『宝物』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
世界の東の果ての寺院には竜の宝物殿があるという。
生涯かけても使い尽くせないほどの金銀財宝。
どんな願い事でも叶えてくれる不思議な珠。
飲めばたちまち不老不死になる竜涎酒。
竜の髭で編まれたサンダルは履けば空を駆けられる。
これをただの御伽話だと思う者もいれば、真実と信じて一攫千金の旅に出る者もいる。
ある日、一人の若者がついに東の果てまで辿りついた。古びた寺院には人の気配がない。彼は朽ちた門を幾つもくぐり、草木の枯れた中庭を抜け、廃墟の如き僧房の奥の奥に、ようやく大きな蔵を見つけた。
喜び勇んで扉を開く。
果たして中には一頭の竜がいた。蔵の中には他に何もなければ誰も居ない。問えば宝をもらえるものかと、おそるおそる竜に声をかける。
「竜よ、竜よ。私は宝を探してここまでやって来た」
「よく来たね。でもお前の望むものはここにはないよ」
打ちひしがれる若者に竜は優しく語り掛ける。
かつてこの蔵に積まれていたのは有難い経本。しかし戦で寺院が焼かれ、全て失われてしまった。私がここをねぐらと定めてからどれほどの年月が過ぎただろう。いつの間にやら御伽話の存在にされてしまった。
「しかしこうしてお前のように、夢物語の真実を探して稀に訪れる人間がいるから私は救われる」
長く独りで過ごした辛さは如何ほどかと若者がそっと伸ばした手を竜は軽く握り返してかすかに笑った。
「なかなか肉付きの良い手だ。久々の晩餐だよ」
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「宝物」
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所感:
この竜、単に出不精なんですよね。食事に出掛けるのも面倒っていう。でも待ってたらたまに出前が届くから。
きみがくれたプレゼント
その存在を確かめるたび
わたしの居場所がみつかる
あたたかい光に包まれ
どこへでも行ける気がする
/ 宝物
「宝物」
一生懸命に記憶をたどってみるのだが、宝物として何かを大事に持っていたというような記憶がない。
小さい頃、ビー玉やらなんちゃらカードといった子供の宝物になり得るものも、特に興味がなかったように思う。そもそも宝物って一体何なのだ?海賊が7つの海を渡って探し求める金銀財宝のことならまだわかるが、昭和という大量消費の時代に生まれ育ったものとしては、宝物と言ってもピンとくるものがない。
ちなみに私は、物に執着するタイプではないが、ミニマリストのように潔く物を捨てられるタイプでもない。1年間使わなかった物は捨てましょうと断捨離本には書いてあるが、確かにそれができれば、きっとほとんどのものを捨てられて、スッキリした部屋になるだろう。ただ私は、本を読んでなるほどと思うだけの、自己啓発本あるあるの見本のような人なので、実際は無駄な物に囲まれて生活している。そんな部屋に、宝物があろうはずもない。
中田敦彦がYoutube大学で、思い出の品はラスボスと言っていた。そんなものは写真を撮ってクラウドに上げ、思い出の品は捨ててしまえということらしい。すごいよね、ミニマリスト。そこには、思い出が宝物という概念は存在しないようだ。
あなたが私の宝物というのも、いや私って物ちゃうし、とか思ってしまう。そんなものは別冊マーガレットの中だけの話であって、実際に言われたこともないし。それはやはり、私自身に問題があるからだろうか。でもちょっと言われてみたい。誰か言って。
結局宝物なんて、人それぞれだ。なくても別に困りはしない。ただ宝物があるって、なんだかそれだけで心が豊かな人っぽいイメージが、私にはある。ないものねだりで憧れかもしれないが、大切な何かがあるっていいよねと思うのだ。
さあ、ちょっと部屋でも片付けるか。
宝物...昔はしまいきれないくらい沢山あったのに
大人になる過程でなくなってしまったみたい
いまでは見つけることも難しい
宝物
辛くて、苦しくて、虚しくて、
何もかも嫌で、どうしようもない悲しみに泣いていた。
ただただ死にたがっていたあの日々も、気持ちも、
全部がかけがけのない、宝物だったんだと
いつか愛おしく思う日が来るのでしょうーーー。
小学生2年生のころ、父親が買ってくれたグーニーズのDVD。あの当時は、少し怖さもあったけど、友達と3回は見たな。ハラハラドキドキする冒険の末、たどり着く金銀財宝の山、そして家族の絆を表現した物語。今でも心に残る作品のひとつ。友達とチャンク、スロースの真似をして遊んだ思い出もまた宝物かもなとしみじみ思う。
僕の宝物
それは、僕や僕の周りの人に関する記憶
今までの人生で積み重ねて来た記憶
でも、その宝物は日々消えていく
もう半年前の記憶すらはっきりしない
毎日たくさんの人と関わって来たはずなのに
そのほとんどが薄れてはっきりせず、
生きてきた年数は短いはずなのに、
どこか遠くのように感じる
僕は惨めな気持ちになる
もう記憶なんかなくてもいいとすら思ってしまう
でも、僕が持っている記憶は
モザイクがかかっているようだが、素敵な記憶なのだろうか
とても輝いて見える記憶もある
この記憶たちが綺麗なものだと信じて今日も生きていく
宝物
私の宝物はひとつ。
なんだと思う?
答えは、子供たち。
自分の命に変えても、必ず守っていく。
宝物
宝物ってなんだろう。
子供の頃は大好きなぬいぐるみ。
小学生の頃はゲームボーイ
中学生の時は好きなアーティストのCD
高校生の時は友達、仲間!
など年代によって変わっていくんだろう。
大人になったいま何が宝物?と聞かれても答えられない
強いて言えば物ではなく、大人になって守るものができた時その守る物が夫だったり妻だったり子供だったり。
自分の身近にいる人が私の宝物になった。
【宝物】
あの作家さんの本は私の日々の「幸せ」になった。
人生で初めて「好きな作家」と言える日が来て
言葉に表せない喜びを心の中で噛みしめていた。
そんな喜びを毎日のようにくれる本は私にとって
宝物になった。
爛れるように歩いて 霞むようなアスファルト
太陽がキラキラと地面の雑音が頭の中に滞っている
ただ草木が揺れているみたいに
階段を登ってゆくみたいに
そんな人生を臨んでいるだけなのに
たんぽぽみたいな花が咲う そして雨の日には蕾は眠る
ちゃぽちゃぽした水溜まりの傍に
君は僕が嫌いなのね
小さな刃物が殺人鬼が笑うみたいに僕の傍に揺れて
枯れていた僕を他所目に
雨水が項垂れるだけの音がしている
皮が血の海に覆われて 地獄絵図に化す❓
道路が動いているみたいだった 涙が動いて
僕はただ死んでゆく塗れになるだけだった
せめて綺麗に死にたかった
線路を無くした電車のように
冷たい熱帯魚のように
僕はまるで僕みたいに死ぬんだ
「自分の部屋片付けなさい。」
少し大きな声でそんなことを言うのは母だった。
「...めんどくさい。」
小声でそんなことをつぶやくと
「めんどくさいじゃないでしょ!」と
さっきよりも大きな声で私に言ってきた母は
すぐにでも雷を落としてきそうで怖かったため
駆け足で自分の部屋に向かった。
自分の部屋を開けると
お世辞でも女の部屋とは言い難い
悲惨な状態になっていた。
「これを片付けるなんて無理じゃない?」
なんて小言を零しながら片付けていった。
嫌々ながらも片付けを始めると
いつの間にか気分が乗って楽しくなっていた。
どのくらい時間が経ったのだろう?
いつの間にか私の部屋はどこかの
モデルルームのように綺麗な部屋に生まれ変わった。
「もういいかなぁ...」
疲れた私はベッドに腰を下ろした。
「物置部屋にもたくさんあなたの物入ってるよ。」
なんて母はとことん私のやる気をなくしてくる
「...はーい。」
もうめんどくさいなぁと思いつつ
物置部屋の片付けをした。
「これなんだろう?」
それはお菓子の缶の蓋に
大きく下手くそな文字で
"たからもの"
と書いてあった。
中身を確認してみると
お菓子の付録についてるオモチャの指輪
安っぽいネックレスなどたくさんの物が入っていた。
それといつのものが分からない手紙が出てきた。
"だいすきだよ"
なにこれ?全然覚えてない。
名前も書いてない手紙?
これも小さい子が書いたような
すこし崩れた文字が書かれていた。
「お母さーん。これ何?誰から貰ってた?」
自分の中で当てはまる人物が
居なくてお母さんに聞いた。
「あんた覚えてないの?
その手紙も指輪もネックレスも
あなたの今の彼氏がくれたじゃない。」
懐かしむように母は教えてくれた。
「幼稚園の時も結婚する!!とか言って
一緒に遊んでたじゃない。
その時に彼がくれたものよ。
そしたらあなたが急にお菓子の缶の蓋に
宝物って書いて満足そうに入れてたじゃない。」
もうすっかり忘れてた。
そういえばそうだった。
小さい頃の宝物それは今も変わってなかったみたい
今も昔も指輪もネックレスもを彼から貰ったの
今度は左手の薬指に合う指輪を宝物にしたい
─────『宝物』
どこかにあるのだと思って
色んな所へ行って探し回っていた。
とても長い間。
それはきっと宝石のように煌びやかに違いない。
それはきっと一生のうちにお目にかかれるか分からない
希少な物に違いない。
それはきっと誰もが羨むような素晴らしい物に違いない。
あの人が持っているから。
みんなが良いと言っているから。
そんな噂を聞きつけては手に入れてみるものの
本当にこれだろうかと不安になる。
そんな事を繰り返したある日。
それはふわっと浮かび上がった。
あぁ、ここにあったのか。
宝石でもなく、希少な物でもなかった。
他人が見れば何でもないだろう。
それは心の中にしまい込まれていた本当の私。
好きを好きと言えなくなっていた私。
誰かの価値観に取り込まれて見失っていた私。
私は私を取り戻した。
恐れる事など何もない。
私はふぅっと息を吐き、前に一歩踏み出した。
-宝物-
宝物
俺は、昔からどうしようもない性格だったらしい。母や叔母から聞かされるのは、俺の悪い噂ばかり。毎日家族の誰かしらと喧嘩していて、休めるところなんてなかった。家族はみんなして俺のことが嫌いで、せめて物思いで学校では猫を被っていた。
誰からも好かれる優等生。成績優秀、爽やかイケメン。誰にでも優しいなんでもそつなくこなす人。俺は、みんなからそう思われている。クールで居たいが為に。友達なんてものは作らない。良くも悪くも頑固者。そんな反抗期真っ只中の時にでてきた作文。テーマは「わたしの、ぼくのたからもの」家に帰って、宝物について考える。俺の宝物ってなんだろう、と幼い頭で考えた記憶がある。キラキラ光る宝石のような石、四つ葉のクローバー、あとはあとは、、、。
なぜか、その後の記憶はない。けど、題名だけ書いてまっさらな作文用紙を見たおばあちゃんが、ヒントをくれた覚えがある。
「今、宝物がなくても、いつかはきっと見つかるよ。おばあちゃん、あんたが宝物見つけるまで逝かないから。」
逝かないから、の意味を理解していた訳では無いけど、その言葉だけ鮮明に覚えている。いつも俺の悪口ばかり言っているおばあちゃんが、あの時だけ嫌に優しかった。
そんな俺も、高校を卒業して大学に入り、そして20歳を迎えた。あのバカにされていた俺が、大人になって大切な宝物が出来ました。健気に宝物について考えて、答えが出ないまま泣き寝入り。その繰り返しをしていた俺が、大人になった。今も、実感がわかない。
ブルブルと震える携帯。待ち合わせの場所に着く。そこには、ニコニコと楽しそうにこちらに手を振る友達4人が。
俺にとっての1番の宝物というのは、友という事に、20年生きてやっと分かった。
_____宝物がやっと見つかりました。安心して眠ってね、おばあちゃん。
作者のあとがき
今日は何故かスランプ気味で、文章がかなり散らばってしまいました。大変読みにくいと思いますが、ぜひ呼んでくれると嬉しいです。
宝物
あなた達。
いつも私に笑顔と幸せをありがとう
大切にするからね
舞華
誰にも知られたくない
誰にも見られたくない。
自分にしかわからない良さ
それがわしの宝物
あなたは私の宝物
どうやって大事にすればいいのかな
みんなに自慢すればいいのかな
恐る恐る触ればいいのかな
傷つけないよう遠ざけておけばいいのかな
あなたは私の宝物
どうやって大事にすればいいのかな
「これあげる」
「あ、ありがとう」
「これもあげる、あとこれも」
「えっ」
「これとこれとこれもあげる」
「いやいや、こんな貰えないよ。君の大切なものだろ?それにとっても高価なものじゃないの?」
「大切なものじゃないよ。お父さんとお母さんが持ってくるから溜まっているの」
「それはご両親からのプレゼントじゃないか。大切にしないと」
「なんで?」
「なんでって、それは…」
「私の大切なものはこんなのじゃないと思うの」
「……?」
「ねえ、私の大切なものになってよ」
『宝物』
宝物
トゲトゲしたかっこいい石
お土産にもらったお菓子の袋
卒園式につけた造花の花
ポケモンのシール
幼稚園の先生の年賀状
息子の大事なものの箱に入っていたもの
大きくなってその箱を開けた時
なんでこんなもの?と思ったかしら
忘れてしまっているかもしれない
でもねその瞬間
あなたの宝物だったもの達
きっと大きくなるにつれ
大切なものは変わっていくことでしょう
それでもいい
その思い出を忘れしまっても
その瞬間はなによりも大事なものだった
何かを大事に思うその感情すら
あなたをつくる大事な欠片
今度はどんな素敵なものが
入るのかしらね
私の宝物は
あなたがその箱に色々と入れた時の
エピソードそのものです
かなで
オモチャ箱を見つけた。
小さい事大切にして、
そのままにしてた箱の中。
何の変哲もないリボン。
小さなキーホルダー。
偽物の宝石がいっぱい。
好きの記憶は変わらない。
今でも全てが「宝物」だ。
だからまた会う日まで。
変わらないでいて。