『楽園』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
物言わぬ貝のようにひっそりと
色褪せた棺の向こうで眠りにつく
人々の祈りの如き青空は
切り取られた笑顔のように燃え上がる
楽園の道を探す徒に捧げるは木箱
鍵の在処は星の影に眠って
烏はないて 鳩は飛び去り
救われた骸たちは 涙するのだろう
無垢なる扉をくぐり抜けたなら
其処には我等の帰るよすががあるのだろう
林檎が落とされるまで、この場所は楽園だった。
天も地も関係ない。何にも縛られず、自由に歌い舞う。ヒトも獣も、男も女も、何も無い。ただの命がそこにあるだけ。それぞれの抱く心のままに、想いを紡ぎ、伸びやかに生きる。
真っ赤な果実がひとつ、どこからともなく堕ちてくる。
一口齧れば、あら不思議。
世界は重力に縛られて、空は遥か彼方に遠く。
知らなければ良かったのだ。命の形に、違いがあるなんて。違いの数だけ、踏み越えられない壁があるなんて。
楽園は、過去に消え去り。
雁字搦めの世界で、私たちは今日を生きる。
【楽園】
【楽園】
私が楽園の意味を知ったのは子供の頃だった。
けれど大人になった今だからわかる。
楽しいだけでは生きていけない。
幸せなだけでは満たされてない。
生きていくってだけで、楽園からはほど遠い。
社会に生きること、人と関わることも感情があるだけで、
苛立つ事も、不満に思う事もきっとある。
だけど、それらがあるから世の中をより良くしようとする人が、いるのも確かだと思う。
文明が進化し続けているのも、何かに不満を持っていてソレを解消しようとした結果である。
完全な楽園はないけれど、
日々の中にきっとたくさんの幸せが溢れている。
地上の楽園という文字がどん、と書かれたポスターを見ている──彼女の後ろ姿を、見ている。旅行に行きたいんだろうか。ポスターにある場所はさすがに無理だけど、近場なら何とか……?
「んー」
思考するこちらをよそに彼女が唸る。「なに?」と声をかける。つぶらでかわいい瞳がまっすぐこちらを見て。
「楽園……」
うわ言のように呟いた。考え事をしてる時の彼女はいつもそう。かわいいな、と眺めていると、いきなり身体の距離が縮んで、
「……ここ?」
「あう」
撃沈。陥落。敵わないったらない。傍がいいならいつでもどうぞ。
ついでにどっか旅行に行かない? きみとならどこでも楽園になるからさっ、とおねだり上手な彼女に、先刻切り上げた思考を再度回し始めたのだった。
「楽園」という単語を聞いた時、
飢える事のない場所
争いのない場所
差別のない場所を思い浮かべる。
よくよく考えてみれば人々が自由に生活を営める事前提で「おそらくそうだろう」というイメージを挙げている印象を受ける。
自由な生活…確かに私は仕事に従事し、そこから発生する給料を元に衣食住を賄っているし、
日本という国自体一般市民の目線では争いと呼ばれるのは少ない、
では最後に残った「差別」が無くなれば私は幸せになれるのだろうか?
私が営業成績を目に見えるレベルで上げれば、
極端な例も上げれば私が差別と感じる要因が消えれば
私は今いる環境を「楽園」と感じる事が出来るのだろうか?
…分かりきってはいるが、それは無いと思う。
私が営業成績を上げたとしても、
さらに上のノルマや管理職に任命されて
今と変わらない辛さで日々を過ごすのだろう。
私が苦手とする人が消えたとしても、
環境に変化を与えた事で別の人が苦手になって行くだろう。
つまるとこ楽園と呼ばれる様な場所は無いんだろう。
一生何かしらの苦しさを胸に抱えて生きる。
どこか淡い色の光の中で、やさしい花の香りが涼しい風に漂っていて、ささやかに鳥が鳴き交わす木陰に、雨は絹のようにさらさらと降り……。
わたしはそんな楽園にいたことがあるんだよ、と彼女が笑う。
僕が、どうしてずっとそこにいなかったの、と尋ねると、彼女はもっと笑う。
彼女はただ、君がいなかったからさ、と言う。
そうして、幸せそうに笑っていた。ここが楽園だっていうみたいに。
#楽園
【楽園】
Eden
それは一体どこに行けばあるのだろう
AdamとEveが出会い、共に堕ちた場所
そして、それは人類誕生の
ひとつのstory
一体僕は何を書いているのだろう
今回のテーマ、少し難しいね
書いた途中で戻ってきたよ、僕自身が
山は僕にとって楽園そのものだ………
人間の気配がなく……
綺麗なもので溢れている……
一方……
朝の電車というものは僕にとって地獄そのものだ……
人間多いし……
息苦しいし……
朝の電車のせいで、先生に呼び止められて……
「大丈夫ですか?」と言われるし………
本当に朝の電車はきついわ……
山に住みたい……
楽園
隣に貴方が居なければ
地獄と何も変わらない
楽園
花の咲かないところ
潮風の吹くところ
陽射しが強いところ
雨が多いところ
何がなくても
何があっても
思っていた様でなくても
辿り着いたところが
楽園
誰もいない海
真っ白なノート
適当に流れるラジオ
飲みかけのレモンティー
わたしの楽園
楽園
そこはとても美しい場所だった。自然豊かで、建ち並ぶ建物もどこか神秘的で、ただただ美しかった。
やわらかな暖かい太陽の光が降り注ぎ、気候はずっと穏やかで、時間の流れがひどくゆるやかに感じられた。
そこに住まうものは皆穏やかで、幸せそうだった。
まさに楽園と呼ぶにふさわしいその場所に、人間だけがいなかった。
もし楽園があるのなら
悲しみや怒りなど負の感情が無い
そんな所へ行ってみたい
閉園する
私がもう一度やり直すきっかけとなった場所
私がもう一度前を向く勇気をくれた場所
ここがもうすぐ無くなる
まだ恩返しも何もできていないのに
でも私には覆す力はない
私にできること
いや、こうなる前から答えは決まっていた
私はここで命をもらった
だから今度は私が誰かの息吹となりたい
それが私の夢であり私なりの恩返し
強く変わらず生きよう
また明日から前を向くから
今夜は少しだけ、下を向かせて
~楽園~
それは多分、紙一重の世界。
堕ちた先を知る者はいない。
そして、戻ることは許されない。
許されては、いるのだろう。
ただ、そこに至る道を、忘れているだけで。
それでも、紙一重であることに変わりはない。
”楽園”はいつだって地獄に変わることを、誰もが理解しながら忘れて憧れるのだから。
楽園
『楽園』
(男性2人のお話です。お嫌いな方はお逃げ下さいませ)
2人で居れば幸せ。
2人で居れる場所が楽園。
なんて、思っていた時期は確かにあったのよ、俺たちにも。
せやから言うて、いつまでも甘い顔してるだけではすまされへんやん、一緒に生活しだすと。
なあ、何回言うたら靴下裏返ってるの直して洗濯機入れてくれるの?
またコンビニで袋買ったんか。
ええ加減、エコバッグ持って行けや。
てか、マンションの斜め前にスーパーあんねんから、スーパー開いてる時はスーパーに行ってぇや、その方が安いねんて。
ちょ、なんでこんなに雨吹き込んでるのに、窓開けたまま昼寝してんねん!
ホンマ、まじで意味わからん!
てか、洗濯物入れてへんから、メッチャ濡れてるやんけ!
あ~あ、またプリプリしとーわ。
ヤバイなぁ。
とはいえ、あの怒った顔がまた可愛いねんなぁ。
なんて言うたら、1週間はクチきいてくれへんようなるから言わへんけど。
付き合ってた頃は、普通に可愛い弟キャラやと思ってたけと、生活してみたらおかんキャラやってんなぁ。
けどそこがまたええねんなぁ。
気取ってんで済むっていうか。
俺の場合は、気取るどころかもうちょい気遣えって感じやろけど、やっぱり一緒に住んで良かったなぁ。
甘えて靴下そのまま洗濯機に入れるし、つい仕事帰りにお前の好きなアイス買ってまうし、雨にも気づかずに爆睡してるけど、反省はしてんねんで。
ほんま、ゴメンやで。
明日は奮発して、お前の好きなちょっと高い肉でも買うてこよかな。
勿論、エコバッグ持ってスーパーで。
《楽園》
好きなジャンルの本ばかりが取り揃えられているその専門書店は私にとって楽園とも言うべき場所である。
この店を教えてくれた同じ趣味の友人には感謝してもし足りない。
家からだと少し遠いからとわざわざ車を出してくれるのも更にありがたい。
圧倒的感謝の念を込めてハンドルを握るその姿を助手席からひたすら拝む。
「相変わらず大袈裟だな」
「大袈裟じゃないよ! やっぱり持つべきものは好みの合う趣味友だね!」
「はいはい」
この男と知り合ったのは、とある会員制SNSだ。
といっても怪しいものではない。
そこは趣味に特化した同好の士ばかりが集うSNSで、興味のない人からしたらちょっとマニアックかもしれないが、ただそれぞれが延々好きなものを語るだけの至って健全なものである。
熱量が強すぎてたまに会員同士で意見がぶつかり合うこともあるけど、平時は概ね平和と言っていい。
彼とはたまたま出た話題から同じ大学に通っていることが分かり、しかも同じ授業を取っているという偶然まで重なったことから、すっかり意気投合して趣味友達となった。
それから友情を育み、今ではこうして月に2~3度、一緒に書店巡りなどに出かける仲になっている。
同い年だけど、知識量といい行動力といい、私にとっては師匠のような存在とも言える。
「それにしても、あの店、本当に特殊だよね。個人経営のお店だからってのを差し引いても、あれだけあのジャンルに特化した品揃えってかなり珍しくない?」
「あそこは店主が趣味でやってる店だからね。伝手で希覯本なんかも扱ってるし」
「ほんと凄すぎ。そんで、そんな特殊な店をよく見つけたよね」
「あれ、言ってなかったっけ? あそこは俺の叔父さんの店なんだよ。叔父さん独身だし、ゆくゆくは俺が継ぐことになってる」
「え、そうだったの!?」
「そう。つまり、俺と結婚したら、漏れなくあの店も付いてくるってわけ」
思わず心がぐらりと揺れる。
趣味が合って、一緒にいて楽しい趣味友達。
ただの友達というにはあまりに至れり尽くせりで、正直なところ、もしかして私に気があるのでは……なんて冗談半分で自惚れそうになったことは一度や二度じゃ済まない。
私の方だって、全く気のない相手とこんな風に頻繁に2人きりで出かけるわけもなく。
何かきっかけがあれば恋に発展するかも、と期待をしなかったと言えば嘘になる。
告白をすっ飛ばして告げられたプロポーズめいた言葉。
でも彼の口調はとてもフラットで、冗談か本気かの区別もつかない。
いや、普通に考えれば冗談だろう。そうに違いない。
それなのに、私の心臓はその言葉を勝手に深読みしてバクバクと速いビートを刻み出してしまう。
ヤバい。どんな顔していいか分からない。
頬はどんどん熱を持って火照りだすし、思考は完全に飽和状態だ。
ほんの数分前まで好きな作家の本のことでいっぱいだった頭の中が、今や彼で埋め尽くされてる。
「良かった、全然脈がないわけじゃなさそうだ」
「えっ」
小さく漏れた独り言。
私に聞かせようとした言葉ではなかったのかもしれない。
でも、軽自動車の狭い車内、運転席と助手席はとても近くて、私の耳はしっかりそれを拾ってしまう。
つまり、それは、そういうことだよね?
私の都合のいい妄想とかじゃないよね?
斯くして彼は気の合う趣味友達から恋人へと関係を変え、数年の時を経て結婚し。
それから更に数年の時を経て、その楽園は私達の終の棲家となったのだった。
追放されたから、余計恋しくなる。
でも、楽園にも悪魔はいるんだよね。
楽園
楽園と聞くと、楽しい。
そんなイメージがある。
自分にとって、楽園想像ができない。
毎日探して過ごしている。
『楽園』
いつの間にか、私は死んだみたいだった。ここは霊界らしい。私によく似た案内人が来て、小さな船に乗って、小さな島に連れられていく。
「霊界では、似た人同士で暮らす村や町がそこここにあり、その島もその一つで、私もそこの住人。同じ考え方するから意見の対立も起きず、平和に暮らせる、地味な楽園さ」と、言われた。
それは良かった。私はすっかり対人恐怖症になってるし。それでもたまには虚しくなったり不安になることもある。それが寂しいという感情なのかな。
「そんなときは、間接的に他の者と通信出来る装置があるよ」案内人は服のポケットからスマホみたいな物を取り出した。
「これは“スマホみたいなやつ”。よその村とも、前に生きてた世界とも通信出来ちゃう」
へえ、凄いね。生前の世界にまで。
「そうなの。だから、君がまだ生きてた2023年にも通信出来る、生前の君にも」と、案内人はスマホみたいなやつを弄りながら、
「一人で生きるのも死ぬのも不安で寂しいだろうし。だからって、直接的に話しかけるわけにはいかないんだよなあ」
じゃ、なんとなく示唆するのは?
「いいね、なんとなく示唆しよう。でもあの人鈍いから気が付かないかもね」
てことは、案内人も私も鈍いということである。死んでも治らないのかそこは。でも、自分と違う他者と比較することによって、初めて私は“鈍い”という事実が浮かび上がるのであり、比べる対象がなければ、そんなこと無いので、私が鈍いという事実は無くなるから、私はもう鈍くないのかもしれない。
「そんなことより、この件について文章書かせよう。言葉にして書き出せば、少しは頭の整理もつくだろ」
そうだね!そういえば生前、スマホでネットになんか駄文書き込んでたよ。匿名だからってよくやるよねえ。でも、お陰さまであの世は地味な楽園って知ってたみたい。少しは安心出来るじゃん。地味なところがいいと思う。私には相応ですよ。