『子供のままで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「子供のままで」
大人になりたいと願いながら
子供のままで人生を終えた子らがいる
見届けたかった大人たちがいる
大人になっていけているんだから
贅沢言うなよ と自分に言い聞かせる
夢を語り合った。ふたつ並べた布団の中、顔を見合わせて。夜が更けて外が白むまで、未来についての展望を飽きることなく語り続けていた。その二対の目は穢れも陰りもなくただまっすぐに柔らかな布団の中の仮初の暗闇を見詰め、こそり、こそりと滲む黒の中で細められる。潜めた声は大人たちに聞かれる事はなく、まるで二人だけの秘密基地のようだった。──今は、布団がふたつ並ぶことは無い。未来の展望が見えていた仮初の闇に、小さな星が浮かぶことも無い。
柔い陽光が目に染みる。
ガラスを隔てた向こう側には羽を休める小鳥。
かわいい子、と口元が微笑みをかたちづくる。
目が覚めるといつも違う寝床。隣に誰かがいたり、いなかったり。瞼を持ち上げる瞬間の微かな期待と、それを裏切る痛みとともに朝を迎える。徐々に迫り上がってくる不快感が、昨日の私はまた同じ罪をおかしたのだと告げる。
遊びではなくこれが仕事。好き嫌いは許されない。いまさら拒否することもできない。だけど難しいことではない。ただこの仕事を好いて、誰かの愛に沈めばいい。従順にしていれば、それ相応に優しくしてくれる。もっとと強請れば、欲しい言葉もくれる。この世界はなんだかんだ私に甘い。だから私はこの仕事が嫌いじゃない。
だけど、もう少しだけ、わがままを言っていいのなら。
「私、子どものままでいたかったな」
どこまでも純で、求めずとも愛を注がれる存在のまま。
私はたったひとりだけと愛に溺れたい。
なんてね。私って、案外ロマンチストでしょう?
隣に眠る誰かに口づけを落とす。昨夜はそれなりに気持ちよかったから特別だ。
そっとベッドから降り、私はまた罪のもとへ向かう。
さぁて、今日は誰に愛されるのかな。
―子どものままで―
手書きの文字がいつまでも子どものままで悲しい。
『子供のままで』
いつまでも子供のままでいたい。大人になりたくない。何も知らなかったあの頃が人生で1番輝いていたように感じる。
なんでこうなってしまったんだろうも考え、くらい気持ちで日々を過ごす。
周りの大人はみんな夢を語らない。将来の不安ばかりを教えてくる。みんな「あの頃は良かった」と言う。
あんな大人になりたくないと思っても、つまづいた時に思い浮かぶ言葉は、小さい時に聞いてきた言葉。
たとえそれが、自分に向けられて言われた言葉ではなかったとしても、自分もそうなんじゃないかと思い込む。
そうやって、過去に逃げ込んでいく。
【子供のままで】
七つ歳上の血の繋がらない兄は、この上もなく優秀で英明な人だった。
ガシャンと、玻璃が砕けたようなけたたましい音が響く。それにはたと、キーボードを打つ手を止めた。
窓の外が暗い。気がつけば日が沈んでいた。モニタの光だけがぼんやりと、闇に包まれた自室を照らしている。慌てて部屋を飛び出した。
「ごめん、兄貴! 時間気がつかなかった!」
階段を駆け下り、煌々とライトの照らす明るいキッチンへと飛び込む。割れた皿を拾い集めていたらしい兄は、床に膝をついた体制のままで俺を見上げ、申し訳なさそうに眉を下げた。
「こっちこそごめんね。お皿割っちゃって」
「良いよ、そのくらい。後は俺がやるから、兄貴はゆっくりしてろって」
クソ親父の要求に応え続けるこの人の心身に、疲弊が溜まっていることは知っている。せっかくの休日なのだ、夕飯の支度くらいは俺にやらせてほしかった。
「大丈夫。小説の締め切り、近いんでしょう?」
「それは、そうだけど」
明日にでも編集から催促の電話がかかってきそうだ。今回は筆が進まなかった時期が長くて、珍しくも締め切り前日に初稿が完成していない。
「なら、大丈夫。その代わり書き上がったら、最初に読ませてね。君の作品の一番のファンは僕なんだから」
立ち上がったその人は、くしゃりと俺の頭を撫でる。随分と上にある眼差しが、柔らかく細められていた。
……本当ならこんな苦労、この人はしなくて良かったはずなんだ。俺が凡骨だったから、優秀な後継ぎ欲しさに親父はお義母さんと再婚した。俺が背負うべきだったものを全て押し付けられて、それでもこの人は優しく笑うのだ。君は君の好きなことをして、自由に生きて良いんだよと。
俺だって次の誕生日で成人する。子供の頃は怖くて仕方がなかった親父にだってもう堂々と逆らえるし、この人の負担を減らすことだって少しくらいはできるはずなのに。
手のひらに爪が食い込むじくじくとした痛み。キッチンの照明が痛いくらいに眩しい。
――貴方の中の俺は、いつまでも子供のままで。埋まることのない身長差が、どうしようもなく悔しかった。
大人も社会もめんどくさい。
ぜんぶやめて実家に帰って、誕生日にはパンケーキを焼いてもらいたい。
夏休みには宿題しないでずーっと遊んで、最終日に慌てて答え丸写ししたりしたい。
「子供のままで」
『少年期のぱれえど』
ライ麦畑に行きたいと 飛び降りたブランコは 黄色い塗装が剥げかけたオンボロだ 遊びは仕事と言い聞かせ 門限ギリギリの綱渡り ポッケの中のサラダせんべい もうとっくに粉々だ 膝小僧に沁みる傷
痛みはいつも後からで 夢中の時は気づかない
叱られたってなんだって ぱれえどはまだ続いてく
お題《子供のままで》※長文
子供のままで生きたいと、そう思うのが私の日課。何故なのかは分からない。ただそう思いたいだけ、ただの私の願望だ。
「ねえ、いい年して子供からブランコ奪って遊んで楽しいわけ?」
ブランコで子供に混じって遊んでいると急に女の人からお叱りを受けた。だが、怒声は私の耳を通過した。そんな言葉響きませーん。だって私は昔から人の話を聞いても耳の中を話が新幹線みたいに通りすぎていっちゃうので。
...というか、奪ってない。きちんと列ができてたから並んで遊んでますー。なにか悪いことがありますか?と、そう思っていたら
「確かに、お姉ちゃんが遊ぶのはどうかなって思ったけど、ちゃんと並んでたよ!」
隣でブランコをしている女の子が説明してくれた。なんて優しい子なんだ!と感動していると、今度は女性が"恥ずかしい"と言い始めた。まあ、こんな大人が子供の列に並んで遊んでいたら抗議したくなるのはわかる。でも子供たちは許してくれたんだからいいじゃない、って言ってもやはり今の世の中は私を許してはくれないようで。周りを見渡すと冷たい目線が私に向けられていた。
"あの人、ウケる"
"子供に譲らないの?"
"いい年したガキだな"
耳をすませば聞こえてくる声に、さすがの私も耐えられなくなって並んでいる子供にブランコを譲って公園を後にした。
やっぱり、心が子供のままって行けないのだろうか。ただ昔からあのお昼の公園のブランコが好きで遊んでいただけなのに。子供も大人も同じ人間なのに...世間を知った大きい子供だって許してよ。
だけど、やっぱり、子供のままはもう許されないみたい。
「うちの子かわいい!このまま大きくならないでほしいなぁ〜」
……なんて、幼子に対して、冗談でも言ってはいけません。
何故ならその子はあなたの期待に応えようと、成長を止めてしまうからです。
体はいやでも大人になりますが、その子の心は。
心はきっと、二度と大人になることは無い。
子供は純真。純粋。素直。無垢。あなたの全てをそのままに受け取る。
"言霊"という言葉もあるのです、どうか、どうかその口に出す言葉は、よくよく考えたものにしてくださいますよう。
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子供のままで
昔は、早く大人になれればいいのにと思ってた。好きなことしても怒られない、自由に何でもできる大人が羨ましかった。
その次は、まだ子供のままでいたいと思った。少しずつ、大人の世界で起こることも理解できるようになってきて、子供でいた方が楽しいことも多いんだなと思った。
その次は、早く大人になりたかった。苦しくて辛くて、だから強い大人になりたかった。心だけ大人のつもりで、でも本当は「つもり」という皮をかぶった子供だった。
大人になりたい、なりたくない、が交互にやってきて、なりたいけど怖い、寂しい、まだ子供でも…と思ってしまう、今日この頃。
私は年上の彼にいつも甘えてばかりだ。
頼りになるがゆえに甘えてしまう。
でも、子ども扱いされたいわけじゃない。
口を尖らせて拗ねてたら、
『何そんなかわいい顔して笑』
かわいいなと頭をなでなでされる。
「もうっ、子ども扱いしないでっ」
むぅー
『子どもだと思ってたら付き合ってないよ?
僕たち付き合ってるでしょ?』
って抱きしめてくれる。
『それでもこんなにかわいく甘えられたら甘やかしたいと思うし、頼りになる彼氏でいたいと思うからさ』
ね?っと顔を覗き込まれた。
絶対顔赤いな、私。
『そのままでいてよ。好きだよ?』
と微笑まれたら
「ぅん、」
いいのか、このままで、、
口が緩むのをちょっと堪えたけど無理で、
へへっ、、って彼に抱きついて今日も甘える女の子。
じゃあもう少しこのままで。
幼い子どもの目線は
私たちとは、違う世界に
見えるだろう。
欲しいものは、棚の上
見上げる空はずっとずっと高く
心がズキンと痛むような経験や
大切な、ママやパパを
ギュウっと抱きしめる安心感。
小さな小さな手のひらには、いつも
こぼれ落ちそうな宝物がある。
早く大人になりたいと…
そんな気持ちが芽生える
ずっとずっと前に、戻ってみたいなって
思うこともあるけれど。
けどね、おじさんになっても
おばさんになっても
実は、ちゃんとあの頃のワクワクや
手のひらの宝物は捨ててないんだよ。
ただ今は、無くさないように
宝箱にしまってるだけ。
鍵はちゃんと開いてるんだ。
【お題:子供のままで】
子供のままがいい。子供は大抵の事はなにをしても許される。
ずっと子供のままでいたいな
いっぱい走り回って
いっぱい遊んで
いっぱい勉強して
いっぱい怒られて
毎日が楽しい
友達と話したり
かけっこ1位とったり
それでみんなに褒められて
とても嬉しい気持ちになる
大人になったらそんなことがなくなるから
今のこの時間がとても大切なんだよね
やっぱり子供はすごいんだ
〈子供のままで〉
相応の澄まし顔を終えた後 笑い弾ける八重歯なつかし
#書く習慣 #短歌 20230513「子供のままで」
子供のままで、
いつまでも、
世の中の滑らかさを、滑稽さを、カラクリを
知らないで、小さな世界だけで生きている、
そんな子供のままでいたい、と、かつては、大人になりたい、と思っていた、とある大人は思った。
そうして今、
それなりの時を過ぎ、それなりの時間の味を知り、
深く緩やかに、
世を面白がる目を持ち、
世を嘆く目も持ち、
諦めたり、
自分を恥じたり、時には愛でることも稀にあり、
しかし、
かつて思い描いた通りの大人ではない、
いつまでも子供のままでいるような、
子供はいつまでも続き、
ただ、大人という皮膚を纏うだけなのか、と、とある大人は知った。
彼はそんなふうに生きた。
『子供のままでいられたらいいのに……。なんて、思ったことはありませんか? そんな皆様の声にお答えする我が社の新商品! "ユメカナーウ!"これを1錠飲めばたちまち幼い頃の自分に!』
こんな胡散臭いの、誰が買うんだ? なんて思っていた時期が俺にもありました。
「ねぇ、みてみてー! これっすごそうだよね!」
「子供のお前がこんなの買ってどうするんだ」
「ちがうよー。よくみて? ほら、ここ!」
「ん……? 『過去に戻りたい大人の方も、成長したい子供の方も、ユメカナーウはすべての夢を叶えます!』? どんな技術だよ……」
「ねぇかって? おねがいおねがい! これがさいごのいっこだったんだよ!」
「お前、そんな叶えたい夢があるのか?」
「んーん。でも、これのんだらおっきくなれるんでしょ? そしたらもっといろんなことできるようになるよね! おてつだいだってたくさん! ね、だめ?」
「……まぁ、志は立派だけどな。こんな見たことない成分しか入ってない薬かどうかも怪しいやつはお前には飲ませられん。なので買わない」
「えーー!? なんでなんで! かってよぉ!」
「そもそもお前、これ以上俺の何を手伝うつもりなんだ。飯だって洗濯だって掃除だってほとんどお前がやっているだろう」
「うー……」
「ほら、帰るぞ。今日は鮭が安かったんだろう? お前の飯が食べたい」
「……しょうがないなぁ」
子供というのはどこまでを言う
大人というのはどこからを言う
大人と言えど
それは大人のフリをするのが上手い子供で
実際は 大人なんて存在しないんじゃないかと思う
だとしたら
生後18年まで手を焼いて育ててくれるあの人達は
何に属するんだろう そう考えてしまえば
それは大人に値してしまうのかな とも思ってしまう
子供のままでも居たくないけど
大人になるのは少し怖い。
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『子供のままで』
影の濃い 5時のチャイムで 帰らない
子どものわたし は遠い向こう
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多分泣く 思って止めた お見送り
やっぱり行くよ 自転車、風
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車窓から 小さい君は 手を振って
遠くに消える ひとり電車で
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すこしでも 早く大人に なりたくて
だって誰かを 守りたいから