『子供のままで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【子供のままで】
幼馴染みと思っていた彼女が実は許嫁だと両親に告げられた日から、もう十年以上経った。
大人しくて、直ぐメソメソと泣いて面倒臭い、気が合う訳でもない彼女。それでも子供なりに仲良くしようとしたものの、相手が五歳の女の子では流石に男同士の友達のようには上手くいくはずもなく。両親には言えなかったが、こんな辛気臭い女とは結婚したくないと当時思っていた。
だが思い返せば、俺の名を呼ぶ柔らかく優しい声は心地好く耳に響いた。人見知りの気がある彼女が初めて向けてくれた笑顔は、とても可憐で幸せな気持ちになった。
幼心に、結婚したらこの笑顔が毎日見られるのではないかと思った時、何だか嬉しくなって、結婚してもいいかなという気になったのを覚えている。
決して彼女が嫌いだった訳でも無関心でもなかったのだ。
初めこそギクシャクしがちな俺達だったが、いつの間にか自然に寄り添い側に居るのが当たり前になっていった。
時が経ち思春期を迎え、俺のある不誠実な行動から、彼女に距離を置かれてしまった。
その時初めて彼女が『居て当たり前の存在』ではない事に気付き、己の子供染みた言動を省み恥じた。
彼女はいつでも将来の妻たる自覚を持って俺に寄り添い、喜びも苦しみも分かち合おうとしてくれていた。なのに俺はその優しさに甘え、彼女の覚悟の強さを侮り無下にしてしまったのだ。
そして、いつも幸せな気持ちにさせてくれた彼女のあの笑顔を、俺は随分長い間見ていない事に今頃気付く。
今のままの俺では、いつか愛想を尽かされる日が来る。否、彼女に避けられているこの状況こそ正にその時なのではないか?
そう思い至った瞬間、抉られるような胸の痛みと耐え難い後悔、堰を切ったように溢れ出す彼女への恋心を自覚した。
自分の想いに今更気付いたところで、今までの言動を思えばもはや彼女に好かれる要素が己に微塵もなさ過ぎて、溜め息しか出ない。この期に及んで許され好かれようなど、虫の良い言い分だとも判っている。
それでも―――
幼い頃、俺に向けてくれたあの笑顔をいつの日かきっと取り戻してみせると心に誓った。
その為に俺は、彼女を慈しみ幸せに出来る男にならなければならない。
いつまでも子供のままでは駄目なのだと。
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※『俺』= 2023/4/6 お題【君の目を見つめると】の『君』
今、
子供の頃に戻れるなら
子供の頃に戻りたい
和菜さんと出逢ってからの日をまた
やり直したい
この現実も
この渋谷も
全部を
知らせたいな
あの頃に戻れたら
どれほど幸せだろう
ねぇ
恵
今は
どこにいる
泣いてるかな
必ず助け出すよ
君のために
君を救ってみせる
だから
「愛してるって言って」
「ねぇ、付き合えたよ。」
いつも通りの放課後。いつものファストフード店。
ポテトフライをつまむ君は、頬を染めてそう言った。
「おめでとう。よかったじゃん!」
「唯ちゃんのおかげだよ」
「あら、じゃあお礼はアップルパイでいいよ」
「調子いいなぁ……」
財布片手にしぶしぶカウンターに向かう君
後ろ姿を目で追いつつ残ったサイダーをズズッと吸い込んだ。
「はいどうぞ」
「悪いねぇ奢ってもらっちゃって」
「唯ちゃんにはほんとに感謝してるからね」
「…明日からは彼氏と帰りなね。電車、一緒なんでしょう?」
りんごみたいな顔して、君はこくりとうなづいた。
アップルパイはもうすっかり冷めてしまった。
一口一口、うんざりするほどに甘くて、必死で食べるからパイ生地はぽろぽろぽろぽろこぼれ落ちる。
君の幸せを願うよ
でもやっぱり、
子供のままでいたかった。
少しの時間でいいから
子供のままで
あの頃のように
子供のままで
ずっと子どものままでいてほしかった。
色眼鏡なんてかけないで、純粋に世界を見てほしかった。
何も知らないからこそ、すべてが新しくて、何でもできると信じて、怖いものなんてないようなそれすら、愛しかった。
大人になって、君が傷つくくらいなら、ずっと子どものままでいてほしかった。
何も考えずに
大人の言うことを聞いてたときが
幸せだったんだろうか
それとも
今の私のように
誰の言うことも聞かないのが
幸せなんだろうか
でも
子供のまま
変わらない生活が
一番楽なことは知っている
できることなら
子供のままでいたい
何も考えずに
自分の好きなことだけをできたなら
それは
なんと幸せなことだろうか
それとも
不幸というのだろうか
お題:子供のままで
タイトル:変わりたくない
子供のままでいられたら。そうやって何度君は吐き出してくれただろう。
何も知らないままでいられたら。そうやって何度僕の前で泣いてくれたんだろう。
「なんでこんなに全部怖いんだろう」
僕はまた相槌すら打てずに、君のグラスが空になる。
「……おかわり持ってくるよ、いつものでいい?」
「うん、いつものがいい……」
君の好みはずっと僕が1番知ってる。昔のままの子供舌、最近分かったお酒好き。それからなんとなく僕がリキュールを揃え始めて、ちょっとしたバーみたいになった頃に君が訪ねてきて。
「えっ……なにこれ、こんな趣味あったの?」
「君がずっと僕にメッセージ送ってきたんじゃん」
「そういうこと!? 私の事好きすぎでしょ〜」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、並んだ瓶のひとつを手に取る。
「これ好き!」
「やっぱりそうだと思った。昔からそうだよねぇ、甘いのばっかり」
「甘いのがいちばんおいしいからいいの! それよりこれ飲みたいな!」
「ミルクでいい?」
「もちろん! っていうか他にあるの?」
「あるよー、そうだなぁ……ソーダと割ったり、ウォッカと混ぜたりその上に生クリーム浮かべたり」
「コーヒーにソーダ合うの!? へえ、ずいぶん詳しいねえ、もしかして結構勉強した?」
「全部独学だよ、今の時代ネットって便利だから」
軽く言いながら、自室にあるカクテルノートの事を思い浮かべる。あれは絶対見せられない。なにより格好がつかない。
僕の作るカクテルがお気に入りになったようで、度々家に来るようになった。ひとり暮らしだし嬉しい限りだが、勘違いしてしまいそうだ……。
「ねえ、いつまで作ってるの」
「うわあ!? ごめんごめん、いま持ってくよ」
君はいつの間にか近づいていて、至近距離で話しかけてくる。
「何考えてたの、っていうかなんで一緒に飲んでくれないの」
「え、いや、それは、その……」
「はい、もういっこ作って」
「はい……」
渋々同じものを作りながら、様子を伺う。これはもしかして。
「おまたせしました」
「はい、となりすわって」
……まずい、やっぱり多分この子相当酔ってる。
「はーやーくー!」
「わかったから落ち着いて……」
「おちついてます!」
「飲ませすぎたかな……」
「なにをぅ!?」
そう言いながら脇腹をつついてくる。ボディタッチが多い、声が大きくなってる、何より目が据わっている。これは完全に飲ませすぎた。
「これが最後の一杯にしようね」
「えー、もうちょっと居たい」
ついでに普段臆病なぐらい慎重なのが無くなってる。かわいい。
「……だめ?」
上目遣い、腕を抱きしめて甘い声。普通の奴ならきっと恋に落ちる、だけど僕は分かってる、口元がにやついていることを。……たちの悪い悪戯だ。
「いいけど……。その代わり僕に何されても知らないよ?」
「きゃーおおかみこわーい」
軽口と冗談を交わしながら夜が更けていく。僕と二人の時だけは、顔を合わせて笑いあえる。悪戯みたいに生きていこう、ずっと子供のままでいられるように、無邪気なままでいられるように。
子供のままでいたい。
大人になる前に死にたい。
2人で出かけたあと、居酒屋に寄ると帰る前に毎回そう話す友達がいる。
酒が飲めるようになる前は咳止めをODしていた友達。
その時よりはまだ、お酒に頼っている今の方が健康にいいのかな、と思う。まだマシくらいだけど。
私を一緒にお酒を飲む相手に選んでくれて、とても嬉しい。
大人になっても私の事ずっと頼ってくれていいのに。
#子供のままで
【子供のままで】
子供のままって、内面の事?それとも成長的な事?
大人になっていろいろあるから子供に戻りたい。
社会に出て酸いも甘いもいろいろ経験したからこそ、
子供のままがいいと、いうのは分かる。
童心に帰るともいうし。
内面の場合は、子供の頃から成長してないって意味にもとれるし、純粋な心を持つ人ともとれなくない。
大抵の大人は、純真無垢の子供のままではいられない。
大人と子供のラインは曖昧だけれど、
いろいろ経験する中で成長するわたしたち人間は、
良いも悪いも、見たり聞いたりして知るだろう。
その中でどれだけの人が子供のまま素直で真っ直ぐに、
成長するのだろう。
それでもわたしたちはきっと
そういった大人になりたいと願っている。
小さい頃は早く大人になって自由が欲しいって思ってた。
だけど今はもうずっと子供のままでいたい。自由を手にするには責任が伴うって知った。あれだけ欲しかった自由は、いざ手に入ると私には大きすぎて逆に動けなくなった。
ずっと縛られたままで、誰かに守られて生きていきたかった。
最近悩むことが増えた。
勉強とか人間関係とか恋愛とか...
子供のときはそんなこと無かったのになあ
毎日のように友達と楽しく遊んで喧嘩しても次の日には何も無かったかのように話ができて。
だけど今は違う。
子供の頃に比べてたくさんのことを学んだ。だけどその分悩みも増えた。
大人になってもずっと心は子供のままでいられたらどんなに楽しいかなぁ
貴方の前では
もう少し
子供のままでもよいですか?
お題
子供のままで
明日、私は“大人”になる。
「子供は13歳になると、指定のサナギセンターに行き、そこで処置をしてもらうことで、大人になることができます。処置といっても、あなた方はカプセルの中でしばらく眠るだけですので、何も怖くはありません。それよりも、明日大人になった皆さんは、それまで出来なかった様々なことが出来るようになるのですよ。本当におめでとう」
担任教師の言葉は、今更言われずとも誰だって知っていることだ。
先週の授業でも『大人になったら』というテーマで作文を書いた。今教室の後ろに貼られているクラスメイトの作文には、見るまでもなく、“大人”になる喜びや誇らしさ、抱負などが書き連ねられていることだろう。
私は異端なのだ。
誤解しないでほしいのだが、別に大人になりたくないわけではない。ただ、子供でいられなくなるのが、もっと正確に言えば、いまの私ではなくなるのがたまらなく嫌だ。
カプセルに入ってコードに繋がれ、次に目を覚ましたとき、本当に私のままでいられるのか分からない。誰も教えてくれない。大人とは本当に、子供の延長線上にある存在なのだろうか。
何かを忘れている気はするのに、自分が何を忘れてしまったのか分からない時の、あんな黒く濁ったモヤモヤに苛まれるのが怖い。
大人になりたくないんじゃない。全くの別物になっていると気付かずに生きるとしたら、そんなおぞましいことはない。
だから、お願いします。子供の私を、どうか殺さないでください。
(子供のままで)
子供のままで
もしも…なんて今更仕方ないけど…
小学生の時、両親の離婚する少し前に、一度父親が不在の日に、母親に連れられて、母親の実家に行った。夜行列車で一泊して、東京で乗換えて半日かけて。そして一週間位して父親に迎えに来て貰い帰った。久しぶりに学校に行くと、担任に呼ばれ、「お前がしっかりしないから、両親が…」と説教された。その後は両親からそれぞれに「お前さえ居なければ」と責められ、結局母親は家を出て行った。その後は父親の元で暮して、三十近く迄、毎日のように、存在を否定され続けた。あれから何十年か生きて来たけど、今でもその時の声から逃げられない。
あなたってほんと子供みたい
しかも未就学児ね
甘えたり拗ねたりちょっかい掛けたり
普段のあなたは
強面で強くて男らしくて堂々としていて
皆が一目を置く立派なおじさまなのに
なんだって私の前でだけ
いつまでも子供のままなのかしらね
そんなあなたが誠愛おしい
いつまでも無邪気で
天真爛漫なあなたと手を繋ぎたい
早く大人になりたいと思っていた
大人になれば自由になれると思っていた
大人も不自由・理不尽は数え切れないけれど
「学校」という集団生活から解放されたのは
とても安堵したことを覚えている
友達ともすっかり疎遠になってしまい
時間を忘れて遊び続けていられた頃が
たまに恋しくなるけれど
子供のままで
子供の枠って
子供にしか分からない
小学生のままで と
中学生のままで は
今を生きる人には
全くの別物だったりする。
現に私がそうだったり?
部品のない自転車の
ネジの一つに代わっただけ
ほんの少しだけ
そうしていただけ
もっと合う部品があるけど
今は手に入らないから
その間だけ入れておくね
私だってもっと合う自転車があるはずだと
わかっているから
いつか取り替えられると
わかってはいるから
ここは
錆びついた部品も問わないみたいだから
居心地がよくて
いざとなると
わがままを言いそうになる
でもわかってる
進めないんだね
私の部品は代替品だもの
いつかは必ず
入れ替わるなにかが
あると知ってる
だから、だから
5/11
私は小さい頃から変な事ばかりしている子だった。
その頃、銭湯に行っていたので、母は小さい弟を抱いて「お姉ちゃん、バスタオルをきちんと畳んで掛けてきてね」と言って先に入って行った。
私は言われた通り、バスタオルを几帳面にきれいに畳んで、腕にレストランのボーイよろしく掛けてお風呂に入って行った。
すると母が、妙に優しく「……服が入っているかごに、掛けてきてね」と言った。
そこで気がついた。そうだ、いつもかごがあり、皆、そこに脱いだ服や新しい肌着を入れ、上に見えないようにバスタオルをかけていた。
いつもやっているのに、何故その時そんな事をしたのか、一番知りたいのは自分だ。
小学校でも、運動会などで、入場が対角線に赤組のクラスと白組のクラスが、端から入場するのだ。
私は間違えないように、先生の説明をよく聞いて、翌日並んで待っていた。15分位経ってから、まわりを見ると知らない子ばかりだった。何故か分からなくて泣きたくなった時、「あ!やっぱり逆側にいた。先生が呼んでるよ」と、クラスの友達が迎えに来てくれた。
地獄に仏とはこの事だ。
ちゃんと聞いてるはずが、私はそんな事ばかりしていた。
でも、こんな私でも『大人』というものにいつかなったら、ちゃんとするのだと思っていた。そう信じて疑わなかった。
私は今は、世間的には立派な大人だ。
でも、違うのだ。私の思っていた『大人』というのは、変な失敗なんかしないでもっときちんとしているものだと思っていた。
私は今でも、相変わらず変な事ばかりしている。よく母に「困ったねぇ、もう○才なんだからいい加減、懲りなさいよ」とよく言われた。
私はかなり手酷い思いをしても、ケロっとすぐに忘れる。
そしてまた、同じ事をする。
そして、ようやくわかった。
きちんとした子は、きちんとした『大人』になるのだ。
だから私は、思っていた『大人』になれないのだ、という事を。
考えてみたら、変な子だった私が夜になると寝て、朝になると起きて生活をする、という事を延々と繰り返して来た結果が今の『私』なのだ。
みんな、子供が大きくなっただけなのだ。
だけど、どこから違っていったのだろう。
線を一本引いて、分度器でほんの5度に印をつけ線を引いていく。
最初は大した差はないが、先に行けば行くほど、どんどん差が大きくなっていく。
つまりはそういう事なのだ。
線を一本引いてその先にあるのが、私の思った『大人』なのだろう。
ところが、私は変な子だったのでたぶん5度ばかりズレてしまったのだ。
だから私は思い描いた『大人』にはなれなかった。
見た目は一応大人で、社会的にも普通に知り合いと会えば、ちゃんと挨拶もするし普通に会話も出来る。
だけど、その中身は昔の『変な子』がいるままなのだろう。
その代わり、普通、大人が思いつかない事を思いついたり、たまには役に立つのだ。
私の中の『変な子』と仲良くやるしかない。
だって、その『変な子』は紛れもなく私自身なのだから。
子どもの頃に、自作の歌を歌ってた時
自分と違って
勉強もスポーツも
何でも出来る兄が変な目で見たの
なんか辛かった
自分って変なの?ダメなの?って
けど
気持ちを表現してる人達、世界
ってキラキラしてるって
私は変わらず
ずっと思い続けて大人になったのさ
今の私がもし、
青くて丸い猫型ロボットちゃんと
タイムスリップ出来るのならば
2人?で
そんなことないよって
ぎゅってしてあげたいんだけどな
✳︎子どものままで✳︎