奏野 時雨(雨雪 蝶花)

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縁側から肩を並べて見る
夜の美麗な月の向こう側
嫦娥の周りを輝く星々
そこから私は見えるのだろうか
「旦那様、旦那様は私を㤅してくださいますか?」

「お前こそ、俺を㤅することが出来るか?」

「旦那様、㤅とは時にすると人がゆっくりと歩みながら過去を振りかえる心情と書くのです。旦那様に戀は出来ないでしょう。糸はあの人が持っていったのですから、もう取り返すことは出来ません。しかし、㤅ならば旦那様と持つことができます。旦那様は私に歩調を合わせ、過去を共に慈しむことが出来るからです。」

「フッ、そうかァ。確かに其れならお前と出来そうだ。」

貴方は糸を奪っていった。
それは心に物語として刻まれている。
この先もずっと。

『朧の夜月 恋物語』


5/18/2024, 2:25:59 PM