雨よ 止んでくれるな
花よ 散るには早いぞ
私の心の内を表せるなら
この雨が止まなければ
やっと私は憂うことが出来ますね
軒先の垂れる雫は美しくもありますね
憂うから 優しさでしょう
戻るから 愛でしょう
交わることはないから 恋では無いのです
雨よ 止むなら橋を掛けろ
花よ 散るなら優美でいろ
私の心の内を表せるなら
穢らしいこの体など
あの時から要らぬものなのです
『箱庭の薔薇 降り止まない雨』
縁側から肩を並べて見る
夜の美麗な月の向こう側
嫦娥の周りを輝く星々
そこから私は見えるのだろうか
「旦那様、旦那様は私を㤅してくださいますか?」
「お前こそ、俺を㤅することが出来るか?」
「旦那様、㤅とは時にすると人がゆっくりと歩みながら過去を振りかえる心情と書くのです。旦那様に戀は出来ないでしょう。糸はあの人が持っていったのですから、もう取り返すことは出来ません。しかし、㤅ならば旦那様と持つことができます。旦那様は私に歩調を合わせ、過去を共に慈しむことが出来るからです。」
「フッ、そうかァ。確かに其れならお前と出来そうだ。」
貴方は糸を奪っていった。
それは心に物語として刻まれている。
この先もずっと。
『朧の夜月 恋物語』
風に吹かれたい
塵になりたい
幾ばも願ってきたのに
影にはどうも光は付き物らしい
私は朗らかな人では無いのに
貴方は私を太陽だと
己は月で有るのだと
そう言っていたけど
やっぱり私は月ですよ、貴方
貴方という太陽を失ってから
私は光を失ったもの
月で間違いないわ
月は自ら光を発せないのよ
風に吹かれたい
塵になりたい
幾ばも願っているのに
私の体は
風に身を任せて
蒲公英の綿毛のように
揺蕩う事は出来ない
風に揺られたい
貴方と髪を靡かせて
『朧の夜月 風に身をまかせ』
もしあの夜、貴方と
一緒だったなら
もしあの夜、貴方と
逝けたなら
私は何れ程幸福だっただろう
もう、精魂抜けて蛹のカラに成った
私に
まだ、陽の光を浴びれと
貴方は仰るか
心には照らすべき行く末は
どうも書けそうにない
夢をひとつ、ふたつ數えて見れば
夢と見間違えたのに
其れさえも忘れた私を
弄ぶのだろか
心狭い私の御魂忘れてしまうのは
貴方なら有るだらう
文月の七日久方に希って見ようか
夢を、見る心をくれと
また、夏の貴方を浮かべたいと
『朧の夜月 夢見る心』
月明りのスポットライト
綺羅びやかなドレス
未明の空
二人きりの世界で
「さぁ、踊りましょ?」