『星座』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
#星座
「先輩は絶対カラス座です」
部室で私物を片付けていると、後から入ってきた後輩が部屋に入るなり僕にそう言った。
「牡羊座ですけど。ていうか、カラス座って何? 映画館?」
「私の作った新しい星座占いです」
そう言うと後輩は、部室の真ん中のテーブルに一枚の巨大なポスターを広げ始めた。
後輩は背が低いので、大きなポスターを広げるのに机の横に回ったりと一生懸命である。ちょこまかと動く彼女は見ていて飽きなかったが、少し不憫になってきたので彼女の横から手を伸ばして手伝う。
「あ、ありがとうございます」
「よくこんな大きなポスター持ってきたね」
「これしか黄道帯が書いてある星図がなかったんですよ」
長い栗色の髪の毛を片手で後ろにやると、彼女は誇らしげに胸を張った。150センチの彼女はセーラー服を着てなければ子供みたいに見える。
「見てください。これが太陽が通る道、黄道帯です」
黒い夜空のポスターに淡い白い帯が描かれていた。多分あれが黄道帯ってやつなのだろう。彼女はその上に位置する星座を指差すと名前を順に読み上げていく。
「牡羊座でしょ。カラス座、牡牛座、コップ座に双子座…」
「待て待て待て」
「あっ! ちょ、ちょっと!」
僕は彼女の手を取って制止する。
「カラス座とかコップ座とか、星座占いに無いだろう?」
「ふふ、それはですね」
何故か得意気に鼻をならすと、彼女は講釈を始めた。
「12星座というのは古代バビロニア人が黄道帯から勝手にチョイスしたものなんです」
「勝手に…?」
「一年が12か月というのを先に決めた彼らは、黄道帯から12個の星座しか選ばなかったそうです。だから本当は――」
彼女はポスターに赤いマーカーで星座に丸を付けていく。
「ここにある星座も占いに使われるはずなんです。先輩の誕生日は4月15日ですよね? なのでそこを太陽が通過するタイミングはカラス座になるんです」
「…そ、そうか」
「ちなみにカラス座の人の性格、聞きたいですか?」
星みたいにキラキラした目で、彼女はポケットから取り出したメモ帳を開いてこっちを見てる。これは逃げられない流れだ、と僕は思った。
「ここで聞かないという選択肢は――」
「いいでしょう! 教えます! カラス座の性格は、ズバリ嘘つきです!」
「…え?」
きっと今の僕は豆鉄砲をくらった鳩、いやカラスのような顔をしているに違いない。
「そうかな? 割と正直な方だと思うんだけど」
「むむむ。その自信! 牡羊座の皮を被ってますね! 先輩はそんな人じゃないはずです」
そう言うと、後輩は部室の窓ガラスの前に立った。腕を後ろに組んで、教師のように外を眺めている。探偵かなにかのつもりだろうか。
「私は先輩は嘘つきだということを知っています。根拠だってあります」
「例えば?」
「例のハリウッド映画、公開日を一週間も誤魔化しましたね?」
「あれは単に覚え間違っていただけなんだが」
反論すると、彼女はやれやれといった具合で首を横に振る。
「では、期末テストの数学で満点をとったというのは?」
「うっ……」
そこを突かれると確かに痛い。満点を見越して彼女と備品買い出し係をかけて賭けをしたことがあった。結局バレて買い出しには付き合うことになったけど。
「認めましたね!」
「ま、まああれは悪かったよ」
「いいんです。じゃあ――」
彼女が振り返る。彼女は――泣いていた。
「転校するの、嘘だって言ってくださいよ」
黙々と二人は丘陵地を歩いていた。緩やかな斜面をひたすら上に上にと登っていく。
空には満点の星空が広がっていて、見るも鮮やかで綺麗だった。
自分を先導するように前を歩いている彼の目的地を、フィエルテは知らなかった。彼は時折立ち止まると空を見て、何かを確認すると再び歩き出す。フィエルテは取り敢えず、それに着いて行く。それを繰り返しているうちに、二人は洞窟の入口の前に立っていた。
彼は振り返った。
「今夜はここで休むぞ」
そう言うと躊躇いもせずに中に入っていく。洞窟の中は真っ暗で何も見えなかったが、フィエルテも彼に続いて、中に足を踏み入れた。
闇の中でも彼の姿だけは、仄かに発光しているかのように明るくはっきりと見える。それは彼もそうで、フィエルテの姿だけは闇夜でも見失うことはなかった。彼はフィエルテが来たのを認めると、カンテラを燈した。ぱっと辺りが明るくなる。
「着いてこい」
カンテラの灯りに照らされる洞窟の内部は、天井からは苔が垂れ下がり、地面には茸が生えている。いかにもじめじめしてそうなところだった。しかし、風通しがいいのか、湿った臭いは感じなかった。
すぐに突き当たりに辿り着いた。どこにも分かれ道がなかったから、この洞窟は一本道のようだ。ここで行き止まりらしい。そうフィエルテが思っていると、彼はおもむろに壁の一角に手を当てる。訝しく思う間もなく、その手が奥へと沈んだ。
カチッという音が鳴ると、鈍い音を立てて突き当たりの壁が動き、扉が姿を現した。目を瞠るフィエルテをよそに、彼はその扉を開けると、振り向いて彼女に中に入るよう促した。恐る恐る、彼女は中に足を踏み入れる。螺旋階段があった。
彼は再びカンテラを持って先導する。照らされる地面は土から石畳に変わっており、壁も石壁になっている。階段を登り切った先の部屋に入って、ようやく彼は足を止めた。
小窓から星光が射し込んでいる。
「ミラさまはここに来たことがあるのですか?」
部屋の中を見回しながらフィエルテは言った。ああ、と彼は頷くと近くのテーブルにカンテラを置いた。持っていた荷物を部屋の隅に置きに行く。
「元は監視塔の役割をしていた古い隠れ家だ。何度か使ったことがある」
そうなんですか、と相槌を打って、フィエルテは近くにあった椅子に座った。その椅子に座って少し上を見ると、ちょうど視線上に小窓の外が見える。
「どうしてミラさまは、道で迷われないのですか?」
ぼーっとフィエルテは星を見ながらぽつりと問う。乾物をテーブルの上に出していたミラは、彼女を見ることなく言う。
「北の位置さえわかれば、迷うことはない」
「ミラさま、コンパスもお持ちじゃないのに、どうやって北の位置を知っておられるのですか?」
「北極星だ」
彼女の問いに彼は事もなげに返した。彼女は小首を傾げたのを見て、ミラは片眉を上げた。
「知らないか?」
フィエルテはふるふると首を横に振った。そうか、と彼はつぶやくと、彼女の傍に歩み寄る。彼女がぼーっと見ている方向に同様に視線を向けると、口を開いた。
「俺の指す方をよく見ていろ」そう言いながら、ミラは小窓の外に広がる星空のある一点を指した。フィエルテは目を細めて見ている。「あれが、北極星だ。よく見ていると、あの点を中心にして空が回転しているように見えるだろう」
ミラに言われないとどれがその北極星かわからない。フィエルテはもう一度小首を傾げた。その様子を見て、彼は小さく息をついた。
「そうだな……北極星の目印として、あの星座を憶えておくといい」
フィエルテは彼が指す方をじっと見た。一際明るく輝く星の近くに、Wに並ぶ星々が見える。
「北の位置さえわかれば、どこであっても然して迷うことはない」
「ありがとうございます」
フィエルテははにかんだ。その可憐な笑みに思わず釣られて、ミラも小さな笑みを口許に浮かべる。
「さあ、もう寝るぞ」
彼は寝台に横になると、毛布を広げた。フィエルテに隣に来るように促す。彼女は花開くような満面の笑みで、彼の横に滑り込んだ。
あっという間にフィエルテは寝息を立て始める。彼女のあどけない寝顔を見ていると、いつだって彼は彼女を自分の悲願のために利用する罪悪感と、護ってやりたいという庇護欲が湧いてくるのだった。
【星座】#66
四角な空に見える星は
静寂の中に彷徨い続けているように見えた。
次にこの【星座】を見る時
四角な空がまん丸な空になっていれば
きっと星は行き場を取り戻すであろう。
今日から一歩ずつ、前に進もう。
・星座
人は死んだら、お星様になるんだよ
母はよく、そう言っていたから。
母が亡くなったその日から、夜空を見上げるのが習慣になった。
だから断じて、星が好きなわけじゃない。それどころか、星座、たるものは嫌いだった。
大熊だの白鳥だの、整然と整理された空には、母の星の居場所なんて存在しないようで。
公園の手すりにもたれて、ため息をついた。
「今夜は、星が綺麗ですか」
同じ空を見ている人の質問としては、すこしおかしい。振り返ると一人のおじいさんがにこにこ笑いながらこちらを見ていた。その手には、赤いシールのついた白い杖。視覚障害をもつ人が使うものだと、テレビで見た。こういうとき、どんな反応が正解なんだろう。
星が綺麗か否かなんて、もう随分考えたこともない。
「まあ…一般的には、綺麗なんじゃないですか」
なんて、反抗期を拗らせた中学生みたいな返答をしてしまった。おじいさんが、ほんの少しみじろく。
「それはよかった。私は随分と星空を見ていませんが、星は好きなんです。自由に線を入れるだけで、見えないものが見えるようになる感覚もね」
まあ、星座には疎いですが、とおじいさんは笑った。そんなものだろうか。もう一度、空を見上げてみる。無数の星が輝いていた。
「人も同じです。声をかけるだけで、その人を知ることができる。見えなかったものが、見えるようになるのですよ」
この人は、哲学者か何かだろうか。何が同じなのかもわからないし、論をこねくり回しているようで釈然としない。
でも。
白鳥や大熊にしか見えなかった星が、たしかに色を変えた。
朝の何気ない星座占い
君のおうし座は1位で
僕のおひつじ座は最下位
別に気にもとめないよ…
もう恋人でもないんだし。
素敵な出会いが訪れる君と
今日は空回りばかりする1日の僕。
左耳にはラッキーアイテム
いつか君がくれたピアスと
君のラッキーアイテムとは
真逆の色したハンカチ
星座占いなんてあてにしてないから…。
- sign -
星座は、どうしてあるのだろう。
最近、そんな風に思ってる。
どうして、動物が入ってるのだろう。
どうして、人が居るのだろう。
どうして、綺麗な物もあるのだろう。
なぜ星座を作ったのか分からない…。
でも、私の中では……。
忘れないように、作ったような気がする。
✩.*˚ 星座 ˚*.✩
「あ!見て見て!!空にお星様がいっぱいだぁ〜」
「あっそ。ま、俺にはどーでもいいけど」
……あー可愛い。
もうすんごく可愛い。
あの、わたあめみたいに、こう、ふわって感じの笑い方がもう本当に好き。
「ね、あれ何座か知ってる?」
「は?知らねーし……」
うわー!!首傾げながら聞いてくるとか、反則すぎだろー!!可愛すぎるってぇぇぇ!!
「ちょっと、聞いてる?おーい」
「はーーい!!……って、あ」
や、やべぇ……!やらかした……!
つい心の中のテンションで言っちまった……!!
いや、まだいける、落ち着け……
「……なんだよ」
「あれ?さっきはすごく元気に返事してくれたのに、またいつもみたいに戻っちゃった……私的にはさっきの方が良かったのになぁ」
……もうカッコつけて、クールぶるのやめよ。
〜星座〜
一人暮らしを始めて数ヶ月。
なれない家事をこなしながら、仕事に行くのはとても疲れる。休みの日はほとんど寝っ転がってばかりだ。
正直実家暮らしの方が楽なのはわかっていたが、実家から会社は新幹線に乗らないと行けない距離。
なので、通える範囲のところに家を借りることにしたのだ。
嫌な家事を全て一人でこなさなければいけないし、生活費や家賃のことも諸々やりくりしていかなければいけない。一人暮らしなんて面倒ばかりだ、そう思うことの方が多かった。
でも唯一、一人暮らし……いや、この家に引っ越してきてよかったと思うのは、空が綺麗に見える窓があることだ。
7月には夏の大三角が見えた。
星座はさほど詳しくないが、有名なのはわかる。
これから訪れる冬にはオリオン座や双子座が見えるかもしれない。少し楽しみにしているのも事実だ。
仕事から家へ帰宅し、電気をぱちぱちとつけていく。
不在中閉めていたカーテンを開け、窓から空を眺める。
雲も少なく、星が十数個ほど見えていた。
住んでいる地域はさほど田舎という訳ではなく、夜もそれなりに明るい。街灯も家の明かりもあるので、その分星は隠れてしまうが、都心のネオン街に比べて暗いため、何個かは見える。
今日はよく見える日のようだ。
ガラッ
窓を開けてベランダに出る。
夏は終わり、もう季節は秋。
夜になると風も冷たくて、少し冷えた。
でも、この冷えは嫌いじゃない。
仕事帰りのサラリーマン。
塾か部活終わりの学生。
人通りも多く、車もたまに通る。
だが、ふと孤独に感じることがあった。
今日も、部署の先輩に怒鳴られた。
会議用の資料に不備があったらしい。
その先輩と一緒に作っていたから間違いないはずなのに。どうしてだろうと思っていたら、こんな声が聞こえた。
「彼女の資料、完璧だったんじゃないのか。一緒に作ってたろ?」
「あ?だからだよ。なんでも完璧にこなせてると失敗した時、苦労するだろ?だからイチャモンつけてやったの。先輩の優しさだっつの。」
「優しさってお前……怖ぁw」
「怖いってw むしろ怒ってもらったことに褒めて欲しいね。」
ガハハと笑いながら遠ざかっていく声。
間違いを指摘されて怒るのはわかる。
だけれど、正しいことをしても怒られるなら、こうして頑張っても無駄なんじゃないか。
そう思ってしまった。
でも、こんな理不尽な仕打ちは初めてじゃない。
同僚にも嫉妬されて物を隠されたり、上司からのパワハラ、セクハラ……。
やりたくて入った会社の裏側を見て、幻滅したのは一瞬で、気づけばそんな会社だと見抜けなかった自分を追い詰めるようになっていた。
心が落ちていくような、何もかもがどうでも良くなっていく。そんな感覚が増えていった。
でも、それでも私がこうして立っていられるのは、今空で輝いている星たちのおかげだ。
輝きの弱い星、強い星。
どの星も星座の一部だったりする。
どんなにちっぽけでも、こうして私たちを照らしてくれるのだ。
そして、何年も輝き続け、多くの人に星座としてもその星だけでも親しまれている。
こんな遠くにいて小さいのにすごい、と尊敬してしまう。
『ん。あれ……』
昔の記憶が蘇る。
父の帰りが遅く、母と帰りを待っていた時、ベランダに出て外を一緒に眺めていた。
「おかーさん!!あの星綺麗!!」
「ん?あぁ、あれはねこうして繋げると……」
『カシオペア座……。』
M字に輝く星が見える。
そうだ、昔もこうしてみていた。
なぜ今まで忘れていたのか……。
子供の頃もこうして星を見るのが好きだった。
学業が忙しくなると同時に見なくなってしまっていたけど、今またこうして星を眺めている。
ふっ、と少し笑った。
『変わんないなぁ。』
改めて空を見上げる。
どの星々も昔と変わらぬ輝きを放っている。
『君たちは、見てられなくても輝き続けている。すごいね。』
誰かに見ていられてなくても……いや、もしかしたらこうして輝き続けていたからこそ、私や母のように見てくれる人がいたのかもしれない。
『頑張っていれば私も……?』
見てくれる人が……いるだろうか。
キラッと光の線が見える。
『えっ、流れ星?』
光の方を急いで見るが、そこには何も無くただ星が輝いているだけだった。
もしかしたら星が返事をしてくれた……り?
『ふはっ、そんなわけないか。』
少し寒くなってきたので部屋に戻る。
戻る足取りは出てくる時に比べるとだいぶ軽かった気がした。
洗面台の鏡で顔を見ると、帰ってきた時よりも明るくなっていた。
星空効果かもしれないなと、窓の方を見てニコッと笑う。
『よし。お風呂入ろ!!そして明日も頑張るぞー!!』
気合を入れて浴室へお風呂を沸かしに行った。
#星座
あの子とは、結構長い付き合いだったと思う。
なんてったって、小学校で出会ってから三十路と呼ばれるようになった今まで、ずっと隣に居たのだから。
あの子は、私以外にも守りたいものがあった。
私はあの子のことが大好きだったから、あの子の守りたいものを守る活動を手伝った。
ある日、あの子とご飯を食べているとき。
突然あの子が言った。
「これから私は、私の大事なものを守るために戦いに行く。だけど、今回に限っては貴方だろうとついてきてはダメ。」
何故、と問うと、あの子は言った。
「貴方も、私の大切なものだから、まもらせて。」
私は、あの子を見送った。
それが、あの子にちゃんと会えた、最後の日だった。
凄いたくさん星が見えるよ。なんて夜更かしして星空を見上げた林間学校でめちゃくちゃ怒られた。理由は消灯後だったから。
Q、ではなぜガキどもはそんなことをしでかしたのか?
A、前年の担任は星空教室っつうもんを真夜中に開催してくれたから。
前年の担任はあんまり親には評判良くなかったけど、そういう細々した子供の知的好奇心を満たしてくれる奴だった。いつだってヤニ臭いし、キレると割りと物に当たるし、はっきり言って本気でクソだったけど。だって吾輩達が卒業して何年か後に生徒にセクハラ紛いのことしでかしたらしくて教職を追われたらしいし。
でもある意味の、大人は完璧じゃねぇ自制は大事、っていう反面教師としては抜群だった。好きか嫌いか許せるか、と言われたら、あいつはクソ、しか言えないけど。
ルールを守るしかねえ翌年の担任は取り敢えず今でも、二度とそのツラ見たくねぇほど大っ嫌いだな、しか思わないもんな。つまりどっちもいてくれたお陰で人生はやべぇもの、と思い知った気がする。
「今の時期、1番近い星座って、何だと思う?」
ゴウくんが呟いた。私なんかよりもずっと頭のいいゴウくん。テストの点はいつもほとんど90点以上。飛び箱だって5段以上跳べる、何でもできる子。なのに私たちは今、2人で廊下に立たされている。
「えーなんだろ、ていうか何の星座が今見えるの?」
「今だと……アンドロメダ、カシオペヤ、ペルセウス、秋の星座で有名なのはこいつらかな」
「へぇ。聞いたことあるような名前」
「ギリシャ神話の神の名前だからな」
「ギリシャ神話……」
ゴウくんは私の知らないことをいっぱい知ってる。こういう人を“ハクシキ”と言うことを、こないだなんかのテレビ番組で知った。
「それらの星座にまつわる神話、知ってるか?」
「ううん」
「カシオペヤは古代エチオピアの王妃だったんだ。で、その娘がアンドロメダ。ある日カシオペヤが自分の娘は海の妖精より美しいって自慢したもんだから、海の神ポセイドンの怒りを買ってしまう。その怒りを沈めるためにアンドロメダはいけにえに捧げられるんだけど、そこにペガサスに乗ったペルセウスが現れてアンドロメダを助けたんだ」
「へー」
ほんとに、へー、しか出てこなかった。ゴウくんがペラペラ喋るけど、私の頭に入ったのは正直半分くらいだ。それでも、ゴウくんがすごいというのは良くわかった。頭がいい。ハクシキ。
「なぁ、今日の夜、星、見に行くか?」
「行く!見れる?あんろぼねだ」
「アンドロメダ」
「あ、それ」
ゴウくんが正した名前を頭の中で復唱する。楽しみだな、アンドロメダ。
「キミたちは、ちっとも反省してないのかな?」
「あ」「あ」
声がして、振り向くと、教室のドアから先生が顔を出して睨んでいた。そうだった、忘れてた。私たちはおしゃべりがひどすぎるっていう理由から廊下に立たされていたんだ。ゴウくんは、頭がいいけどよくこんな感じで先生に注意をされている。そのオマケで私も怒られることがしょっちゅう。
「ゴウくん、あんまりミオちゃんを巻き込んじゃ駄目よ。好きな子なら尚さらね」
「え……」
先生の言葉に、ゴウくんは何も答えなかった。ちょうど授業終わりのチャイムが鳴る。昼休みだ。わらわら教室からクラスメートが出てきてどこかへかけて行った。先生は私たち2人に、午後はちゃんと授業を聞きなさいね、と言ってから職員室に向かっていった。廊下に残されたのは私たちだけ。ちらりとゴウくんのほうを見る。いつも自信が溢れているその顔は、真っ赤だった。
「あの、ゴウくん」
「何でもない。夕方、ミオんちの前に集合な」
それだけ言って教室の中へ入ってしまった。もう話し掛けるなオーラを出していたので私は追いかけない。ゴウくんの真っ赤な顔の意味は分からないままだから気持ちがソワソワしてしまう。あとで聞いてみようかな、一緒にアンドロメダ見ながら。なんで赤くなったのって。そしたら教えてくれるかな?
冬がくると、夜ベランダにあるポリバケツにゴミを捨てるとき
堂々としたオリオン座が目に入る。
ベランダの柵に寄り、見上げると
オリオンの右上に牡牛座、左斜め上に双子座。
そいで、オリオンの右肩ベテルギウスが
おおいぬ座のシリウスとこいぬ座のプロキオンとで作る
冬の大三角形。
シリウスと言えば
風の谷のナウシカの
「シリウスに向かって飛べ!」を思い出す。
冬の夜空は賑やかだ。
夜のゴミ捨てが楽しみな時期が近付いてきてる。
暗闇の中、頭上高くに散りばめられ流れていく星を眺める。
珍しく重なった休みの日、ストレス発散!と、朝早くから二人で遊び回った。
普段は食べないジャンクフードをお行儀悪く歩きながら食べてボウリングにカラオケ、ゲームセンターでお揃いのヌイグルミを取った。
フードトラックでランチボックスを買って、公園の芝生の上で食べながら他愛もない話をして君と笑いあう。
午後は買い物、本に雑貨に服と二人分、結構な量の荷物を駅前のロッカーに入れて。
今は、ソファに並んで腰掛けてプラネタリウム鑑賞中。
映し出された満天の星空に、隣で目を輝かせているだろう君を見やる。
テーマ「星座」
本日はご多忙のなか私たちの披露宴にご列席頂き
誠にありがとうございます。
私ごとではありますが、この場をお借りしまして両親への感謝の手紙を読ませていただくことをお許しください。
本来は父、母と言うべきですが、気持ちを伝えるために、普段通りお父ちゃん、お母ちゃんと呼ばせてください。
うちは自営業でほぼ毎日働いているなか、私たちを育て上げてくれました。
大人になって仕事や家事をする大変さが分かり、親のありがたみを実感しました。
特に思春期や人生の分岐点の時には親子ケンカする事もあり、沢山迷惑をかけてしまいました。時には厳しい言葉をかける事があっても、必ず私の思いを尊重して支えてくれて本当に感謝してます。
そのおかげで将之さんという素敵な人に出会い、新たな家庭を築くことができることを嬉しく思ってます。これからは2人で協力しながら頑張っていきます。
そして、将之さんのお義母さん、こんな私を新しい家族に迎え入れてくださり本当にありがとうございます。お義母さんの優しい気持ちに本当に感謝しております。至らないところが多い私ですが、どうかこれからもよろしくお願いします。
最後に、お父ちゃん、お母ちゃん、たくさん心配をかけてごめんね。たくさん遠回りをしてしまった私だけど幸せになります。
今まで2人に支えてもらった分、親孝行で返していくのでいつまでも健康でいてください。
星座
見上げれば無数の星。
とても綺麗に見える。
ここは、田舎だ。コンビニすらないし、駅だって遠い。
高校に通うのは一苦労だ。
正直、高校に行くのは辛い。毎日いじめられるし、行っても殴られるだけ。教科書ももうビリビリにされた。
そんな僕が唯一好きな時間がある。
それは帰りの時間。
いつも帰る時は空は暗くなっていて星が見える。
とても綺麗だ。
今、これは学校で書いている。
だっていつどうなるかも分からないからさ。
スマホにあったことを書く。
そしたら気持ちの整理も着くだろ?
だから、いつも自殺しないようにしているんだ。
遠くから声がする。見つかるのも時間の問題だろう。今日はここまでn
─星座─
夏のある日。
星が凄く綺麗に見えた。
星座がはっきり見える、
月明かりのない、静かな夜だった。
ちょっと気を抜いて、歩いていた。
あまりにも星達が綺麗で。
だから気づかなかった。気づけなかったんだ。
トラックが猛スピードで走って来ているのに。
気づいたのは、もうトラックと1メートルもない時。
その時『あぁ、死ぬのか。』と、それだけが理解できた。
人は死ぬとき、呑気になるのだと聞いたことがあった。
それを自分で実感するとは思わなかった。
僕が最後に見たのは、明るく輝く青の信号と、
それと同じくらい輝く、オリオン座だった。
じっと空を見つめる。あぁ、君が見える。
まるで、君座のよう。
【星座】
お題:星座
アメリカでは血液型より星座の性格診断が浸透している
すぐ近くに地面を踏む音が聞こえ、クラウディオスは開いていた本を閉じた。腰掛けた体勢はそのまま、肩から音の方へふりかえり、姿を隠したつもりでいる彼を視界にいれる。
「弓が見えてるよ、ディッパー」
ディッパーと呼ばれた少年は、悪戯っぽい笑顔を浮かべて岩の影から顔を覗かせた。クラウディオスは本に顔を戻し、再びページを開く。ディッパーはその様子を岩の影からつまらなそうに見つめ、ついには、傍らの弓を掴んでクラウディオスの隣へ座りこんだ。
「すごいねぇ、トレミー。君はどうしていつも、僕の隠れた場所が分かるの」
ディッパーは弓をそっと地面に置いて、体操座りでクラウディオスの愛称を呼ぶ。クラウディオスはそれに一瞥もくれず読書にふけるが、ディッパーは変わらず弓を人撫でした。
「トレミーはなんでも分かるんだってヴィルゴにいったらねぇ、あのこ、ふんって笑ったんだ。僕は隠れるのが下手だから、すぐ分かるのよってさ」
クラウディオスはページを捲った。ディッパーは本にびっしり詰まった文字を読んでみるが、クラウディオスにしか読めない文字だったので、すぐに新しい話を始めた。ディッパーはクラウディオスと話をする時間を気に入っていた。毎日こうしてクラウディオスの元へやって来ては、話をして帰ってゆくのだ。
「以前の僕なら分からなかった。ヴィルゴは僕のことバカにして笑ってるて」
クラウディオスは文章をおう目をとめ、相変わらず感情の読み取れない瞳でディッパーに視線をやった。うつ向くディッパーはそれに気がつかぬまま、一度吐き出して止まらなくなった感情を吐露する。
「賢くなったら、もっと皆とお話できると思ってたけど、実際は、見えていた世界が変わってしまっただけなんだよ」
ディッパーは弓を撫でた。
「僕、まだこれから賢くなるだろ。その度に好きな人たちの本当をみてしまうなら、やっぱり僕賢くなるの嫌だな」
クラウディオスは読んでいた本をディッパーの膝の上にのせた。分厚いそれはずっしりとディッパーの膝に重さを伝え、ディッパーはクラウディオスを見上げた。
「もうそろそろ、新しい子が加わるよ」
無意識だろう、寂しげな表情とは打ってかわって目を輝かせ始めたディッパーに、クラウディオスは不器用に微笑んでみせた。その可笑しな表情をみて、年相応に笑顔で笑うディッパー。
ディッパーは本の上、びっしり詰まった文字を指の腹で撫でる。文字こそ分からないが、おそらくここに『新しい子』についての情報がのっているのだろう。
「どんな星座なの」
クラウディオスはページを捲り、文字を指差した。ディッパーは文字を読めないのでクラウディオスの音読を静かに聞いた。
「彼は蠍座。名前はアンタレス。君と気が合うだろうね。きっと隠れるコツを教えてくれるよ」
クラウディオスはディッパーのさらりとした頭髪を指でとく。嬉しそうに頭を預けるディッパーに、クラウディオスはそれとね、と続けた。
「先にばらしてしまうのはつまらないけど、思い詰めているようだし、教えることにした。君はまだ賢くなる。これは、自覚してるね」
ディッパーは頷いた。
「うん。でも、嫌なんだ。ヴィルゴの笑顔が、喜びからくるものじゃなくって、僕のことバカにしたものだって、気付きたくなかった」
クラウディオスは静かに目線を落とすとディッパーの膝の上から本を取り戻した。
「いいかい、ディッパー。善と悪、これは人間ならば必ずもつ二面性だ。どちらかしかない人なんていないのに、私たちは他人と関わりをもつ時、どちらか一面しか見られなくなることがある」
……一面、と繰り返して呟いたディッパーは、クラウディオスを見上げた。
「今の君には悪いところしか映らないのだろうけど、君とヴィルゴが友人だったのは、勘違いじゃないと思うよ。――ヴィルゴとは、もう会いたくないのか。君が好きに決めなさい」
ディッパーは黙り込んだ。沈黙を守りながらも、雄弁にものを語る瞳にクラウディオスは気がつく。
「トレミー、君やっぱり凄いや」
礼を言って走り去ってゆく背中は見送らずに、クラウディオスは新しいページを開いた。
星座
お題:星座
幼い頃に見た夜空は宝石のように見えた。
母に「あの星はなんの星座は何星座なの?」と尋ねていた。
母は星座には詳しくなかった、でもオリオン座だけは分かるよと教えてくれた。
冬になるとオリオン座をよく探していた。
もう母と探すことは出来ない。
けれど私の娘にオリオン座の探し方を伝えていこう。
私の娘もいつか伝えれる人がくると良いなと思いながら私は星空を見る。
色んな星座を娘に伝えられるよう、そしていつか母と星座を見れた時、今度は私が教えてあげれるために。