『日差し』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『日差し』
荷を積ませたラクダが日を遮るもののない砂漠を進む。帽子から垂れる長い日除けは風になびき、砂混じりの乾いた風が刺すような日差しとともに肌にピシピシと吹き付けた。もう少しも経てば西に傾いた太陽は地平へ落ち、その頃には遠くに見える街にも着いて一息つけていることだろう。
オレンジ色の真っ直ぐな光が影を遠くに伸ばし、果てなく続く砂の山の複雑な砂紋と不思議な陰影を見せている。やがて薄暮の街に明かりがぽつぽつと灯り始め、急いた気持ちを察するかのようにラクダは歩みを速めていった。
ギラギラと差し込む光で目を覚ました。
日差しが強くなり始めた頃が、遠い昔のようだ。
外に出て夏の雰囲気を感じながら、
今日はプラごみの日。
収集所まで捨てに外に出ると
既に日差しが激強で、無防備な腕が
ジリッと音をたてた気がした。
暑い…
おあ、ミミズが干からびてる、なーむー。
ひっ!デッカイ蜂が…よろよろ歩いている。
ここは地獄か?
やっとこさプラごみを置いてウチへ戻る階段の踊り場。
降りてきた上の階の人と挨拶をする。
「おはようございます。…!!」
帽子、サングラス、マスク、手袋
長袖、長ズボン、上から下まで黒ずくめ。
二度見してしまった。
「おはよう、今日も暑いわね」
そりゃ暑いでしょう。
お日様アレルギーだろうか?
絶対日焼けしないマンか?
地獄で更に責め苦の上乗せとは
確定出来ないが、おそらく上の上の階のおばさんマジスゲー。
(日差し)
夜にカーテンを開けて寝ると、朝には目覚ましが鳴る前に日差しが音もなくゆったりと起こしてくれる。
だがそんな日差しでも俺の二度寝は止められないぜ!
日差しは止めようともしない。むしろ受け入れて暖かい光で寝心地を上げてくれる。
そんなことされたら余計に罪悪感ぎ湧いちゃうじゃないか。
お題「日差し」
夏の日差しがじりじりと肌を焼くように照りつけている。私はこれが結構好きだ。太陽の下で生き物が一番活発な時期に、同じように日の光を浴びるのは、何だか生きている実感が強く持てる気がする。
もしくは、鉄板とかオーブンで焼かれる肉と言われれば、その気持ちもちょっとわかる。でもまぁ焼かれる肉の気持ちなんてそうそうわかるものでもないので、それはそれで楽しいものだと思う。
日向ぼっこと言うには苛烈な日差しに焼かれながら辺りを見回すと、何やら親の仇でも誅する瞬間のような、憎々しげな表情で庭に水を撒いている君がいる。普段薄ら笑い、もとい微笑みを絶やさない人なので、なかなかレアな光景だなと思いながら眺める。そんなに思い詰めた顔をしながら水を撒くほど、そんなに暑いのが嫌か。
彼の心の内がどうかは置いておいて。ホースから撒かれる水が日差しをキラキラと反射させているのが綺麗だなと思う。それよりも水を撒いている君の、ミルクティのような薄い色合いの髪が日光を受けてキラキラしているのは、もっと綺麗だ。
「もしかして、気持ち悪い?」
私がぼんやり見ていることに気付いた彼が、ちょっと焦ったような声音で言うので、率直に答える。
「ううん、綺麗」
「何が?」
私の応答に君がきょとんとした。きょとんと言うか「何言ってるんだこいつ」みたいな虚をつかれた顔と言うか。何をそんなに戸惑っているかがわからずに首を捻ると、彼はちょっと考え込むように視線を落として、言葉を探して言った。
「いや、えっと、日差しに当たりすぎて具合悪い?」
どうやら急にぼうっとし始めた私の体調を心配したらしい。それに首を横に振って答えて、もう一度君を、と言うか君の髪を見つめる。
「なに」
じっと見詰められて、居心地が悪そうに君が身じろぐ。汗で束になった髪が揺れる。それがまた綺麗にキラキラするものだから、
「君はもっと、お日様に当たった方がいい」
そう教えてあげると、彼はいよいよ憮然とした表情をした後に決意を固めたような顔をして、
「僕、何か君の機嫌を損ねることしたかな」
不満があれば言って欲しいと、話し合いの姿勢を取り始めてしまった。
君の中でお日様の下に出るのは罰か何かと同列に並ぶくらいに嫌なのか、と思うと可笑しくて、申し訳ないけどお腹を抱えて笑ってしまった。
日差し。
ミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミンミ
ギャイギャイザワバワキャッキャッキャッアハハハオーイ!!コンニャロ!!ヤメテー!!アハハハ!!
ここは何の変哲もないただの一般高校の
愉快な二年二組の青年の話である。
「あ"っっっちぃいぃぃ!!!」
「だよな??…どーしよ…なんもアイディア思い浮かばへん!!よし!笹原!なんかしろ!」
「は!?無理に決まっとるやろ!?」
七月一日 月曜日 晴れ
今日は、二組の佐川が昼休みに「暑い」と嘆いていました
そこで、教師方に質問があります。
二年二組の教室に何故冷房はついてないんですか???
佐川がうるさいので、来週までにつけてください。
先生からの一言
授業に関することを書いてくださいね。
あと、冷房がついてないのはこっちも対応中だ。
七月二日 火曜日 曇り
今日は、やっと暑くて憎い太陽が顔を隠しました。
皆大喜びでした。僕は心配だったので一応折り畳み傘を
持っていきましたが、必要なくて腹が立ちました。
あ、後六限目の高橋はボケて滑ってました。
先生からの一言
授業に関する話でも高橋の滑りを暴露するのはやめましょう。
あと、そんなことで腹を立てない。
七月三日 水曜日 晴れ
今日は、担任の鈴木先生から明日はプールがあると
知らされました。そのせいか、笹原、武田、山田が
森に帰った猿になってました。うるさかったです。
僕も、プール楽しみです。
先生からの一言
後で笹原、武田、山田には注意しておきます。
あと、先生はプールは嫌です。プール清掃があるので。
七月四日 木曜日 晴れ
今日は、プールが一限目にありました。
先生、プールは破棄しましょう。一限目は嫌です。
女子の滴る髪の毛で制服が透けててえっちでした。
佐藤が鼻の下伸ばしてて気持ち悪かったです。
先生からの一言
やめなさい。佐藤には注意しておきます。
プール破棄は先生も賛成です。後、先生は水色が好きだ
七月五日 金曜日 曇り
今日は、アイディアが浮かびません。
そこで教師方に提案です。上から目線ですみません。
もっと読みたい♡が教師方全員、計15人の教師が
いたら、アイディアが浮かぶかもしれません。
よろしくお願いします。あと、高橋が
ボケてくれましたが面白くなかったです。
先生からの一言
高橋のことをまた暴露するのはやめましょう。
あと、他の教師方にも聞いておきます。
♡15→♥15
𝘛𝘩𝘢𝘯𝘬 𝘺𝘰𝘶︎︎!
七月八日 月曜日 雨
今日は、僕が担当してから1週間が経過しました。
ネタが思い浮かびません。あ、また高橋は滑ってました
他の女子達が冷たい目線を送っていたのが最高です。
あと、夏に雨は最悪でした。ジメジメしてて。
先生からの一言
そうだな。担当してから1週間だな。あと高橋の暴露は面白いからいいぞ、もっとやれ。
七月九日 火曜日 晴れ
今日は、昨日と比べると意味がわからないくらい
晴れてました。上原はマスクに長袖セーターだったので
朽ちてました。どんまい。
きょうはろくげんめはねてました
先生からの一言
上原にはきっと衣替えができてなかったんだと思います
あと、寝たことを素直を言うのはいいですが、寝ないように。
七月十日 水曜日 晴れ 代理
今日は、安原が休んだので代理で笹原が書きます。
安原は高橋のことを暴露してるみたいなので暴露します
数学の時に高橋が急に「大雨が降るので傘を持つ!あーん!ぶれる!(umbrella)」と、ボケてました。
勿論数学の山中先生は怒り、クラスは凍えるほど冷たい空気でした。
先生からの一言
暴露はやめなさいと一応言っておきます。ですが面白いからもっとやれ。高橋にはちゃんと注意しておきます。
ちなみに先生このボケ好きです。
七月十一日 木曜日 晴れ 代理
今日は、安原が休みなので代理の笹原が書きます。
安原は風邪をひいたそうです。乙。
ですが、安原はクラスの中心という存在だったのか、
昼休みはいつもと違い、シーンとしている空間でした。
彼はリーダーシップがあるのです。知らんけど。
先生からの一言
安原を煽るのはやめなさい。確かに、安原はリーダーシップがあるな。先生も安原のことは信頼しているぞ。
七月十二日 金曜日 晴れ
ただいまです。完全復活しました。安原です。
ちなみに熱は38度ありました。
誰もお見舞いに来てくれませんでした。
あと、皆僕のこと好きなんですね。嬉しいです笑
佐川から休んだノートを見せてもらいましたが字が汚くて
読めませんでした。
先生からの一言
おかえり。見舞いには行けなかったが皆心配してたぞ。
佐川のノートが汚いのは成績が下がるかもしれないので
注意しておきます。
七月十三日 土曜日 晴れ
この「日差し」のシリーズ?は気分で書こうと思います
高橋のumbrellaのボケ、考えるのが難しかったです。
面白いが、面白くないというラインを守るのが難しかったです。
一応、今まで出てきた苗字を書きますね。
記入してる人
・安原
代理記入
・笹原
授業中、休み時間にボケて滑る人
・高橋
夏も冬も長袖、マスク、セーター(ほぼ出てこない)
・上原
猿になっちゃった人?(ほぼ出てこない)
・武田 ・山田
へんたい(ほぼ出てこない)
・佐藤
字が汚くて暑がりな人(ほぼ出てこない)
・佐川
二年二組の担任
・鈴木
数学の担当(ほぼ出てこない)
・山中
計10
こんなに名前だしてたんだ…笑
気分投稿!🍐
「存在証明」
ろくでもないことばっかだ
そんなことばっか言ってただ
現実を睨みつけた
やればできるだとか君は頑張ってるよ
偽善者どもの戯言が頭んなかで回る
吐き捨てられた言葉をつかんで
必死で本物を見つけようとした
100億個のダイヤのなかに混ざれば
ただの石ころさえ一際目立つ原石だろ
汚れ物ように見られ吐きつけられたツバ
うわべの輝きになんの価値があるの
その言葉が睨みつけた目がまた
誰かの胸に刺さる
優しさの裏に隠れた汚物を見せなよ
誰だって怖いよな闇だってあるよな
でもきっとそれが本物だよな
だけど知ってるよ分かってるよ
時には優しい言葉に抱きしめられてること
正解なんてあってないようなもの
100億個のダイヤだって
みんな形が違って役目がある
指輪の十粒の小さなひと粒にしか
なれないものもあるだろう
だから振り上げるんだ
存在証明をここに居るよと
振り上げるんだこの手を
世界に抗うように叫べ叫べ叫べ
姿の見えない君が好きだった日差しのことを僕はどうにも好きになれない。
朝起きて、窓から差し込む日差しが薄目に入ってもう一度目を閉じてしまう。
今日はどんな夢を見たっけ……と思い出そうとしても忘れてしまう。
もう一度目を開けるとまた日差しが目に入る。でも、今度は眩しくは無い。
そんな時、僕は今日も頑張ろうって思える。
お題『日差し』
こんなクソ暑い時期ほど、在宅勤務で良かったなぁと思う。外に出れば湿気をおびた空気がむわっと襲いかかり、頭上から日差しがこちらをオーブンレンジみたいにじわじわ焼き尽くそうとするから家から出たくないのである。
在宅勤務であれば、クーラーをきかせた部屋で冷たい飲み物を好きなタイミングで飲みながら作業できるからいい。外の気持ち悪い空気にふれることなく、日差しに焼かれることもない。
たまに出社しないといけない時が大変だ。在宅勤務で体力が低下していて、普通に歩くだけでも疲れるのに湿気と太陽光のダブルパンチを食らうのだからいつも以上に体力が削られる。こういう時は、せめて日差しからガードするために日傘をさして常時日陰状態にして、せめてもの抵抗を試みるのだ。
日差し(悪霊の戯れ)
「おにーさん、こんなとこに座って眩しくないの?」
いつもの如く、とあるビルの屋上で。
柵を越えた心許ない足場に足を組んで腰かけていると、隣から幼い声色の“何か”に声をかけられた。
―――隣を見ると、とりあえずその声に似つかわしい風貌の可愛らしい少年が自分と同じ体勢で腰かけている。
………まーた変なのが来た。
最近よく招かざる客が押しかけてきて困る。
「特に思わないかな。俺の特等席だからね、ここは」
「そうなんだ。まあヒトじゃないし、眩しいわけないよね」
だよねー、と少年は組んでいた足を外して楽しそうにぱたぱたと壁に打ちつける。
「ヒトじゃないのは君も同じじゃない?」
「ああ、うん。ぼく見た目こんなだけど、悪霊なんだ」
自分を指差してにっこり微笑む姿が、どうにも年季が入っていて貫禄があると思わされる。
「悪霊っていうと、悪魔の使い? 死神の親戚?」
「ううん、悪霊。悪い霊の悪霊」
わかる?
………聞き方がもう大人のそれだ。
「悪霊って、自分からそう名乗るものなの?」
「うーんどうだろ? 散々悪事働いてきたから、そうかなって」
………。自覚があるのか。厄介だな。
そろそろお暇して頂きたいと思っていたのに。
「で、ここにはどういった用で?」
「食事」
―――食事?
霊が何か食べる必要があるのか、と―――問おうとして、やめた。
………この見かけ子供の自称悪霊はどこか得体が知れない。深追いするのはよそう。
「おにーさんは恋人に先立たれてここで見守ってるってわけだ」
「は?」
心外すぎると霊でも物を取り落とすらしい。
謂れのない甘いストーリーをでっち上げられて、俺は出しかけたタバコを指に挟めず滑らした。
「何でそうなる?」
「あれ、違った? だってほら、」
―――少年がつと向かいのビルの屋上を指差す。
「あれおにーさんのカノジョじゃないの?」
………ああ。この間見つけたあのヒトか。
「いいや、最近知り合った名前も知らない女の子だよ。手を振り合う仲なの。霊仲間」
「ふーん?」
なーんだつまらない。
拗ねて呟く仕草が余りにも人臭くて、俺は笑った。
「ごめんな、勘違いさせて」
「………離れ離れになった恋人達のささやかな幸せだと思ったのに」
「あはは。マセた悪霊だなあ」
俺よりはだいぶ年上っぽいけど。
―――見かけで印象操作するくらいだから、きっと何十年もこの世を彷徨っているんだろう。
「ここは日差しがキツイね。場所がイマイチだし、………まあ何か久し振りに楽しかったから食事は他所ですることにするよ」
………。さっき眩しくないって言わなかったか。
少年が人らしく、パンパンと自分の埃を手で払い立ち上がる。
「そうか? 気をつけてな」
「………。初めて言われた」
「ん?」
「霊になってから、そんなこと」
おにーさん面白いね。
「じゃあね、また」
………人なら無条件で可愛いと思うのだろう。
人懐っこい笑顔を残して、少年は彼の隣から跡形もなく消え去った。
一体何だったんだ………、と思うが余り気にしないことにする。気にしたところで何も進展しない。
俺は今度はしっかりタバコを手に火をつけた後、向かいのビルの屋上で柵に凭れる彼女に手を振った。
嬉しそうに手を振り返し跳ねる姿が微笑ましい。
「あれ、でもあの少年………またって言わなかったか?」
………。いや、多分気のせいだろう。
またなんてない。ないはずだ。
こういう距離がいいんだよ、と一人手を振りしみじみと感じ入りながら―――、暫くは来客が来ても相手にしないでおこう、と。
彼はできないだろう誓いをひっそりと立てて、束の間の安寧を味わっていた。
END.
朝、日差しを浴びると健康的になるらしい。
それを聞いて俺は、翌日には朝起きたらカーテンを開いていた。
「考えりゃ当然なんだろうが、今更、日本のどの地域に居るかで、日の出と日の入りが違うって知ったわ」
「日差し」の3文字をどう自分の投稿スタイルに落とし込むか。苦悩して葛藤してネタが浮かばず、己の加齢による頭の固さを痛感した某所在住物書きである。
「ひとまず、スマホの天気予報見たんよ」
天気といえば、明日と明後日の東京、猛暑予報だってな。物書きは画面を見てぽつり。
「例えば今日は、札幌なら4時に日が昇って19時17分に沈む。対して東京は4時半日の出、19時1分日の入り。沖縄は5時41分に19時26分。同じ7月3日でも日差しの時間、こんな違うのな」
日の出時刻、日の入り時刻の違いで、何かハナシのネタが降りてきたりしないかって。少々期待したんだがな。どうにも難しかったわな。
物書きはうなだれて、窓の外を見た。
――――――
都内某所、深めの森の中にある某稲荷神社のおはなし。大池のスイレンが見頃を迎えた朝。
近所に住まう雪国出身者の、名前を藤森というが、
朝から容赦の無い日差しと季節外れな暑さから逃げるため、その神社の木陰の椅子用に置かれた大木に腰掛け、膝に神社在住の子狐をのせていた。
藤森と、その隣に座る友人たる付烏月(つうき)の手には、それぞれクリスタルガラスの涼しげな器に盛られたかき氷がひとつずつ。
それはその稲荷神社の隠れた名物であった。
昨今の気温の変動により、神社では例年より早めに冷涼スイーツの販売、もとい授与を開始。
清く冷たい湧き水から作られた氷に、勤労温厚なニホンミツバチたちが敷地内で集めたハチミツをひとさじ、ふたさじ。常連にはオマケでもう少し。
彼等が受粉を手伝った果実のジャムも添えて、それは妥当といえば妥当な価格で提供されている。
少し溶けて水滴をつけた氷は、ジリジリの日差しから減衰した木漏れ日によって弾け、スイレン咲く池の反射と共に、いわゆる一種の涼しさを輝かせていた。
「スイレンといえばさ」
シャクシャク。かき氷を食べながら付烏月が言う。
「ひとつ、ハナシのストックがあるんだけどね。
去年の夏、初めてここのスイレン見に来たら、全部閉じかけてたの。朝咲いて午後閉じちゃうんだね」
俺、それ知らなくてさ。見事にやらかしたよね。
付烏月はそう付け足して、またシャクシャク。
優しくも甘酸っぱいジャムが好ましかったのだろう。にっこり一度だけ、穏やかに笑った。
「閉じかけたスイレンも、綺麗といえば綺麗だったろう。それで、その後どうしたんだ、付烏月さん?」
「『朝じゃないと咲いてないよ』って、ココに住んでるっぽい子供にアドバイス貰ったんだけどさ」
「『だけど』?」
「その子、俺のこと狐の窓越しにじーっと見てて」
「きつねの、まど?」
「アレだよ。指を組んで作るやつ。
『妖怪でもバケモノでもないよ』って言ったら、その子、『善いニンゲン。おぼえた』って。『明日の朝、池ポチャに気をつけて』って。
次の日スイレン見に来て写真撮ろうとして危なくスマホを池ポチャするとこだったってハナシ」
くわぁ〜ぁん、クシュックシュン。
藤森の膝の上のコンコン子狐が、わざとらしく大きなあくびをして、小さなくしゃみに首を振る。
視線を向けた藤森に、キラキラ玉の目を一瞬合わせ、再度くしゃみしてすぐ顔を戻す。
『だって初めて見た参拝客だったもん』
『悪いニンゲンじゃないか、確認しただけだもん』
『キツネ、狐の窓で、いろんなこと分かるもん』
子狐はどうやら正当な弁明をしたい様子であった。
「結局、写真は?」
「撮らなかった。バックアップもクラウド保存もしてないデータ多かったし。そこで水没されちゃ、俺、完全にゼツボーしちゃうし」
「USBやSDで保険も保存していなかったのか?」
「メモリでどうにかなるサイズじゃないもん」
「めもりで、どうにかなる、サイズじゃない?」
「どしたの藤森。何に驚いたの」
「何テラバイト保存しているんだ、付烏月さん」
「『テラ』?え、今メモリ、『テラ』??」
嘘言ってないよね、藤森?俺のこと騙してない?
かき氷の器を膝に置いて、自分が先日されたのと同じように指を組み、窓を作り、片目を閉じて窓越しに藤森を凝視してズーム、それからズームアウト。
時折木漏れ日で落ちてくる日差しがまぶしいらしく、目を細めている。
藤森は藤森で、そんな付烏月をじっと見て、まばたき少々して、ふらり。視線を子狐に移す。
(狐の窓か)
それで、人の本性が分かるものなのかな。
子狐の背を撫でる藤森に、子狐は何も答えない。
ただ大きく口を開いて舌を出し、木漏れ日に吠えるようなアングルで、あくびをするばかりである。
【日差し】
初めて空腹を感じた。
生まれたときから食べ物に困った事が無かった。
だが、ここ2日間、食料探索組が帰ってこない。
空腹に耐えかねた増築工事課の私は
総監督に相談し食料探索への許可を貰い
数ヶ月ぶりの地上へ出た。
あぁ。いい天気だ。
普段暗闇で暮らす私には眩し過ぎるほどの日差しだった。身体の芯の奥底から力が湧き出る様な感覚だった。
一瞬、日差しが遮られ、
急に、痛くて、重くて、潰れていく。
もう死ぬのが分かった。
圧倒的な、殺意と、重力。
遠のく意識の中
ありんこ!ありんこ!
謎の叫び声が聞こえた。
残り数秒の命で、なぜ死ななければいけないか、考えてみよう。
最近の日差しは暑い。
夏前の日差しだからだと
思います。
アスファルトを焼く日差しは、容赦なく照りつける。
夏の音と共に、ギラギラと輝く光は私たちの肌を灼いていく。
夏の到来を待ち侘びなくなったのはいつからだろう。
昔は日焼けなど関係なく飛び出して行ったのに。
いまや跡が残るのが怖くて日傘が欠かせない。
日差し
それは君の残したエゴ
君の物語の「エピローグ」
賛否両論の結末
いいえきっと 、終わりのない 演 劇
暖かいだなんてとんでもない
木々が枯れてなお踊っている
今日も ひ のないところでひっそりと
一人死んで生きていく
「日差し」(一行詩)
日差しに照らされる硝子玉の陰
◆
錦玉羮を硝子瓶に閉じ込めて
◆
大正浪漫硝子の陰に日差しの悪戯
日差し
冬の日差しは
あんなに好きなのに
この季節
なんだかなぁ~
太陽さん
ほどほどに
お願いします
師匠曰く、「見たくもないものを見た」らしい。
「古今東西、魔法使いなんてものは陰気で厭らしい奴らなんだ。なのにどいつもこいつも楽を取って空を飛びたがる」
はあ、と気の抜けた返事をしたら、師匠はギロリと鋭い眼光で睨みつけてきて、舌打ちを一つ落とした。途端に俺の箒がぐわんぐわんと揺れるものだから、(なるほど、陰気で厭らしい!)と柄にしがみつく。
師匠の立派な馬車と比べると、俺の箒は実に貧相。掃除用具に紛れて置いていても違和感はないだろう。しかし箒の彼とは相棒と呼べるほど共にいるので、俺以外に操作されて酷く不機嫌なのが伝わってくる。
俺としては師匠に怒ってほしいのだけど、箒一本で挑んでも、馬車の御者が鞭を一振り、それでおしまいだ。宥めるように何度か撫でて、ようやく元の位置、師匠を隠すカーテンの横に戻ることができた。重たいカーテンが少し揺れると、さらに師匠の重たい瞳が見える。相変わらず弟子に厳しい人だった。
馬車には派手な装飾があるが、全体が黒、装飾も輝きを塗りつぶした黒なので、遠目に見れば何とも判別がつかないだろう。師匠の趣味に合わせて俺のローブも黒い。頭上は分厚い雲が覆っているし、陰気を象徴するように静々と空を飛び行く。
けれど。馬車とは反対側、遠くの空を見遣った。曇天から降り注ぐような日差しが、みっつよっつと差し込んでいて、眼下、街にぽっかり明るい穴を穿つ。人間の中ではあれが宗教的意味を持つことも納得できる美しさがあった。明かりを通さない静謐へ、剣が刺す。動乱が始まる予感がする。
見れば見るほど肌が粟立つけど興奮も治まりはしない。俺はあちらも飛んでみたかった。箒の彼だって自由に遊べたら楽しいだろう。前方不注意、蛇行運転になってしまっても、馬車にさえ当たらなければ楽しめてしまう俺たちだった。
師匠はぽつりとこぼす。
「……僕にだってそういう時があったさ。日差しの元に何があるか、知らないうちは楽しめるんだ」