はるみや

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4/30/2023, 1:54:39 PM

 地上の楽園という文字がどん、と書かれたポスターを見ている──彼女の後ろ姿を、見ている。旅行に行きたいんだろうか。ポスターにある場所はさすがに無理だけど、近場なら何とか……?
「んー」
 思考するこちらをよそに彼女が唸る。「なに?」と声をかける。つぶらでかわいい瞳がまっすぐこちらを見て。
「楽園……」
 うわ言のように呟いた。考え事をしてる時の彼女はいつもそう。かわいいな、と眺めていると、いきなり身体の距離が縮んで、
「……ここ?」
「あう」
 撃沈。陥落。敵わないったらない。傍がいいならいつでもどうぞ。
 ついでにどっか旅行に行かない? きみとならどこでも楽園になるからさっ、とおねだり上手な彼女に、先刻切り上げた思考を再度回し始めたのだった。

4/29/2023, 1:36:42 PM

 風に乗ってどこかに行っちゃいたい、と今日の風を浴びて思う。まぶたの裏に見たことのない草原が映るように、そういう景色に惹かれる。隣の男がそれを許してくれるわけもないのだけど、どこかに行っちゃいたい。まぶたの裏の草原を見に行きたい。
「ん、いいぜ。連れてってやるよ」
「ええっ」
「なぁ?」
 きゅう、と空から良いお返事が。なるほど、お目付け役は一人に留まらないらしい。
「オレの目の届く範囲なら、どこにでも行ってくれていいからさ」
 そう言われると、「一人でどこかに行っちゃいたい」は薄れ「あなたとどこかに行きたい」に変わってくる。今日はもしかしたら寂しかっただけなのかもと整理をつけて、差し出された手を取ったのだった。