忘れられない、いつまでも。
あなたはずっと、魂の片割れだ。私はずっと欠けていたのに、あなたが全てを補ってくれた。私はあなたに全てをあげた。全てをあげてしまったから、私は息の仕方も生き方も、上手く思い出せなくて。
あなたがいつも飲んでいたレモネード。「これならいつでも飲めるから」って、市販のレモンジュースにこれまた市販のガムシロップを入れたもの。思い出しながら作っていく。
「ね、おいしいでしょ?」
そんな声すら聞こえてくる。今の私には、甘酸っぱすぎるよ。
昔、気まぐれで買った赤ワイン。あなたが飲んだことのなかった辛口ワイン。少し味見をしたけれど、あなたはずっと甘党で、やっぱり飲めずに苦い顔。
私は別に飲めるからって、おかわりして飲んでたら、スマホを見ていたあなたは突然立ち上がって。
お気に入りのレモネードを作って、赤ワインをそこに静かに注いで。
味見をしてから頷いて、びっくりしてる私に、
「ほら、飲んでみてよ」
ちゃんと調べたレシピだよ、って、面食らった私に差し出して。
忘れられない、いつまでも。
あなたの体温と笑い顔、私にできないグラデーション。あなたの好きな色を眺めて、私はモノクロ世界のまま。
「今すぐそっちに行きたいな」
グラスの氷が、カランと鳴った。
5/9/2023, 12:13:05 PM