『子供のように』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
一件のLINEが届いた。
いつものように広告かなと思いつつも、開いてみると──友人からの遊びの誘いだった。
大人になると、友人を遊びに誘うことは躊躇してしまうことの一つだ。
学生時代と大人では、生活リズムや家庭の事情等が複雑になり、気楽なお誘いは難しくなる。
私自身、何度も遊びに誘おうと思ってタイミングを見ては諦めていたのだが──友人から遊びのお誘いが来るとは。
嬉し過ぎるではないか!
テンションが上がると、何故か心は子どもの頃のような感覚に戻っていく。
何をするのも楽しいと思えたあの頃の感覚だ。
大人になっても案外覚えているんだなぁと、しみじみ思う。
その一方で、いつも胸にあった重苦しさが消えて、気楽な感覚になっていることにも気が付く。
これはきっと、友人によって好奇心の塊だった当時の自分がインストールされたからだ。
「遊びに行こう」
紡いだ言葉に当時の自分が重なっていく。
──きっとこの遊びは、楽しいものになる──
そんな確信を持って、LINEを送信した。
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子どものように
【子どものように】
身体がおおきくなった今でも、不安になったりプレッシャーを感じると私の手を握ったり、明け方に布団にもぐりこんできたりする甘えたがりの我が子
温かな体温、静かな寝息、まだまだ子どものやわらかい頬にふれながら、きっとこんなふうに母親に甘えてきたんだろうな私も、と思う
ベランダで月を眺めながら煙草を燻らせていたあの頃を思う 寄る辺のない自由さと自分への嘲笑とつきまとう孤独感は、煙草と同じくらいニガくて煙草と同じくらい癖になって、まるで悪い情夫のように離れられなかったものだけど
今はもう要らないかな
ベランダで飲むのは、大きなマグカップのカフェオレ、暖かいストールとセーターで
この子が、あたたかな世界で生きてくれることを祈る
この子をとり巻く世界が、いつもこの子に優しくあるように、子どものように祈る
**『湖に囁く声』**
静かな湖のほとりに、悠也は一人座っていた。日が沈むと、湖は穏やかな静寂に包まれ、彼の心もまた同じように波立つことなく沈黙していた。風が水面を撫でるたびに、かすかな波紋が広がっていく。その中に、彼は自分自身の影を見ていた。
「他の子供たちのように、無邪気な笑顔でいられたらよかったな…」
心の中で、幼い頃の自分が囁いた。彼は、かつての友人たちと遊んでいたあの頃を思い出した。皆が笑い合い、走り回り、何もかもが楽しかったはずだった。しかし、悠也はどこかその輪に完全に溶け込むことができなかった。無邪気な笑顔でいることができなかったのだ。
湖の水面に映る自分の顔は、無表情だった。笑いたくても笑えなかった、あの頃と同じだった。
「どうして俺は、他の子供たちのように笑えなかったんだろう?」
風が静かに吹き、彼の問いに応えるかのように湖が揺れた。ふと、どこからか優しい声が聞こえてきた。
「1人は苦しいか?」
悠也は驚いて周りを見回したが、誰もいない。ただ湖のさざ波だけが静かに音を立てている。まるで湖そのものが彼に話しかけているようだった。
「1人は…確かに苦しいよ。でも、それが俺には普通だったんだ。無邪気に笑えなくても、誰かと一緒じゃなくても、それが俺の生き方だった。」
再び風が湖を撫で、さざ波はさらに広がる。
「無邪気な笑顔を持たないことは悪いことではない。君はただ、世界を違う目で見ていただけなんだよ。」湖が囁く。
「違う目…?」
「そう、子供の頃から君は、他の人が見逃すものに気づいていた。だから、笑えなかったのではなく、より深い何かを感じていたんだろう。それは、君の強さでもある。」
悠也はしばらく沈黙した。幼い頃、他の子供たちがただ無邪気に笑い合っている中で、自分が感じていた小さな違和感。それは、今思えば、物事の裏側にある感情や意味に敏感だったからかもしれないと、彼は気づき始めた。
「じゃあ、この孤独も、苦しみも、意味があるってことか?」
湖は静かに揺れ続け、答える代わりに、夕焼けの光が水面に反射して美しいオレンジ色の光を放った。
「子供の頃、笑うことができなかったのは、それが君の選んだ道だった。無邪気な笑顔だけが幸せの形ではない。それでも、もし君が笑いたいと思うなら、いつでもその瞬間は訪れるだろう。無理に笑う必要はない。ただ、その時が来たら、子供のように、心から笑っていいんだ。」
悠也は少しずつ自分の中の孤独が薄れていくのを感じた。今の自分はあの頃の自分とは違う。だが、それで良かったのだ。無邪気な笑顔がなかったからこそ、今ここにいる自分があるのだと理解した。
彼はふと、微笑んだ。無理にではなく、自然と。まるで、湖と自分が繋がった瞬間のようだった。
無垢な言葉は、人を傷つける。
清廉な言葉は、人の心を救済する。
純真であり続ける限り、
人は天使であり、悪魔である。
子とは、元来そうあるべきなのだ。
子供のような、純粋な気持ちのままでいれたらいいのに。そしたら、こんなに悩まずにいられるのに。
アイス日和
2024/10/13㈰日記
大きな公園に友達と行って
来たんだけど、忘れたい記憶が
出来た。
あと5秒、あの場所に居たら
僕は吐いていたと思う。
胃の為に行ったのに
危うく症状が酷くなるところだった。
その公園好きだから
また行きたいんだけど
あの記憶が蘇りそう……
忘れるんだー
忘れろー
まだヒマワリも咲いていて
赤いヒマワリを初めて見た。
今日は暑かったから
ヒマワリを見ても違和感なし。
コスモスはまだ咲き始めだったけど
コキアは赤くなっていた。
沢山の色のダリアとサルビアが
綺麗だった。
黒のサルビアはカッコ良いね。
日曜日、大勢の人が来ていて
芝生にテントを張ってた人達も
結構いた。
音楽をかけて、楽しそうだった。
名前がわからない可愛い鳥の写真が
撮れた。
明日、調べよっと。
アイスの自販機があったので
メロンソーダのクーリッシュを
買って食べていたら
「アイス買う?」って次から
次へと人達が。
お役に立てた?
明日はスポーツの日ですよ。
友達は既に筋肉痛だそうで。
おやすみね。
子どものようにないたあの日
彼の胸の中で わんわん泣いた
別れるのが悲しくて 行ってほしくなくて
私が落ち着くまでずっと 困った顔で見守っててくれてたね 背中に手置きながら
あの手のぬくもりがまた優しくて温かくて
涙が溢れて止まらなかった
離れてもまたあえると思っていたのに
その日は来なくて
永遠のバイバイになってしまった
きょうもそこから私のこと見てくれていますか?
私は今日も笑うからね。
見ててね。
第十六作「子供のように」
この地に初めて降り立ったのは2歳の時。
見るもの全てに感動し、はしゃいだ自分。
同じ駅のホームを踏むと今でも子供のように。
幼き頃の感動が込み上げ、はしゃぎたくなる。
それと同時に感じる戻ることの出来ぬ儚さ。
跳ねて飛び 登って駆けて 無垢なまま
次の日の 体軋ませて 悲鳴上げる時までは(字余り
わたしの…話だと思う。わたしは、とっても優しい。
困っている人がいたら大丈夫かなって思って、心配する。困っている人がいたら助ける。話は黙って聞くし、うん、とか、そうなんだ、凄いですね、とか、愛想を振りまくし、心の底からそう思っていると見えるように振る舞う。
にこにこーって笑う時には、あははって。真面目な生徒みたいに。子供みたいな可愛い笑顔は忘れずにするんだよ。
好成績は取っちゃダメだよ。努力をしているという姿勢を見せることが教師に愛されるコツだからね。好成績を取っていいのはテストでだけ。80点ぐらいを取るか、70点代を取るのが理想的だよ。
でもね、子供っぽく振る舞うのは凄く大変だよ。周りに迷惑をかける、このさじ加減がとっても大切なんだよ。大きな迷惑をかけてはダメ。1日5回まで、小さなうっかりをかけるんだ。あと、素直にごめんなさいって言ってから、本当にすみません、とか。同じ人に5回はダメ。迷惑をかける人も選ぼう。見下されることが大事なんだよ。見下されて嫌だけど、それを表に出したら終わりだよ。駄目だよ。昇進したい?認められたい?凄いって思われたい?
………。
馬鹿なの?駄目だよそんなの。きみもわたしもどうせ失敗するんだから、その失敗を許して貰えるように賢く子供っぽく振る舞うんだよ。昇進したいなら…うん。人に嫌われていい、メンタルを持てばいいと思う。でも、そんなメンタルはきみにある?持ってるのかな?あるのかな?確認してみて。
………。
確認できた?
分からないでしょ?
だから、駄目。
きみにそんな実力も運もないよ。運があるならこれを読んでいない。わたしも運がないから、きみが傷つかないようにこうやって、書いてる。
そして、きみに読んでもらっている。きみはひとりじゃないよ。大丈夫。
わたしはきみが好き。井の中の蛙、ってやつなのか。でも今、わたしは顔も名前も分からないきみに、深い愛を感じる。好きだよ。
きみがこの文を読んでいるってことはね、つまりそういうことなの。今に甘んじて…っていうと、嫌にしか思えないと思うけど。甘んじるって、楽じゃない?
承認欲求で自分を縛るのは、やめにしよう?
大丈夫。毎日出勤して、学校に行って、子供っぽく、振舞っていたらきみはいつの間にか幸せを掴む。掴んでいる。そして、周りの苦しい、苦しいって嘆く人達を、楽で幸せなところで見ていられる。
楽で幸せなところって何?って?それは、朝起きて、仕事をして、程々に働いたら、勉強したら、家に帰って、やれといわれたことを終わらせる。
上に行かなければ、やれと言われることが多くなる、多くなる。つまり、嫌になる。
ダメなやつ、子供っぽいやつ、という烙印を押されると、こいつに任せたら駄目だって思われるから、大変なことが減っていく。
大丈夫だよ。それでもきみは愛されるから。どこかの誰かから。
好きだよ、きみ。諦めると、諦めたこと以上のいい事が君を包み込む。
何を拘ってるの?何が良くてそこまで拘るの?
………。
大丈夫。好きだよ、きみのこと。
ほら、やること終わった?ぐうたら、私の愛を受け取って。言うことはわかる?バカ正直に、子供みたいに
「ありがとう!嬉しい」
だよ。それで万事解決。
私はきみが好きだし、きみもそれに喜ぶ。それに喜んだフリをする。
諦めたら、何故か涙が流れる。
大丈夫、心配しないで。これは、悪いことじゃない。
大丈夫、大丈夫。
好きだよ、きみのこと。
題【子供のように】
(登場人物→莉緒、隼人、太陽)
「では、えーと?体育祭がもうすぐあるのは、みんな分かってるよね!」
「今日は、体育祭の役員とか、出る種目を決めるよ!」
ー体育祭の主な種目、内容ー
・リレー 4人
・表現、ダンス 6人
・チアリーダー 3人
・荷物運び 2人
・審判 2人
「どれにしようかな?」
「決めていくから、手を上げて。一部の人限定!」
「荷物運び、やりたい人?」
「はい。」
「1人?隼人、ね。」
隼人、荷物運びか。じゃあ、私も!
「あと1人は…。」
「はい!やりたいです!」
「わぁ!?びっくりしたよ。莉緒ちゃん(笑)」
「っ!」
莉緒と一緒の役員。
「///。」
隼人と一緒!
「他も決めていくよ?」
「やっと決まった~!」
「お疲れ太陽。」
「本当にお疲れ様!」
「なかなか決まらなかった~(笑)」
「そうだね。」
「あの!!莉緒ちゃん!」
「っ!○○ちゃん…。どうしたの?」
また、悪口、かな。
「その、い、今まで、ごめんなさい!」
「えっ!?」
「ごめんね。辛かったよね。本当にごめんね。2人と仲良い莉緒ちゃんが羨ましくて。」
「うん。良いよ。反省してくれて、すっごく嬉しいから!」
「ありがとう。これから、友達になってくれる?」
「うん。良いよ、よろしくね。」
「良かったね。莉緒ちゃん!女の子の友達、できた。」
「良かったよ~!」
「良い子だね。あの子。」
「うん。」
莉緒に友達ができた!
少し安心しちゃった(笑)
体育祭はもう間近!? ドキドキの展開!?
どうなっちゃうの~!(笑)
では、また次!
子供のように
ー子供のように泣き喚けるなら泣き喚きたい。ー
最近、そう思うことが増えた。
私は戦闘員を務めるようになって早四年。
少佐にまで上り詰めた。
…だが、そのような成果と逆行して私の心はどんどん暗くなっていった。
私は戦闘員になることに特別嫌悪感があったわけではなかった。
でも、だからと言って戦闘員になりたいとも強く望んだわけでもなかった。
…家業を継ぐようなものだ。
なんと古臭いのだろうか。
だが、先程の通り私は戦闘員になること自体は嫌ではなかった。
…四年前まで付き合っていた恋人の側を離れることが嫌だったのだ。
別に離れなくてもよかったと思う人もいることだろう。
しかし、私は「どうしても離れなければならない」と思ったのだ。
…私が血に塗れた姿をあの人に見せたくなかった、その醜い姿であの人の横に並んでいられる自信がなかったから。後、単純に彼に危害が及んで惜しくなかった。
…だから、離れた。
あの人に何一つ言葉を残さずに。…いや?置き手紙ぐらいは残したな。
こんな自分勝手な事しておいて感じることがあった。
…「離れたくない」と。「追いかけて来てほしい」と。
そんな思いを四年間抱えながら仕事に務めてきた。
もちろん業務に支障は出さないように。
…そんな日々を続けて、しんどくなって。
でも、義務を果たさなければ生きてはいけないから頑張って。
こんなことを繰り返していたら、恋人の顔や仕草などが頭をよぎって恋しくなった。
…会いたくなった。
「彼に会いたい。」と思いながら今日も仕事をこなすと…見慣れた姿が私の視界に捉えた。
…彼だ。
「なんで? どうしてここにいるんだろう?」と考えていると彼は私を見つけるや否や私を抱きしめた。
…「やっと見つけた。ここまで来るのに四年もかかっちゃった。」なんて言わないでよ。
『どうして会いに来たの?』
「俺に置き手紙だけ残して去っていた理由を聞いて、もしうまくいけばまた、恋人関係に戻りたい…いや、結婚したいって思ったんだ。」
…なんて能天気な人なんだろう。私を見つけ出せなかったら、見つけ出しても話さなかったらどうするんだ。
「…軍人をやるから離れていくことを決めたんだね。
俺が被害に遭わないようにって…危険なことから遠ざけようと、守ろうとしてくれたんだよね。」
…なんで分かってくれるの。
『…それだけじゃないよ。血に塗れた姿…見せたくなかったの。…血に塗れた姿で貴方の隣を歩くことに罪悪感があったの。』
…本当は一緒に居たかったの。
「…だから、離れたんだね。」
『…っ、うん。』
…涙が出て来そうだ。
「…ねぇ。俺さ頼りないかもしれない。君の心遣いを無視するような選択を取りたいと思ってるようなことを言うんだけど…聞いてくれる?」
…私は無言で頷いた。
「…国の平和を守る誇り高い貴方のそばに居させてください。俺は貴方よりも弱くきっと頼りない。けれども、貴方をそばで護りたい。…どうか結婚してくれませんか?」
…なんで私の欲しい言葉を言ってくれるのか。
『…もしかしたら、っ…貴方とずっとそばに居られないかもしれないよ?…っすぐ死んじゃうかもしれないんだよ?…っ、いいの?」
『…居られなくなる状況をまずつくらないようにするよ。…後、君がすぐ死ぬことになっても、俺はずっと自分が死ぬまで君のことを想い続けるよ。」
…私はその言葉を聞いて涙が溢れた。
『っ……、ぅ…ふ…不束…っ、不束者ですが……っ……よ…っ、よろ…、しく……っ……ぅ、…お…おねが…っ、ぃ…します…っ。』
…彼の言葉に返事をした後、私は子供のように泣き喚いた。
冬の星空
腕の中で眠る
君の寝顔
あどけなくて
子犬の様
お互い
子供見たいに
はしゃいで
笑い合って
今日は楽しい
一日だった
あんなに笑う
のも久しぶり
だった
また
しばらくは
会えなくなる
このまま
君と続きます
様に
僕は
星空に願いを
掛けた
子供のように
いつまで子供のままでいられるんだろう。
思い返せば、小学生のときは「幼稚園の頃に戻りたい」
中学生のときは「小学生の頃に戻りたい」
気づいていないだけで、結局今が幸せなのかもしれない。
大人になって「子供の頃に戻りたい」と思う日が来るかもしれない。
それでも私は、子供のように好奇心や楽しむ気持ちを忘れずにこの世界を生きていきたい。
子供の目に映る景色と大人の目に映る景色は、子供の方が輝いて見えているかもしれない。
きっとそれは全てが初めてで溢れているからだ。
だから別にカッコつけなくてもいいと思う。
子供のようにこの世界を見れる大人になりたい。
気づけば成人をとうに超え、世間では「大人」と呼ばれる立場になってしまった。しかし仕事も探し中、自立もしていない自分を果たして大人と呼べる人はいくら居るだろうか。かと言って無邪気に走り回れる子供でもなくなってしまった。大人でも子供でもない、宙ぶらりんな存在。一番タチの悪い。こうなればいっその事全てを投げ出して何も知らない無垢な子供のようにはしゃぎ回ってみたいものだが、世間の目は厳しいようでそれを容認する人は少ないのだ。当たり前だ。高校を卒業したら大学もしくは直ぐに就職、大人の社会を否が応でも叩き込まれ、あっという間に大人の求める大人になってしまう。何も親のスネを齧って生きていきたい訳では無い。自立したいと努力もしている。ただ昨日まで子供と呼ばれていたあの子たちを、成人した途端に社会の求める都合のいい存在として扱うのはどうかと思っている。
『子供のように』
大きくなるのよ
追い抜け、追い越せ。
強くなるのよ
引き寄せ、引き離せ。
気をつけなさい。
枝はね、
切るんじゃなくて、生かすの。
きっかけは些細なことだった、と思う。
父親に似て整った顔立ちと背丈、私に似て肉付きのいい身体は我が娘ながら世界一美しい。多少わがままが過ぎるのが難点ではあるが、それも許されてしまうほどの器量と才覚を持ち合わせている。
嫉妬とはちがう、羨望ともちがう。とても恐ろしい子。
「お母さんってこんなドレス持ってたんだ」
若い頃に買ってしまい込んでいたパーティードレスを娘が着ていた。大切な思い出の品だ、はやく脱いで返しなさいと強い口調で言った。
あれほど人のものを勝手に漁るなと注意したのにまただ。
「もうこんなの着ないでしょ、わたしがもらってあげる」
ふざけるな、大切なものだと言ったでしょう。はやく返して。つい怒鳴りつけてしまえば、娘は頬を膨らませて不満そうにした。でも急にいやらしく笑ってドレスの裾を掴んで、思いきり割いてしまった。
「お母さんが悪いんだよ」
その言葉で、何かがプツリと切れた。
娘の髪を鷲掴みにして引き倒し、力いっぱい頬を叩いた。痛いと泣き叫ぶ娘の声に夫と親戚たちが駆けつけてきた。夫はすぐに私を抱きとめて落ち着けと言い、親戚どもは娘をかばう。たった一発殴られただけのくせにシクシクと気味悪く泣き続けて鬱陶しい。
『無理だった、やっぱり無理だったの。私は子供なんて育てられない』
娘の前で言った。言ってはいけないことだとわかっていた。その言葉の重みを私は知っているのに言ってしまった。これではどちらが子供かわからないじゃないか。
夫は私に何度も謝った。いつの間にか娘の泣き声が止んでいる。失望しただろうか、それともショックを受けたか。罪悪感と期待がごちゃまぜになって泣いているのに笑いがこみ上げてくる。
『やっぱり、私は狂ってるよ』
娘の謝罪が聴こえるけれどそんなの知らない。腹を痛めて産んだだけの他人の言葉などどうでもいい。ただ慈愛に満ちた目でそれでも愛していると繰り返すこの人だけいればどうでもいい。
――ねえ、私を、わたしを、愛して
【題:子供のように】
子供のように
笑って
泣いて
怒って
拗ねて
喜んで
そんな無邪気で
純粋な君が
僕は好きだよ
社会に出るまでは「子どもみたい」と言われることが嫌いだった。馬鹿にされたように感じるからだ。
子どもの頃は大人になるのに憧れて一人前になることを目標にする。夢を追いかけて。
でも、夢を追えば追うほど不安になり、本当にこれが正しいのか分からなくなる。そして、人に頼りたくなる。正しい正しくないなんて誰にもわからないのに…。当然、今まで当たり前のように近くにいた家族でさえも大人になれば、子どもの頃のように頼れなくなる。将来が不安で鬱々とする。あぁ、子どもの頃はこんなことなかったのに……。いつの間にか大人への憧れは消え、残っているのは懐古的な考えの私だけ。子どもの頃に戻りたい。戻りたい。
ある日、久々に実家に帰った。精神的に限界が来て逃げた先がそこである。迷惑をかけたくない気持ちと裏腹に頼りたい気持ちがあった。中に入ると、急に押しかけたにも関わらず、昔と変わらない母の温かい「おかえり」が聞こえてきた。母の声に涙が流れたまま止まらない。そんな私を見て何かを察した母はそっと私を抱きしめた。私は泣きながら抱えていた今までの全てを打ち明けた。
少し時間が経って、私は笑顔で「ただいま」と言った。子どものように。
時に他人を傷つけてしまったと後悔することがあった。いくら反省しても仕切れぬくらい後悔する日が続くのであった。
他人と出会うことで自分もまた傷つくことがあった。心ない一言、何気ない仕草、予想外の反応。
愁嘆に身を任せふと振り返れば、自分が傷つけてしまったと後悔した他人は自分のそばから居なくなっていた。
そんなことには気が付かなかったかのように、また無邪気なふりをして他人と関わろうとするのであった。
子供のように