『宝物』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私の宝物は毎日増えていく
どうかなくならないで
宝物が増えるとちょっぴり臆病になる。
宝物
メッキが禿げたよくわからないメダル
アメジスト
駄菓子の偉人シール
今宝箱に入れるとしたら何を入れる?
宝物
その手をとってどこまでも一緒に歩いて行きたいけれど、それは叶わない
期限付きの宝物を、愛する為に生まれたみたいだ
どうしていいかわからないけれど、
たったひとつ出来ることはわかっている
まっすぐあなたを見つめるだけだ
まっすぐ、でも縛りつけず自由に、目を閉じて見つめる
あきらめながら大切に 空に虹をゆだねるように
「それって、本当に宝物だったの?」
乾いた笑いが出る。何故だか肯定ができなかった。
「何が欲しいの?」
子供の頃から、こう聞かれると黙ってしまった。何を選べば良いのか、全然分からないんだ。だから、笑って言うんだ。
「何もいらないよ。」
何も要らない。その代わりに、与える事を望んでいた。
「掃除やっといてくれない?」
「もちろん。」
「これ買ってきてよ。」
「良いよ。」
クラスの雑用は私の役目。そう思っていた。それが一番の幸せだと思ってきた。
最近、クラスメイトの女子からの扱いが酷くなってきた気がする。勝手に机を荒らされたり、かなりの量の使いをさせられたり。でも、すぐ良くなるよ。きっと。
「何これ、きったな。」
放課後、彼女達が私の机を囲んでいた。その中央には、私の鞄ー小さなクマのぬいぐるみが置かれていた。それは私の唯一の宝物だ。
「塵じゃん。」
そう言って彼女達は、可笑しそうにクマを千切っていった。私は何故か止める事が出来なかった。
彼女達が帰った後、ようやく動けるようになった。ぬいぐるみは原型を留めていなかった。
「大丈夫?」
不意に後ろから気配を感じた。そこにはクラスメイトの男子。無口な子だから、印象は薄い。
「大丈夫だよ。慣れてるから。」
「それ、宝物なんじゃないの?」
何で知ってるんだ?でも、もう良いや。宝物じゃなくなったし。そんな私の様子を察したのか、彼は真剣な眼差しで言った。
「それってさ、本当に宝物だったの?無くなっても何とも思わないなんて、以外と薄情なんだね。」
彼の言葉で気付いた。私は、与えたいんじゃないんだ。大切にしたかったんだ。
「そうだね。私は嘘付きの薄情者だ。」
彼は、私の言葉を聞いて、少し頬を緩ませた。
私はこれから何を大切にしていくんだろう。何の為に時間を浪費していけば良いのだろう。まだ、分からない。でも、まだわからなくたって良い。
「ねぇ、宝物を探すの手伝ってくれない?」
『宝物』(創作)
弱虫の私は、好きな人に告白どころか、そんな素振りも見せられない。
窓から見える校庭には、コロコロと落ち葉が追いかけっこをしている。
はぁ…
「今日、元気ないじゃん」
私の好きな人が、何食わぬ顔して私の顔を覗き込む。教室の中は騒がしいのに、一瞬にして二人の世界になった気がした。
急に恥ずかしくなって、目を逸らした。
「秋だから黄昏てるふりしてたの」
「なんだそれ。次、音楽室だって、行こうぜ」
くしゃっとした笑顔で、私を見つめないで。苦しいけど、幸せすぎる。
そんな葛藤を心のなかで繰り返しながら、席を立った。
あなたの笑顔は、私のエネルギー。
あなたの笑顔は、私の宝物。
いつかこのことを伝えられるまで、友達でいさせてね。
「宝物」
お気に入りの箱とか缶に
その時の宝物が入っている
小学生のころ
10代のころ
働いてから
結婚してから
娘が生まれてから
それぞれの時に大切な宝物が
そっとしまわれていて
今も大切にそのまま取ってある
フタをあけると
あっという間に
その時の気持ちにかえることができる
タイムマシーンみたいなもの
昔もらったファイヤーキング。
丁寧に使ってたのになぁ。
やっちまったなぁ。
色、形、一緒でも同じではないんだなぁ。
先生と生徒の恋って禁断の恋
あと1年ちょっとしたら高校卒業するよ
卒業した後なら付き合える確率あるのかな
ほとんどないよね、
生徒のこと恋愛対象として見るときあるのかな
叶わない恋って分かってても
なんで諦められないんだろう
【書く練習】
今日はおやすみします
テンションがやけに高くて、調子がいいと思っていたが、
どうやら躁ぎみだったようだ
やたらとしゃべるし、今なら誰とでも明るく楽しくお話出来そう!
何でもできる感とでも云うのかな
かと思ったら、
不意に昔のことが思い出されて、イライラ、ムカムカして
押さえられなくなった
みんなムカつく
ひどい目にあってしまえばいいと、思ってしまう
なってるときは気づかないんだよな
自分の感情をコントロールできるようになりたい
<宝探しげえむ>(宝物)
『あの人気海賊アニメの劇場版第20作目がもうすぐ全国ロードショウです!
今回はある島に隠された昔の大海賊のお宝を、宿敵達も巻き込んで見つけ出す!という物語です。
今度こそお宝を見つけ出すことはできるでしょうか?
上映が待ち遠しいですね!
次のニュースです。』
何気なく付けたテレビから子供の頃に夢中だったアニメの映画のニュースが聞こえてきた。
もう20作目なのか。
いつになれば宝を見つけだせるんだろう?
今回もきっと見つからないんだろうな。
ふと、アニメを真似してみんなで宝探しゲームをしたあの頃を思い出す。
友達のたかゆきが隠したお宝はすぐに見つけられてしまって、悔しそうに地団駄を踏んでいた姿が少し面白かったなぁ。
でも、ゆきちゃんのお宝は最後まで見つけられなくて、休み時間が終わっても探し続けて、先生に偉く怒られたっけ。
あの時のゆきちゃんのしたり顔は宝物にしたいくらい可愛かったなぁ。
そういえば、ゆきちゃんが隠したお宝はなんだったのか結局分からないままだったな。
今聞いたら教えてくれるかな?
「ねぇ、あの時隠した宝物って何だったんだい?」
美しい白が機嫌良く返事をしてくれる。
「あぁ、そうだったんだね。悔しいな。結局本人に答えを聞く事になるなんてさ。」
僕は小さな宝箱の中に話しかける。
小さな彼女はキラキラと白すぎる肌を輝かせながら、おとなしく箱の中で笑っている。
『次のニュースです。
K県T市に住んでいた当時13歳の清水由紀さんが行方不明になった事件から10年が経過しました。今だに有力な情報はなく………』
僕はテレビの電源を切った。
僕の宝物もまだ誰にも見つかってないよ。
すごいでしょ?ね、ゆきちゃん。
作品10 宝物
『あなたは、私の宝物!』
昔、そう私に言ってくれた彼女は、窓から空に向かって、飛び立ってしまった。
目の前にいたのに、私には何もできなかった。私が陶器でできた人形じゃなかったら、止められたのに。
彼女は、ずっと、私を大切にしてくれたのに。
夜空に輝く星が、彼女が気に入ってくれていた私の髪飾りに似ていて、何故か、目が割れたように感じた。
彼女は、空の宝物のほうが、よっぽど好きだったみたい。
胸のあたりから、何かが割れた音がした。
⸺⸺⸺
作品数2桁目いったのに!
なのに勉強が忙しすぎて、短いのしか書けない!
適当すぎる!
自分の頭の中身
…宝物っていったら、何故だか宝石が思い浮かんだので、誰かに愛されていた宝石が、全く関係ない星に、その誰かを奪われたら、なんか良くね?でも、そういう設定は誰でも思いつくから、+α的な感じで宝石がついてる何かを登場させて、そいつに感情を付け足すか。なら、人型のほうが伝わりやすいし人形?宝石ついてる人形はあまり思い浮かばないけど、割れ物系なら、感情入れられるんじゃね?おっしゃ、それでいこう!
と、言う感じでやりました。
宝物
私の宝物はサクサクするレシピのノート。
今までの頑張りとか、
やっと完成したレシピとかがあって、
私の宝物。
セミが鳴き、太陽が燦々と照りつける夏のある日。
優斗は部屋の片付けをしていた。
というのも、母親である明美が実家の整理をするために呼び出されたからである。
「あっちぃ〜。こんな中片付けとか地獄かよ…」
優斗がぼやきながらしてしまうのも致し方ない。
温暖化と言うだけあって例年よりも暑い夏は昔ながらの風情を残したこの家屋には少々暑すぎるからだ。
昔は縁側で涼んだりしていたらしいが…今はその縁側はただの熱せられたものになっている。
優斗がいる居間の障子を挟んだ向かい側にある部屋は明美の部屋で、今明美が掃除している。
居間には2階に上がる階段もあり、このあと2階も掃除する。
古びた階段は少し心許なく、音も今にも壊れそうな音を出す。
その階段を登った先にある2階が物置部屋となっており、ラスボスなのだからたまったものではない。
手で額を拭いながら優斗はこの後のことを考えて余計に嫌気が差していった。
そもそも実家とはいえ、一人暮らしをする際に荷物は全部持っていったため自分のものは何ひとつないのだ。
居間の片付けを大方済ませた頃には空が赤く染まっていた。
太陽も少し熱を収め、縁側は涼めるようになっていた。
「優斗〜あんたの好きなかき氷持ってきたで〜」
明美は縁側に座っている優斗にかき氷を手渡した。
「ん。ありがとう。やっぱかき氷はうまいな。」
夏の風情とも言えるかき氷には赤い空と対照的青いシロップがかかっていた。
風鈴が風に揺れてチリンと涼しげに歌った。
その時、
「あんたにとって一番大事なもんって何?」
と、唐突に質問が投げかけられた。
「それは、宝物ってこと?だったら、まこちゃんから貰った誕プレかな。使いやすいし、嬉しいんだよね。」
若干戸惑いつつもそう返した優斗に明美は1冊のアルバムを見せた。
「あんた。これ何か覚えてないやろ?」
「おん。なんそれ?ちっさい頃のアルバム?」
明美はその問いには答えずにアルバムをめくっていった。
アルバムには優斗の生まれた頃から大学を卒業するまでの写真が貼られていた。
明美が1枚ページをはらりとめくる度に、成長していく優斗の姿が写った。
どのページにも写真一枚一枚に明美の優斗に対する思いが綴られていた。
「私にとって一番大事なんはな、優斗やねん。光太郎が私に最期に残してくれたもん。それがあんたやねん。優斗は気づいとらんかったんやろうけど、私はずっとあんたの成長を間近で見て、1番応援しとってん。まぁ、なんや。今更やけど私にとっての宝物は優斗。あんたやで。ってことをいいたかってん。」
そう語った明美の顔が赤いのは、夕日のせいか。はたまた少し照れているからなのか。
今度は少し淋しげな音色を風鈴は微かに奏でた。
優斗は何とも言えぬ思いになった。
母が自分をそのように思ってくれていたことは純粋にうれしかった。けれど、それは自分だからじゃなくて光太郎という1人間の形見的な役割でしかないのではないか。という気持ちもあった。
優斗は何も言えず、ただ遠くを見つめた。
食べかけのかき氷は溶けてブルーの甘ったるすぎる水になっていった。
暫く無言の時間が進み、虫の声が聞こえる頃。ようやく優斗は言葉を発した。
「母さん。」
「なに?」
「俺さ。ずっと考えとってん。俺って父さんの代わりかなんかなんかなって。父さんは俺が小さい頃に死んじまったから記憶にないけど、優しい手で俺の頭を撫でてくれたんは覚えてる。そんな、父さんの、代わりなんかなって。でもさ、母さんはオレのことたぶんそんな目で見てへんやろ。母さんにとって俺は俺なんやんな?」
「当然やろ。光太郎の代わりでも何でもない。優斗は優斗や。私は優斗やから好きやねん。」
「そっか。それが聞けて安心したわ。俺さ。もっと頑張るわ。ほんでいつか、今までもらった分の愛何倍にもして返したる。」
そう宣言した優斗に同意するように、或いはその背を押すように部屋においてある仏壇の炎は揺らめいた。
「だったら、先ずは2階の片付けやってもらおかな。」
そういった明美はおどけながらも涙が滲んでいた。
溶けたかき氷は美しく月の光を反射していた。
その日は朝から街全体が静まり返っていた。
3日前に吸血鬼の元に届いた一通の手紙が原因だ。
『3日後にお前の宝物を奪いに行く。お前の1番大切な宝物を壊す喜びをくれないか?』
手紙にはそう記されていた。
この吸血鬼をよく思っていない他の吸血鬼が躍起を起こしたのだという。
ヴァンパイアハンター協会からも「対吸血鬼特戦部隊」が動くとの知らせが来ている。
奴は街の郊外で既に待ち構えている。
屋敷から出る際に奴はこう言い残して行った。
「この街全てが宝物だ。ワタシを受け入れてくれた人々が宝物だ。大切な場所だ。アイツは何も分かっていない。大切じゃないモノなどこの街には無い。石ころ1つでも傷付けたらワタシは容赦しない。」
あそこまで怒りと覚悟をもった表情を見たのは初めてだ。
それだけこの街が大切な宝物なのだろう。
オレは、少しの躊躇いの後屋敷を飛び出し、特戦部隊の足止めへと走った。
オレにとってもこの場所は大事な宝物になっていたようだ。
(宝物)
本気の吸血鬼さん、自分の行動に躊躇いがあるものの走り出したハンター君、宝物を守れよ。
【宝物】
僕の宝物は
全て手の中から消えました。
僕が全部悪いのでしょう。
宝物を大事にしないから
全てを裏切ってしまうから
何も欲張らないから
1つ目の宝物は
大切にする方法を知らなかった。
叩く、殴る、蹴る、殺す。
全ての行動が愛に見えた僕は
大切にする方法が分からなかった。
2つ目の宝物は
大切にする方法を学んだ。
もちろん失った後に
叩く、殴る、蹴る、殺す…
必ず愛から全ての行動が来る訳では無いと。
何が愛なのかを考え始めた。
3つ目の宝物は
愛の弱さを知らなかった。
愛を知った僕は愛を貰った。
その愛がずっと続くものだと思った僕は
愛が常にあるものだと勘違いしていた。
4つ目の宝物は
未熟な愛を与えてしまった。
叩く、殴る、蹴る、殺す…
それも愛になりうるものだと知った。
全てが終わったあとに間違いに気づいた。
5つ目の宝物は
全てが間違いだと思った。
全ては愛じゃないが全ては愛だ
大切にする方法は人それぞれ。
分からない。分からない。
何を大切にすればいい?
大切にする方法って何?
僕は間違っている。
僕じゃない誰かが正解。
僕の中に正解はない。
生きていちゃいけないのか。。
分からないんだ。
叩くとか殴るとかは良くないことなのに
辞めた途端なんだかウズウズして、
またやってしまう。
でも悪気は全くない。
それが自分なりの愛だと気づいた
それで人は離れていったのだと。
気づいた瞬間すぐ辞めた。
それから人も集まってきた。
でも何かが足りなくて、何かが無い。
辞めてすぐはそんな状態が続いた
大切なものは殴ったり、叩いたりしたら
壊れてしまうのは知っているのに
簡単に壊れないことも知っているから。
壊れてしまうのは悲しいのに
それしか愛を伝える方法が分からないから
壊れてもなお続けたくなってしまう。
グッと堪えていたらそんな感情はパッと消えた。
消えたはずだった……のに……
最近それを思い出してしまった
壊したい、崩したい、消したい。
そんな感情が蘇ってしまった。
これから迷惑をかける大切な宝物達。
ごめんね。
ごめんね。
これしか知らないんだ。
【航海】
海賊は、船の奥深くにしまっていた宝物を引っ張り出してきた。
ありとあらゆる島で奪ってきた金品を、
あろうことか海に投げ込んでいく。
どす黒い青緑の海に、宝物がきらめいているのが見える。
「俺には、宝物はもう要らない。
だって、君がいなけりゃ意味が無いから。」
海賊にとっての本当の宝物は、
とっくの昔に失っていたのだった。
「宝物だから」
大切なものはあるだけでいい。
大切な人はいるだけでいい。
きっと、何よりも大事なものは、
手元にあるだけで、あなたの当たり前になっている。
だから、忘れてしまう。見失ってしまう。
近づけば近づくほど、遠くへいっちゃうもの。
だから、離さないよう、そっと握りしめておかなくちゃいけない。
空がある。雲がある。そして、友達がいる。
家がある。そこで、待っている人がいる。
日常は、あなたをずっと見てきた。
今度は、あなたが日常を見つめる番だ。
【宝物】
持ってるゼ
結構あるゼ
割と恵まれてるゼ
今の所は
いい人生だ
の方が勝ってるし
まだ伸びしろもあるゼ
宝物
大人になって自分でお金を稼ぐようになってから、身の回りにあるものの大半は宝物と言えるかも知れない
必要に応じてか、無駄と知りながらも手に入れたかったか、いずれにしても時間を対価に手に入れたお金で買ったものだ
だが、お店で見た時はどうしても欲しかったものがいざ自分の手に馴染むころには宝物には見えなくなる
自分自身の身の回りに宝物なんて似つかわしくないのだ
自ら宝物を宝物で無くしていくのは業の深さか、あるいは向上心か
そうして手放したものがいくつもある
時々あれを捨てたのは失策だったなあと感じることもあるが、そもそも宝物が宝物であり続けていたらそんな目にも遭わない
こうして1日の大半を社会に捧げ、宝物と見紛うほどのありふれたものを求め続けていく
......こんなありふれた日常を宝物と呼べることを願っている
もっと短くしたかったんですが800字弱です
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【宝物】
同じ小学校に通っていた友人とたまたま高校で再会した。
彼が引っ越したのは両親の離婚が原因だと聞いていた。少し心配だったんだけど、思ったより元気そうでホッとした。
懐かしいねと話をして、どちらからともなく同じ部活に入ろうかなんて言い出した。
「調理部なんてどうかなぁ」
俺はかなり緊張しながら言った。男子がほとんどいない部活だということはわかっている。
「俺さ、弟が生まれたんだよ。信じられるか? 12歳も年が離れてるんだぞ」
流石に驚いている様子の友人に、調理実習で作ったスイートポテトを持ち帰ったら弟がすごく喜んだのだと話した。
「だからさ、他にも手作りのおやつとか、作ってやれないかなあって。料理できる兄ちゃんとか、ちょっといいだろ?」
まだ幼稚園児の弟は俺の宝物である。あの笑顔を見るためなら『男の癖に』なんて言われても構わない。
「でもさ、男ひとりはやっぱり肩身が狭いじゃん?」
だから付き合ってよ、と拝むようにすれば、友人が苦笑して言った。
「……仕方ねぇなあ。一緒に調理部見学しに行くか」
「ほんと? ありがと、恩に着る」
この友人は父親に引き取られたと聞いている。その父親は再婚したりはしていないらしい。
つまりこいつには母親がいない。
忙しい彼の父親は子供に料理を教えてくれるだろうか。無理じゃないかな、と俺は思う。
今時、料理なんてネットで調べればレシピも動画も簡単に出てくる。
それでも、わからないことはあるだろう。誰かに聞きたいことなんかも。
俺と一緒に調理部に入ったら、この友人の今後の『生きやすさ』に少しは良い影響があるかもしれない……なんて。
そんなの俺のエゴでしかないけど。
それでも、せっかく再会できたこいつとの友情も、俺にとっては宝物になっていく気がしたから。恩着せがましくない程度に、力になれたらと思うのだ。
もちろん、その分俺も頼らせてもらうけどね。