恋物語』の作文集

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恋物語』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

5/18/2024, 2:40:22 PM

私の祖父は、昔はもうとんでもない大金持ちのボンボンで、婚約者がいた私の祖母を横から掠め取ったらしい。その祖母も元々はそれなりのおうちのお嬢さんだったのだけれど、父の事業が部下の裏切りによって潰れてしまって進学を諦めたのだという。

 どういう経緯で略奪を成功させたのかは知らないけれど、聞くにあんまり祖母は幸せではなかったみたいだ。結婚後も熱心に絵画などを送り付けてくるようなファン(祖父が言うにはフアン)がいる程度には美人で、婚約者だっていて、有能な人だったのにどうしてまぁあんな祖父に嫁いだのかしらと、母からその話を聞く度に思って言うと、

「でもそうじゃなければ私たち、生まれてないわよ」

などという。それはそうだけれど、そういうことではないというか。

 祖父の仕事は当時としては珍しく、国外への転勤が多いものだった為に祖母はブラジルで式を挙げた。その式の写真を見せてもらったことがあるが、白黒写真に写る豪華なウエディングドレスを身につけた祖母と、その隣でタキシードを着た祖父が教会から出てくる姿は、とても美しくみえた。見えただけだけれど。

 苦労の絶えなかった祖母だったが、どうやら祖父はその態度に反して祖母のことを心から愛していたようだった。祖母の葬儀で、私は初めて祖父の涙を見た。それならばちゃんと大切にしてあげれば良かったのに、と思わなくもなかったけれど、時代もあったし祖父にはあれが限界だったのだろう。


 さて、今度は母の話だ。母は大学で知り合った父に猛烈に求婚されて結婚したらしい。すごくうるさかったともらしていた。二人はやっぱり教会で式を挙げたのだけれども、この式には結構なエピソードがある。

 当時あまり式にお金を使いたくなかった二人は、卒業した大学にある教会で式を挙げた。これは全然全く問題無かったのだが(本物のキリスト教式で、美しくて安かったらしい)、この式の際に着る衣装で父がやらかしたのだ。

 父はどうも、ドレスを買うのは高いから嫌だと言って、父の母(要するに母にとっての姑)が式を挙げた際のドレスを借りると言ったのに、自分には十数万円の新品タキシードを買ったらしい。

 この時点で相当アレだが、さらに姑に借りたドレスは返却を求められたそうだ。あとサイズがあんまりな細さだったとか。母は当時40kg前半代でようやく入ったというのだから相当だ。そして、父は離婚したあとも多分何が悪いのか分かっていなかった。

 二組の夫婦にはまだまだ呆れるほどのエピソードがあるのだが、それもまあ、きっと恋物語のひとつなのだろう。凡人の結婚話でも掘ればわんさか物語は出てくるもんだ。そんなだから、恋はあんなにも信仰されているのかもしれないと、我が一族の女の男運の無さに恐れを抱きつつ思うのであった。


「恋物語」

5/18/2024, 2:38:59 PM

私は、俺は「「あいつが嫌い」」
あいつってば意地悪だし、頑固だし、面倒臭い。
女のくせに、ガサツだし猪突猛進で口悪いし

私、イケメンで優しい幼なじみが良かったな〜
「ねーさな!」
「ど、どした?」
「貴臣くんてチョーかっこいいよね!」
「本当に、どした、?」
「高身長で運動神経良くて頭もいい!悪いとこ無しじゃん!」
「あいつはそういうんじゃないよ…」
「えー?じゃああたし狙っちゃおっかな?」
「私のじゃないんだから好きにしなよ笑」
「やった〜!」
私のじゃ、ないし

俺、もっとこう、お淑やかで…文武両道な?幼なじみがいいなぁ
「貴臣〜」
「なんだ〜」
「さなちゃんってさ!可愛いよな!」
「…俺でよければ眼科紹介するけど…」
「お前は幼なじみだからわかんねーかもだけどさ?
勉強も部活も一生懸命でさ、なにより可愛い!!」
「結局それかよ笑」
「な!俺さなちゃんに告ってみようかな!」
「俺に聞かないで好きにしろよ笑」
「交渉成立だな!」
…なんの交渉だよ

「あの二人早くくっつかないかなぁ」
「それな?俺も今日ちょっと焦らしてみた」
「両思いな癖に素直じゃないんだからもー」
「ほんとに、見ててじれったくなってくるよ」

「「あの、!さっきのさ、!」」

「あ、さな!どしたの?」
「貴臣も、急いでどした?」
「「いや、あの…」」
「てかさなちゃんお久!」
「貴臣くんじゃん!今日もかっこいいね!」
「ひ、久しぶり…」
「あ、あざっす…」

「「で?さっきのがどした?」」

「い、いや〜なんだっけ、?」
「お、俺も忘れたかも、?」
「か、帰ろ!」
「お、おう」

私は、俺は「「こいつなんか好きじゃない、!」」

「成功?」
「かな?」
「じゃ、俺らも帰ろっか?」
「へ?あ、うん!」



【恋物語】



あとがき


素直になれない恋愛ってなーんか応援したくなっちゃいますよね
さなちゃんと貴臣くんのお友達は2人の恋愛応援団でした笑
2人は無事に自分とお互いの気持ちに気付けるでしょうか
それは青春を歩む2人だけの物語
そして応援団の2人にも青春の風が…?

5/18/2024, 2:38:59 PM

――こうして、お姫様は王子様と幸せに暮らしましたとさ。
 めでたしめでたし。

 そんな幸せな物語、現実には存在しない。
 近くで見つけた妥協の恋くらいしか存在しなかった。

 でも、とうとう見つけてしまった。
 王子様のような、素敵な存在。

 だけど、それは選りにも選って、画面の向こうにいた。
 まだ同じ次元に存在してくれただけマシかもしれなかった。

 私はあなたに恋をした。
 あなたに言葉をたくさん投げるけど、一緒にお金もたくさん投げるけど。
 知っている。あなたにとって、私はたくさんの名前のないものの一つで、きっと知ることもないんだろうってこと。
 いつかはきっとあなたなりの幸せを見つけて、目の前から消えてしまうんだろう。

 それが、とてつもなく、苦しい。

 わかっているのに。最初から、叶わない恋だということ。
 お姫様は王子様と幸せに暮らせたけれど、お姫様になれない、何でもない私は、叶うことのない恋物語を終わりまでただ見続ける。


『恋物語』

5/18/2024, 2:37:09 PM

恋物語

恋愛は自分がどうしたいかによって未来は作られていくのだと思う。

その人とハッピーエンドにしたいならそういうシナリオを書いていけばいい。

いつだって自分の物語の主人公は自分なんだから!楽しく幸せな恋物語に仕上げようじゃないか!

5/18/2024, 2:36:02 PM

作品No.48【2024/05/18 テーマ:恋物語】


別に 期待なんてしてない
けどさ

自分の親の恋物語に
少しだけ興味があるのです

あまり仲良くは見えない二人が
どうして結婚に至ったのか

そして
お互いをどう思っているのか

ほんの少し
知りたい気持ちもあるのです

5/18/2024, 2:35:29 PM

先輩に恋して

会いたくて会えなくて

話したくて話せなくて

片思いは辛い

これが私の恋物語だ

5/18/2024, 2:33:39 PM

これはきっと試練なんだと思う。
最初で最後の。
長編何部作になるんだろう?と思うぐらいの片恋物語。
彼に心を奪われていた期間と同じだけ、忘れる期間も必要なんだと思う。
私の恋路は彼だけのもので幕を閉じる。

後悔はしていない。
たとえ片恋でも、それなりに幸せだった。
私の残りの人生、彼の幸せを祈り、彼への想いを一つずつ消し去ることだけを考えるよ。


お題『恋物語』

5/18/2024, 2:33:00 PM

「お姫様になりたかった。」

君は突然そう呟く。
別にキラキラしたドレスが来たいとか、美味しい料理がたくさん食べたいとか、そういうんじゃないんだけどね、と後に付け足されたその言葉を理解するのにほんの少し時間を要した。

なんで?そう一言僕は問いかける。君の言葉に肯定も、否定も相応しくないと感じたから。


「ハッピーエンドを約束して欲しいの。」


たとえ意地悪な人達が周りにいても、たとえ誰かに恨まれて、心無いことを言われても。
たとえ、王子様の相手が、自分じゃなくても。

最終的には主人公とそのパートナーが笑って幕を閉じる。そんな"お決まり"がどうしようもなく羨ましいんだ、と。



「なら、僕が約束する。」


綺麗なドレスは着させてあげられないけど、フルコースは出してあげられないけど。
君となら、どんなによれた部屋着だって、ご飯とお味噌汁だって。幸せの1ページになるんだから。

ほら、小指を出して。子供騙しの約束で、今日も綴っていこう。

これは君と僕のありふれた

ー 恋物語 ー

5/18/2024, 2:25:59 PM

縁側から肩を並べて見る
夜の美麗な月の向こう側
嫦娥の周りを輝く星々
そこから私は見えるのだろうか
「旦那様、旦那様は私を㤅してくださいますか?」

「お前こそ、俺を㤅することが出来るか?」

「旦那様、㤅とは時にすると人がゆっくりと歩みながら過去を振りかえる心情と書くのです。旦那様に戀は出来ないでしょう。糸はあの人が持っていったのですから、もう取り返すことは出来ません。しかし、㤅ならば旦那様と持つことができます。旦那様は私に歩調を合わせ、過去を共に慈しむことが出来るからです。」

「フッ、そうかァ。確かに其れならお前と出来そうだ。」

貴方は糸を奪っていった。
それは心に物語として刻まれている。
この先もずっと。

『朧の夜月 恋物語』

5/18/2024, 2:24:39 PM

『恋物語』

そんなキレイな物語なんて…私にはない
私の恋はどの恋もキレイじゃないから
汚れてる
私は…そういう人間だ

恋と鬱は紙一重
ドキドキと動悸
ほんの些細なことで浮き沈み
何が違うの?

それに加え
更年期なのか?コロナの後遺症なのか?
わかんない体調不良が続いている

今日は全部しんどい日
そんなときもあるんだよな…
それはもう仕方ない!

私の恋は今後
何話まで続けられる?
何歳まで恋って出来るんだろうね!?

5/18/2024, 2:23:31 PM

「恋物語」

結婚したらもう正直恋物語は終わり。
恋というより愛というか
愛とも言えないほどの無の関係です。
それがとても心地よいです。

恋物語と言えばやっぱり今は少女漫画。
もう夫以外で恋に落ちること無いから
少女漫画で疑似恋愛しています。
それで恋物語は満足
そんな平和な日常です。

5/18/2024, 2:20:27 PM

「恋物語」
恋をしているときの私の日常は物語を書けそうなほどに世界がきらきらと輝いていた。
先輩の第一印象は「いい先輩だなー」程度だった。でも、先輩は距離感が少しおかしく思わせぶりだから「好きだなー」と思うのに時間はかからなかった。
先輩とは一年離れてるだけだし、先輩も私を可愛がってくれてたから「もしかしたら」なんて妄想ばかりしていた。結局、ただの妄想に過ぎなかったけど。
そのまま何事もなく時は流れ、先輩はさっさと卒業していった。告白して振られた訳でもないのに叶わなかった恋は失恋なのだろうか。別に何かを失った訳ではない。ましてや、最初から得てもない。
まあ、こんなつまらない一時の恋は物語を書くに値しないのでここで終わりにする。

5/18/2024, 2:17:45 PM

少女漫画の中で、恋に落ちる瞬間って結構パターン決まってる気がする。
一目惚れした時、自分を助けてくれた時、笑顔を向けられた時、とか。
これらを全て意中の相手に実践すれば、恋物語は始まりますか?
恋人がいる人にインタビューして、いつその人を好きになったのか知りたいな。

5/18/2024, 2:14:21 PM

恋物語

「お前は夢見がちな恋愛ばかり書く。現実味がない」

端羽の小説はいつだって満たされている。どこにも影がなく、まさに綺麗な青春だ。
だから俺はあえていつも以上にキツく言ってやったのだ。しかし端羽は「そうか」とアイスコーヒーを口にした。そこには歪んだ表情も悲しい表情もない。あるのは、動じない穏やかな端羽のいつものそれだった。

「くやしくないのか?」

思わず口にしたそれに端羽は笑う。

「僕の創作が君に合わなかっただけだし、夢見がちなのは事実だからね。まあ、全く傷ついていないと言えば嘘になる。でも――」

俺は端羽の真っ直ぐな視線と言葉に何故か逃げ出したい気持ちに駆られる。

「空想の世界だからこそ、僕は綺麗なものを書きたいんだ」

ふと自宅のパソコンが頭に浮かんだ。俺のいつまで経っても完成しない小説が真っ暗な画面の向こうで俺みたいに捻くれた顔をしている気がした。

「僕もまた読みたいな。君の面倒くさい現実味のある小説」

「……そうかよ」

「これでおあいこさ。それに、僕は君みたいな話は書けない。だから良い刺激になる」

「……ごめん」

「いいよ。そら、人に当たり散らすのが済んだら自分の創作にその迷惑な感情を叩きつけてやれ」

痛いところをつかれ、俺は顔を上げることが出来なくなった。


日々家

5/18/2024, 2:11:52 PM

君ともっとずっと一緒に居たいから今夜は一緒に過ごしてくれないか?という誘いよりも、飲み会の次の日の昨日は大丈夫だった?と囁く小声にうずくハート。
今日の天気は雨でなにやら幸先が悪いと感じてしまうハート。
星占いはきっと大して当たらないから、今日あの子にお疲れ様とジュースをあげよう。




˗ˏˋ 恋物語ˎˊ˗

5/18/2024, 2:11:31 PM

恋物語

24/5/18

恋だけだとありふれた感じ。
でも、物語が付くと、急にドラマチックで壮大な悲話的な感じになる。

自分の心が麻痺してしまっていた頃、恋がしたいと、もう一度、身も心も焦がす様な恋にのたうち回りたいと、強く強く願った。

今、身も心も焦げて、冷静に水をぶっかけた所。
なんだかなぁ。

5/18/2024, 2:11:30 PM

学生の頃にもらった手紙を思い出す
「世界が敵になっても 僕だけは〇〇の味方だから」
もらった当時はドラマのようなメッセージに
(なんだかかっこつけてるなぁ)と
照れくさくて笑ってしまったけれど
今はその精一杯の愛がこもった背伸びを
愛しい記憶として思い出す

―恋物語

5/18/2024, 2:11:11 PM

【恋物語】

恋物語で敵が出てくるものは嫌いです
2人だけの世界で良いのに
どうして邪魔をするのですか

2人の間にあなたが挟まる隙はないというのに
邪魔せず一緒に見守りましょうよ
2人の恋物語を

あなたにもきっといつか訪れます
誰も邪魔できないような恋

私は敵のいない2人だけの世界が好きです

恋敵なんていらない
昼ドラのようなドロドロもいらない
2人の間の愛だけで良い

私はそういうのを見守っていたい

5/18/2024, 2:09:25 PM

「好きです!」
女子高生が屋上で、男子高生に向けて叫ぶ。
一瞬の間の後、女子高生があわあわと早口で言い募る
「あ、えっと、その、すみません!言うつもりはなくて…ちょ、あの、ごめ…
「謝らないで!」
間髪を容れず、相手の男子高生が叫ぶ。
…一瞬の間をおいて、男子高生が照れくさそうに首を撫でながら、
「実は俺も…好きだったんだ」……

この後の展開はページをおくらずとも想像できる。
互いに頬を染めながら付き合い、バカップル上等とばかりのデートを重ねて、イチャイチャと絆を深めて、最後には幸せなキスをして終了_

手元に置いた炭酸水を飲む。
無味だ。二酸化炭素だけが口内と喉を刺激する。

机の片隅で、ラジオが喋っている。
「__続いてのお便りは、ペンネーム、ウツボカズラさんから」

炭酸水は水の味しかしない。
目の前の、この作品みたいだ。
ストーリーは無味だ。絵の綺麗さだけが脳を刺激する。

左上に記載されたタイトルを見やる。
『ハッピーエンディング_小さな恋物語_』
起から結だけじゃなくタイトルまで、ベッタベタのテンプレの恋愛ストーリー。
エンタメ系の『恋物語』で散々見つかるパターンだ。

…いや、良いのだ。
所謂、こういう既視感のチラつくテンプレ恋物語は、それはそれで良いのだ。

基礎問題みたいなものだ。
公式(テンプレ)を当てはめるだけで、理解して楽しめる。基礎問題なら、時間も頭も無駄に消費せずに娯楽にかまけられる。タイパ社会における最高の餌なのだ、これは。
基礎問題は重要だ。これが分からなければ、応用問題の重厚な作品は楽しめない。
だから気軽に楽しめるこれにもまた、需要があるのだ。

…そう思わなくてはやってられない。

私はタッチペンを手に取り、液タブの画面に着地させる。
ページをおくり、次のページの下書きを丁寧に仕上げてゆく。

都会にはこんな基礎問題が溢れている。
消費せねばならないものに溢れているからだろうか。
タイパを気にして時間に追われているからだろうか。
基礎問題は他の媒体に形を変えるのも容易だからだろうか。
基礎問題なら、頭を使わずとも即時に娯楽の快楽に浸れるからだろうか。
都会には兎角この、基礎問題が溢れている。

その中でも特に多いのが、このありふれた恋物語だ。
そんな恋物語を作る仕事を、私はしている。
都会でエンタメを仕事にするってそんなものだ。

ラジオは良い。時代遅れのガビガビの音声。話題は素人のお便り頼り。
こんな生き急ぐエンタメに囲まれた都会にも、ラジオはゆっくりとした時間を届けてくれる。

炭酸水が、二酸化炭素を着々と気化していく。
泡が減ってゆく。
窓の外は、まだ明るい。忙しい街が眠るには0時は早すぎる。

「___それでは次のお便り__」

ラジオだけが、のんびり声を紡いでいた。

5/18/2024, 2:09:08 PM

恋物語(゜゜)

恋物語=男女の恋を主題にした物語、小説。
    また一般に、恋の話。 恋についての話。

────────────────────────
仕事が休みの日は、出かける…ではなく、読書。
普段の研究所でも籠って、休みの日も籠もる。
出不精ここに極まれり。
結婚を切望する母親あたりには顔を顰められるだろうが、今は一人暮らし。
お咎めは飛んでこない。
休みに何をしようと自由だ。

そもそも休みとは本来そういうものなのだから、心置きなく、今日は恋物語でも読もう。

ベッドの脇にある本棚から文庫本を一冊取り出し、パジャマ姿のままベッドにダイブする。

ベッドは、ボスンと音を立て優しく体を受け止めてくれた。

うつ伏せになって、枕を胸のあたりにセットし、抱え込む。
こうすることで普通に寝転ぶよりも、本が捲りやすくなって良い。ただし、長時間の場合は腰を痛めることもあるので注意が必要だ。

懐かしい表紙を眺め、ページを捲る。

幼馴染と恋仲になるまでの甘酸っぱい物語。

思春期に何度も読んだ物語は、ちょっと読むだけでシーンが蘇ってくる。

当時は、幼馴染や同学年、或いは一、二年先輩に恋をするのが当たり前と思っていた。
でも、悲しいかな。
良いなぁと思う人はいても、アタックする勇気が当時の自分には無かった。

大学時代は、主に単位、レポート、バイトのローテーション。恋愛というものとは、とんと縁がなかった。

大人になって就職した先でも、良いなぁと思う人は既にお相手がいた。

世の皆様は一体どのタイミングで、生涯の人と出会うのだろうか。

今、私が勤務している研究所は──ちょっとボロくて、研究所には見えない──私と博士しかいない。
私が異動してくる前は、博士一人しかいなかった時期もある。企業の一事務所としても、他の営業所と離れ過ぎているし、部署の役割的にも何でも屋みたいな不思議な位置にある。

私が異動すると決まった時、同僚や上司は、「あの研究所の所長は変わり者」とか、「上の弱みを握っているような人だから気を付けて」とか、「絶滅危惧種並に会えない人」とか、色々教えてくれた。

あんな素敵な文章を書く人が、人の弱みを握るような人物と言われても私はしっくりとこなかった。

存在Xみたいな、ふわふわとした像だけが独り歩きしているような、そんな違和感があった。

実際の博士はド級のお人好しで、気遣い屋で、出来た人だ。

何故実像と違う噂が独り歩きしているかはわからない。
研究所が他の営業所と比べて辺鄙な場所にある理由もわからない。
何故、博士一人の期間があるのかも知らない。

聞けば教えてもらえるのだろうか。

博士と研究所の秘密。

手元の恋物語どころじゃなくなってしまった。

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