『楽園』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
楽園の名を関する獣たちの蹂躙が始まる。これで終わったはずだと、誰もがそう信じた直後のことだった。絶望は、容易く希望を食い破り現実を書き換えていく。悲鳴があちらでもこちらでも上がる。
『どうしてお前らはそう簡単に奪えるんだよ!』
ワナワナと肩を震わせながら叫ぶが、獣たちの進軍は止まらない。先程までの激戦が、まるでリセットされてしまったかのような虚しさを覚えた。
自分たちが全力を傾けて戦ってなお、神の国は遠かった。それとも、最初から目指すという選択そのものが間違いだったのだろうか。志を共にした同胞たちの断末魔が鼓膜の奥で反響し続ける。
もう、もう充分だろう。充分やったじゃないか俺たちは。
崩れ落ちるその身体を支えてくれる温もりは、もうどこにもなかった。これは、楽園を目指したもの達のエピローグ。近くて遠いパラダイス。
楽園と聞くと、羨ましさや多幸感よりも寂寥感を抱くのは何故だろう。
どこまでも続く濃淡が美しい青い海
色とりどりの草花が咲き乱れる庭園
伸び伸びと空を飛ぶ野鳥
水中を縦横無尽に泳ぐ魚たち
いがみ合う事なく互いを尊重して息づく人間
そのどれもが夢幻と気づいてしまっているからだろうか。例え実在する現象だとしても永遠に続くことはないと諦観が過るからだろうか。それともユートピアが続くことこそディストピアだと感じてしまうからだろうか。
楽園に憧れるにはあまりにも世知辛い現実に晒されている。
願わくば、かつて抱いた童心のように楽園を夢見る心が戻らんことを。
楽園
楽園の巫女。
その二つ名を持つ少女の足元には。
こてんぱんにやられ降参した小物妖怪が膝をついて許しを乞うていた。
何が楽園の巫女だよ、地獄の使いじゃないか、と白黒の少女は密かに思うのだった。
【楽園】
『私が人間になるために』
憂鬱な朝、体温で温まった布団に頭まで隠れるように籠った。
この中にいる時だけは、誰も私という存在を認識できない。そう思い込むことで心を落ち着かせた。
ギュッと体を丸める姿は、きっと大勢の「普通の人」にとっては滑稽に見えるだろ。それでもこれは、私が1日人間でいるためには必要不可欠な儀式なのだから。
きっと、この人間に上手くなりきれない私のそれに名前はついていない。名前がついたらどんなにいいかと考えている時点で、私はとことん甘いのだろう。自己嫌悪で胃がムカムカする。
布団の外からぴぴぴと朝の7:35を知らせる時計のアラームが聞こえる。ああ、ここから出なければ。
今日も1日、人間になりきらなくては。
(テーマ:楽園)
楽園
なんて
苦しみのない世界
なんて
この世界に
あるのだろうか。
恵まれた環境で
生きてきた
とは思う。
家族から
愛されていたと思うし
衣食住に
困ったことはなかったし
やりたいと言ったことは
挑戦させてもらったし
友人も
パートナーもいるし
でも
苦しいことは
それなりに
たくさん
あった。
それがあったから
今のわたしがある
側面もあるけれど―――
なるべく
苦しくない
楽園を目指す
人生にしたいかな。
#楽園
女、妖艶、色欲、金、愛、情欲、性慾、硝子、 煙草、刺青、血、香水、、、
身体の奥まで満たされていたいの
もっと深く、深くまで、泥々に愛して
中指でそっと撫でて、イかせて
女になりかけの肌を隅々までなぞって、
愛した跡を残して
抱かれると女だって感じるの
生で繋がっていたいの
みんなただのオスのくせに
みんなただのメスのくせに
抱かれてる間だけは、欲しいって感情だけで十分でしょ?
ずっと快楽に溺れていたいの
ずっと君だけを求める世界でいい
楽園は人によって違う。
でも、自分の楽園を他の人に共有し、共感はできる
人によって広い空間に何をするのも自由だ
例えばものをいっぱい置いたり、何も置かなかったりそれは個人個人の個性だと思う
誰かに合わせなくていいし、流されることもない
ただ自分がやりたいようにすればいい
それができるのが楽園だと私は思う
お題・楽園
楽園は、広い空間のイメージだけど、そこに物の存在がはいると、一気に狭い箱のような場所へと変わるね
しがらみがない、自分の好む空間が自分にとっての楽園かな
“好む空間”は、時を経て変わりそう
楽園って、どんなところだと思う?
「何にも縛られてなくて、ものにも、人間関係にも困らない、自由に過ごせる世界……とか」
「いいね。とても理想な世界」
貴方は私の意見を否定することも無く、ただ肯定した。何となく、そんな世界を想像しているように見えた。
「あなたは?」
「えぇ?うーん」
貴方は顎に手をあてて、頭を回転させている。
「自分が生きたいように出来る世界、とか」
「今いるこの世界も、そうじゃない?」
「全員が出来る世界ではないでしょ?みんながみんな、自分の生きたいように生きる。それが成立するような世界」
それが楽園かな、と貴方は言った。
ここが楽園じゃないなら、なんなのだろう。
私は静かに一人で考えた。
差別なく、区別なく、ドラゴンボールのような世界かな
楽園とはなんだろうか?
自分にとって過ごしやすいところが楽園なのか
だがそうなると他者にとっては過ごしづらい楽園ができてしまう
かといって皆で決まり事を決めてしまうとそこは楽園とは言えない。幾つかの縛りがあるから
楽園
君にとっての楽園と
僕にとっての楽園は
きっとぜんぜん違うから
僕は僕を全部受け入れてくれる人が
いる所が良い
君は美味しいものをたくさん
食べれる所が良い
だから別れるの
僕を受け入れてくれない君なら
僕にはいらないから
またいつか会えたらいいね
そしたら偽りの笑顔で迎えてあげるよ
楽園って何処にあると思います?
死んだ先の世界?夢の中?
もし、そんなものがあったとしてもそこに行ったらとても退屈だと思う。苦がなく、幸せに満ち溢れた世界。それはとてもつまらないと思う。今生きてるこの瞬間、苦があり、幸福も不幸も同時に存在するこの時こそ、楽園と言えるのではないでしょうか。
みんなにとっての楽園が、僕にとっては地獄だった。
「だから、こんな楽園さっさと抜け出しちまおう!」
そう言って僕の手を取って走り出した君。
その暖かい手が、楽しそうで力強い声が、どこまでも前を向いて走っていく君の姿が。
そこにある全てが僕にとっての楽園だった。
楽園
朝起きて窓を開け
お日さまをいっぱい浴びる
さあ お洗濯
お気に入りの服に着替えて
お気に入りのカフェでモーニング
となりの可愛い雑貨屋さんを覗き
お花屋さんのお姉さんにご挨拶
いつもの小さなスーパーで
お買い物
テレビを観ながら
大好きな手芸をするの
自慢の手作り
早くお友達に披露したいな
これが私の創る
今日の楽園
k
「何故だ!
何故禁忌を犯し、エデンを捨てたのだ…」
神は怒り、憂い、悲しんでいた
欲望と執着を知ってしまった今、
私の子供達は二度と戻る事はできぬだろう
「愚かな…」
神はそっと楽園の門を閉めた
「ガシャン」
そしてそれは永久に閉ざされた
……時は流れ
人々は欲望にまみれ、執着に溺れながら
楽園を求めている
「楽園」
知恵の実は 園の外では 二百円 八百屋の棚で 赤く輝く
お題「楽園」
『枯葉』
また私は一人だ。
孤独とは大人になる前に友達になったのに
アンビバレンスとアンビバレントの違いも
学んだのに当たり触りの無い言葉で別れを
告げる。許せないを何度重ねれば気がつくの?
大丈夫。私はね。
枯葉はその季節に育ててもらった土地を
あたためて養分として次に繋げるわ
大樹になるには
何十何百何千何万年学習しなさいな
そうして埋もれていたっていること
わかっていないようだ
楽園
人々は、何でも自由に出来る場所が楽園だと思うだろう。
だが、現在で何でも出来るようになったら?
確実に戦争になるだろう。
よく考えていたらわかるはずだ。
俺の楽園はな、人々の夢の中にその人の楽園を
作り、幸せにすることだ。
そしたら、戦争もなく、ゆっくり過ごせるだろう。
「主、大丈夫ですか」
布団に横になっているであろう主人に襖越しに声を掛けると、少しの間の後ぱたぱたと畳を手で叩く音が聞こえた。「大丈夫ではない」の意だろうか。「聞こえている」という合図だけかもしれない。とにかく、余程体調が悪いらしい。
年頃の女性である主の寝所においそれと近付くのもいかがかと遠目に窺っていたが、流石に折を見て声をかけるしか出来ないのももどかしくなってきた。かといって、せっせと食事や看病と世話を焼く侍女たちの手伝いは経験不足で却って邪魔になるだろうし、そもそも本日の警護番として不用意にここから離れるわけにもいかない。
ふむ、とひとつ唱えて考える。考えて、考えて、ぽんと思い付いた。
「主、宜しければ膝をお貸しましょうか」
以前より甘えの一環なのか主が「膝枕して」と老若男女問わず数多の従者に声を掛ける姿を幾度も見ていた。「はしたないですよ」と窘められる姿も同じ数ほど見ていたが。幼少の頃ならまだしも近頃はいつものことかとまともに取り合って叶えてやる者も滅多にいないのだ。まあ、とはいえ体調が悪い時くらい構うまい。そう思いつつ、そろりと声をかければ。
「えっいいの!?」
瞬間見えたのは、ぼさぼさに絡まった髪と、いつもより随分と青白い顔。体調不良は一目見て明らかだ。けれど、がたがた、がたんっと。主はそんな喜色に満ちた声とともに襖から飛び出てこちらに顔を見せてくれた。
驚きや心配よりあまりの執念にちょっと引いたのは秘密である。
"楽園"