はるみや

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 風に乗ってどこかに行っちゃいたい、と今日の風を浴びて思う。まぶたの裏に見たことのない草原が映るように、そういう景色に惹かれる。隣の男がそれを許してくれるわけもないのだけど、どこかに行っちゃいたい。まぶたの裏の草原を見に行きたい。
「ん、いいぜ。連れてってやるよ」
「ええっ」
「なぁ?」
 きゅう、と空から良いお返事が。なるほど、お目付け役は一人に留まらないらしい。
「オレの目の届く範囲なら、どこにでも行ってくれていいからさ」
 そう言われると、「一人でどこかに行っちゃいたい」は薄れ「あなたとどこかに行きたい」に変わってくる。今日はもしかしたら寂しかっただけなのかもと整理をつけて、差し出された手を取ったのだった。

4/29/2023, 1:36:42 PM