『本気の恋』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
胸がすうと冷えた。もし、きみをふと、なにかの景色と一緒に思い出して、つぶれるほどの痛みにかち合ったら、わたしはどうすればいい。これからきみが生きるうえで、ふれるもの、出逢うものに立ち会えない苦しみを、だれに打ち明けたらいい。きみがあっという間に奪っていったものは、だれにも埋められないのだ。ひどい痛みに打ちひしがれて、それでもきみを永遠に失うことだけはきまっている。
付き合ってる相手のことってみんな好きだよね、?
なのになんで他の人と平気で一緒にいれるの?
付き合ってる人がどこか行っちゃうって思わないの?
他の人のところで話してても嫉妬しないの?
なんでそんな軽い恋できるの。
同輩に「ずっと一緒にいるけどそんな話すことあるの?飽きない?」
って言われたけど別に話さなくても一緒にいるだけでいいじゃん。
本当に好きな人は飽きねえよ。
だってそうでしょう?
世界でいちばん大切なひとなんだから
「本気の恋」
実は私は、高校時代と大学時代、六年間の片思いを経験しました。この間、告白すること三回、もちろん振られました。そして、その方に彼女ができて、ライバルを褒めるのは苦しいことですが、まさに可憐な女性でした。性格的には私自身とは反対で、私自身の良いところを全否定された気分になり、ようやくあきらめがつきました。この片思いの間の時間は、もったいなかったと思います。何故なら、いまの夫とは深い心の絆を感じ合えるパートナーで、結局のところ、片思いの相手に告白して、振られた場合、相手が自分とは相性が合わない、もしくは自分の好みではないと判断されたと言えるかもしれません。
ですから、自分と相性の合う運命の人を探す方が良いです。ずるずると気持ちを引きづったまま、無意味な時間を過ごすことになりかねません。まさに私自身がその体験をしました。
片思いを成就するために、お相手を殺したいとまで願う人もおられるようですが、これは気持ちを切り替えて、自分の苦しさを手放す方が良いです。最悪の結果を招いて、自分自身を含めて、周囲の人々まで不幸にしかねません。
私の失恋は、とても幸せそうな様子を見ているしかなかったので、正直あの時の気持ちはまるで人生が終わったかのようでした。さらに苦しい経験を繰り返すことになりましたが、最後は神さまのお声を聞いて、いまの夫と結ばれました。皆様にも運命のお相手が現れるので、気持ちを切り替えて新しい人生を歩み始めることが大切です。本気の恋は良いですが、本気の片思いには執着せずに、はやく諦めることが一番です。
Theme:本気の恋
生涯に愛する人は一人だけ。
生まれてまもなく実母から引き離されて育った私は、子どもの頃からそう言い聞かせられて育ってきた。
「あなたを愛し、あなたも生涯を共にしたいと思う人が必ず現れるから」
育ての親はことあるごとにそう言っていた。
ある日、私は彼女と出会った。
「運命だと思った」とは、後に彼女から聞いた言葉だ。
出会いから程なくして、私と彼女は一緒になった。
彼女は、天涯孤独の身だった。
内気な彼女は、友達もほとんどいなかった。
「あなたと暮らすことにしたのは、寂しかったからかもしれない」
彼女は私を抱きしめながら、不安そうにそう言う。
どんな理由でも構わなかった。私が本気で愛する人は彼女だけなのだから。
私の誘いで彼女は外に出るようになり、私を介して友人や知人もできた。
男友達もできた。彼女はその人と結婚した。
彼女が幸せでいるのが私にとっての幸せだから、私が一番でなくなっても構わなかった。
彼女は彼と家庭を持ち、子どもも二人生まれた。
私と彼女の関係は、それでも変わらなかった。
「あなたはいつも私に幸せをくれるね」と彼女は言う。
私こそ、彼女からたくさんの幸せを貰っている。
お互い様だよ、と私は言う。
これは恋ではないのかもしれない。
そもそも私と彼女との間に恋愛は成立しないと言う人も多くいる。
でも、私にとって、彼女は最愛の恋人であり、伴侶であり、愛する人だ。
生涯にたった一人だけの、私の愛する人。
私と彼女とでは時間の流れ方が違う。
私はベッドに横たわっていた。
涙ぐむ彼女とそれを支える彼女の夫が、私を見守っている。
「大好きだよ、出会ってから今までずっと。あなたと出逢えてよかった」
そう言って私の頭を優しく撫でてくれる。
私もだよ。
尻尾を振ってそう答えたが、泣いている彼女には見えただろうか。
生涯に愛する人は一人だけ。
そんな人に出会えた私は幸運だったと思う。
ずっとずっと先、彼女と再び会える日が来るまで待っているから。
だから泣かないでほしい。
虹の橋の畔で、待ってるから。
本気の恋
同級生のえみが、映画館で彼とキスをしたと告白した。
私も恋がしたいと、そしてキスはどんなものなのだろう…と想像した。
「全身に電気が走った感じ!」とえみは言った。
17歳の夏だった。私は一人行くあてもない旅に出たくなった。
町田で乗り換えて片瀬江ノ島まで電車に揺られた。
太陽にキラキラと輝く波を見ていた。
何時間経ったのだろう。人気も疎らになった海岸で、その人は優しく声をかけてきた。
「海を見てたの?東京の人かな。」
私は頷いた。「そう。僕は国立から来たんだよ。」
少し話してみると、国立の大学に通う私より4つ年上のお兄さんだった。
「帰り道だから、送ってあげるよ。」
危険な香りは、一切しないそのお兄さんに、自宅まで送ってもらった。
車の中で、お互いのことを沢山話した。都立でも校則の厳しい進学校を選んで私が後悔していることや、名前は聡さんで、バイクレーサーの平忠彦さんに憧れていること、勉強が忙しくて彼女とお別れしたこと。私が家族と上手くいっていないこと。映画や音楽の話し。
初めて会った人なのに、心を許して何でも話せた。
そして聡さんは、とても大人だった。
私は少し背伸びをして、聡さんと恋に落ちた。
ユーミンのこの歌が好きと言えば、歌に出てくる山手のドルフィンにも連れていってくれた。
就職活動が忙しくなった頃、私も受験ですれ違う日々が続いた。
大手の銀行に就職が決まった聡さんを、心からお祝い出来ない自分がいた。
そう、私は子供だった。何であんなに憧れていたレーサーの道に進まないの?と本気で思った。
何度も家の電話に連絡があったけれど、私は居留守を使った。
優しい聡さんは、今はどうしているだろう。
本気の恋を思い出しては、あの時私が大人だったらどうなっていたのだろう…と。
そんな話を娘にしたら、「お母さん、何でその人と結婚しなかったの?」と真剣に問いかける娘に「そしたら、真奈美と修一は生まれてなかったじゃない。」と言って、二人で笑った。
恋が本気だったかどうかは、散り際にわかるものだ。
今度こそ恋に落ちないと誓っても、私はまた泣いていたからだ。
恋って綺麗だ。
時に残酷であるからこそ、それが美しい。
それが恋であろうが愛であろうが、何かを本気で追い求めるというのは、それだけで美しい。
例えいくら幸せであろうが、愛し、涙することの知らない人生に価値はないだろう。
本気の恋…とは
前の恋がカケラも残ってない
この恋以外、存在しないこと
って感じ?
私には、しばらく会えていない友達がいた。
彼女のことは、最も気軽に話せる親友のように思っていた。
__ただし、彼女と私を繋ぐのは、インターネットの糸一本、だった。
ある日私は、大学の友人とわらびもち消費パーティーを開いていた。ちなみに、ハッピー要素はほぼない。
大学祭でかなりの量が余ったわらびもちの廃棄を避けるため、あの手この手でアレンジして食べようということで、友人の家にお邪魔していた。
実はすでに昨日も嫌というほどわらびもちを食べていたので、休憩がてら、ちょうど前から私が勧めていたゲームを友人がやり始めるという話になり、とりあえずフレンドになって遊んでいた。
あっという間に時間は過ぎ、一旦こちらは切り上げようという雰囲気になった時、あるひとつの通知が目に入った。
『Mがオンラインになりました。』
数年前、中学の友人からの勧めがきっかけで、私はとあるスマホゲームをやり始めた。
そのゲームはグラフィックや音楽の美しさがずば抜けていることで有名で、私自身最初はそういう観点から、雰囲気ゲーのようなイメージで楽しんでいた。実際、あの広告と寸分変わりないクオリティには唖然とさせられた。
しかし遊んでいくにつれて、徐々にこのゲームが持つ“目的”は別のところにあるようだと気がついた。
フレンドとの交流を促すデイリータスクや、日々増えていく感情表現用のエモート、そして複数人の協力が必須とされるイベントなど、そこに透けて見える真意はもはや火を見るより明らかだった。
そう、つまりは実質コミュニティゲームなのだ。
もちろん初期の頃は、本編を一周クリアしてからが始まりだと言えるほど衣装集めやイベントクエストが楽しく、ソロでも十分に楽しめるかのように感じていた。
しかし、ログイン回数がもうかなり少なくなった今、このゲームに残されたプレイ動機は、フレンドの存在が大半を占めていた。
Mも、その1人だった。
お互いやけに馬が合い、Mとの会話のノリや温度感は本当に心地よかった。Mがそこまで思っているかはわからないが、少なくとも私はできる限り縁を切りたくないと思っていた。
しかし、おそらく直近2ヶ月ほどはゲームのログインが合うことはなく、別途交換した連絡先にも反応は返ってこなくなった。
私はちょうどこの日そのことに気づき、終わったのか、と静かに悟っていた。
静かに溢れる感情を咀嚼することしかできなかった。
正直全部吐き出したかったが、インターネットを信じすぎるのは良くないと己を諭し、飲み込んだその時だった。
あの通知が、私の背中をぶっ叩いて、飲み込んだはずのものを全部吐き出させた。
ずっと待っていた。ずっと話したかった。
早く話がしたくて仕方がなかった。
結局のところ、この時は一旦夜に約束を取り付けて、なんとか時間を取ることに成功し、久しぶりに一緒に遊ぶことができたが、もう喜びで放心状態だった。
というか、蓋を開けてみるとどうやらチャットアプリのアカウントがログインできなくなったらしく、アカウントを一新していたらしい。
故にMの方もこちらがどうしているのかは気になっていたらしく、お互い愛半分チャットアプリ半分という形で思い合っていたようだ。
....普段こういうことを言うのは本当に嫌だが、今回ばかりは、心の底から、まるで恋をしているかのような気分だった。
今日のテーマ「本気の恋」
本気になれるのはいつだって「好き」に対してだけ。
それすらも本気じゃなきゃ、あたしは何にもできない。
「本気の恋」…
やっぱり高校生の時かな
同じクラスのちょっとヤンな感じの人。
ワルっぽいけど、一緒にいて楽しかったなぁ。何してても。
いろんな場所行ったなぁ。
楽しかったなぁ。
でも、はっきり好きって言われてなかったな…
ベッドの中では「好き」って言ってたけど…
それでも、嬉しかった。
あれから、随分時間経ったけど
やっぱり思い出すのは
彼の事。
あの時、ベイビーできてればな
違ったのかな
アタシの人生
今でも、やっぱり好きだよ
梅茶々
本気だった。年下の可愛いあの子に本気で恋していたから、手を出さなかった。
数ある誘惑にも心無い言葉も全部無視した。
だからだろうか、彼女は同い年の優しそうな彼氏を作って、今幸せそうに笑っている。
残ったのは、自分の内側を焼き続ける、赤く激しい炎だけ。
//本気の恋
私はまだ本気の恋を知らない。彼に抱いている「これ」はもしかしたら本気の恋なんじゃないかと思っている、けれど違うかもしれない。恋は厄介だ。その人の言動ひとつで一喜一憂したり勘違いしたりする。だったらそんなものはしない方がいい。恋なんてしなくても生きていける、むしろ、恋をしたら寿命が縮む気がする。
依存は毒だ。恋は依存で執着だ。依存は、それを失ったら確実に副反応が出る。麻薬だ。
こんなことを年中思っているから私は本当の恋ができないんだろうし、する気もない。人と関わるのはストレスになる。それを教えてくれたのは君、君だよ。
「好き」
そんなの言葉だけならいくらでも言える。人に限らず物や動物にだって気に入ったものなら連呼してるじゃないか。本気かどうかよりも、どれが一番なのか優先順位の方が気になるでしょ。
恋愛もそうじゃないのかな。他のどんなものよりも優先順位が高いだけ。気持ちの強さというより、対象をどれだけ優先できるかで決めてるのでしょ。
これをいうと「拗らせてる」だの「恋したことないんだね」と呆れられるだけで伝わらない。
好きも優先順位を決めることも結局は本人の感情次第であることは変わらないのにな。そんなにおかしなことなの?
【題:本気の恋】
本気の恋
キミが笑ってキミが泣いてキミが怒って
キミの一つ一つの表情が忘れられなくて
どんな表情もどんな仕草もキミだからキミだけが一番に可愛いんだ
ボクはキミを幸せに出来なかった ごめんね
こんなに好きなのに出来なかった
それは多分まだ恋だったから
愛じゃなかったんだね
自分もキミも両方が欲しかった
後悔してる
キミと離れてようやく気がついた
今気がついても遅いね
でもボクがキミを好きだったこと
それだけは嘘じゃない
本当に心から好きだったよ
愛せなくてごめんね
本気の恋は 自分を
強くする
思っている人に
恥ることのない自分に
なりたいと思い続ける
あの子のことがただ気になる。
それを好きっていうんだよ。そうなの?
好きっていうのは、もっとこう、、、
その後に言葉が続かない。好きってなんだ?
その瞬間にふと頭を過った、初恋の感覚。
晩夏の正午はとても過ごしやすいとはお世辞にも言えない。講義終わり、ランチを並べて束の間の休息だ。
この夏は何もしないで終わったよ。
それな。
部活とバイトで潰されたわ。
他愛もない会話。
気になる人がおんねや。
ほう。
燦々とした日差しから遠ざけられ、心の奥底から少しの熱気がふんふんと。
おれはその人のことがもっと知りたいんよ。秋はそこからや思てる。
何が言いたかったんだろう。自己完結しただろう。自分が一番理解できない、さっきの流れを切ってまですることか。
好きなんな?
かな?いやちゃうやろ。
好きやないん?
好きっていうか、ただ気になってるだけやから。
そうか、それを好き言うんやけどな~
そうなん?
やろ。
わかんねー
これが「好き」なのか?これが「恋」なのか?
分からない。
顔を思い出す。可愛いが、忘れられない、というわけではないし、ずっとその子のことを考えているというわけでもない。ただ、周囲から半分ちゃかされて、そう意識しているようにも思えてくる。
本気で恋をするって、どんな感じなんやろ。
わからん。
あんた、こんな部屋によく居られるね。切るよ?
知らん。もうわからん。リビングにぐでる僕をよそに空調を切る姉。
あつい。気になれば気になるほど、そうではないような気持ちと錯覚を連鎖的に起こしていく。
ぐでんな。起きろえ。
開けっ広げで焼けた肌は、そのたくましさ、羨ましい。
あめのみ
本気の恋と聴くと、ドラマチックで大人の雰囲気を感じますね。本当の恋というのは胸の中が、ぽかぽかと、暖かくなるようなものかもしれません。本気の恋はどちらにでも転びそうだけど、本当の恋は、一途に優しく包んでくれそうです。
ああ、本当に馬鹿だなぁ。
自分には絶対に届かなくなってから。
あれが本気の恋だったんだと気付くなんて。
涙が止めどなく落ちるほど。
私の心がこぼれていくみたいで。
それがまたどうしようもなく悲しいのに。
貴方に出会わなかったら。
今の私はないのでしょう。
あんなに幸せな日々が。
私にもあったのだと。
誇れることもなかったのでしょう。
【本気の恋】
「そうだ。恋愛系も、お題の常連だったわ」
「初恋の日」、「恋物語」、「失恋」、それから「本気の恋」。「恋」の字がつくだけでも4回目。
お前とも長い付き合いになったと、某所在住物書きは今回の題目の、特に「恋」の字を見た。
「愛」も含めれば「愛を叫ぶ。」に「愛と平和」、それから「愛があれば何でもできる?」の7回目。
今後、更に増えるものと予想される。
「……そういや『本気の恋』、『愛があれば』とは言うけど、『本気の愛』とか『恋があれば』とかは、あんまり言わない気がするわな。なんでだろ」
そもそも「本気の恋」の反対とされる「遊びの恋」は、本当に「恋」であろうか。
物書きは首を傾け、黙り、視線を下げた。
――――――
昔々のおはなしです。まだ年号が平成だった頃、8年9年くらい前のおはなしです。
都内某所に、4年ほど前上京してきた珍しい名字の雪国出身者が、ぼっちで暮らしておりまして、つまり附子山というのですが、
田舎と都会の違いに揉まれ、打たれ、擦り切れて、ゆえに厭世家と人間嫌いを発症しておりました。
異文化適応曲線なるカーブに、ショック期というものがあります。
上京や海外留学なんかした初期はハネムーン期。全部が全部、美しく、良いものに見えます。
その次がショック期。段々悪い部分や自分と違う部分が見えてきて、混乱したり、落ち込んだりします。
附子山はこの頃、丁度ショック期真っ只中。
うまく都会の波に乗れず、悪意に深く傷つき、善意を過度に恐れ、相違に酷く疲れ果ててしまったのです。
大抵、大半の上京者が、大なり小なり経験します。
しゃーない、しゃーない。
「附子山さん!」
さて。
「ケーキが美味しいカフェ見つけたの。行こうよ」
そんなトリカブトの花言葉発症中の附子山に対して、まさしくハネムーン期真っ最中と言える者が、附子山と同じ職場におりました。
加元といいます。元カレ・元カノの、かもと。未来が予測しやすいネーミングですね。
「何故いつも私なんかに声をかける?」
絶賛トリカブト中の附子山は、「人間は皆、敵か、まだ敵じゃないか」の境地にいるので、加元を無条件に突っぱねます。
「あなた独りか、他のもっと仲の良い方と一緒に行けばいい。何度誘われようと私は行かない」
加元は附子山の、威嚇するヤマアラシのような、傷を負った野犬のような、誰も寄せ付けぬ孤高と危うさと痛ましさが大好きでした。
なにより附子山のスタイルと顔が、加元の心に火を付けたのでした。
このひとが、欲しい。
このひとを身につけたい。
恋に恋する加元にとって、この所有欲・独占欲の大業火こそが、すなわち本気の恋でした。
「だって、附子山さん、いっつも何か寂しそうな、疲れてそうな顔してるんだもん」
己の声、言葉、表情それら全部を使って、附子山の傷ついた心に、炎症を起こした魂に、
ぬるり、ぬるり、加元は潜り降りていきます。
「美味しいもの食べれば、元気になるよ。一緒にカフェ行こうよ」
それは、表面的には附子山をいたわり、寄り添う言葉に聞こえますが、
奥の奥の最奥には、獲物の心臓に手を添える狩猟者の欲望がありました。
そして悲しいかな、附子山は加元の言葉の、奥の奥に気付くことが、まったく、できなかったのです。
「……あなたが分からない」
何度突っぱねても、どれだけ拒絶の対応をとっても、こりずに優しく言葉の手を伸ばしてくる加元に、
ぽつり、怯えるように、少し懐いてきたように、でもまだ相手を威嚇するように、附子山は呟きました。
この数ヶ月後、加元は望み通り附子山を手に入れ、
しかし「実は附子山、心の傷が癒えてみたら、自然を愛する真面目で心優しいひとでした」の新事実発覚で地雷級の解釈違い。ショック期が堂々到来します。
「アレが解釈違い」、「これが地雷」、「頭おかしい」と旧呟きアプリに愚痴を投下していたら、
あれや、これや、なんやかんや。
元カレ・元カノの加元の名前どおり、プッツリ、附子山の方から縁切られましたとさ。
しゃーない、しゃーない。
本気の恋だと思っていた。
結婚までいくと。
僕はただ思い込んでいただけだった。
世の中には、本気じゃない恋がある。
僕の場合は彼女の方が本気ではなかった。
ただ、断れなかっただけ。
本気になるだけ損をする。