『忘れられない、いつまでも。』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【忘れられない、いつまでも。】
シャーデンフロイデ(注:1)なんて、味わうハズが無いと思ってた。
私は優等生で、いつだってみんなの模範となるようなことをしてきた。困っている人が居たら見返りを求めず助けたし、みんなが嫌がることも嫌な顔ひとつせず進んでやった。勿論、人の不幸を笑うことなんてしなかった。
それが今、壊れた。
目の前には、血だらけになって倒れたアイツがいる。私のことを馬鹿にしてきたアイツ。良い子を笑ったアイツ。中学生のくせにタバコを吸ってるアイツ。悪人のアイツ。死んでも誰も困らないアイツ。
携帯を見ながら自転車を漕いで、車に轢かれたアイツ。
アイツを轢いた車は、すぐにどこかへ消えていった。私は救急車も、警察も呼ばなかった。だって、もう頭無いし。アイツを轢いただけで人生が台無しになるなんて可哀想だし。
ここは田舎だから、車の通りなんて数日に一本しか無い。だから、言わなくてもバレない。どうせこのことも有耶無耶になって、アイツを轢いた可哀想な人も助かる。
それに、アイツが死んでも誰も困らないから。
私もすぐに家に帰った。
何も無かった様に自分の部屋に入って、笑った。笑いが止まらなかった。だって、悪人に罰が下ったんだもん。自業自得なんだもん。それは素晴らしく良い事で、快感だった。
初めてのシャーデンフロイデは、私に極上の感情を与えた。
注:1シャーデンフロイデ・・・・・・ドイツ語で、「人の不幸は蜜の味」という意味。
忘れられない、いつまでも
忘れることなんかできない
この世でできた大切な思い出だけは
そう、いつまでも
死んだとしても
ある日の夕方、公園で遊んでいた子どもたちの姿も消えて宵闇が迫ろうという頃
肌寒い季節というのに肌着の上下だけを身につけて
折れた傘を引きずり うなだれて歩く男の子がいた
同じところを行きつ戻りつしている
小学校に上がるか上がらないかの年ごろで
この時間に一人きりでいるのを不自然に感じて思わず
「どうしたの?」と声を掛けた すると
「傘がこわれちゃったんだ、帰ったら父ちゃんに殺される」
「きっと傘のことよりも、帰りが遅いことを心配しているよ、おうちまで一緒に行こうか?」と言うと 「うん」と すがるような眼で見る
心細げな手を繋いで行くと、家はさほど遠くではなかった 門の呼び鈴を鳴らしても返事はない
家の窓からは明かりがもれている 再び鳴らしてみる
「鳴らしても出てこないよ、こうするんだよ」
彼はそう言うと門を入り 玄関の扉を小さな拳で
トントン トトンと叩いた
固く閉じているように見えた扉が すっと20センチほど開いたと思った瞬間 中からのびた手が彼の腕を掴んで引き入れて扉は閉じた
ただいまもお帰りなさいもなく、ただ閉じた扉の前で
当惑していたが ともかく送り届けられはしたのだからと自分に言い聞かせてその場を後にした
あれでよかったのか、他にできることはなかっただろうかと気に掛かり その後何年も経った今もあの日の彼の姿と折れた傘、眼を忘れられない
「忘れられない」
#100
勉強不足で、知ったかぶりで。声だけ大きくて、勤めた時間だけ長くて。こんなこと間違えて。それもいまさら。
はぁーぁ。まさしくお題そのもの。
今日のわたしの、大失敗。
#9 お題:忘れられない、いつまでも
テーマ:忘れられない、いつまでも #177
今はもう会えないけれど。
忘れられない、いつまでも。
遠くから見守っていてね。
今は遠くて会えないけれど。
忘れられない、いつまでも。
また逢える日が来ることを願って。
今は気恥ずかしくて会えないけれど。
忘れられない、いつまでも。
あなたのことを愛していたことは事実だから。
今は遠くて行くことができないけれど。
忘れられない、いつまでも。
何処か懐かしさのある、
思い出の場所を。
今は戻ることはできないけれど。
忘れられない、いつまでも。
記憶や思い出は無くならないから。
一時、数日…
みんな悲しむ。
悲しいね。残念だね。惜しい人をなくしたね。
1ヶ月、たまに思い出す。
あぁ、そういえば、そうだったな。
1年、もう頭を過ぎることすらない。
そんなものだ。そんなもの……
人間なんてそんなものだろう?
なのに、どうして?どうして!
今日もあの子の笑顔を夢に見る
#忘れられない、いつまでも。
―忘れられない、いつまでも。―
友人と新幹線で東京へ向かったあの日
お昼に食べた洋食屋のオムライス
休憩がてら訪れた公園での雑談
初めての舞台観賞
初めて目の前で観た俳優Tさんのお芝居
画面越しでは味わえない情熱のようなもの
あの感動は忘れられない
あの人との思い出は、楽しかったこともいっぱい
あるから、そういう意味で忘れたくはないかな、
と思う。朧げになっていても、そのなかには、
笑顔で過ごした私がいる。それを無視するのは
違うと思うし。
ただ、人間は忘れていく生き物だから、
いつかこの先、今のこの気持ちを忘れていくことが
あるのだろうか。
それは少し、寂しいな。
「忘れられない、いつまでも。」
忘れられない、いつまでも
お互いの孤独で繋がって
身体を許したあの夜闇の艶が
剥き出しのラインをなぞる
生温かく優しい感触が
この世に一つしか知らない何よりもの光を
心から大事に包むあの横顔が
忘れられない、いつまでも
忘れられない、いつまでも。
あなたはずっと、魂の片割れだ。私はずっと欠けていたのに、あなたが全てを補ってくれた。私はあなたに全てをあげた。全てをあげてしまったから、私は息の仕方も生き方も、上手く思い出せなくて。
あなたがいつも飲んでいたレモネード。「これならいつでも飲めるから」って、市販のレモンジュースにこれまた市販のガムシロップを入れたもの。思い出しながら作っていく。
「ね、おいしいでしょ?」
そんな声すら聞こえてくる。今の私には、甘酸っぱすぎるよ。
昔、気まぐれで買った赤ワイン。あなたが飲んだことのなかった辛口ワイン。少し味見をしたけれど、あなたはずっと甘党で、やっぱり飲めずに苦い顔。
私は別に飲めるからって、おかわりして飲んでたら、スマホを見ていたあなたは突然立ち上がって。
お気に入りのレモネードを作って、赤ワインをそこに静かに注いで。
味見をしてから頷いて、びっくりしてる私に、
「ほら、飲んでみてよ」
ちゃんと調べたレシピだよ、って、面食らった私に差し出して。
忘れられない、いつまでも。
あなたの体温と笑い顔、私にできないグラデーション。あなたの好きな色を眺めて、私はモノクロ世界のまま。
「今すぐそっちに行きたいな」
グラスの氷が、カランと鳴った。
専学時代ステージ作ったり
撮影スタジオのセットを作ったり
出演者のケータリングしたり、
サポートしたりが楽しかったなー♪
もういちどあの頃に戻ってみたいくらい
いい思い出しかない。
#忘れられない、いつまでも。
母の実家の囲炉裏の香り…
お風呂を沸かす竈の薪の燃える香り…
優しい祖母の笑顔…
実家の玄関を開けたときの香り…
父がお酒を飲みながら話すいい笑顔…
母の拗ねたいたずらっ子な笑顔…
私の居場所だった部屋…
忘れられないものは
抱えきれないほどあって
大切なの…
もうどれも思い出の中にしか…
欲しくても もう手にできないから
忘れられないのでしょうね…
題.忘れられない、いつまでも。
「疑似恋愛」とも「大恋愛」とも
呼べたあの感情。
君がどこにいっても
どんな姿になっても
愛し続ける
死んでも
生まれ変わっても
君を忘れない自信がある
忘れない
いつまでも
〈忘れない、いつまでも〉
記憶に残っていなかったとしても
五感は覚えている
聞き覚えがある
見覚えがある
どこかで嗅いだ匂い
思い出せないけど何かの感覚
懐かしいような味
*忘れられない、いつまでも。
「可愛い」「美人」「頭良い」「優秀」「多才」「頼りになる」「優しい」「面白い」「素敵」「憧れ」
『大好き』
どんなに頑張っても
周りに認められても
愛する人ができても
「お前なんか、産まなければ良かった」
この言葉が、あなたの言葉が、頭から離れない。
"忘れられない、いつまでも"
職場の自動販売機には、ブドウ味のジュースが2列陳列されている。元々一列だったのだが、僕が決まってこのジュースばかり買うのでみかねた販売員が在庫を増やしてくれたのだと僕は推測している。
しかし僕はこのジュースが殊に好き、という訳ではない。ただこの甘ったるい飲み物を口にする度、僕はある夏の日を思い出すのだ。
それは僕等が高校生の頃だった。
地元の小さな祭りが開催されている夜、突然君から連絡が入った。
それは普段あまり話さない派手な性格の友人に気圧されて祭りに来たものの心細いから、今から来てくれないかという誘いだった。
僕はあまりに急な誘いだった事と、一人で気を揉んでいる君を想像すると少し可笑しかった。そしてすぐさま家を出た。
それから僕等と他の友人たちはしばらく一緒に祭りを楽しんだ。幾つか出ていた縁日を廻り、ご老人ののど自慢大会と化したカラオケ大会に勝手に批評を加えたりした。僕等は自由だった。
途中で喉が渇いたので何か飲みたいと思い、地元の小さな商店の横に設置された自動販売機に向かった。冷たい飲み物の入ったそれには、煌々とした電気に寄ってくる小虫を捕まえるために構えた蛙がびっしりとついていた。蛙に対して恐怖心を抱かない僕は平気で近くへと向かったが、君と他の友人は離れてその様子を伺っていた。僕はなんとなくブドウ味のジュースを選んだ。ボタンを押すと、ジュースの缶が落ちる振動で蛙たちが一斉に飛び跳ねた。流石に驚いた僕は間抜けな声を出した。それを見て君は酷く笑った。
一口飲んだそれは思っていたより甘かった。僕の隣に来た君は「一口ちょうだい」と言うと自然な動作で僕の手から缶を取り、グッとジュースを飲み込んだ。「美味しい」と笑い、缶を僕の手に握らせた。
その後、少し離れたコンビニで手持ち花火を買った僕等は君の家の前で花火を楽しんだ。めいめいに振り回し、飛ぶ火の粉にきゃいきゃいと声を出して笑った。
やがて家に帰ってきた君の弟とその友人も含め、なかなかの大所帯で花火を楽しんだ。夢みたいな夜だった。
今日も仕事の合間にブドウ味のジュースを買った。隣に君は居ないし、一口飲むと今の僕には甘すぎた。ただ次に選ぶ飲み物も、きっと決まってこのジュースだろうと思った。
嫌なこと
無意識に引きずってる
嬉しいこと
糧にして、心に飾ってる
今ではもう憎いとか
そんな感情はないけど
顔はまだ覚えてる
今でも鮮明に覚えてる
嬉しくて楽しくて
忘れないように
辛いことも
幸せなことも
ずっと影のようについてくる
きっと
この先もついてくるけど
消ゴムで嫌な記憶を
消すことも出来ないけど
二本線で消して
書き直すようになら
出来ると思う
無理に忘れなくても
上に良いこと重ねたい
直ぐには無理でも
一歩ずつでも──
(2023.05.09/忘れられない、いつまでも。)
忘れられない、いつまでも
道端にたんぽぽを見つけただとか、野良猫があくびしてるだとか、そんな幸せな瞬間はすぐに忘れてしまうのに、みぞおちに刺さるような冷たい言葉は何故こんなにも忘れられないのか。
【忘れられない、いつまでも】
嫌なことを全て忘れてしまいたい。そう願うのは人として当たり前のことだろう。失恋、失態、失望……ほんの些細な欠落で、人は容易く僕の店の扉を叩く。
忘却屋――それが僕の生業だ。新宿の片隅の薄汚れたビルの4階、『貴方の記憶、お消しします』なんて怪しげな看板一つしか出していないこんな胡散臭い店に、よくもまあ毎日のように客が訪れるものである。
非常階段の錆びた手すりに寄りかかり、ぼんやりと青空を見上げた。狭い空だ。だけどこんな汚泥を煮詰めたような場所にまで、太陽の光は隔てなく降り注ぐ。それがひどく馬鹿馬鹿しく思えた。
物心ついた時には、脳をいじくり記憶を消す方法を理解していた。嫌だなと思ったことを消して、消して、消し続けた僕の記憶は虫食いの穴だらけで、両親のことも生まれ故郷のことも何一つ思い出せない。だけどそれで、特に不便はなかった。楽しい記憶だけに埋め尽くされた僕の心は、決して傷つくことはないのだから。
『それは、傷だよ』
不意に耳の奥で、囁くような声がした。打ち消すようにポケットから取り出したライターをカチカチと鳴らすけれど、悲しげな君の声は僕の鼓膜を震わせ続ける。
『忘れてしまいたいと願う記憶がそれだけあったってことは、君の心が傷つき続けたってことなんだよ』
タバコの煙を燻らせながら、星一つ見えないネオンに飾られた明るい夜空を見上げて。君は視線を向けることもなく、ただ僕の頭をポンポンと軽く叩いた。
(こんな記憶、要らない)
血の気を失った真っ白な君の顔。病院の地下室の薄暗いベッドに浮かび上がったそれを思い出して、吐き気がした。忘れろ。忘れてしまえ。君と過ごした日々の全部。だってこれを覚えていたら、僕の心には癒えない傷が残ってしまう。
(要らない、のに……)
なのにどうして、僕は記憶を消せないのだろう。もう君がいなくなって一年が経つ。それなのにどうして僕はいつまでも、君との思い出をみっともなくなぞっては、ぐずぐずと傷を膿ませ続けているのだろう。
震える手でタバコを咥えた。君が好きだった銘柄。ライターで火をつければ、ひどく苦いだけの重たい煙が肺を満たす。いつまでも忘れられない記憶を抱きしめて、抜けるように青い空へと向けてゆっくりと息を吐き出した。