼岸の桜
満開の桜が散る頃、一夕だけ村の外れの堤の桜並木が彼岸に繋がる日がある。沈む夕日が山の端に消え、誰そ彼の闇が漂うとき、川の向こう側の堤に亡き人の影が浮かぶという。
今年もまた幾人もの村人が桜舞う堤にやってくる。夕日に煌めく川面が暗く沈むのを合図に、ぽつりぽつりと対岸の桜の下に人影が現れる。
「……じいさん……」
ひょろりとした影はこの冬に亡くなった平六ん家のじいさん。
「……太郎坊……」
盛んに手を振る小さい影は去年、風邪で呆気なく逝った吾助ん家の長男。
そして……。私の前には大柄な男の影が。
「弥吉さん、ごめん。私、隣村に嫁ぐことになった」
私の呼び掛けに夕風が舞う。
『幸せになりな』
懐かしい声が耳元で囁いた。
お題「沈む夕日」
あの日の夕焼けが忘れられない。
あなたと車の中。
夕焼け小焼けが遠くから聞こえてた。
突然、寂しくて悲しくて。
涙が止まらなくなった私を
あなたは優しく抱いてくれた。
頭を撫でながら。
大丈夫だよって。
後ろから鳴らされたクラクションがファンファーレに聞こえた。
沈む夕日を見ながら幸せだった。
生まれて初めて幸せを感じた瞬間だった。
沈む夕日
儚くて、もの悲しい象徴だ。
子供の頃は、単純に綺麗だと思った。
大人になると、そうではなくなる。
自分の人生に例えているからだ。
日々、日の入り時間が遅くなっているが、
日の入り時間が夏至に近づくよう、
よく考えて、よく準備して、
終活していきたいと感じる。
誰かに綺麗だと思われるように。
沈む夕日
赤い
まぶしい
グリーンフラッシュ
きれい
水平線
恋人
海
心があらわれる
なにもかも忘れられる
目がチカチカするよ
ある日、散歩したいな。と土手を歩いていた
何も考えずただひたすら歩いていたら
急に夕焼けチャイムが鳴り響いた
「あ、もうこんな時間…そろそろ帰らないとなぁ」
ふっと空を見上げると綺麗な赤い夕陽にピンクや
紫・青が混ざったようななんとも言えないが綺麗な
空だった。
「まだ帰りたくないな…」そう思った時
私は思った。夕陽が沈むまで夕陽に向かって歩いてみよう
着かないとわかっていても歩いてみたかった
帰ろって思った頃にはなんだがスッキリした気持ちになった
なぜか私にも分からないままその日は終わった。
でも最初と何が違ったかと聞かれるのであれば…
今までの良かったことも悪かったことも
全て振り返ったことだ…
4月7日(日)
上る朝日に虚しくなり、沈む夕日に私は昂る。
太陽と月が代わり番こで私に視野を与えてくれる。なんてロマンチックなんだ。
朝日を喜べなくなったのは、マイナスの経験からではない。日の出と共に花鳥風月の描写が始まる。その大地に沸る生命力が空っぽの私を強制的に満たしてくれる。だから、朝日が昇る頃、己の伽藍堂に虚しくなるのだ。
夕日が沈む頃、私は生命の躍動から解放される。そして、一夜を凌ぐだけの活力を夕日が優しく注いでくれる。今日も生きたのだという達成感と誇りに、月夜の静寂に帰れる期待に、私は昂る。
『沈む夕日』🧡
いつも歩くときは俯き、人の視線から逃げてる。
誰かに見られるのは苦手だ。
誰かに声をかけられるのは苦手だ。
早足でいつもの街を通りすぎる。
けれど、ふと立ち止まって上を見上げる。
いつもの道。
いつもの場所。
なのにいつもと違う景色。
あぁ、空ってこんなにも綺麗だったのか。
紅く染まった景色に僕は心踊る。
仕事終わり、沈む夕日を見ながら「日がのびたなあ」と思う。
なんだか毎年同じことを思っている気がする。
つまらない大人。
そういえば「日がのびる」ってどんな漢字を書くのかな。
バス停でスマホを開く。
ふむふむ、正しくは「日脚が伸びる」というらしい。太陽が空を移動する足が伸びたと感じるからだとか。
大きな足でのびのびと散歩をする太陽を想像する。
なんだか気持ちよさそう。
せっかくだから、私も歩いてみよう。
次のバス停まで?いやいや、もっと先まで?
一歩、一歩、家に向かって。
沈む夕日を背に足を伸ばした。
あかい夕日に照らされた河川敷が一番好き。
門限に遅れちゃう! って慌てる小学生も、まだまだ遊びたいとぐずるこどもを宥める親子も、皆満足した顔で帰っていくから。
きっとこの後、思い切り遊んで疲れた体を休めるためにめいっぱいご飯を食べて、お風呂の湯船につかって休んで、静かに眠りにつくのだろう。
私も帰ろう! 早くしないと、日が沈んじゃうや。
沈む夕日
また、夜がやってくる。
明日のための、準備の時間。
明日から、新しいことがたくさん始まる。
不安だらけで、苦しい夜になりそうだ。
それでも、夕日は沈む。
沈む夕日。私の心も、沈んでます。
へそ曲がり?
沈む夕日は
常だから
バカボンの歌
つい口ずさむ
お題☆沈む夕日