『手を繋いで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
#75 手を繋いで
私と比べて、
長くてスラっとした指、
整えられた爪に、
暖かくて透き通った白い肌、
でも私には
ヨーロピアンな藍色の瞳と
もっちもちの肉球があるんだもん
君と手を繋いで歩いたよね
それがとっても幸せだったんだ
アインホルツ帝国の首都ドルトファン。
自然溢れる街の中で、人々は日々の生活を営んでいた。それは夜も変わりなく、柔らかな光がドルトファンを照らしている。
皇帝ロレンツは、妻のロレンスと共に散歩に出ていた。彼女の国を巡る混乱も収まり、二人は晴れて夫婦になれた。
彼女の婚約者の蒔いた火種が、レクステリア王国──現ルリスリアン公国への国難として襲い掛かった。
周辺国に包囲され、国内も不安定な中で彼女は周囲の支持を得て指揮を取った。
そして、名実ともにルリスリアンの指導者となった。
それはさておき、今日はお忍びデートなのだ。買い物と解説を交えながら、ドルトファン城まで歩く。
「ロランス、行こうか。案内するよ」
「えぇ、ロレンツ様」
二人の正体がバレて騒ぎになるまで、あと少し。
「手を繋いで」
「手を繋いでいた宇宙人のことを思い出すなあ」
僕は思ったことを口に出す。
「うん?ああ、二人の大きな男の人と手を繋いでいるヤツ?」
「そうそれ!」
パパはすぐに分かってくれた。
さすがパパ。
でもママは分からなかったみたいだった。
「連れ去られる宇宙人だよ」
パパがそう言うと、ああアレねって言ったから知ってるみたいだ。
「でもあれ、合成写真だって。しかもドイツの雑誌のエイプリルフール記事」
パパが嫌な事をいう。
「もー夢壊さないでよ」
「次の週でネタバラシしたら、送られて来た抗議文みたいなこと言うんじゃない」
僕が文句を言うと、変なツッコミが返ってきた。
「それでなんで宇宙人を思い出したの?」
パパが聞いてくる。
「今、僕はあの宇宙人みたいだなって」
僕はパパとママの手を繋いでいる。
あの写真みたいに。
「それで、あの宇宙人の気持ち、ちょっとわかるなあって思って」
「宇宙人の気持ち?」
パパとママが不思議そうにこっちを見ていた。
「どんな気持ちだと思ったの?」
ママが聞いてくる。
「手が疲れるなあって」
そう言うと、パパとママは楽しそうに笑った。
「疲れちゃったか。じゃあ抱っこしちゃうぞ」
そう言ってパパは僕を抱っこした。
「これで宇宙人君は疲れないね」
パパは笑っている。
「ダメ」
僕はダメ出しする。
「何がダメなの?」
パパが不思議そうに聞いてくる。
「ママが一人ぼっち。ママ、手を繋いで」
手を繋いで歩こう。
あなたと私の歩幅は違うけど。
手を繋いで、横断歩道をまたいで、境川をこえて、お惣菜屋の匂いをかぎながら、三輪車のベルの音にややビビり、軽く足音を立てて行こう。
トンネルくぐって歩こう。
君は、私の歩幅の二倍はある大きな靴の紐を結びながら、ため息つきつき進む。
瓦屋根の上の雑草を踏んで、廊下の隅をくだり、縁側から庭に出て、街に繰り出そう。
中華街のあかりに照らされて、君の顔は小籠包みたい。
思わずお腹が減っちゃって、手を伸ばしたら君は抱っこしてくれた。
「そろそろおかんが、ご飯を作って待ってる時間だからね」
って、夕焼け空を見たよ。
動悸がするような、夕焼けの空を、中華街のイルミネーションか、二人の影を紫色に染めていた。
「手を繋いで」
金色の草原の上を一人で歩く。
不思議な心地の良い風が吹き私は後ろを向いた。
彼が待っていた。私は彼に駆け寄って手を繋ぎ歩いていった。
萩原実琴
手を繋いで
手を繋ぐことすら理由が必要な私達
イベント事は普段なら嫌いだけど
会う理由になるから馬鹿みたいに
小さなイベントも大事にしてる
北の方から風が吹いてきた
寒いと言って君の手を掴む
付き合ってからだいぶん経ったけれど、
手を繋ぐときはちょっと緊張する。
あなたから繋いでくれる日を待つ。
#手を繋いで
「手を繋いで」
横にいる彼女をそっと見つめる。
僕よりもちょっと幼くて、まだ喋ることも上手にできない小さな女の子。
彼女の手は僕の方に伸びていて、ぎゅっと手を握っている。お風呂に入る時だって、ご飯を食べる時だって片時として、手を離したことは無い。
今までも、これからも。この手が離れることはないだろう。
「ねぇ、そろそろご飯食べよう?」
「うっ…ん!」
だいぶ発音は出来るようになったようだ。
出会った頃に比べれば、上達はしているだろう。
「今日はね、パンだよ!」
「……ってっ、たぁ!」
ニコニコと笑う君。嬉しそうで良かったと出された食事に口を付ける。
もぐもぐと美味しそうに食べる、彼女を尻目に僕は1人考える。此処からどう脱出しようか。
連れてこられたのは2年前。
君はまだ赤ちゃんだったからきっと覚えてないだろう
けど。
起きて、食べて、寝る。
与えられた物で暇を潰す。
そんな、生活にも懲り懲りしていた頃だった。
壁に貼られた紙を見て唖然とする。
生き残りたくば、どちらかを殺せ。
そう書かれた文字とナイフがあった。
殺せ。殺せ?ころせ?コロセ。
横を見る。文字もまともに読めない彼女には、どんなに恐ろしいことが書かれているなんて知る由もないだろう。
巫山戯んな。年端もいかない子を閉じ込めて、挙句の果てにはコロセって。
「いい加減にしろよ!!」
怒りに任せて壁を蹴る。ドンッと音がして、足がジンジンと痛む。
「アッ…どっぅし…て?」
「あっ、ごめんね。君を怒った訳じゃないんだ。」
怖がらせてしまった。頭を優しく撫でる。
どうするかなんてもう決めている。
そっと手を離す。
彼女の大きな目が見開く。
「心ではずっと手を繋いでるからね。どうか、僕のことを忘れて、君として生きて。」
きっと僕は不細工な顔をしているだろう。
グサッと自分の首にナイフを突きつける。
頸動脈を切れば1発だろう。
「ぁっ、!あっあー、ならっ泣」
意識が遠のく。もう痛みも無くなってきた。もうそろそろ死ぬだろう。
カチャっとドアが開く音がした。
君の泣き声も遠のいていく。
大好きだよ。
君に届くことの無い声は喉の中で消えていった。
【 手を繋いで 】
幼い日の思い出。
あの人に手を引かれて、その背中を見つめながら帰る。
親の代わりに迎えに来てくれるその人を、尊敬していた。
自営で忙しい親の代わりは、叔父だった。
体を壊したからと、子どもの相手をさせられるのは、
複雑な気持ちだったかもしれない。
とはいえ、親よりも長くいるから、懐くのは当然だ。
どんな遊びにも付き合い、イタズラをしたら叱って。
本当に、親代わりの存在だった。
だから、突然いなくなってしまった虚無感は、計り知れない大きさで襲ってきた。
泣く、という行為すら忘れ、呆然とする。
大人になったら、子供の手を引いてあげよう。
子供心に決意した、ある冬の出来事だった。
手を繋いで
わたしがなかなか言い出せないそのひとこと
なのにさらりと私の手を取るなんて
あなたはずるいよ
でも嬉しさが上回って頬がゆるむ
ああ、私はまんまとあなたの無自覚な策に溺れてく
好きです
「手を繋いで」
俺としたことが、こんな日に限って手袋を忘れてしまうなんて。コートのポケットに突っ込んだ両手を強く握りしめても、温まる気配はまるでない。震える俺の前を、仲睦まじく手を繋いだカップルが通り過ぎて行く。あいつらが手袋をしていないのはわざとだろう。そうだ、これに託けて、あの子と手を繋ぐことができるかもしれない。あの子はよく自分は体温が高いのだと言って、友達に手を握らせていた。この冷えきった真っ赤な手を振って見せれば、きっと気付いてくれるだろう。
「お待たせ!ごめんね、寒かったでしょ?」
視線を上げると、頬を染めたあの子がいた。小さな両手には、俺がプレゼントした茶色の手袋。
「ちょうど今来たところなんだ。」
俺は両手をポケットにしまったまま、背筋を伸ばして精一杯爽やかに笑った。
手を繋いで
たまに…暗闇にいるような感覚に陥る時がある
怖くて…寂しくて…心細くて…
そんな時…誰かに…誰でもいいから側にいて…手を繋いでほしいと望んでしまう…
手を繋いで…
お互い歳をとっても
手を繋いで仲良く歩けたら良いね♡♡
お婆ちゃんの手は柔らかい。
生の鶏肉の皮みたいにやわやわだ。
ふにふにってすると
お婆ちゃんは優しい顔をする。
もう何年も前の話。
夏にアイスを奢ってくれたのも
よくわからない昔の飴を
うれしそうに教えて食べさせてくれたのも
全部全部、
今はわたしとお婆ちゃんの中だけ。
だいすきだよ
人と手を繋ぐのはあんまり得意じゃない。皮膚と皮膚が長時間触れている状態なのって、親しい間柄でもむず痒くなる感じがする。
ずっとずっとずっと。
この手を離さないでね。
約束だよ。
そんな、幼い頃の口約束を君は今も馬鹿みたいに守ってる。私が、少しでも落ち込んだり不安を抱えたりする素振りを見せるとそっと抱きしめて手を握ってくれる。そうしてもらえるだけで私は満たされるけど、果たして君はどうなのかな。もう、こんな茶番にうんざりしてるんじゃないのかな。本当は早く私から解放されたいって思ってるんでしょ。
それが分かってても私は君を離してあげない嫌な女なの。ごめんね、君の意思はとっくに分かってる。ここに愛が無いということもだいぶ前から気づいてた。それでも私には君が必要で。君じゃなきゃ駄目で。この先もずっと君と手を繋いでいたい。我儘の塊だと分かってる。君を自由にしてあげない私と、嫌々ながらに私の手をとる君。どっちのほうが酷いんだろうね?やっぱり私なのかな。
けどそんなことはどうでもいいの。君がぎゅっとしてくれてる今、そんなくだらないことは考えたくないや。君を離さないように、君が離れないように。私は思いきり君の手を握りしめた。
手を繋いで
僕はデートの約束をした彼女を待っていた。
今日は寒いなぁ。手袋を持ってくれば良かった。と
後悔していると、やっほーと言う声が聞こえてきた。彼女だ。
走って来たのかな。ぼさぼさの髪。待ってたよ、遅かったね。と
声を掛けると、ごめんね~と少し笑いながら頭をかく。
あぁもう、可愛いなぁ。すると、彼女が僕の手に目をやる。
手袋は?今日めちゃ寒いのに…と顔をしかめる。
心配してくれてるのかな。優しい。
もう。仕方ないなぁ~ と彼女がつけていた左の手袋を外し始め、
僕の手にはめる。そしてつけていない方の手を握ってきた。
ふふ。これで自然に手を繋げるね。と満足そうな彼女。
その笑顔を見てきゅうっと心が締め付けられる。
今日も幸せすぎて死にそう。
小学生の頃、よく先生が隣の人と手を繋いでと
無責任な命令を出してくることがあった。
小2か3だったかな。私のこと嫌ってる子が
私と手を繋ぐのをヤダヤダ言って
しまいに泣き出したことがあった。
ただ対処法を知っていた私は筆箱から鉛筆を取り出し
お互いに鉛筆の端通しを持って、手を繋いだことにしてもらった。
先生って生き物には、わりと早くから困っていたな。
「そんなひどいこと言わないの!」とか
「何でそんなに嫌なのか言ってごらんなさい」とか。
いや、ひどいのはあんただから。
まわりの人間も調子に乗って、嫌な理由並べ立てるから。
そうそう、この対処法は手のひらが鉛筆の芯で黒くなるんだよな。
削ってある方を持たせるわけにはいかないからね。
今思えば、嫌いな人間の鉛筆を持つこと自体を
拒否られなくて助かったなとは思う。
(手を繋いで)
おててをつないで
あるいていたのに
もうそんなところに?
おててをつないで
ジャンプしてたのに
どこにいったの?
おててをつないで
…ほんとうにつないでいたかな
すごくだいじだったのに
すごくだいじだったから
さみしいよ
わたしがこのよをはなれるときは
またおててをつないでいてね
おててをつないで
あるいていたのに