奇跡をもう一度』の作文集

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奇跡をもう一度』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

10/3/2023, 7:39:32 PM

マルスはニルヴァーナ修道院附属聖堂騎士団の団長という身分であったが、個人としては神への信仰心は薄かった。もちろん、弁えているので、口にしたことはなかったが。
 孤児となった自分を拾ってくれた恩師が、修道院長であったという縁で、彼は見習い修士としてニルヴァーナ修道院に入った。そのまま成り行きで修道士となった。もっと学びたいことがあるのだと恩師を説き伏せて、しばらくは王都の大学院で神学や修辞学など、種々の学問を修めて帰ってきた。
 彼が王都から戻る頃、各地に魔物の出没の報が出始めており、各国が自国の防備に力を入れ始めるようになった。ゆえに、修道院もせめて修道院領内の領民を護る力が必要だと修道院長を説得し、聖堂騎士団を立ち上げた。所属する者はニルヴァーナ修道院の修道士たちで、マルスが当初想定していたときより人数が増えている。
 まあ、騎士団というのは名ばかりで、やっていることは傭兵のようなもの。依頼を受けて派兵し、依頼を終えて報酬を貰う。
 マルスは団長でもあったが、何かの依頼に対して先鋒を務めることも多々あった。どちらかというと、各地を飛び回って依頼をこなしているのは、マルスであった。
 彼には一つどうしても叶えたい願いがあるゆえに、各地を飛び回っている。それは、幼少期の頃に別れてしまった幼馴染との再会だ。
 彼女もマルスと同様に孤児だった。修道院の門の傍に捨てられていたのを、修道院長が拾い、育てていた。マルスとは特に仲が良く、彼女と共に過ごした日々は、彼の中での大切な思い出だ。
 ある日、彼女は彼女の養父母となった夫妻と共に、馬車に乗って南西部の方向へと出発していった。それが最後に見た姿だ。それ以来、杳として消息が知れない。
 あちこちの依頼を受け、こなし、報酬を得て、信頼を積み重ねていく。そうして培った人脈を駆使して探しても、全くと言っていいほど消息は掴めず、手がかりすらなかった。
 マルスは捜索が空振りに終わるたびに、彼女の無事を神に祈らざるを得なかった。場所さえわかるのであれば、直接、彼女の無事を確かめ、また護ることができるのに。そのような素朴な願いの祈り先として、彼は神を信仰していると言えよう。
 彼女の消息が不明になって、十年が経ったとき、たまたま修道院に立ち寄った旅の一行にいた女性に、彼は彼女の面影を見た。思わず彼女の名前を呼ぶと、その女性は立ち止まって振り返った。幼少期の彼女と見た目が全然違っていたが、その顔を見て彼は確信した。
「……マルス?」
 ああ、と頷くと彼女はわなわなと震え始めた。彼女の手を取って強く握り締めると、マルスは言った。
「また会えて、言葉では表せないほど嬉しいよ、マーシャ。君が生きてくれていてよかった」
「わっ……わたしも、嬉しいです……っ」
 そう言いながら、泣き出した彼女を彼は強く強く抱きしめた。
 神を強く信仰していないゆえに、彼は奇跡という言葉があまり好きではなかった。特別という言葉への修飾語のようなものと思っていた。しかし、偶然と偶然が重なり合った結果、彼女と出会い、そして再開できた。これを奇跡と呼ばずして何と呼ぼう。
 それ以外、彼は考えを改めた。何か人智では説明の及ばない何かの概念として、神を信じるようになったのだ。

10/3/2023, 4:48:02 PM

「奇跡をもう一度」
ごめんね。
貴方と出逢えて、貴方と一緒に時間を過ごしたことが奇跡だと気づけなくて。その幸せを十分伝えられなくて。ごめんね。
どうか…どうかその奇跡をもう一度。

10/3/2023, 11:21:52 AM

もし過去に戻れたらどうする?未来が見えたって変えられるような気がしないや。みんなが脇役じゃないから。
 そんなもの乞うなら生まれてこなければよかった。運命の資格がないと出会えないって信じているなら、たぶん、どうにもしてあげられない。
 本当に出会った人同士は、二度と別れたりなんかしないと思うよ。かつての登場人物が、いなかったことになったりなんかしないでしょう。光景は思い出に似ていた。雪くらいの厚さで胸に積もるような余情だった。それでも、奇跡をもう一度。必然だって教えてほしい。

10/3/2023, 10:49:20 AM

遊女である私が、彼と普通の恋をしたのは奇跡だった

だろうか。

私がいるのはとても自由な店で、花魁はお忍びで町に

出てもいいことになっている。

私はそれを利用して、息抜きに、よく町に遊びに行って

いた。まだ新人だったので、年上の花魁は多めに見てく

れていた。

そんなある日、彼に出会った。外の町をよく知らなく

て、ガラの悪い男に絡まれたのを助けてもらったのだ。

高そうな着物を着て、とっても整った顔をした彼は、

ここ一帯の領主の息子だった。宗正といった。

私は名前を聞かれて、とっさに朝子と名乗った。芸名を

少しもじった偽名だった。彼と私はあっという間に

仲良くなり、度々外で会うようになった。姉貴分の花魁

は、少しおしゃれをして出かける私を不審に思っていた

はずだけど、何も言わなかった。

彼と会うときは必ず茶屋だった。遊女の私達と同じで、

領主の長男である彼もまた窮屈な生活を送っていた。

彼は会うたびにこんな生活はもう嫌だだとか、重圧に耐

えきれないかもと言うくせに、最後には領主としての

心構えとか、領地の管理方法について目を輝かせて話し

ているのだった。私は遊郭に来る欲望にまみれた男達と

違って、一生懸命で、責任感があって、将来の希望に溢

れている彼をいつの間にか好きになっていた。

私も、彼が私を憎からぬ思っていたのを感じていた。


だけど、私達のささやかな恋はいくつもの障害に阻まれ

ていた。

まず、私が若い遊女であったこと。まだ借金が多く残っ

ていて、さらに花魁である私は身請け金がとても高い。

とはいえ、領主の息子である彼には問題ないくらいの

額であった。けれど、次期領主だからこそ、格が釣り合

わず、周りの人達に反対されるのは目に見えていた。

彼には許嫁もいた。

2つ目は、彼が色を売る商売を毛嫌いしていたこと。

彼は遊女が大嫌いだった。色を売るなど下品なことを

するくらいなら死ぬと、本気で考えている節もあった。

一度など、私が遊郭のある方から来ると、あそこには立

ち寄らない方がいい、下賤の空気に染まってしまうぞ、

と言われたこともある。

私はそんな彼に遊女であることはとてもじゃないけど

言う気になれなかった。

3つ目は花魁には普通の恋が許されないこと。

店の花形である花魁は、普通の恋などただの醜聞だっ

た。それだけで女の価値が下がり、買値も下がってしま

う。そのため、店側は花魁の生活を厳しく管理するの

だ。

それらの歪みから目を背け、私は町娘としてかれに会い

続けていた。彼からは結婚の話が出ることもあった。

たとえ身分の差があっても、結婚しようと。私はやはり

言えなかった。頬を染めて力説する彼にいつも言葉は

口の中でしぼんでしまった。

だが、二重生活はそう長くは続かなかった。

あまりにも出かける頻度が多いものだから、とうとう店

側が気づいたのだ。

いつものように二人で茶屋でお団子を食べていたら

体が山のように大きい男がやってきた。

男は、私の店、天津屋の用心棒だった。男は私の着物の

襟を掴み、肩に抱えた。体が浮く感覚と物のように扱わ

れた怖さで涙が出た。上から見た彼はなんだか、小さく

頼りなく見えた。

「おい、それは私の連れだ!手を離せ!」

彼は私のために叫んでくれた。自分より倍の大きさのあ

る男に果敢に挑んだ。

「何を言っている。これは花魁だ。規則破りの遊女だ」

用心棒が言ってしまった。

「遊女…?朝子は普通の女のはず…」

彼は私の顔で分かってしまったようだった。

「そんな…!」

彼はこの世の終わりのような顔をしていた。

何しろこれまで町娘として接した女が、遊女だったの

だ。

彼は担がれていく私を呆然と見ていた。

最後の希望を託して私は叫んだ。

「ごめんなさい!私はあけぼの!もう一度会ってくれる

のなら、どうか天津屋へ!」

彼の返事は聞こえなかったけど、私は泣きながらただ叫

んだ。

声が枯れるまで叫んだ。


遊女として、生涯最愛の男に最後の告白を。







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彼は七年経った今も会いに来ていない。当時18歳だった

私ももう25歳だ。そろそろ身請けを考える頃である。

叶わない夢と知っているけど、

私は彼に迎えに来てほしい。

遊女の私が普通の恋をした奇跡みたいなあの頃。



お願い、叶うならば私に奇跡をもう一度。

奇跡のような、普通の恋をもう一度。


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奇跡をもう一度

「あけぼのの恋」

10/3/2023, 10:33:43 AM

あまり贅沢は言えません
奇跡はなかなか起こりません
生きていることが奇跡です
もう一度もう一度と
何度も奇跡を願ってしまう
欲深い生き物です

10/3/2023, 10:09:44 AM

考えでみたら、生まれて生きてるだけで
奇跡そのもの。
そして出会う人達も奇跡。
その中から自分が好きだなって
思える人に出会えるのも奇跡。
その中から自分を好きになって
もらえる事も奇跡。
人生は奇跡の連続、積み重ねで
できてるように思う。
今こうしてここで生きてる事、
職場で出会う違う世代の同僚、
違う国の人達と出会って、同じ
時間を過ごしてるだけで奇跡。
奇跡をもう一度よりも
この素敵な奇跡を何度でも楽しみたい。
人生をより豊かにしてくれる奇跡を
噛み締めて大切にしていきたい。
奇跡は何度でも。。。。

10/3/2023, 9:58:25 AM

「奇跡をもう一度」


最前列のチケットが手に入っていた舞台は、
コロナの影響で中止に。
最前列なんて滅多に当たらないし、
地方民だから頻繁に通えるわけでもない。

奇跡と言うには小さいけれど、
「もう1度」と夢見る私である。

10/3/2023, 9:48:56 AM

奇跡をもう一度


 どうか、神様。
 公園のベンチに座った私は、心が千切れそうな思いに強く目を閉じる。
「奇跡なんて望んだことはなかったな」
 目を開けるとあなたは背中を向けて立っていた。
 その言葉に笑うべきなのか、泣くべきなのかわからない。そうだね、あなたは何でも自分の力で切り拓く、そんな人だもの。
 その時あなたは私を振り返った。
「……でもそれは僕が、奇跡をもう一度と願うほどの痛みを知らないだけだった」
 少し口ごもりながらあなたはそう言って、私の手をとり、強く握り締めた。



#45

10/3/2023, 9:33:54 AM

俺は今日高校の試験だ。 
俺は昨日の夜から頑張って勉強した。今日は試験だ!とても緊張しすぎドキドキする。そしたら隣のこも俺と一緒の試験を受けるみたいだ。その人はとても顔が真っ赤な女子だった。その子が話しかけてきた。とても緊張しますね。と俺はそうですね。と言った。なぜか知らないけどとてもドキドキした。  
                   千冬

10/3/2023, 9:28:26 AM

#奇跡をもう一度

それじゃあ、またどこかで-

私は目を覚ました。
ここはどこだっけ。
頬は、
顔は雨にでも打たれたようにびしょ濡れだ。

あの人は、誰だった?

長い時間だったような、
一瞬だったような。
今日話した気もするし、
もう随分前に話した気もする。

夢…?
あの人は-

そうか、きっとあの人は

...また会えたらいいな。

10/3/2023, 9:22:16 AM

【奇跡という名の災厄】

ある国に自然を愛する双子の姉妹がいました。
2人は仲が良く,どこへ行くにもともに行動をしていました。
そんな2人は不思議な力を持っており,奇跡を起こし万物を癒やすことができました。
しかし,2人の力を知った国王はその力を私利私欲のために使い,双子を離れ離れにしたうえで閉じ込めました。
それから数年後…,双子の国と他の国とで戦争が起き双子は負傷した兵士を癒やすため無理やり戦場に連れていかれました。
戦場に連れて行かれた双子が目にしたのは,草花であふれていた面影を失い焼け野原と化した故郷でした。
人々が泣き叫ぶ声,肉や木の焼ける臭い,鉄と鉄がぶつかり合う音…。
今までに感じたことのない怒りと悲しみがフツフツと湧き上がり双子をつつみました。
そして、双子は奇跡を起こしました。
戦場の音をかき消すかのように雨が降り,地表から新芽が出,すくすくと育ち全てを飲み込みました。
もう、誰も双子を止めることはできません,2人が愛したモノ全てが消えてしまったのだから…。
静寂となった元戦場は青々とした緑が生い茂り,動物と植物が共存する美しい森となりました。
双子の行方を知る者はもう居ません,しかしただ1つわかることはこの森に入った者は誰1人戻ってくることはなく,誰かが立ち入るたびにその森では人型の奇妙な植物が生えると言うこと。

10/3/2023, 9:18:54 AM

「奇跡をもう一度」

君に奇跡をもう一度…。

君は小学五年生の時に、小学一年生の子を、助けて、事故に遭ったって言ってたよね。それも、0,0001%でしか生き残れなかったと言う…。だけど、君には奇跡が起きた。君は0,0001%で生き残れたんだ。その話を聞いたときはもっと自分の身を大事にして!と言ったけど僕は君を尊敬していたよ。
そして、君は神様に好かれているんだと。
だけど、そう思えたのはついこの前までだった…。
君はまた誰かを庇って事故に遭ったんだ。その時はあれほど注意したのに…。どうして…と思っていた。だが、医者から生き残れる確率が50%と言われた時はきっと大丈夫だろう…君は神様に好かれている…きっと大丈夫…と現実を見なかった。でも…不運が重なって君はこの世を立ってしまった…。あの時もっとことの重大さに気付いていたら…と思う日が続いた。これからは後悔しないよう、誰にでも寄りそい、相談に乗りたい。できるなら、一生懸命相手を思いやり助けたい…と。


今回久しぶりに書いたので下手くそかも知れません…きゃーこんなのを載せるなって話ですよね…………トホホ…

10/3/2023, 9:13:54 AM

ピーッ、ピーッ、ピーッ。「誰か先生呼んで!」「手術室の手配出来た!?」「はいっ、あと数分で──」
 幾度聴いたともしれぬ騒音が鼓膜を貫く。
 ベッドサイドモニタのアラーム音。怒鳴りにも近い、看護師たちの緊迫した声。その中心で、沈黙を貫くひとりの少女。ああ、耳が痛い。
 少しして、白衣を身にまとった男性医が訪れる。心なしか早足だった。
「患者の容態は?」
「心臓が止まってから四分です! 未だに心拍、意識ともに戻りません!」
「手術室の手配は?」
「あっ、空きました! C室いけます!」
 患者の少女──私の娘を乗せたストレッチャーが、ガラガラと音を立てて目の前の扉へと吸い込まれ、閉じられる。
 私は、両手と瞼にぎゅうと力を込める。
 嫌な汗が背中を伝うのも、胃のあたりに鈍い痛みが走るのも無視して、ただ、一心不乱に願った。
 もしも、この世に神様とかいうものが本当にいるなら、どうか聞き届けて欲しい。
 もう一度、あと一度だけでいい。
 あの子を救ってくれ。
 かつて寿命宣告をされた幼少の私が救われたように、あの奇跡をあの子にも。


▶奇跡をもう一度 #26

10/3/2023, 9:06:45 AM

あの流れる雲にもう一度出会う確率はどんなものだろうか。何千万分の一、あるいは何千億分の一かも知れない。
 そもそも、科学的に考えれば東へ東へ流れるから、再会なんて出来やしないのだけれど。
 もし、もう一度出会えたなら。
 それは奇跡と呼べるのではないだろうか。

10/3/2023, 9:03:59 AM

時代や性別や人種が全然違っても
体の周りにぼんやり銀色の膜みたいなもがあり、内側から発光してるみたいな人がいる。

今までに2回だけ見たことがある。
1人は多分、男の赤ちゃん。
もう1人は、おばあさん。
白い肌、白い髪。薄い色の瞳。
混雑した地下鉄の席に座ってた。
前に立った時目が合った。
すごく懐かしい感じがした。
声。

迫害されたこともあったのよ、昔はね。
今は何をされてるんですか?
何もしてないわ。ただ生きてるの。
生き通すのが今回のお役目。
誰もがそうなんだけどね。
あなたもよ。
私も?
そう。ただここにいるだけでいいの。
それだけでOKなのよ。
何かに成らなければ自分には価値がないとか、決して思わないで。
私たちは今、この瞬間ここにいる。
真実はこれだけ。
それは奇跡でもなんでもない、ごく自然なことよね。
それなのに難しく考える人ばかりでねえ。だからこうしてただ座ってるの。
あなたにも難しい?
ただここに居ること。

「えっ…」
思わず声に出したその時、扉が開いた。
私は人波に流され、ホームに押し出された。
振り返ってその人を探す。
動き始めた車両の窓に、白い髪と白い横顔がちらっと見えた。
伝えなきゃ。伝えたい。
私…ここにいます。
確かに今、ここにいます。

10/3/2023, 8:56:21 AM

待つあいだ不安にさせるけど

ただ俺を信じていて…

胸に手を当てて誓えるからさ…

俺を信じていて…


くったく無い笑い顔も

時折 酔って鬱ぐ顔も

全部焼きつけて行くよ…



きっと…いつの日か…

溢れるほどの愛を抱えて迎えに来るから

必ず来るから…

そして離さないから…

絶対離さないから!


2度と離さないから…

幸せになるチカラつけて帰って来るから

待ってて…

かってばかり…ごめん…

いつもごめん…

愛してます

何処に居てもキミを思ってます


愛しい美佐子さんへ
……

佐藤竹善 いつの日か

10/3/2023, 8:32:20 AM

まさかの偶然
もう一度キミに会えたのに
僕にはなにも出来なかった
ああ、どうか奇跡をもう一度
今度こそ、その心を取り戻してみせる


(奇跡をもう一度)

10/3/2023, 8:20:25 AM

死んだはずだった。
いつも通りのパーティで魔王討伐のレベル上げの為クエストをこなしていたら自分のレベル以上のドラゴンが現れそいつに炎で殺された。



最後に見えたのは魔法士の彼女が泣きそうな顔でこちらに手を伸ばしていた姿だった。





目が覚めた。
明晰夢でも見たのだろうか。酷く嫌な夢だった。

そう思いながら重い体を起こす。

いつものように酒場に行き仲間たちと簡単なクエストを引き受けた。
夢で見たクエストとは違うクエストで仲間たちとの会話内容も全てが違かった。
少しほっと息をついた。


いつも通りクエストをクリアし帰路に着く。
盗賊は「美味そうな肉が手に入った」と早く帰りたそうにし、
精霊使いは「酒も用意しとく」となけなしの金を数え、魔法士の彼女も「今日でレベル結構上がったよ!」

と嬉しそうに話しかけてきた。

ふと前を向くと大きなドラゴンが居た。夢で見たはずのドラゴンが。咄嗟に剣を構えても、避けられるはずもなかった。


夢じゃなかった。本当だった。嗚呼自分はまた死ぬのか。




そう炎が目の前まで来た時、横からぐっと引っ張られ自分の代わりに彼女が炎の中に消えていく。

理解が出来なかった。

自分はここで死ぬ運命だったんだ。

いや、たしかに死んだはずだ。

呆然と立ち尽くすしかない仲間たちと、ただ目の前に残っているのは、焼け落ちた彼女の亡骸と彼女が使っていた魔法杖だった。


おかしい。絶対におかしい。

奇跡、奇跡よ。もう一度だけ。

彼女を生き返らせてくれ。自分を生き返らせたみたいに。ああ神様。




主人公の勇者はモブの魔法士なんかに起こりもしない奇跡を願う。


【奇跡をもう一度】

10/3/2023, 8:12:24 AM

「赤い妖精と白い妖精」

女の子は、お友達と一緒に妖精の絵本を読んでいました。絵本の表紙には、赤い妖精のラブと白い妖精のエンジェルが描かれています。
「女の子ちゃん、ラブとエンジェルのどっちが好き?」
お友達の一人は、女の子に質問しました。
「私は、エンジェルかな?」
女の子は、エンジェルの外見が好みだったので、エンジェルが好きと言いました。
「エンジェル?!」
「エンジェルって、あの世の使いじゃん!」
「ラブの方が良いよね?愛の妖精だし」
ラブが好きと答えたお友達は、女の子以外のお友達全員に確認を取りました。
「私も、ラブが良いなぁ」
(私、ラブは性格悪そうだから、あんまり好きになれないんだよね…)
女の子は、何でラブがこんなに支持されているのか不思議に思いました。
「アンタ、そんなに死の妖精好きなの?」
「愛の妖精の方が良いに決まってるじゃん!」
「悪者こわーい」
お友達全員は、女の子が異様に思えて来て、次々に自分の思ってる事を言い始めました。

「コレって、赤い妖精と白い妖精だよね?」
教室に入って来た女子の学級委員長は、女の子達が読んでる本を見ました。
「委員長、女の子だけがエンジェルが好きみたいだよ?他のみんなは、ラブが良いんだけどね」
「な、何ですって?!エンジェルって、人間を始めとする生き物を、あの世に連れていく悪者だよ?死神みたいな悪さするオバケの仲間好きなの?女の子ちゃんって、悪い子じゃん!」
委員長は、女の子に思いの丈の偏見をぶつけました。
「大変、たいへーん!」
委員長は、そのまま走りながら教室を出ました。
「みんな、ヒドイ…」
女の子は、泣きそうでした。
「そりゃ、アンタが悪者好きだって言うからじゃん」
お友達の一人はツッコミました。

元々、ラブとエンジェルは、仲良しこよしの設定で、エンジェルに裏切りとか敵と言った悪役の設定はありません。でも、何故かエンジェルは、子供達から悪役扱いされているのです。
「何で…?エンジェルは、悪い奴じゃ無いじゃん…」
一人で帰っている女の子は、涙を流していました。

「おーい、悪者が来たぞー!」
学校に登校して来た女の子に、男の子は黒板消しを投げつけました。
「何すんのー!」
「悪者は成敗しないとな!」
この日から、女の子はクラスメートからイジメられるようになりました。
「悪者!さっさとプリント配れ!」
「悪者!死刑囚なんだから焼却炉掃除しろよ!」
「悪者!漫画雑誌の付録よこせ。ストレス発散にちょうど良いんだよな」
「悪者!トイレ掃除一人でしろよ」
「悪者!お前な…」
「悪者…」
「みんな、ヒドイ…」
女の子は、何でこんな理不尽な目に遭わなきゃ行けないのと悲しい思いをしていました。

ホームルームの時間、誰が教室の花瓶を割ったかで犯人探しをしていました。
「犯人は分かってる。顔を伏せて手を上げなさい!」
先生は、キツイ口調で犯人に白状させようとしていました。
「先生、その必要はありません。犯人は分かっています」
委員長は、席を立ち、女の子に指を指しました。
「犯人は、女の子です!」
女の子は、突然の事で戸惑いました。
「わ…私じゃありません!」
女の子は、自分じゃないと言いました。
「委員長が言うからには、正しいんじゃねーの?」
「委員長の方が、お前より賢くて地位が上なんだよ!」
「委員長が、正しいに決まってんだろ!」
男子達は、次々に反論しました。
「悪者、謝れよ!」
「ううっ…ごめんなさい…」
女の子は、謝りました。

中学に上がり、女の子はやつれて、顔は痩せコケて、腕は傷だらけでした。女の子に友達は一人も居なくて、親二人から毎日怒鳴られる毎日を送っていました。
「この親不孝者が!勉強しないからイジメられるんだぞ!勉強してやり返せ!」
「アンタが悪さをするなんて、最低ね!どこで育て方を間違えたのかしら?」
女の子は、毎日の様にクラスメートから授業を妨害されていたので、マトモに授業を受けられませんでした。両親ですら、女の子の話を聞かずに学校の担任の先生の話を鵜呑みにしていたのです。
「誰も、私の味方をしてくれない…」

「キャハハ!」
同級生達は、恋に部活にとキラキラと青春時代を送っていましたが、女の子にその恩恵をあやかる事は出来ませんでした。女の子は、教室の隅の方で大人しくするしか無かったのです。

学校が終わり、女の子は一人下校していると、
「ゴメンね…ゴメンね…」
突然、女の子の前にエンジェルが現れました。
「私のせいで、女の子ちゃんがヒドイ目に遭うなんて…」
「アンタ、よく私の前に出て来たわね…アンタなんか大っ嫌い!」
「ゴメンね…ゴメンね…」
エンジェルは、そのまま消えてしまいました。
「……」
女の子は、エンジェルと同じ境遇になってしまった事に気づきました。

数日後、ホームルームで、誰がクラスメートの財布を盗んだのか犯人探しをしていました。
「これから皆さんには、顔を伏せてもらいます。犯人だと思う人は手を上げなさい」
女の子は、小学校時代のトラウマがよみがえりました。
「先生、犯人は分かっています。犯人は女の子ですよね?」
女子の学級委員長だった生徒会役員は、女の子を犯人だと言いました。
「違います!」
「役員が言うからには、正しいんじゃねーの?」
「役員の方が、お前より賢くて地位が上なんだよ!」
「役員が、正しいに決まってんだろ!」
男子達は、次々に反論しました。
「一平民のアンタが、生徒会役員の私に逆らう事は出来ない。人間はみんな地位が上の人間の言う事を信じるから」
役員は、女の子の前で仁王立ちしました。
「悪者、謝れよ!」

10/3/2023, 8:07:58 AM

子供の頃、その恐るべき敵と初対峙した。
黒光りボディ、神速、圧倒的存在感。
奴だ、Gが現れた。

姉の悲鳴が恐怖を倍増させる。
すわと急ぎ丸めた新聞紙片手に臨戦態勢に入る母。
その間涙目のまま動けずにいた私を侮るかの如く
Gはピクリとも動かない。

不動の母とGの放つ緊迫感。
横目にいつの間にか距離を取った姉の手招きが見えた。
意を決し姉のもとへ一歩踏み出したその時
まさかの事態が起きた。
私の足の着地点にGが突進してくる--

…ふみっ

Gにとっても私の動きはまさかの事態だったようだ。
その後、半狂乱で足の裏を洗う私を母と姉が褒め称えた。

あれから時を経て、Gと幾度目かの対峙。
そうそうあることではないと分かっていても
「Gの奇跡」に備え、スリッパを必ず履くことにしている。

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