はるみや

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 地上の楽園という文字がどん、と書かれたポスターを見ている──彼女の後ろ姿を、見ている。旅行に行きたいんだろうか。ポスターにある場所はさすがに無理だけど、近場なら何とか……?
「んー」
 思考するこちらをよそに彼女が唸る。「なに?」と声をかける。つぶらでかわいい瞳がまっすぐこちらを見て。
「楽園……」
 うわ言のように呟いた。考え事をしてる時の彼女はいつもそう。かわいいな、と眺めていると、いきなり身体の距離が縮んで、
「……ここ?」
「あう」
 撃沈。陥落。敵わないったらない。傍がいいならいつでもどうぞ。
 ついでにどっか旅行に行かない? きみとならどこでも楽園になるからさっ、とおねだり上手な彼女に、先刻切り上げた思考を再度回し始めたのだった。

4/30/2023, 1:54:39 PM