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夢を語り合った。ふたつ並べた布団の中、顔を見合わせて。夜が更けて外が白むまで、未来についての展望を飽きることなく語り続けていた。その二対の目は穢れも陰りもなくただまっすぐに柔らかな布団の中の仮初の暗闇を見詰め、こそり、こそりと滲む黒の中で細められる。潜めた声は大人たちに聞かれる事はなく、まるで二人だけの秘密基地のようだった。──今は、布団がふたつ並ぶことは無い。未来の展望が見えていた仮初の闇に、小さな星が浮かぶことも無い。

5/13/2023, 1:47:52 AM