りこ

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後悔ならいくらでもしてきた。
些細なことから、人生に影響すると確実に分かってる事まで、失敗と後悔を繰り返してきた。
どれだけ後悔したって、戻らない。昏い過去も、晴れることなくそのまま。
だけど、楽しい思い出だって、きっと消えることはないだろう。

「ちょっと遅くなっちゃったけど、私からの誕生日プレゼント。」
そう言ってバーに連れてきてくれたあなたは、今では遠い人になってしまった。

「君に似合うカクテル、教えてあげるよ。」
からかうように視線を投げて、注文したあとに出てきたものは、レモンと砂糖の麦わら帽子を乗せた、琥珀色の輝きを放つ小さいグラス。

「まぁまだ君は飲めないだろうから……見てて。」
レモンスライスを持ち上げて、二つに折って口の中に放り込む。皮ごとだなんて苦そうだと思っていると、何度か噛み締めたあなたはそのまま琥珀色の液体を一気に呷る。

「……こんな感じだけど、覚えられた? ちなみに中身はブランデーだから、お酒に慣れてから飲んでね。」
ブランデー、名前だけは聞いた事あるけれど……こうやって注意するぐらいだからビールより強いお酒なのだろう。
「ちなみに大体40度はあるから、ビールで言えば8倍ね。」
……しばらく飲むのはやめておこう。

なぜこれが自分に似合うカクテルなのかは全く分からないけれど、あなたがそう言ってくれるならそうなのだろう。自分に言い聞かせて、カクテルの名前をメモして、……その後は酔って記憶が曖昧。

古い思い出を懐かしむ。そういえばまだあのカクテルは飲んだことがない。なぜ似合うのかもまだ分からないままだ。分からなくても、あの輪郭と、あの匂いは、未だに夢に見るほど記憶に染み付いているから大丈夫。

……ああでも、お酒には強くなったんだ、人生一度ぐらい、飲んでみたって損はないだろう。飲まずに後悔するより、飲んで失敗して、それから後悔したっていい。

埃を被った思い出に乾杯。

5/16/2023, 3:20:50 AM