「星座って知ってるかい?」
「…………バカに、してる?」
ボクがそう返すと、彼は焦ったような顔をした。
「…………ごめん」
「怒ってはないけど。……で?」
演奏者くんが見れる範囲に星はない。星座を見れるような環境なのは権力者タワーの近くだけ。
それなのに突然そんなことを言ってきたのはなんだ、という顔で彼のことを見つめる。
「……なんとなく、かな」
「…………なんとなくって」
「『星座』という概念は知っていてもあんまり見たことは無いから。きみもそうかと思って」
「…………最初の質問、そういう意味か…………ごめん」
「いいや。言葉足らずだったからね、僕も」
とはいえ、ボクだってそんなには知らない。星の並びをむりやり動物とかに当てはめただけだったような気がする。
「…………ボクもあんまり知らないけどさ、ああいうのってただのこじつけだからさ、分かってて見たってそうは見えないこと多いよ」
「…………だろうね」
「二つの点が並んでるから、あれは犬ですみたいなレベル」
「………………マジで」
彼は目を見開いてそう言った。
いつもいつも敬語なわけじゃないけど、落ち着いた喋り方しかしないから、急に出てきた砕けた言葉に少しだけ面食らってしまう。
「……そうか、そんなレベルか……。じゃあ、知らなくてもいいかもしれないね」
彼はそう言って、笑った。
10/6/2024, 9:54:07 AM