『形の無いもの』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『さよなら来世、まだ現世』
ばあちゃんが静かに語りかけてくる。
いいかい?よくお聞き、と。
「わたしたち妖怪の存在は人間さまのお陰であると知りなさい。恐怖を与えるのは、ただひとりの人間さまの為にするものではない。多ければ多いほどいい。
ー…、おまえは人間さまから忘れられてはいけないよ。そうなったら、人間さまの恩恵から与えられるわたしたち妖怪の存在は、形をなくすのだから」
わたしは五歳だった。
それを理由に言いわけをするわけじゃないが、当時は難しくて理解できなかった。
それよりも、長時間正座をしていたからか足の痺れの方が気になった。
ごまかすように、小さく足の指を動かす。
ばあちゃんが説教する時はいつもくどく、そして終わりが見えない。
ポケッとそんな風に意識をそらしていたら、苛立つ気配を感じて、慌ててうなずいた。
話は、ばあちゃんが納得するまで続いた。
きっと、わたしがちっとも理解できていないことに気づいていたんだ。
いつまでも終わらないことが、それを証明していた。
ばあちゃんが繰り返し教えてくれた言葉。
その言葉の意味を理解できるようになったのは、わたしが百歳をこえたあたりからだ。
わたしの夢は来世で猫として生きることなので、さっさと現世を終わらせたい。
妖怪なんて、もともとあってないような、形のないものなんだし。
だから、わたしは誰ひとり驚かす真似もせず、絶賛引きこもり中だ。
だというのに、いまだにわたしたち妖怪を信じるものがいるもんだから、夢の実現は未確定だし、ばあちゃんもまだ当然、生きている。
完
2024.9.25
形のないもの
1番最初の誕生日は? 悩みがあるという友人に、ラーメン屋で訊いてみた。
確か、コンビニのパン。
パン?いつの話?
中学生の時。
ふむ。次は?
CD。高1の時。
次は?
高2。キャップ。6千円の。次は高3。ペアリング。
へぇ、高校生でペアリングか。次は?
ブレスレット。その次はピアス。その次はコンサートのチケット。SS席の。
あとは?
旅行。国内。海外。
ふむ。なんというか、すごいというか、順調というか。
僕の素朴な反応を見ると、友人は頭を抱えて、
うわあ〜、やっぱりお前でもだめかー と、大絶叫した。
し、静かにしろよ。周りの客に迷惑だろ。何だよ、何をそんなに悩むことがあるんだよ。
だってもう、エリちゃんへの愛をどう形にしていいか、全然わからないんだー。
……。手編みのセーターとかいいんじゃないか……。
友人は、はっと頭を上げ僕の手を握った。
そうか!それがあったか。よし、さっそく毛糸を買いに行こう。特上の毛糸をな。お前も一緒に来てくれ。いやー、やっぱり親友は頼りになるなあ。
……どういたしまして。あ、お姉さん、すいません、追加で餃子お願いします。……お前の奢りな。
せめてこのぐらいは食わなきゃやってられん。
「プレゼントっていいよね」
演奏者くんの話はいつもいつも突拍子もない。さっきまで演奏してくれた曲について話してくれてたというのに、なんだ急に。
「…………どういうこと」
「誰かが自分のこと考えて選んでくれたという事実がいい」
「………………欲しいってこと?」
「くれるなら」
いつも一呼吸だけ間を開けるのに急に即答してきた。なんなんだ、本当に。
「……でも、なんもないよ」
「どういうことだい?」
「あんまりユートピアには物ないから、プレゼントって言えるもの、用意できないかも」
「…………ああ、その話か」
ボクはわりと真剣にそのことを出したというのに、他愛もない話のように扱われると少しだけムッとする。
「形のないものが欲しい。……どっちかっていうと」
「形のないもの……?」
形がないものというと、思い出とか経験とかってことなのか…………?
「……形あるものだとさ、いつか壊れたり無くなったり、そこまでいかなくても劣化する。きみから貰ったものが色褪せるのは嫌だから」
「…………分かった。すぐには思いつかないかもだけど、きっと渡すよ、プレゼント」
「楽しみに待ってる」
彼はそう言って笑った。あんまり彼が見せることがない無邪気な笑顔だった。
《 形のないもの 》
甥っ子姪っ子たちがまだ小さい頃
糸電話で楽しくおしゃべりした時のことは
形に出来ないけど
今でもずっと心に残しておきたいと思う
大切な思い出
la la la…
君が口ずさむメロディーは
特に何かの歌ではないんだって
でもとても心地いい
君は目玉焼きをたいらげて
髪をくるくると巻き上げて
仕事に行って
僕はパンをかじって
ニュースを読んで
猫に餌をやって仕事に行って
ふたりは夜にまた会う
同じコロッケを買ってきて
4つもどうするの?
こんなとこ気があってもって
大笑いして
そんなふうに過ぎて行く日々が
歌詞のないメロディーが
ゆっくりと僕を満たしてゆく
{形のないもの)
心の傷が
身体の傷のように目に見えたら、
心ないことを言われずにすむのだろうか?
「形のないもの」
掏摸なんてチャチなものじゃない。強盗なんて品がない。
僕には矜持がある。
狙うのは大富豪だ。どんなセキュリティだろうが、下調べや準備を怠らず、完璧なプランを立て、誰にも気づかれることなく侵入して盗みだす。相手は大金持ちだから、少しぐらい無くなっても気にもされない。去るときも僅かな跡も残さない。相手は盗まれたことにすら気づかれない。
盗んだものを売るのだって足がつくようなヘマはしない。どだい売る相手だって後ろ暗いんだ。こちらを検索することもない。
そんなことを続けているから、もうだいぶ稼いできた。ただ生きていくだけなら、死んだあとに一財産残せる程には稼いでいる。盗みに入る準備をしても道具にしても、資金繰りに苦労もない。あまり派手な資金運営なんて足がついて危ないからやらないけど、そもそも必要がない。
普通ならば、生きていくためだけならば、安穏としていればいいはずなのだが、僕はまだ盗みを続けている。
誰かに頼まれるわけでもない。金持ちに怒りや恨みがあるわけでもない。社会なんてどうだっていい。そもそも、盗むことだってそんなに好きなわけではないのだ。
自分でも不思議なのだが、特段の理由もなく富豪をピックアップして下調べも十分にして完璧な計画を立てて実行する。
その日もそんな盗みを行うべく屋敷に侵入していた。室外機の調子が悪いことは下調べでわかっていたから、社員証を偽造してエアコンの修理を名目に侵入した。僕に対応したのは大柄の男で、事前に入手した名簿からその男が執事であることがわかっていた。
該当の部屋に通され、調子が悪いエアコンを示され、僕は一人で作業をした。エアコンの電源にカメラを仕掛け、エアコンは完璧に直した。
あとは1週間ほどカメラを監視して、従業員が少なくなるタイミングで再度侵入するだけだ。逃走経路も確認した。
修理が終わり退散しようと廊下に出ると、少女がいた。豪奢な屋敷の造りに似つかわしくない、素朴で草臥れた生地の白いワンピース一枚を身に着けていた。髪は梳かされているがそのままで、緩くウェーブがかかって背中ぐらいまでの薄茶色をしていた。
緑の目が真っ直ぐ僕を見つめる。
瞬間駆け込んできて僕に小声で訴えた。
「私を連れて行って、この家から出して!」
面食らった僕は少女を軽く押し戻し、そのまま退散した。
1週間後、従業員の会話や動きから屋敷が手薄になるタイミングを計り、僕は再び侵入した。盗むものはもう決めている。
部屋にはあの少女がいた。
用意した大袋に彼女を入れ、誰にも気づかれることなく屋敷をあとにした。
流石に彼女がいなくなったことには気づかれただろう。
それから、僕は盗みをすることなく、彼女と暮らしている。
あんなに盗みを繰り返していたのに、ぱったりとやめてしまうとは。本当に欲しかったのは形の無いものだったのか。
愛とか形のないものは
形にして示して欲しい
そんなわがまま時に言う
青
お題『形の無いもの』
まいった。なにもネタが思い浮かばない。
小説を書いていると、何度かそういう悩みにぶち当たることがある。
そんなある日、私はなんとなく字書きが運営してるブログを読んでいるとマインドマップツールの紹介がされていた。
どうやらワードから広げていくごとにネタが思い浮かぶヒントが得られるらしい。
私はもともとマインドマップを書くのは苦手だったけど、アプリをダウンロードして、お題を中央に置いてそこから言葉を連想していく。
今はまだ使い慣れていないけれど、言葉から連想していくごとにあやふやだった『書きたいもの』が形になっていくのだろうかと、期待してやっている。
貴方は暗闇のなかにいる。
貴方は一人でいる。
光の糸すらない、黒く塗りつぶされた空間にいる。
何も見えない。
音も気配も、一欠片もない。
ここはどこだと問いたくても、答える人は誰もいない。
貴方は歩き出した。
しかし、変わらなかった。
貴方は手探ってみた。
しかし、何もなかった。
貴方は声を発した。
しかし、響かなかった。
貴方は不思議に思った。
その心は好奇心からではない。
体がこわばった。
何かがこちらを見ている気がしたから。
だが、どこからなのかは分からない。
足が竦んでしまっている。
何かがいる、その予感が錘となって封じている。
喉の奥から飛び出そうな感情を寸前まで抑えている。
そんな貴方は、呼吸が微かに乱れていることに気がついた。
どうしてここにいて、
この出口の兆しもない場所に囚われているのか、
その疑念すら呑まれていたほどに、焦燥していることにも。
貴方は、ようやく意識を整えた。
見えない何かを知るために、心を固めた。
鼻の奥へと空気を深く吸いこみ、
息を押し殺し、そっと耳を澄ませた。
何もなかった。
だって貴方は、一人でいるのだから。
【形の無いもの】
形の無いものは、感情だと思う。声も表情も録音や写真で、残すことが可能です。感情は、目に見える形で残すことが難しいと思います。感情は、喜怒哀楽だから声や表情に出るから残せると言う考え方もあるでしょう。そう言えば酸素や二酸化炭素などの空気に含まれる物質やガスなども形の無いものになります。今は、脱二酸化炭素や温室効果ガスと言う言葉を耳にするけどエコの観点から逆効果ではと言葉だけとらえて思ってしまう。プラ資源削減の店でのビニール袋有料も削減と言うことになっているのか疑問です。ある評論家は、自然にかえるプラを考えた方が良いし、プラを紙や木に変えたらその資源が足りなくなることを防止するために有料となればプラと同じことをしてることになり、何の防止にもならないとYouTubeで発言してました。場当たり的なことよりも長い目で見て、自然にかえるプラや紙を考え開発すべきだと思います。豊かさと同時に環境汚染もあり、人間が生きることに密接に関係しているので、場当たり的な考えはやめるべきです。なら研究者が、自然にかえるプラを研究して物質を見つけ、実用化させることだと思います。それを地球上のどこの国がするのでしょう。私は、どこの国もしないと思う。
形の無いもの
目に見えないもの。
でも心のなかには残ってる。
人の優しさ、意地悪されたこと
「愛してる」
そんな情熱的で非常に脆い口約束をどう信じろというのか。
何の担保もない、それでいて強烈に心を揺さぶられるその言葉。
「愛が形で見えたらいいのにな」
そうそうと頷きかけて、はたと気付く。
「ダメ。そんなのあなたを押し潰してしまう」
カラカラと笑う君。ひどい、こちらは真剣に
後は強引に重ねられた唇に全てを吸われてしまう。
……少しは伝わったのかしら。
形のないもので愛してくれていたら、
君のこと忘れられたのに。
後悔は後からするもの。
失ってから、気付くもの。
確かに存在したもの。
もうここにはないもの。
どうか消えないでと願っているのは私だけかな。
プレゼントは残らないものにすれば良かったね。
-形の無いもの-
形に無いものって?
人の心でしょうか?
その時の状況次第で
感じ方が変わってしまうので。
でも心ってハートの形とか色でよく表しますよね。
なら形に無いものなんてあるんですか?
形に無いものなんて感情とかだと思いました。
色とかでの表現が形として捉えられてしまうのなら
もうきっと形に無いものは無いと思います。
─────『形に無いもの』
見えなくて
手を伸ばしても届かない
暖かくて
私のなかにある
大切なもの
誰にも見えない
誰にも見せない
形のないもの
気体も液体も個体と違って固定の形がない。
気体も液体は固定の形がないことによってどんな形にもなることが出来る。丸型にハマれば丸に、三角の箱にハマれば三角に。けれど、見た目はあたかもそのものになったように見えるが、本質は、変わらない。
だから私も、そうでありたい。気体や液体のように、本質は変わらずどこでも溶け込めるようなそんな存在になりたい。
形にないもの
それは人の発言
言葉は紙に書き表せば残すことが出来る
でも、人が簡単に発する言葉はかき消されていく
形に残らないからこそ恐ろしく、簡単に人を傷つけてしまう時もある
思いつきで発言するなとは言えないが、ある程度相手のことを考えて自分の言ったことに責任を持つことが大切
久しぶりすぎて禿げる。
そして最近お腹をくだしやすくなった🥺
なんか良いの無いかな?
季節の変わり目だしみんなも気をつけてね。