『後悔』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
鬼と女。300字小説。
夫婦岩
善い女だったぞ。器量はよくはなかったが律儀で優しい女でな。狼に襲われていたところをちょっと助けてやっただけで醜い鬼の儂のところにやってきて「恩返し」ってな。
アイツも村では親無し子で居場所もなかったのだろう。鬼一人女一人、周りは反対したが一緒になった。
だが、今は後悔しとるな。善い女すぎた。儂はアイツがいない前、どうやって一人で暮らしていたんだ? 覚えておらんし、もう出来ん。どうして人は……。
「これがその伝説の夫婦岩です」
山岳ガイドがお花畑に佇む二つの岩を指す。
「小さいのが妻の墓石、隣の大きいのが嘆いた鬼が変じた岩と言われています」
善過ぎる女だからこそ反対したのだ。ガイドが岩に向かいポツンと呟いた。
お題「後悔」
『後悔』
根がおバカなせいか、普通の人なら「あの時、ああしとけば。こうしとけば」なんてことも、「ま、やっちまったもん、しょーがねー」と忘れていく性格なんですけど、今、後悔してることがあります。
母親が早くに無くなったあと、祖父母の遺産は叔父の元に。
私はまだ成人してなくて、父親と叔父の間でどんな話になったかは知らないですけど、その後長い月日が流れ、父親も亡くなりすっかり忘れておりました。
そしたらある日、税金を払えや、空家が倒れたら責任ですよやら、お役所からお達しが…
何だよ、知らねーよ。
貯金も無いよーな女に、何を言ってんだよ。
なんてヤサグレてたけど、随分しつこく言われて。
ちょっと、気になってきて…
そしたら、叔父が亡くなって、身寄りが無かったので祖父の残した家が空家になってきて、朽ちてきてると。
倒れたらご近所様に迷惑をかけることになると。
そして、その家は私しか権利が無くて、その分の税金が未払いになっていると。
えっと…?
そんなスッゲー額の税金なんて払える訳無いじゃん。
いや、普通の人なら払えるのかもしれないけど、私には無理。
今や親もおらず、毎日の生活に精一杯!
そして、じーちゃんの家。
家賃払わなくて良いから住めるなら、なんて思えないほど、本当に朽ちておりました。
お役所様の言うことには、土地付きだから売ってお金作って税金払えとのこと。
日本の相続税は、金持ちを3代で潰すって言うけど、事実だね。
お金持ちが税金払うために家売るって聞いたことあるけど、まさか自分の身に起こるとは。
想像もしてなかったわ、いや、マジで。
まあ、私の場合はお金が無さすぎてどうにも出来なかった訳ですけど。
税金分になりゃ良いわなんて気分で、じーちゃんの思い出の家をサッサと売ってしまう、無慈悲な孫。
まあ、結果的に税金払っても幾ばくのまとまったお金が手元に。
これがいけなかった!
突然ですけど、『日曜の夜ぐらいは…』ってドラマご存知ですか?
岸井ゆきのさんが好きなんで、私は見ているのですが、前回3人で買った宝くじがあたってそれぞれが1000万手に入れたんですよ。
で、岸井ゆきのさんの役の人、スッゴい無駄遣い。
わかるわー!
身の丈に合わない大金持っちゃうと、人間はタガが外れちゃうよねー、なんて首がもげるほど頷く私。
コロナ禍で仕事に行けなくなり、引きこもった2年半。
綺麗さっぱり使い切って、元の貧乏生活に逆戻り。
お金って、貯めるのには時間かかるけど、使うのはホント一瞬なんだなぁ。
せめて100万でも残しておけば…、なんて思っても後の祭り。
私の中には1匹のアリもおらず、全身がキリギリスでした。
だって私、親の元出てからは何時も貧乏で、だから2年半やりたいことやって本当に楽しかったんだもん。
って反省も後悔もしてねーじゃん。
いやいや、でもね、思うわけですよ。
本当に100万は残しておいて欲しかったわ、過去の私。
それが本気の後悔です。
谷底に咲いていたポピーを
そのままにしておけなかった
手折ってしまった瞬間
月の光は夕焼けになった
しずけさのなかに
広がる1粒の後悔
カツカツとみんなの鉛筆の音が鳴り響く。
私の手はあと1問を残して手が止まってしまった。
海を「こうかい」する。
宿題の範囲の漢字テストが解けない。
海をこうかいする。か……。
公開、公会、紅海、後悔
書ける「こうかい」をテスト用紙の端に書いてみたけど、宿題で書いたのは違う。
かいが海だったのは覚えてる。あと、海を船で進むから、舟が左にあったのも覚えてる。船、うーん、船はとっくの昔に習った漢字だし。
斜め前に座る級委員長をチラリと横目に見る。カンニングがしたい訳では無い。ただの現実逃避だ。暇そうに時計を見てるなぁ。私もそうなるつもりだったんだけどなぁ。
「あといっぷーん」
先生の声で誰も彼も静かになっていた鉛筆が動き出す。
海を「公開」する。
テストはばってんかもしれないけど、書かないよりはマシかな。
プライベートビーチをおひろめするときなら「海を公開する。」でも通じるんじゃないかな?だめか。
「はいおわりでーす。鉛筆おいてまわして」
後ろの席からのテスト用紙と一緒に「できたー?」という声も回ってくる。「1問わかんなかったー」と苦笑いしながらさりげなくテストを見る。
そっか。「航海」か。舟へんも海もわかってたけど、亢かぁ。
おしい所まできてたじゃん。
航海、航海、航海。
漢字テストのなおしで沢山書くことになるのいやだなぁ。やっぱり全問正解したかったなぁ、漢字ドリルもう少し見ておけばよかったと私は後悔した。
あーあ。習ってない漢字の「こうかい」なら書けるのになぁ。
#後悔
後悔していること。
書くことを習慣にしたくてアプリを入れたのに
このお題は、難しいし何も思い浮かばないな。
と、考えることも書くこともしないこと。
自分にとってこのアプリは、
書くことは好きだけど何を書いたらわからない。
という悩みを解消してくれる有り難いもの。
これからは、少しでも多く書けるように、書くことを諦めないように頑張ります。
[後悔]
「先輩、後悔してることありますか?」
「あるけど、その手に持ってる怪しい箱には頼らないからな」
「えっ。なんでですか」
彼女は驚いて、小さな箱を胸に抱いて身を引く。
「見るからに怪しいから」
「そんな! まるでボクがいつも変なもの作って先輩を困らせているかのような言い方ですね?」
「実際その通りなんだが?」
すぱっと打ち返すと、彼女は「むう」と小さくうめいた。
「しかし、ボクはめげません! 今日のはいっとう特別ですよ!」
そう言って胸を張りながら箱を突き付けてきた。
「こちら、先輩の後悔をクッキーにしてくれます。ちょっとした悩みならバタークッキー1枚程度。その日の後悔をおやつとして食べさせてください」
「お前が食うのか」
「先輩、この箱から出てくるクッキー食べたいんですか?」
「……」
後悔というものから生まれた得体の知れないものを食べるか、それを彼女に食べさせるか。正直、どっちも選びたくない。
そもそもこの話に乗ってはいけなかったのだと後悔した瞬間、箱の中からことりと小さな音がした。
―後悔―
数年前の話
SNSで知り合った子(同性)に宗教に勧誘された。
もちろん断った。
暫くはSNSのDMにしつこいくらい連絡が入ったが無視を続けていたら、それも無くなった。
歳も近く、直ぐ仲良くなれた気がしたのに残念だ。
もうネットで知り合った人とは会わないと決めた。
七変化の万華鏡をばらしたら
五つの石があるだけだった
シャラシャラとなるお手玉を切りひらいたら
濁ったプラスチック片が出てきた
後悔はいつも
秘密を解き明かすことではじまる
#後悔
どこで俺は間違えたんだろう。
いつからこんな感じなんだろう。
今、俺に何が残っているか分からない。
【後悔】
たとえば、友人から貰ったサボテンを枯らせてしまったとか。たとえば、試験期間中に部屋の掃除ばかりしてしまったとか。たとえば、ホワイトデーにお返しをしなかったとか。
これまでの人生、後悔したことは多々ある。でも、いまの状況に勝る後悔はないだろう。
ベッド横で胡座をかいた俺は、額に手を当てて呻いた。
「なんでこいつを部屋にあげちゃったんだろ……」
「こいつときたもんだ。私、宮田ハルカって言います」
「二年前から知っとるわ。気分が回復したならさっさと帰れ」
「やだ。もう終電ないし、ここから歩くと私の家まで一時間かかるんですよ。うら若き乙女に一人で夜道歩かせようってんですか? 鬼、悪魔、先輩!」
「鬼と同列に並べんな」
サークルの後輩は我が物顔で俺のベッドを占拠している。ゆうゆうと寛ぐそいつの頭を、俺は拳でコツンと叩いた。
「パワハラだー」
「おう、お望み通りパワーでモノ言わせて追い出すぞコラ」
鍛えあげた自慢の腕を鳴らすと、宮田はキャッキャと笑いながらベッドを転がった。だめだこの酔っ払い、早くなんとかしないと……。
「そもそも宮田と一緒に飲んだことを後悔すべきだったわ。誘われた時点で断れよ、俺。女子苦手なくせに」
「えへへ、だって私の二十歳の誕生日ですよー。解禁日ですよー。先輩と飲まずにいられないでしょー」
「誕生日祝いが二人だけとはびっくりだよ。友達いないんだな。知ってたけど」
「副業のせいで忙しくて友達作るヒマないんですー。だからお祝いにかこつけて先輩と仲良くなれたのが嬉しくて、つい飲みすぎちゃったー」
てへぺろ、と死語が聞こえてきそうなぐらいお手本の表情で舌を出す宮田。
「だからってうちのトイレとまで仲良くするこたないだろ」
「お近づきの印にちょっと掃除もしておきました」
「そりゃ見上げた心がけだが」
「なんなら明日の朝ごはんも作ります!」
枕を抱きしめて転がった宮田が、上目遣いに俺を見つめる。
「だから、泊めてください」
あざとい。あまりにもあざとすぎる。こんな見え透いた演技で籠絡できると思われてるなら、俺もずいぶん舐められたもんだ。
わざわざ俺の家の近くに来て飲んだのも、べろべろに酔っ払って道端で寝そうになったのも、きっとすべて計算と演技なんだろう。
こいつの狙いはわかっている。俺の体だ。……というより、首だ。
「お断りだ。エクソシストと同じ部屋で安心して寝られるか」
「えっ、バレてた?」
「匂いでわかるっての。あんた強そうだし夜道なんて余裕だろ。ほら、俺を殺す気じゃないならさっさと帰れ。枕も離せ」
俺は立ち上がり、宮田の腕を引っ張って起こそうとした。
「えへへ、強いってわかりますー? お褒めにあずかり光栄です。でも、帰りません!」
宮田はようやく枕を離して上半身を起こしたが、ベッドに腰掛けただけで、まだまだ立ち上がる気配はない。
俺はため息をついた。
「酒飲み初心者をぐでんぐでんにさせちまったから、責任とって看病せねば、なんて仏心出したのが運の尽きだったわ。俺、悪魔なのにな」
「あはは、悪魔がエクソシスト相手に仏心、面白いですね」
「笑ってる場合か」
正体のバレた悪魔とエクソシストが同じ部屋にいるなら、やることは決まっている。
戦いだ。
俺の体がじわじわと変化していく。人間の体から、悪魔の体へ。爪が伸び、手の甲が毛に覆われる。顔も毛むくじゃらになり、マズルが伸びる。人間の耳が毛に覆われて消滅し、代わりに狼の耳が頭上に生える。むずむずと膨れた尻尾が、服の隙間から飛び出す。
俺の変化を見ていた宮田の目が、鋭く光った。エクソシストの目だ。
「一応言っておくが、俺は人の〝後悔〟を食って生きる種類の悪魔だ。そのために人と契約し、人を陥れ、人を死ぬほど後悔させる同類も数多いる。でも、俺はそのへんの人間のささやかな後悔や自分の後悔だけで満腹できるから、あんたらに狩られるような悪さはしてないぞ」
「へええ、先輩はエコな悪魔なんですね。自給自足とは」
宮田の手中に、音もなく拳銃が現れた。エクソシストの法力で作られた武器だ。……飛び道具持ちか。厄介だな。宮田に喧嘩を売ったことを、俺は早々に後悔しはじめていた。
「悪魔は悪魔で、後悔することが多くてね……」
子供のころは悪魔の力をコントロールできずにサボテンの生気を吸って枯らせてしまい、プレゼントしてくれた友人の顔を曇らせた。俺が修行をサボらなければ、サボテンを枯らすこともなかっただろうに。
学校の試験期間中はいろんな人間の後悔が押し寄せてくるから、満腹を通り越して気持ち悪くなってしまう。学校を早退し、自室に篭もって掃除で体力を消化することも多かった。試験はもちろんさんざんだった。俺が修行をサボらなければ、余計な後悔を遮断して、試験に集中できたのに。
ホワイトデーをスルーしたせいで、女子たちから目の敵にされるようになってしまった。悪魔が人間の好意に応えるわけにはいかないから、しかたがなかった。そもそもあの子と仲良くした俺が悪かった。以来、俺は「女子が苦手」だと公言するようになった。なのに、ゲロ吐きそうな宮田を道端に置いておくわけにもいかず、女子を自分の縄張りに入れてしまった。そしてこの結果だ。
もっとこうしていれば、あのときこうすれば、あんなことをしなければ――
俺の人生、いや悪魔生、後悔ばかりだ。
でも、いまエクソシストに殺されたら、もっと後悔することになる。
俺じゃなくて、父さんと母さんが。
俺は宮田が引き金に指をかける前に、飛びかかった。
多少乱暴な扱いになるが、宮田を殺すつもりはない。気絶させてタクシーに放りこむか、力で押さえこんで説得できれば上々だ。もし人を殺しでもしたら、俺が人間として生きられるように育ててくれた両親の努力が、無駄になる。悪魔の力を抑えるための修行をつけてくれた爺ちゃんや、人間の世界に馴染もうと努力してきた母さんや、母さんのことをひた隠しにして守ってきた父さんの努力も、無駄になってしまう。
「いくら俺が後悔大好きな悪魔だからっても、悪魔のハーフに生まれたことまで後悔したくはないし、させたくもないからな!」
宮田は俺の手を難なく避けて、ベッドに転がった。俺が振り下ろした第二撃を躱しざま、跳ね起きる。ついでのように繰り出された蹴りを、俺は半身で躱す。体を捻った勢いのままベッドに乗り上がり、宮田を隅に追い詰める。飛び道具相手に、間合いをとるようなことはしない。
宮田の拳銃を狙って振った爪は、紙一重で避けられた。すばしこいやつめ。俺の連撃を避けて、宮田がベッド際の壁を蹴って跳ぶ。なんつう運動能力だ。俺が次の構えをとる前に、天井スレスレで頭上を飛び越えていく。もう背後をとられた。やはり強い。着地の音。喧嘩なんか売るんじゃなかった。引き金の音。部屋にあげるんじゃなかった。
覚悟した弾丸は、いつまで経っても俺の脳天に刺さらなかった。その代わり、しゅばっと音をたてて飛来したなにかが、俺の体に巻きついた。
俺はあっけなくベッドに転がされた。
「な、なんだ……?」
「拘束用の紐です。私、血生臭いことは苦手なので」
宮田がふっと吹く真似をした銃口から、クラッカーみたいな細い紐が伸びていた。俺をぐるぐるに縛り付けているのはその紐だ。エクソシストの法力で作られているから、俺の怪力でも切れない。
「普段はペア組んで仕事してるんですよ。血みどろシスターって呼ばれてるかたと」
「……そいつがここにいなくてよかったよ」
俺はまだ命があることにほっとしていた。とはいえ、この絶体絶命な状況はどうにもならない。血みどろシスターを呼ばれたらおしまいだ。
宮田はまだスマホで連絡するそぶりを見せていない。きゅっと唇を引き結び、ベッド脇からじっと俺を覗きこんでいる。あれ、なんだか力が満ちてくるような……?
「……宮田、もしかして、なにか後悔してるのか?」
「さっすが、お見通しですね。私いま、エクソシストになったこと、思いっきり後悔してるんですよ。どうしてだかわかります?」
「薄給なのか?」
「そうそう、ほぼ慈善事業なんですよ。呼び出しも四六時中でブラックだし……って、そうじゃなーい」
俺を拘束していた紐がふっと消えた。
「私、べつに仕事でここに来たわけじゃありませんから」
「は? 俺の首を獲りたくて、あんなにあざとく居座ろうとしてたんじゃないのか?」
俺は警戒を怠らずに上半身を起こした。
「あ、あざと……く……」
宮田の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。
「な、ななな、なに言ってるんですか! 女の子に恥をかかせないでくださいよ! 先輩のバカ! 鈍感! 悪魔!」
「つまり……ただの面倒くさい酔っ払いだったってわけか」
「お、お酒は今後控えます! ムリヤリ居座ろうとしたことも謝ります! 酔いが醒めてちょっと冷静になりました! 先輩のご迷惑も考えずに、すみませんでした!」
宮田はいきなり床の上にかしこまって、深々と額を下げた。
「先輩が悪魔だってのは勘付いてたんですけど、ハーフですし、近づいてみたら顔に反して人畜無害そうですし、むしろバカみたいなお人好しですし、退治しなくていいやつだと思って、教会にも報告してないんです! 信じてください!」
「いま、さらっと傷つくこと言ったな?」
俺はベッドから降り、宮田の頭を人間姿の拳でコツンと叩いた。
「俺も勘違いしてたのは悪かった。正直、宮田がサークルに入ってきたときから警戒していた。でも、宮田のいまの後悔は本物だし、信じてやるよ」
「じゃ、じゃあ……!」
顔をあげた宮田がぱっと目を輝かせる。なんでこんなにコロコロ表情を変えられるんだ、こいつは。
「だからと言って、女子を泊めるわけにはいかないぞ。タクシー代は貸してやるから、さっさと帰れ」
俺は宮田の腕を掴んで立たせると、玄関まで追いたてた。忘れ物がないよう、荷物もかき集めて押し付ける。タクシー代も押し付ける。
去り際、宮田は俺を振り向き、べーっと舌を出した。おい、さっきの反省はどこいった。
「乙女心を無碍にしたこと、この先たくさん後悔させてあげます。私、しつこく先輩を狙いますからね」
「……好きにしろ」
強い後悔を抱えたこいつが近くにいるなら、俺はとうぶん食べ物に困らないな、そんなことを考えて、その場はつい肯定的に答えてしまった。……もちろん、すぐに後悔することになった。
後悔ならいくらでもしてきた。
些細なことから、人生に影響すると確実に分かってる事まで、失敗と後悔を繰り返してきた。
どれだけ後悔したって、戻らない。昏い過去も、晴れることなくそのまま。
だけど、楽しい思い出だって、きっと消えることはないだろう。
「ちょっと遅くなっちゃったけど、私からの誕生日プレゼント。」
そう言ってバーに連れてきてくれたあなたは、今では遠い人になってしまった。
「君に似合うカクテル、教えてあげるよ。」
からかうように視線を投げて、注文したあとに出てきたものは、レモンと砂糖の麦わら帽子を乗せた、琥珀色の輝きを放つ小さいグラス。
「まぁまだ君は飲めないだろうから……見てて。」
レモンスライスを持ち上げて、二つに折って口の中に放り込む。皮ごとだなんて苦そうだと思っていると、何度か噛み締めたあなたはそのまま琥珀色の液体を一気に呷る。
「……こんな感じだけど、覚えられた? ちなみに中身はブランデーだから、お酒に慣れてから飲んでね。」
ブランデー、名前だけは聞いた事あるけれど……こうやって注意するぐらいだからビールより強いお酒なのだろう。
「ちなみに大体40度はあるから、ビールで言えば8倍ね。」
……しばらく飲むのはやめておこう。
なぜこれが自分に似合うカクテルなのかは全く分からないけれど、あなたがそう言ってくれるならそうなのだろう。自分に言い聞かせて、カクテルの名前をメモして、……その後は酔って記憶が曖昧。
古い思い出を懐かしむ。そういえばまだあのカクテルは飲んだことがない。なぜ似合うのかもまだ分からないままだ。分からなくても、あの輪郭と、あの匂いは、未だに夢に見るほど記憶に染み付いているから大丈夫。
……ああでも、お酒には強くなったんだ、人生一度ぐらい、飲んでみたって損はないだろう。飲まずに後悔するより、飲んで失敗して、それから後悔したっていい。
埃を被った思い出に乾杯。
後悔したと思った。
たった今ボクの口から放たれた言葉はもうどんなに足掻いても元には戻ってきてはくれない。
「嬉しい」
顔を紅潮させ、俯きながら答える彼女はボクの好きな人ではない。
むしろ苦手なタイプだ。
いつも流行を追いかけて、似合わないメイクをして、誰とも区別のつかない髪型。
大人数の中で彼女を見つけることは困難なほどの量産型。
なぜ彼女に告白をしてしまったのか。
好きでもないのに。
後悔なんて、死ぬほどある。
長い人生の間。ああすればよかったなんて考え出したらキリがない。
でも、人生はたった一つしかない。
後悔なんてしてもしょうがないのだ。
後悔に
歩みを止め
誰も交わらない時の中で
足元の石に話しかけるとも
それは あなたにはまだ
前途があるからにほかならない
あなたの前には道がある
あしたのために
きのうを後悔してみれば
変わる未来もあるのです
前を向くために
あしたを歩くために
#後悔
後悔か。考えてみると特にないかもしれない。
喉元過ぎればなんとやらってやつだ。当時は死ぬほど後悔したことも今となってはどうでもいいことに思える。
もはや人生なんてどうでもいいから昔のこともどうでもいいと流してしまう。というより年を取って昔のことを忘れているだけかもしれない。
でも忘れるということは大したことじゃなかったんだろう。そう考えるとやはり後悔していることはないのだろう。
いや、よくよく考えてみると毎日が後悔の連続だな。食べ過ぎたとか小説を書いてないとかそんなこと毎日悔やんでいる。
慣れてしまったんだろうな、だめな自分に。だから後悔なんてないなどと言えるのだろう。なにもせずにだらだらするのは楽で気持ちいいからな。
これじゃいけないな。毎日を後悔しないように生きなければ。そう思ってもやる気がしないから今日もなにもしないで一日が終わるのだろうという確信がある。
#後悔
大好きな父と母との時間
もっともっと大切にすればよかった
こんなに早く
二度と会えなくなるのなら……
思い返すと 後悔ばかり
違う高校に入学していれば
父の病気に早く気づいていれば
友達が大変なときに遠くて躊躇してしまい
会いに行けなかったこと
8年前に家を建てたこと
(なければ自由だった)
20代の頃 職場でお世話になった人と久しぶりにランチ行こうと約束していたのに
わたしが携帯変え 住所録が消えてしまい
連絡が途絶えてしまった
ようやく 連絡先わかり2年ぶりに連絡してみると ご主人からのハガキで
「妻は3ヶ月前に永眠しました」
と書いてあったこと
大切な人との悔やんでも悔やみきれない
こと
鬼が来た
どうやらお迎えのようらしい
何か後悔はあるか、と鬼は問うた
特に何も無い、と俺は応えた
後悔先に立たずって言葉がある
でも後悔したらその分「もう二度と」って
1歩前に進むんだと私は思う
後悔して下を向いて怖くなってしまうことも
あるし逃げ出してしまうこともあるだろうけど
自分の心を守りたいゆえの臆病なんだと思う
悪いことではない
でもいつかは立ち上がって下を向いてしまっていた
分も歩いて歩いて歩いてもったいなかったなって
思って欲しい
#後悔
「何でこうなったんでしょう...。
あんなにシミュレーションして、
あんなに時間もかけて、
あんなに周りにも助けてもらって···
それなのに、
いざ本番ってなったら
緊張してなんにもうまく話せなくて、
結局他の会社に決まって....
助けてくれた人たちに申し訳なくて、
ダメな自分が許せなくて、悔しくて、
涙しか出てこない···。
もう、会社に帰れません。
わたし·······
どの面下げて帰ればいいんですか先輩!!」
『その面下げて帰るしかないの!!
あんたね、どんなにお偉い課長だって、
部長だって、なんなら社長だって
みーんなあんたと同じ新人の時があったのよ?
もちろん私も!!
後から悔いるから〖後悔〗何でしょ?
ちゃんと次に生かしなさい。
そしたらそれは失敗じゃなくて経験よ!』
「ぜぇんばぁいぃッ(先輩)」
『帰るわよ!!』