『暗がりの中で』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
暗がりの中で(2023.10.28)
パラ…パラ…
薄暗く、静謐な書庫にページを捲る音だけが響いている。「書庫」とは言ったものの、いくつかの本棚が並んだ、こじんまりとした部屋だ。一つだけある小さな窓からは、盛りを過ぎた柔らかな陽光が薄く差し込んでいる。まるで、そこだけ時間が停滞しているような、穏やかな空間。しかし。
「あ、やっぱりここにいた!」
突然開いた扉と、静かな部屋に不似合いな元気な声。先ほどまでまったりと本を読んでいた少女は、諦念のようなものが混じったため息を吐く。
「……また来たの、柚子葉」
「え、だめだった?…あ、読書の時間を邪魔しちゃったのはごめんね…。でも沙耶香と一緒に帰りたくて…」
先ほどまで本を読んでいた少女、沙耶香は、目の前のもう一人の少女をじっとりと見る。申し訳なさそうに身を縮める少女は柚子葉、沙耶香の幼馴染だ。
「柚子葉、今日は委員会あるから遅くなるって言ってなかった?それに、帰るならあの陽キャたち…じゃなかった、委員会の人たちと一緒に行けばよかったんじゃ…」
「委員会は早めに終わったし、沙耶香はいつも放課後ここで本を読んでるから、今の時間くらいにここに来れば一緒に帰れると思ったの」
なるほど…と、返事になっているのかわからない言葉を返しながら、沙耶香は内心げんなりとした。こんな薄暗い書庫でひっそりと、一人で読書しているところからわかるように、沙耶香は日陰の者、要するに陰キャというやつである。対する柚子葉は明るく社交的で、友人も所謂陽キャが多い。まぁ、本人の性格は少し天然ながら温厚で優しいので、誰しも柚子葉のことは概ね好意的にみているだろうが。
「ねぇ沙耶香、読書なら図書室でもできるのに、どうしていつもここに来てるの?別にそれが悪いとかではないけど、ここ薄暗くて目が悪くなりそうだし…」
居心地の悪そうな柚子葉に対して、私は「やれやれ…」とでも言うように肩をすくめてみせた。ところでやれやれってどういう語源なんだろう。いや、話題が逸れた。
「図書室って、人の出入りが結構あるし、自習してる人も多くてなんだか落ち着かないんだよね。それに、目が悪いのは元々だからもう気にしないし」
「確かに、図書室の雰囲気は私も苦手かも…」
「あと、薄暗いところってなんか安心しない?ほら、布団の中に潜ると安心する、みたいな」
「うーん、それはちょっとわからないかなぁ…」
苦笑いする柚子葉と、私の感性は合わなかったようだが、それでも彼女は私のことを頭ごなしに否定することはない。柚子葉には、陽キャにありがちな(これは偏見でしかないが)真夏の強烈な日差しのような押し付けがましさがなく、同じ「陽」でも、あたたかな「陽だまり」のような性格だ。それが案外、薄暗い自分には心地よい。
気を取り直して色々と話しかけてくる柚子葉におざなりに、しかし気安く返しながら、帰り支度を済ませる。そして、いつまでもこんな関係が続けば良いのにな、なんて思いながら、今日も私は柚子葉と共に家路を辿るのだった。
僕はただ終わるのを待った
僕が寝たフリをしていることに気づかずに
あいつは湿った手で僕の服をめくる
僕の意識は遠くにあり
僕はただそれを眺めていた
真っ暗な部屋の中で
まるでトンネルのような暗がりの中を、途方もなく歩いているような気分だった。
真っ暗で何も見えない、光なんて全然見えてこない。そんな事に嫌気が差していた。
そんな時だった。
貴方君会ったのは。何もかも嫌になっていたときに、手を差しのべてくれた君は、暗がりの中で踠いていた僕のただ一つの光だと思えたんだ。
暗闇の中で姉は変な事をやっていた。
それは何というと...
変な踊りをしながら変なことを言っている
私はすぐさま頭の病院に行った方がいいのではないか
そう思ったのだけれども
こいつはかなり重症なのだ
とてもいい病院に行っても
この症状は治らないと改めて思ったその日でした
#22『暗がりの中で』
自販機に寄ってから化学室に行く。ドアを開けて入れば三角フラスコを振る白衣を着た彼の後ろ姿が。実験は順調?おー、おかげさまでな。アイス買ってきたからちょっと休憩しない?ああ、隣座れよ。振り返った彼は私の顔を見るなり眉を寄せたけど、気にせずアイスを半分にして渡す。コーヒー味が染ますなー。その間もジーッと見られていたようでどんな顔をすればいいかわからない。頭をガシガシ掻いたかと思えばため息を付いて、
「何があったか知らねーが、テメーのことだから頭ではわかってっけどやりきれねーんだろ?」
「私はそこまで合理的じゃないからさ。ちょっと今はメンテナンス中なの」
「…オーディション落ちたってところか」
わかってるんじゃん。傷口に塩塗り込まないでほしいよ、まったく。
「別に迷惑かけるつもりないし、話聞いてほしかったから来たわけじゃないよ」
アイスのプラスチック容器をプクッと膨らませて拗ねてみれば、不意に頭を撫でられてびっくりする。別に面倒見のいい奴でもないのに。
「まだ整理し切れてねーだけなのにその気持ちごとなかったことにすんなよ。お前の内面が感情的なのも人間味合っていーじゃねーか」
今日だけな、と言って抱きしめられば涙と抑え込んでいた気持ちが溢れる。
高校生活最後の舞台なんだから私も主演を、と願ったっていいじゃないか。でも結果はいつもと同じであの子の引き立て役。劇は誰か1人でも欠けたら成り立たない。特に主人公の相手役なんて物語を支える重要な存在ってことぐらいわかってる。でも、悔しくて悔しくて。自分が惨めでならなかった。彼に主演を務める私を見てもらえたらどれだけ良かったか。
「まァ助演女優賞間違いなしの演技、悪くねーがな」
は。いつか主演になったら観に行ってやってもいいって言ってたはずなのに。
「テメーにしかできない演技カマしてこいよ。少なくとも俺はファンだぜ」
ヤケに優しいからきっと後日、実験に付き合わされるんだろう。でもいいわ。アンタのために演じてあげる。なんだかんだ長い付き合いで、私をよく知るコイツにはいつも助けられてて、どこに迷っても正しい方へ導いてくれる。だいぶ落ち着いた。
下校時刻になって閉められる門をギリギリで抜けて並んで帰る。実験について独り言が聞こえる。
「てか、いっつもおんなじ女優は飽きんだよ。アイツ部長と付き合ってるらしーじゃねーか」
え、待って、そういうこと?ククッ知らなかったみてーだな、恋愛云々疎いお前らしいわ。疎くないもん。どうだか。
好きだと言わせてくれないのはそっちなのに。大きな目標があるから恋愛とかしてる暇はないんでしょ?応援したいし、できるだけ迷惑かけたくない。きっとこれ以上に甘えちゃうから。
また実験手伝いに行くね。ありがてー、頼むぜ助手様。……助手。あ゛ー支え役は嫌だっけか?ううん全然、喜んで。
助手だって。彼の隣にいられる正当な理由じゃないか。どこまでも付いて行くから、私にもっと知らない景色を見せて。
「おい、起きろ」
「んん…?」
「交代だ」
「あ、ロイ、見張りありがとう…」
「俺は寝る。明日も狩りだからな」
まだ少し眠い。そういえば今日はライラと一緒だったんだ。焚き火の前に座っている。
「ミリア、起きたのね」
「うん。大丈夫?」
「今のところ何もないわ」
わたしたちは6人で旅をしている。仲間といるのは楽しいけど大変なことも少しだけあって、そのひとつが野営だ。毎日宿に泊まれるわけではない。野営のときは二人一組で、火のそばで見張りをするのだ。
「ねえライラ」
「なに?」
「あのね、今日ルークがダジャレ言ってたとき、シオンたちはくだらないって言ってたけどわたしはちょっと笑っちゃった」
「あはは!実は私もよ。あの3人のツボには入らなかったみたいだけどねえ」
暗い森の中、この火のそばだけは明るくてライラの顔がよく見える。わたしが大好きな笑顔。一緒に見張りをするとき、ライラはいつもわたしの話をニコニコしながら聞いてくれる。リヒトは空を指さして星座の名前や神話を教えてくれるし、ロイは黙って弓の手入れをしているけど、わたしが寒そうにしてたら何も言わないで薪をくべてくれる。シオンの故郷のことを聞いたり、ルークと一緒に明日は何を食べるか考えたりする時間も大好き。みんなすごく優しい。わたしが一番年下なんだけど、お兄ちゃんやお姉ちゃんがいたらこんな感じなのかな。そんなことを考えるころには、東の空が白みはじめていた。朝焼けを見ることができるのは、この時間帯に見張りをする人の特権だ。
暗がりの中で寝ようとしてるけど、なかなか眠れない。あの日の出来事が、声が、頭から離れない。いつかふたり、結ばれる日が来るのかな。何で好きになったのかはよくわからない。でも、初めてきみを見かけた日、不思議な気持ちになったのを覚えている。ずっと、この人を探していた気がする、って心のどこかで感じた。それからきみを見かけるたび、どんな人なんだろうってすごく気になった。ねぇ、知らないでしょ?運命を信じているのは、自分だけなのかな。でも、待ってる。ずっと待ってる。きみが振り向いてくれる日を、待ってる。待ってる間は自分を磨くよ。相応しい人になれる、その日まで。
あなたの名前を呼ぶ。
きっと助けてくれると信じて。
きっと気づいてくれると信じて。
希望を持って。
あなたの姿を探す。
きっと来てくれると信じて。
きっと手を取ってくれると信じて。
あなたの優しい声が耳に響く。
手を伸ばすと、あたたかい感触が伝わる。
あなたの香り。
いつだって希望を与えてくれる。
そう、信じている。
暗がりの中でも。
信じるものがある、私は強い。
暗がりの中で
最も暗い闇のなかにいるときこそ、光を見い出すことに集中しなければならない。
アリストテレス
すごくしんどかった時に、一日中聴いていたある歌手について、「この人の歌は暗いんじゃなくて、闇の中から光を求めてるように思う」というファンのコメントを見つけ、それがとても私の気持ちにぴたりと合っていました。ずっと心にかかっていたところ、この言葉に出会いました。
あきらめてないからこそ苦しい、それでいいから。と言ってもらった気がしました。
#71
暗がりの中で。そういえば寝るときに電気をつけたまま寝る人もいるらしいな。
まぁ寝ようと思えば電気ついてようがカーテン開いてようが寝れるだろうけどやっぱ暗いほうが睡眠の質が高まると思う。
結構前に遮光カーテンを買って部屋の暗さを高めて寝るようにしたら少し眠りの質が良くなった気がする。
でも遮光カーテン買う前のことあんま覚えてないからやっぱり気がするだけかもしれない。
でもいわしの頭も信心からって言うしな。プラシーボ効果とかあるしこういうのは自分がいいと思えればいいんだきっと。
そういえばこれも結構前だけど部屋の電気も紐で引っ張るタイプからリモコンでオンオフするタイプに買い換えた。
以前から電気のひもが天井からたれてて邪魔だと思っていた。だけど昭和生まれの貧乏人だからひも電気に慣れてたからそれを買い換えるという発想がなかった。
でも最近生活環境を整えようと色々便利グッズとか買ってた。その一つとしてひも電気を買い換えた。
こういうのってちょっとしたストレスだからまぁいいかってなるんだけどなくしてみると思った以上のストレスだったみたいだ。めっちゃすっきりした。
どうでもいいけどひもで引っ張る電気って今の人には通じなそう。ひもボクシングとか昭和の貧乏人くらいしか知らないんだろうな。
―暗がりの中で―
1日目
蝋燭のようなぼやけた明かりが小さく灯り
私の目の前でゆらゆらと揺れていた
ほら…こっちへおいで…と
もう何も怖くないから…と
私を手招きして
秘密の場所に誘い出すかのように
私は明かりに導かれるままに歩き始めた
2日目
暗がりの中で響く足音
コツコツ…コツコツ…と
石畳の上を歩くような音だけが
規則正しく木霊する
ここがどこなのかも分からないが
私の足は明かりを目指して動いていた
思考だけはおかしなくらいに冴えていた
5日目
辺りは相も変わらず静まり返っている
私の足音だけが絶えず木霊する
どれほど歩き続けただろう
時間も分からなくなってきていた
飲まず食わずで歩き続けているのに
足の疲れは全くなく
足に止まる気は更々ないようだった
君が現れたせいで
ここが陰だと気づいてしまった
『暗がりの中で』2023/10/29
暗がりの中で
暗がりの中で見つける小さな光
針の穴ほどの光で良い
見つけられたら
誰かが照らしてくれたら
暗がりの中から抜け出せる
その光を信じて
『暗がりの中で』 180
『もう目が慣れた』とあなたが言うから、照らす理由が無くなった。
『照らさなくても見える』と言うから、照らす苦労も無くなった。
窺い知れないあなたの表情。
……わざわざ照らす理由は如何に。
誰かに理由を伺い立てる。
……己の責務と矜恃は何処に?
猫が鳴く。
虫が鳴く。
風が鳴く。
後悔しても時は戻らず。
自業自得と──が泣く。
暗がりの中で
部屋を暗くして布団をかぶっても、意識がなくなるまで会いたい、もう考えないようにしよう、でも、、を繰り返してる。恋、片想い難航中
暗がりの中で遊ぶ
鬼さんこちら 手のなる方へ
絶え間ない笑い声が響き渡る
あともう少し
あたたかい光が迎えにきてしまうまで
こうして遊んでいたい
あともう少し
少し冷たい暗がりの中で遊んでいたい
真っ暗な部屋の隅
全てを投げ出したい夜に
浮かんでくるのは
大好きなあの人の声
なんで好きになっちゃったんだろう?
あの人を知る前に戻りたい
同担拒否が否定される世の中じゃ
いつまでも辛いまま
大好きなあの人を大嫌いになるために
何が出来る…?
そんなことを考えながら
今日もまた浅い眠りにつく
【暗がりの中で】
膝を抱え胎児のように丸まり横たわる。ここは暗くて冷たくて、もう大切なものが何処にあるのかも分からなくなってしまった。
それでも一筋の蜘蛛の糸のように貴方の声が聞こえる。
手を伸ばしたくて、能わなくて。
貴方を損なうくらいならこのまま消えてしまいたいのに、貴方はそれを許してはくれない。
『暗がりの中で』
暗がりの中で、異質なモノを見つけた事がある。ただ、直感的に、あれはダメだと肉体が拒絶するように、全身の毛穴が開いた時の痺れ具合が、あの時私の全身に走っていた。今、思えばあれはこの世で最も関わりを持ってはいけないモノだったのだろう。
なぜなら、家まで走り帰って家族に言われた言葉がなんで全身血塗れなのだと叫ばれたからだ。勿論、私はモノに触れてはいない。何より私自身が体を見ても血など1滴も付着していなかった。
けれど、見つけた事がいけなかったのだ。この後、家族は私を近くの寺に連れて行きお祓いを受けさせた。お祓いを受けている最中に、私を取り囲むようにあの異質なモノが私との距離を詰めようとしているのが見えた。私は、全身の毛穴から体の水分が全て出ていくのではないかと思う程に、汗が流れ出ていた。
だが、汗が流れる度にあの異質なモノは私の目の前から少しづつ姿を消していった。結局全て居なくなるのに、8時間近くもかかった。私は暗がりの中に、潜り込むことは二度としないと誓った。
暗がりの中を、探すな。
お終い
冬
夜と朝の区別がつかない時間帯に
外に出る
徐々に明けていく空
暗がりの中で太陽を待つ
※暗がりの中で