ねこ

Open App

私には、しばらく会えていない友達がいた。

彼女のことは、最も気軽に話せる親友のように思っていた。



__ただし、彼女と私を繋ぐのは、インターネットの糸一本、だった。







ある日私は、大学の友人とわらびもち消費パーティーを開いていた。ちなみに、ハッピー要素はほぼない。
大学祭でかなりの量が余ったわらびもちの廃棄を避けるため、あの手この手でアレンジして食べようということで、友人の家にお邪魔していた。

実はすでに昨日も嫌というほどわらびもちを食べていたので、休憩がてら、ちょうど前から私が勧めていたゲームを友人がやり始めるという話になり、とりあえずフレンドになって遊んでいた。

あっという間に時間は過ぎ、一旦こちらは切り上げようという雰囲気になった時、あるひとつの通知が目に入った。




『Mがオンラインになりました。』











数年前、中学の友人からの勧めがきっかけで、私はとあるスマホゲームをやり始めた。
そのゲームはグラフィックや音楽の美しさがずば抜けていることで有名で、私自身最初はそういう観点から、雰囲気ゲーのようなイメージで楽しんでいた。実際、あの広告と寸分変わりないクオリティには唖然とさせられた。

しかし遊んでいくにつれて、徐々にこのゲームが持つ“目的”は別のところにあるようだと気がついた。

フレンドとの交流を促すデイリータスクや、日々増えていく感情表現用のエモート、そして複数人の協力が必須とされるイベントなど、そこに透けて見える真意はもはや火を見るより明らかだった。

そう、つまりは実質コミュニティゲームなのだ。

もちろん初期の頃は、本編を一周クリアしてからが始まりだと言えるほど衣装集めやイベントクエストが楽しく、ソロでも十分に楽しめるかのように感じていた。

しかし、ログイン回数がもうかなり少なくなった今、このゲームに残されたプレイ動機は、フレンドの存在が大半を占めていた。


Mも、その1人だった。


お互いやけに馬が合い、Mとの会話のノリや温度感は本当に心地よかった。Mがそこまで思っているかはわからないが、少なくとも私はできる限り縁を切りたくないと思っていた。


しかし、おそらく直近2ヶ月ほどはゲームのログインが合うことはなく、別途交換した連絡先にも反応は返ってこなくなった。

私はちょうどこの日そのことに気づき、終わったのか、と静かに悟っていた。
静かに溢れる感情を咀嚼することしかできなかった。
正直全部吐き出したかったが、インターネットを信じすぎるのは良くないと己を諭し、飲み込んだその時だった。

あの通知が、私の背中をぶっ叩いて、飲み込んだはずのものを全部吐き出させた。



ずっと待っていた。ずっと話したかった。
早く話がしたくて仕方がなかった。


結局のところ、この時は一旦夜に約束を取り付けて、なんとか時間を取ることに成功し、久しぶりに一緒に遊ぶことができたが、もう喜びで放心状態だった。

というか、蓋を開けてみるとどうやらチャットアプリのアカウントがログインできなくなったらしく、アカウントを一新していたらしい。

故にMの方もこちらがどうしているのかは気になっていたらしく、お互い愛半分チャットアプリ半分という形で思い合っていたようだ。




....普段こういうことを言うのは本当に嫌だが、今回ばかりは、心の底から、まるで恋をしているかのような気分だった。




























今日のテーマ「本気の恋」

9/13/2023, 5:25:38 AM