幸せとは』の作文集

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幸せとは』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

1/4/2025, 5:43:47 PM

幸せとは

「今、幸せですか?」
宗教団体らしき人が私の家を訪ねる。すぐ追い払おうとしたが、ふと考え込んでしまう。
(幸せって何なんだろうなあ)
豪華な家を持っている?高級食材を使った料理?
…いや、そんな物いらない。家も豪華すぎるより、今の家で眠る方が心地よいし安心する。食べ物だって、ウニやキャビアは苦すぎる。正直カップラーメンの方が倍美味しい気がする。そう思えば、今の生活のほうが私にとって十分幸せだと思った。
「……ーい…はぁ、帰りますか…」
はっと気を戻す。完全に宗教団体のことを忘れていた。まあ帰ってくれたから良いか、と寝室へと戻った。

1/4/2025, 5:28:59 PM

『本当の幸いとはなんだろう。』


少年はつぶやいた。
ぼくは答える


「みんなの本当の幸いのためならば、
もしそんなものがあるならば、ぼくはたとえ、なんべんでも体を焼かれたってかまわない。けどね、」

「きっと、ぼくにはぼくの、きみにはきみの、ひとつ
ひとつの幸せがあるだけさ」






『お母さんは喜んでくださるだろうか。』

「きみのお母さんは泣いていたよ。でもきみのこと
立派だとおっしゃっていた」







『ほらあそこ、きらきらひかってきれいだねえ。
ぼくのお母さんも手を振っているよ』


「ぼくには大きくてまっ暗な穴が見えるよ。
ぼくにもきみの景色が見えたらよかったのに」





今でもすべて憶えている。














「「ねえ、ぼくたち、どこまでもいっしょにいこうね。

カムパネルラ!」」











声が重なった。かつてのぼくと共に。



「……行けたらよかったのにねぇ。
ぼくのひとつの幸せはね。カムパネルラ、きみと友達であることだったんだよ。」



これが夢であることを、いつも同じ台詞で思い出す。


「きみが友達であることが誇りで、何より嬉しかった。
いじわるなザネリなんかのために、君が沈むことなかったのに」


そして彼は消えているのだ。あの時と同じように。





銀河鉄道。ぼくとカムパネルラが最後に一緒にいた場所。あのときはまた昔のように仲良く語り合えた。
そのときにはきっともう、カムパネルラは沈んでいたのだろうけど。


水底にいるはずの彼と、遥か銀河を走る汽車の中で語らったあの時間を、私はこの年になった今でも夢にみている。何回も、意味のない返事を虚像に向かって放り投げていた。

「なぁカムパネルラ。君は、君のひとつの幸せを手に入れられたのか?」


そう問いかけたとき、半分夢から醒めているのがわかった。かつての面影もない、年老いた姿で虚像を見つめる。
同じことの繰り返し。返事がないとわかっていても、
目が醒める前のこの問いをやめることは、
いつまでもできなかった。

虚像が静かにこちらを見つめている。








……虚像が静かにこちらを見つめている。まだそこにカムパネルラが立っている。なぜだろう。




『ぼくは本当の幸いを手に入れたよ。ぼくは立派な行いをした。お母さんは褒めてくださったでしょう?
そして友達と素敵な旅ができた。これ以上の幸せったらないよ』


「嗚呼、まさか」


『ねぇジョバンニ。もう少ししたらぼくら、
本当にどこまでもいっしょに行こう』


これは夢だ。わかっている。わかっている!
だけどもそうか、夢だもの。ちょっとばかし自分の嬉しい方へ向いてもいいじゃないか。


「きみか、きみなのか。ぼくのこと、迎えにきてくれたのかい」


彼はポケットから小さな紙切れを取り出して、私に手渡した。


『あのとききみが持っていたチケットには劣るけどね。ぼくらこれでおんなじとこまで行ける。』


それは小さな切符だった。かつてカムパネルラや他の乗客が持っていたのもこれだったのだろうか。


「また、会えるのか?」


『きっとまたいろんな星を見に行くんだ。約束しよう』






眩い光で目が覚めた。頬を伝う冷たい水で、嗚呼やはり夢だったのかと頭も冴えた。




頬を拭ったとき、何かを握りしめていることに気がついた。



古びた、1枚の切符。







私は約束の日までに身の回りの整理と彼への長い土産話を書き留める作業に追われた。







切符の日付は、次の星祭りの日。再びあの銀河鉄道に乗る日まで、あとxx日。

1/4/2025, 5:28:24 PM

幸せとは

お金持ちになること
試験に合格すること
仕事で成功すること
コンビニのスイーツを半分こすること
生きていること
四つ葉のクローバーを見つけたこと
誰かに大事に想われること
誰かを大切に想うこと
あなたと明日を迎えられること
星が綺麗なこと

ささやかなことを、誰かと分かち合えること

1/4/2025, 5:12:55 PM

『幸せとは』

幸せとは。
具体的なようでとても抽象的な
漠然とした問いだなといつも思う。

しあわせの基準は人によって違うし、
大きさも違う。
同じものなんて一つもないのに、
幸せを測って比べるなんて、、、ね。

私の思う幸せは
満足しきれないことだと思う。
もっとこうしたい。
もっと続けていたいって思えることだと思う。
もっとこうすればよかった
ではなく、
もっとこうしたい
って思えることが幸せなのかなと思う。

1/4/2025, 5:12:46 PM

幸せとは
好きなもの食べて
ゲームして行きたいとこ行ってほしいものかって
自分が「幸せだな」と感じたら幸せなんだよきっと

1/4/2025, 5:07:53 PM

何も考えないこと。深く悩み、考え、行動することは楽しい。幸せは、生きることに流される時間。

1/4/2025, 5:05:57 PM

登場人物
ナック(あくねこ)
ももか(自創作+主)

この小説アプリ初めてだからわかんない!!!!

__________________


寒い冬の夜。
私は何故か目が覚めた。
明日何かがある訳でもない。今日興奮するようなことがあった訳でもない。ただ、何故か寝付けない。
ベットから起き上がると汗をかいていることに気がついた。
「とりあえず散歩しようかな…。」
風を感じたいので物見台に行った。
私は北海道出身なのもあって冬の寒さには特段強い。
今日は吹雪いていない、月が見える。
ワクワクしながら廊下を出て階段を上がろうとすると
『主様?』
声をかけられた。見回りをしていたナックだった。
「あ、ナック。物見台行こうかなって思って。」
『主様、その格好ですと明日には風邪をひいてしまいますよ。』
「いーの!そうだ、ナックも一緒に来てよ!」
『それは構いませんが…せめて私のマントを羽織ってください。』
「んー…申し訳ないからいいよ。こう見えて、私寒さには得意だから!」
『いいえ!ここは譲れません!主様、後ろ失礼致します。』
バサッ
「あ、やられた。」
『やってやりました。』
「ブッ」
『ククッ』
「『アハハハハッ!!』」

そうして私たちは笑いながら物見台へ向かった。

見えた景色はとても美しかった。

『美しいですね。主様。』
「うん、人工的なあかりもないし雲もない。月がくっきり見えて嬉しい!」
『はい!冬は夏に比べて水蒸気の量が少なくなるためこうしてくっきり見えるそうです。』
「そーなんだ!!ナックと見れて嬉しい!」
『!ええ、私も嬉しいです。主様、お声がけいただきありがとうございます。』
今のナックは真剣だ。その証拠にナック節が抜けている。

私はここである質問をぶっかます。

「ナックは今幸せ?」

『…はい、幸せです。会計の仕事が終わった開放感や庭園の花、砂漠の夜空を見ている時よりも主様の隣でお仕えしている時間の方がよっぽど幸せで満ち足りた気分になります。』

「そっか。…もう1個変な質問するね。」
『はい。』
「ナック、あなたの想像する幸せってなに?」
『幸せ…。私には遠すぎる存在だと思います。でも、想像でいいのなら…。主様が当たり前に思うようなことだと思います。先ほども言ったようにどんな美しい光景が目の前に広がっていても、主様がいなければ輝きません。少なくとも私の目には。』

目の前に大好きな彼がいる、それだけで幸せなのかもしれない。

___________________
見てくれてありがとうございました。
あなたとめぐりあえたことに感謝致します。

1/5

1/4/2025, 4:55:56 PM

幸せとは



風花が寒風に舞う、冬の日。
街を行き交う人々は、
柔らかな光に包まれている。
幸せそうな恋人達の姿に、
独りきりの自分が、惨めに思えて、
胸の奥に黒い靄が生まれた。

幸せとは。
失って初めて気付くもの、
なのかも、知れない。
気付かない振りをしていた私も、
今になって悟る。
あの頃の温かな日々が、
何よりも尊い『幸せ』だった、と。

君の隣にいたあの頃、
私は君の微笑みと言葉に癒され、
穏やかに過ごしていた。
ずっと嫌いだった、
弱い自分さえも、
赦す事が出来たのに。

けれど、それを。
私は、自ら壊してしまった。
繊細な硝子細工を、
手の中で砕く様に、
その輝きは、粉々になり、
静かに地に散っていった。

そして、
空っぽの両手を見つめ、
二度と戻らないあの頃に、
未だ心を囚われながらも、
深い溜息を吐くしか出来ない。

それは、まるで。
硝子の向こうに広がる景色の様に、
キラキラとした憧れの風景。
こんな私には、
二度と手の届かない…幸せ。


……………


小雪がひらり、舞い落ちる冬の日。
街を歩く、人々の笑顔は、
優しい笑顔に包まれてる。
肩を寄せ合う恋人達の姿は、
遠い物語の一場面の様で、
胸の奥が少しだけ、痛んだ。

幸せとは。
追えば遠ざかる蜃気楼、
なのかも知れない。
気付いていたけれど、
気付いてない振りをした。
どんなに必死に手を伸ばしても、
光の中へ溶けていくんだ…って。

貴方が隣にいてくれたあの頃、
私は貴方をそっと包み込み、
静かな幸せを感じていた。
ずっと苦手だった、
冷淡な自分さえも、
暖かさの中で消えていたのに。

けれど、それは。
ある日、突然消えてしまった。
シャボン玉が弾ける様に、
触れることもできず、
ただ、消えた後に残る空虚だけが、
私の手の中にあった。

そして、
握り締めた空っぽの手から、
零れ落ちた記憶の欠片を拾い上げ、
届かないと知りながら、
貴方の名をそっと呼び掛ける。

それは、まるで。
想い出の硝子の欠片を集めた、
新しい光が織り成す、プリズム。
貴方と一緒に、
もう一度掴み取りたい…幸せ。

1/4/2025, 4:55:28 PM

>幸せとは

私は人間が生きていく為に必要なこと、生活の一部だと考える。

例えば、「珍しく朝早く起きた」だとか、「人にいいことをした」だとか、幸せを感じるタイミングは1日のうちに1回はあると思う。不幸なことがあった日でも、よっぽどのことがない限りは、心休まる時間が一切ないということはないはずだ。心休まる時間さえあれば、不幸な自覚は薄れ、相対的に幸せな気分になれることだろう。

これは自分に限ったことだろうが、幸せや不幸せを感じたとき、とっさに+1や-1のような正の数負の数の表記を頭の中で浮かべる。0をことが起きる前の正常なラインとおくと分かりやすいだろう。ここで、-1が0に戻ったときと+1が0に戻ったときの感情の揺らぎの違いは何だろうか?答えは分からない。これを見ている人たちは自身の中で解決してみると良いだろう。

なぜここで+1や-1のような数字が現れてしまったのか。これは感情という複雑な概念の中で、幸せや不幸せは明確に正と負という、もっと言えば得たときに生まれる感情と失ったときに生まれる感情という相反する特性を持つからであると考える。

感情と生活は切り離せない。ふと息をつく瞬間に幸せが生まれ、吐く息に混じる憂鬱と共に不幸せが生まれるのだ。

1/4/2025, 4:55:26 PM

幸せとは

私にとっての幸い(さいわい)とは
美味しいご飯を食べ
ゆっくり寝て
たまに運動して
推しを応援する事だと、最近まで思っていた。

ほんとうは、貴女の幸せが私の幸せなのである。
貴女が美味しいご飯を食べて
楽しく過ごせていれば、それでいいのである。
その隣に私が居られるのなら
私はもっと沢山の幸せを手にすることだろう。
けれど、貴方の隣は私では無い、他の誰かだ。
私は、私のただのエゴを、己の幸せなのだと偽るのだ。
そうしなければ、幸せだと思えないから。

貴女は私との関係に“親友”という名前をつけて飾っているけれど、その関係はホコリを被り始めている。
それでも私は良いのだ。


だから、私は今幸せなのだ。
そうでなければならない。

1/4/2025, 4:54:13 PM

この季節は寒いのが辛くて辛くて仕方がないが、その分だけ温かいものの有り難さは半端じゃなくて、冷え切った手でお湯に触れるだけで「生きててよかったー」と幸せな気持ちになれる。

1/4/2025, 4:52:47 PM

幸せとは

幸せとは、その時々で変化すると共にその時の自分の感じようでもあると考える。

何の変哲もない、いつもの日常にふと幸せを感じる時もあれば、記念日といった特別な日に幸せを感じることもある。

好物を食べている時であったり、好きな音楽を聴いている時、友人や恋人、家族と過ごしている時など。

1月になり厳しい寒さの日々の中、温かさは幸せと直結しているのではないかとふと感じる。

寒い中から暖かい室内に入った時や
温かい食べ物、布団の中、人肌...そんなものと触れ合った時に温もりとともに幸せを感じる。

これが夏場だと、冷たいものに幸せを感じるのかもしれない。

幸せとは何か、大袈裟に考えなくとも些細なことであり、身近なものでもあり...感じ方は自分次第。

幸せになりたい、と願う人は多くいるし、生きてりゃそら幸せになりたいと誰もが思うだろう。
日々で心が暖かくなったり、ほっとした瞬間なんかに、これは幸せというものか、と少し思ってみると少しは気持ちが軽くなるんじゃないだろうか。

1/4/2025, 4:52:26 PM

寒い冬の夜

     手を繋いで空を見上げる

     オリオン座と三日月を

     見上げながら

     寒さを忘れて写真を撮る

     今日のこの瞬間を忘れないように

     また来年もぼくの隣で

     



                 幸せとは

1/4/2025, 4:52:12 PM

幸せとは…


何もなかったあの頃
生きる事に必死だったあの頃
自分の事なんて考える余裕もなかった
あの頃

今は
時間・気持ち・物質的にも少々恵まれている
なのに
虚しさ、寂しさ、ばかり…

人間は程々に忙しくしている方が
いいのかもしれない
いらぬ時間があると
余計な事を考えたり余計な事をしてしまう

あの時あんなに必死になって
手に入れたかった幸せとは
こんな生活だったのだろうか…

あの時と今とどちらが幸せなのだろう…





「幸せとは」

1/4/2025, 4:33:02 PM

幸せとは

心から心地よいと

感じられる時

ふわふわ~の

毛布にくるまって

寝ている時

なかなか出られない🥺




✴️262✴️幸せとは

1/4/2025, 4:29:04 PM

幸せなんてなんにもわからないぐらい青いけど

友達に求められてるときとか、
いい景色見たときとか、
前髪うまくいったときとか、

幸せっぽい感情を抱いてるのは確か

1/4/2025, 4:23:59 PM

春から一人暮らしだと思うと心から幸せだなと思うことが増えた。
友達と集まって息が苦しくなるほど笑う事。
家族や親戚と過ごす時間。
ゆっくりと暖かい中で眠る事。
あげだしたらきりがない。
最近思ったが、どれもこれも自分を大切にしてくれる人と普通の生活をおくる中での出来事だ。

そう思うと春からの私は幸せなのだろうかと不安になるが、会えなくとも大切な人は大切な人で、その存在が普通の生活の一部だと思う。幸せを定義することはできないが、新しい場所でも何気ない日常があると思いたい。

とりあえず今分かっている事は、私は今幸せだということだ。

2025/01/05 (幸せとは)

1/4/2025, 4:16:20 PM

【幸せとは】
……幸せとはなんだ?考えれば考えるほど分からなくなってくる。
私にとって幸せに感じる瞬間を書こう。
・美味しいものを食べている時
・寝ている時
・こうして何かを書いている時
・好きな事をしている時
書いていて思ったけど、
やっぱり、何気ない日常を送れていたら、嫌な事あっても幸せだ。
人々と神様に感謝です。

幸せとは、定義できないものということで。

1/4/2025, 4:15:04 PM

正直に言ってしまえば、私には分からない。
幸せについて考えるのはまだ年齢的に早いからか、幸せというものがよく分っていないからか、それすらも分からない。

私は、高校では文芸部をやらせていただいている。
文才は無いが、文を書くのが好きだからだ。
自分の普段は吐けない本音や価値観を、文章を通して表現することが出来る。
私の文章を、果たして何人の人が真面目に読んでくれているかなんて分からないが、それでも、友だちからは文章の感想を頂いている。というか、友だちが部誌を読むたびに言ってくるのだ。
「今回の話、すっごくよかった!」と。

好きなことをやって、誰かに褒められる。
それはすっごく嬉しいが、プレッシャーにもなってしまう。
つまり、それは「幸せ」ではないのだ。

こうやって文章を書いているうちに、私は普段仲良くしてくれている3人の子について思い出した。
お喋りが大好きで、会話泥棒な子。
普段は話を聞いているだけだが、ある特定のことについてはとても楽しそうに話してくれる子。
とても熱心に、部活をしている子。
その子たちは皆、自分の好きなことをして、好きなことを話して、とても満足気な顔をしている。
それに、私も文章を書いている時を、とても楽しいと思っている。
私も、文章を書き終わった時、あの子たちみたいに満足そうな顔をしているのだろう。

齢16の、まだ人生の5分の1も生きていない私にとっての幸せ。
それは、好きなことができて、好きなものについて話せる環境があることだと思う。
お喋りなあの子たちの前では、あまり私の好きな話はできない。
しても、どうせ会話泥棒されてしまうから。
いつか、私の好きなものを受け入れてくれる人と、
互いに同じくらいの話が出来るような人に会いたい。
その人が、私にとっての太陽になってくれるはずだから。

私の日の出は、いつか訪れるだろうか。

マカえん、ワンオク、LUNA SEA。
これらについて、語り合える人はそもそもいるだろうか。


#幸せとは

1/4/2025, 4:11:35 PM

26


きらきらと揺らめく日々のさざ波

その底で

忘れ得ぬ過去の汚泥は未だ消えず

その漆黒に怯えながら生きている


―――

目覚めた時、夢の中身が脳髄を一気に駆け巡り、東城翔(とうじょう かける)は瞬時に目眩と強い吐き気を覚えた。

暗い室内。恐らく未だ時間は早朝にさえなっていないだろう。隣からは規則正しい穏やかな寝息が微かに聞こえてくる。
その眠りを妨げぬよう、呼吸に合わせてそっとベッドから抜け出すと、翔は足音を立てぬよう静かに寝室を抜け出した。

短い廊下を抜け台所へ辿り着くと、翔はそっと冷蔵庫を開けた。庫内の鈍い明かりが辺りを照らす。
綺麗に整理整頓された庫内からレモン水の入ったガラスの冷水筒を取り出すと、翔はそれをグラスに注ぎ一気に飲み干した。
喉に冷たい酸味と少しの苦味が染み渡り流れていく。
ようやく少し気持ちが落ち着いてきたところで、翔は一度長く息を吐くと、灯りも付けぬままリビングのソファへ倒れるように身体を預けた。

(―――また厭(いや)な夢を見ちまったな)

あれからもう数年の歳月が経つ。だというのに過去は時折海馬を乗っ取り、こんなにも鮮明に、時に夢として、時に突発想起として具現化し、彼自身を苦しめた。


血の記憶。
噎せ返る程の血肉の匂い。
赤黒い視界。
殺意と憎悪が全てを埋め尽くす。

ーーー火鋤神の為に。
ーーー仲間の為に。

己の命など無に等しく、いつその身を犠牲にしても良いとさえ思っていた。
主人の為に、共に肩を並べて戦う者たちの命の為に、翔はいつでもその身を呈する覚悟は出来ていた。


己は己の信じたものの為に戦う兵器。


敵の血を見るたび、心の奥底で何かが疼く感覚が心臓を苦しめても、それを信念と使命感とで掻き消した。
共に戦ってきた仲間が殺されても―――
いつか戦場で復讐を果たすのだという思いで、必死に生きてきた。


結局、抗争はこちら側の勝利となり、長き戦いの日々は突如終わりを迎えた。

ようやく訪れた平穏な社会に人々は安寧を享受し、世の中にも活気が溢れ始めるのに時間はかからなかった。
抗争していたもの達も最終的にこちら側の傘下に入る事で、それまで何事も無かったかのように協力関係とやらを結んでいた。

中身はどうあれ、表面上は平和は訪れたのである。

ただ―――
兵器として実際に戦った者たちだけが、時代に取り残されてしまった。


『―――抗争の時代は終わった。それはお前達が全力で俺を、火鋤神を守って戦ってくれたからこそでもある。本当に感謝している』

『東城、辛いのは分かる。納得出来ぬであろう。ただ、命を落とした者たちの分までお前は、我々は、全力でこの後の時代も生きねばならん』

『なあ、東城。俺達は―――祈願を果たせたんだ。もうここから先は武器も血も必要ない。―――俺達は、飲み込むしかねえんだよ』


何が平和だ。何が幸せだ。
まだだ。まだ仲間の仇は生きている。
こんなに簡単に全てが終わって良い訳が無い。無期懲役くらいで許されていい訳がない。
仲間を何人も殺しておきながら、税金でのうのうと檻の中で腹を満たし、いびきをかきながら寝て人生を終えるなんて絶対に許さない―――!!!


あの日。
真っ赤に染まった視界で、どす黒い闇に飲まれた脳内で、全てを恨んだあの時間で。


それでも尚この世界に生きていよう、もう一度光を信じようと思ったのは―――


俺はソファから立ち上がり寝室へと戻った。
ベッドに再び入り、先程までと変わらず規則正しい寝息を立てているその男の髪をそっと撫でる。


―――あの日、俺が完全に全てを捨て去ってしまおうとした瞬間。


『―――だったら何故、お前はそんなに悲しい顔をしているんだ』

『俺は、しっかりと見ていた―――お前達が、全てを賭けて戦ってくれた事を』

『一緒に背負っていくよ。憎くて仕方の無い感情も、忘れ得ない過去も、全部』


―――絶対に失いたくない。


俺の、俺だけの、大切な存在。
俺の、たったひとつの、幸せ。


暗闇の中、温かな熱を掌に感じながら、俺は静かに瞼を閉じた。

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