『沈む夕日』
砂浜に座って、沈む夕日を見ていた。
じりじりと水平線へ消えて行く太陽。
時間とともに色合いを変える空。
輝き始める月と星々。
雄大な景色を見ていると、自分はなんてちっぽけな存在なんだろうと思い知る。
「綺麗だね」
「……そうですね」
そうだ、景色に気を取られて忘れていたけれど、隣にも人がいたんだった。
「さて……」
太陽が完全に水平線の彼方へと消えると、隣に座っていた男性が徐に立ち上がる。
「何処へ行くんですか?」
「いや、ずっとここに居る訳にもいかないからね」
「……そうですね」
確かに、いつまでも砂浜に座ったままではいられない。
すでに太陽は沈んで、夜になってしまった。
「一緒に行くかい?」
ついほんの夕日が沈む前に出会った人だから、悩む。
でも綺麗な景色をそのまま綺麗だと言えるこの人は、きっと悪い人ではないだろう。
だからこの人についていくことを決めた。
「……よろしくお願いします」
「うん、よろしく」
空には見覚えのない星々と、太陽に負けないくらいに輝く2つの月が私たちを照らしていた。
4/7/2024, 1:16:58 PM