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手を繋いで歩こう。
あなたと私の歩幅は違うけど。
手を繋いで、横断歩道をまたいで、境川をこえて、お惣菜屋の匂いをかぎながら、三輪車のベルの音にややビビり、軽く足音を立てて行こう。
トンネルくぐって歩こう。
君は、私の歩幅の二倍はある大きな靴の紐を結びながら、ため息つきつき進む。
瓦屋根の上の雑草を踏んで、廊下の隅をくだり、縁側から庭に出て、街に繰り出そう。
中華街のあかりに照らされて、君の顔は小籠包みたい。
思わずお腹が減っちゃって、手を伸ばしたら君は抱っこしてくれた。
「そろそろおかんが、ご飯を作って待ってる時間だからね」
って、夕焼け空を見たよ。
動悸がするような、夕焼けの空を、中華街のイルミネーションか、二人の影を紫色に染めていた。

12/10/2023, 9:42:44 AM