『奇跡をもう一度』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
《奇跡をもう一度》
どうやら小説を嗜んでいる“同士”が《奇跡をもう一度》と言うお題の小説を書き忘れてしまったらしい
『せっかく良いお題だったのに…!!』
「あらら、ドンマイ」
「私は取っておいたから作れるわ〜」
という様な会話をした
それを聞いた(言った)我々が一言
「『それこそ奇跡をもう一度」』
「『wwwwwwww』」
目を開けると、見覚えのある薄暗い部屋。
目の前の、幾重にも巻かれた縄に封じられた木箱が、ここが社だと告げている。
「起きたのか、娘」
「神様?」
振り返れば、穏やかな表情をした神が私を見下ろしていた。
膝をつき、頬に触れる。目尻をなぞり離れていくその指についた水滴に、泣いていたのだと気づいた。
「別れが悲しいか」
「どうだろう。それにしては随分と落ち着いてる。ちゃんとお別れを言えなかった事が、ずっとあった後悔がなくなって、何だかすっきりした気もするよ」
それは悲しいとか、寂しいという感情ではない。嬉しいという感情でもないような気がした。
ならばその涙はきっと、私のものではないのだろう。
そう思い、木箱を見る。
御神体の収められた箱。彼を閉じ込めている封印。
目を閉じ、開いて神を見る。
穏やかな表情に僅かに混じる悲哀の色に、手を伸ばして触れた。
「神様。何が悲しいの?」
問いかければ、神はそうだな、と微笑む。
「娘が妖のような生き方しか出来ぬ事が悲しいのだろうな」
意味を分かりかねて首を傾げれば、悲哀の色が少し濃くなった気がした。
「詮無き事ではあるが、今一度問う。娘、俺の眷属として俺と共に在るか?」
「いいよ」
今更だな、と思いながら頷く。
これは対価だ。
そして彼の望みでもある。
それなのに、今更何を迷う事があるのだろう。
「彼女を救ってくれた事。過去にお別れをさせてくれた事。それらの釣り合いになるかは分からないけれど、それを望むのならば応える。それ以外に感謝を伝える方法を知らないから」
神は何も言わない。
「どんなに力を求めて呪を喰らっても、辿り着けなかった答えをくれた。擦り切れて忘れてしまった小さな想いを掬い上げて叶えてくれた。奇跡をくれた返しに、私が出来る精一杯だよ。こんな呪の塊だけど、欲しいと言ってくれるのなら、いくらでも使って」
「愚か者め。勘違いをするな」
「え?うわっ!」
頭を軽く叩かれて、そのまま乱雑に撫でられる。
揺れる視界に見る神の表情に、さっきまでの悲哀の色は一切なく。
ただ呆れを宿した不機嫌な眼が、真っ直ぐに私を見据えていた。
「お前が人に近い形で生きるために眷属にするのだ。あの下臈と一緒にするな」
「っ、でも、それじゃあ」
「言っただろう。お前が人として生きられぬ事が認められないと。すべてを零し無になるよりも、お前が生きてきた今を塗りつぶし、新しく作り上げる方の選択をしただけの事だ」
神の金の瞳の中の私が困惑する。
これでは対価にならない。
「お前の願いとは釣り合いにはならんがな。椿の祈りも、人間の娘との約束も、すべてなくすのだから。その余剰はその先で応える故に、許してくれ」
「……神様は、それで満たされるの?」
不安になり、神の眼を見た。
その望みは、すべて私のためのものだ。私だけが満たされるものでしかない。
不安で、怖くて。
問う言葉に、彼はやはり呆れを含んで笑った。
「お前は本当に、純粋で愚かだな。そして誰よりも優しい子だ。満たされるに決まっているだろう?お前が生きる先を見る事が出来るのだから」
「よく、分からない。神様がいいなら、それでいいとは思うけど」
「そうか。怖くはないのか?」
何が怖いというのだろう。
きっとこのまま呪を宿した体で彷徨う事も、神の眷属になる事もそれほど変わらない。
一人か一人でないかの違いくらいしかない。
「怖くないよ」
「すべてがなくなるのにか?」
「なくならないよ」
そういう事か。
やはり彼はどこまでも優しい神様だ。
「なくならないよ。椿も、あの子も、なくなったりしない。お父さんを忘れなかったように。大切な事は、なくなったりしないんだよ」
優しい父の手の温もりを覚えている。
母の、兄達の最後の願いを、まだ忘れてはいない。
――生きて。
声は忘れてしまった。顔も霞んで見えてはこない。
それでも言葉は残っている。
その僅かな残滓がこの体を繋ぎ止めて、こうして奇跡に出会わせてくれた。
だから、残るものは確かにあるのだ。
「そうか。そうだな。本質は変わるはずがないか」
優しい顔をして、優しく頭を撫でられる。
その撫で方はどこか父に似ていて、思わず笑みが溢れた。
「大丈夫だよ、神様。怖くないから、私を――零《れい》を終わりにして」
「あぁ。その名を終わりにしよう。新たな名を与えようか」
頭を撫でていた手が離れ、代わりに彼の四肢に絡みつく縄が、同じように四肢に巻き付いてくる。
逃がさないようにと縛り付ける縄に顔を顰めた。
まるで箱の中の彼のようだ。
彼はずっとこんな不快な気持ちを抱えながらも、人の願いに応え続けてきたのか。
「――黄櫨《こうろ》」
静かに、そっと。
囁く澄んだ声に、全身が硬直する。
意識が揺らぐ。
それが自分の名だと体が、心が正しく認識して。
花開くように淡く色づく世界に、ひとつの終わりと始まりを、視た。
揺り籠の中に似た温もりに、眼を開ける。
真っ直ぐな見下ろす金をぼんやりと見返して、目の前の誰かの名を探す。
空っぽだ。何もない。
伽藍堂の記憶に目を瞬いた。
「黄櫨」
静かな、けれど寂しさを含んだ声。
「かみさま」
知らずに言葉が溢れる。
伽藍堂に少しだけ色がついた。
思い出す。呼ばれたのは私の名だ。
新しい、私の名前。
もう一度瞬いて、手を伸ばした。
「かみさま、悲しいの?」
問いかければ、彼はいいや、と微笑む。
「黄櫨が生きている事が、嬉しいのさ」
よく、分からない。
けれど、とても懐かしい気持ちだった。
彼の腕の中から抜け出して、辺りを見回す。
縄が幾重にも巻かれた、古い木箱。
その傍らで眠る、四肢を黒く染めた少女。
そうか、と納得した。
「何か、不思議な感じ」
「仕方あるまい。ほぼ壊れた体で、今まで動けていた事の方が奇跡のようなものだ」
「確かに、これは酷いなって自分ながらに思うよ。記憶はないけれど」
一目見ただけでも分かるほど、少女――私の体は顔を顰めたくなるほどに酷いものだ。
傷まみれで、ぼろぼろな見た目だけでない。
木箱のように巻き付く縄が封じていなければ、この社は忽ち穢れに朽ちてしまう事だろう。
「黄櫨」
「何、神様?」
「残ったものはあるか?」
問われて、目を閉じる。
色は付けど、伽藍堂は相変わらず伽藍堂のままだ。
けれど見えていないだけで、残っているものは確かにあるのだろう。
きっと今はその時が来ていないだけだ。
「さあ?今は空っぽだから分からないよ。でも、」
目を開けて、笑ってみせる。
「大切なものはなくならないからね。こうして神様をちゃんと覚えているように」
眷属としてでなく。主従でもなく。
彼を、覚えている。
与えられた優しさは、忘れられる訳がない。
彼は、私の神様は。
ちっぽけな私には勿体ない程の奇跡だ。
どんなに足掻いても手の届かない願いを叶えてくれる、一番星だ。
「そうか。残っているのならば、それでいい」
微笑んで、頭を撫でられる。
零れてしまった記憶の中の誰かの手と似ていて、思わず頬が緩んだ。
「神様。これからどうすればいいの?」
「好きにするといい。黄櫨の望みは俺がすべて応えてやろう」
「望み。取りあえず、外に出たいかな」
そう呟けば、頭を撫でていた手が離れ、ふわりと抱き上げられた。
「ならば皆に会いに行こうか。思い出すものもあるだろうよ」
近くなった金が、柔らかく細められる。
その穏やかな懐かしい眼差しに、同じように微笑みを返した。
20241003 『奇跡をもう一度』
奇跡をもう一度
生クリームが足りなくなった。
その日、その時間に、それから買い足すことはできなかった。
もう三十年以上昔の話である。
父の誕生日に一番近い週末だった。
私の家にはプレゼントを贈り合う習慣がなく、「とりあえず最寄りの週末にケーキを焼いて、みんなで食べる」のがならわしだった。
(贈り物をしないのは、家族全員が「本当にほしいもの以外はいらない」という性格だったためである)
小学生二人に手伝い(という名の楽しい遊び)をさせて、母がショートケーキを作ってくれる。「モントン」のスポンジケーキミックスはふんわりしていて、バニラエッセンス(ビーンズは当時、近所では手に入らなかった)がたっぷり入っていた。
私たちきょうだいは、最後の飾りつけにクリームを絞るのが大好きだった。口金のついたビニール袋をそっと絞って、不恰好な渦巻きを作る。何度やっても、いつも作っている訳ではないはずの母よりもはるかにヘタクソで、でも時折りちょっとうまくいくとひどく嬉しかった。
母はハンドミキサーを出して、私たちに幾つかの指示と注意をした。
・スイッチを入れて、そっと、ゆっくり泡立てる。
・ボウルの内側にぶつけないよう注意。
・重いので、交代しながらやること。
この文章を読んでしまった方にはもうお分かりだと思うが、母は一つだけミスをした。
「いつやめるか」を言い忘れたのである。
彼女がてきぱきとスポンジを焼いたり苺を切ったりしている間に、子どもたちはせっせとクリームを泡立てていた。
「何か変じゃない?」「うん、何か変だね」
などと言いながら混ぜ続けた結果、生クリームはボソボソを通り越した「ボロボロ」になっていた。
どうやら、何かやらかしたらしい。
母は、ひどく困った顔をした。
でも大声も出さず、私たちを一言も責めなかった。ただ「あらぁ…」とか何とか言っていたように思う。
・その頃、泡立てた「ホイップクリーム」はそこらへんに売っていなかった
・新たな生クリームのパックは、何らかの理由(買える店が遠い、まもなく閉店等)で買えなかった
という訳で、彼女はそのボロボロになったモノに何かを加えてのばし始めた。
今、インターネットの力を借りてみると、液体の生クリーム、牛乳、粉糖…混ぜるべき様々なものが挙げられている。きっと母も、知識と勘を頼りにいろいろ混ぜてみたのだろう。
私が覚えているのは、何か製菓用のお酒(おそらくホワイトキュラソー)を足していたことだけである。
普段はお店のケーキに倣って、滑らかにクリームを塗っていた。だがこの時だけはナイフの跡も荒々しく(ボソついたクリームを側面に無理矢理くっつけている)、何とかスポンジケーキを覆う! という気概溢れる仕上がりになった。ココアパウダーだか削ったチョコだか、何だかをかけていたように思う。無論、クリームを口金で絞るなど論外である。敢えていつもよりラフに苺が飾りつけられ、とりあえずケーキが完成した。
(ちなみに主役であるはずの父は、子どもたちが手伝ったケーキの出来栄えにケチをつけるような小さい男ではなかった、ということは付言しておきたい)
そのケーキは、何故か本当に美味しかった。私は今に至るまで、あれより美味しいケーキを食べたことがない。何というか、奇跡的な味だった。
だが残念ながら、何とかでっち上げた母ですらレシピがまったく思い出せないので、再現しようがない。
もしもう一度だけ奇跡が起きるなら、どうかあのケーキを食べさせてほしい。
オレはこの前、奇跡的にボスの家に上がることが出来た。だが、その時ボスに、絶対上がらせないと言われたので、次上がれるかはわからない。
しかし、オレはなんとしてでも上がってみせる。
「ボス、大事な報告があります」
「どうした」
「今日ボスの家に上がらせてください」
「ダメだっ」
「上がらせてください!」
「ダメだ!」
「なんでですか!?」
「どうしてって、お前が来ると、うちの食料が全部なくなっちまうんだよ!俺の大事なおやつまで食い尽くされちまう……」
ボスの悲しそうな顔を見てオレは折れた。
「分かりました。じゃあ今日の夜行きますね」
「なんでそうなるんだよ!!」
天鵞絨の様な艶やかな毛をなびかせて
私の数歩先をゆく、小さな君
こちらを見上げて目を細め
軽やかな声を聞かせてくれた君
叶うならば
もう一度、私は君とあの道を歩きたい。
ー 奇跡をもう一度 ー
「奇跡をもう一度」
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めた!
それから。
ボク達はニンゲンくんに、そばにいていいって言って貰えたよ!
とまあ、改めて日常を送ることになったボク達だが、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?
ボク達を開発した父の声が聞こえたから目覚めたと言っていたけれども、父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。
一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかして兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと行くよ!
─────────────────────────────
「さてさて!みんな準備はいいかい?」
「はーい!」「……。」「何を準備したらいいかわからん。」
「ええーっ?!!そんなぁ!!!」
「……かく言うボクもどうしたらいいのか分かっていないのだよ!残念なことに!!!」
……というか、なんで自分まで行かなくちゃいけないんだ?
「だってキミはボクの助手だろう?」
「助手なら何か策を一緒に考えたまえよ!」
……んなこと言われたって。
彼岸ってぐらいだから、なんかその、呪文……とか?
それとも何か書類でもあるのか?
「ボクだって名前しか知らないんだから仕方ないだろう?!それに……今そういうことを本部に聞ける雰囲気じゃないからさ!」
「おとーしゃん、あえないのー?」
「いーーや!きっと会える!!会うから!!!」
「……よく考えてみよう。旧型管理士の少女と構造色くんが出会ったのは『月と太陽が同時に降った』日───その日に本来なら繋がるはずのない者同士が出会った。」
「つまり、珍しい現象と別の『ナニカ』が重なって、繋がることのないはずの世界どうしが繋がったのだろう!」
「構造色くんの正体はよくわからないままだが、相当珍しい───奇跡とでもいうべきかな───存在だ。」
「なんせどうやってあの空間に入り込んだのかもわからないうえ!体を用意しないと不安定で崩れそうになる!しかも!!本人が何にも覚えていないときた!」
「そして、きょうだいが声を聞いたのは……。」
「おとーしゃんがおなまえよんで、はーい!てするまえにいなくなっちゃったなのー。」
「つまり……えーと……返事をする間もなくいなくなってしまった、ということかな?」「ん!」
「構造色くんと旧型さんが出会ったのも一瞬だと言っていたね?」
「ならば、その一瞬を───奇跡を───『意図的に』引き起こせばいい、ということだ!」
「そんなことが、出来るのか?」
「それが───できちゃうんだよねえ!!!」
「ねえキミ達、今日が何の日かご存知かい?」
「んー?」「その様子だと知らないようだね……?」
「今日は『太陽と月が同時に降る』日───皆既月食が起こる日さ!」
「この宇宙は……あ、そうそう、この宇宙、バックアップから元に戻しておいたよ!説明するのをすっかり忘れていた!申し訳ない!」
「この宇宙は少々古い型で、因果とか力が足りていないんだよねー!だから、星の力と、ボクの力を合わせて奇跡をもう一度起こす。少々面倒だが、今取れる最善の方法だからまあいい!」
……そんな小規模な「奇跡」とやらでいいのか?
「ふふん。ニンゲンくん、よく聞くがいい!」
「この世とあの世は───隣り合わせなんだよ?」
「こっちからあっちにアクセスするにはちょっとしたテクニックが必要だ、というだけでね?戻っては来られないが、行くこと『だけ』ならできる。」
「それこそ、ニンゲンが『死』と呼ぶものだ。」
「だから今回は、死なずにあの世に行ける方法を導くよ。」
「さて、みんなで祈ろう。あの世にいる会いたい人に会えますように───奇跡をもう一度起こしてください、ってね。」
奇跡をもう一度、か。
……会いたい人に、会えますように。
『皆さーん!おめでとーございまーす!』
『今日は特別にー!彼岸管理部へとご招待ー!』
声が聞こえたかと思ったその瞬間、宇宙管理機構に似た場所に出た。ここが……彼岸管理部、か?
『そのとーり!ニンゲンさん、勘がいいねー!』
誰だ!というかお前までしれっと心を読むな!
『えー?初対面の女性に対してお前だなんてー!失礼ー!』
「ふーん……キミもボクの作ったプログラムで動いているんだ。」
『ご機嫌よう、マッドサイエンティストさん!おかげさまで今日も喜怒哀楽!ですよー!』
「そろそろ姿を見せたらどうだい?」
『まあまあそー焦らずー!』
『とりあえず奥のお部屋へどーぞ!』
……あの世って思ったよりポップなんだな?
こんな調子でこの問題、解決するのか?
……そう思って自分も機械たちの後に続いた。
『To be continued… ですねー!』
『いつも通りの奇跡』
17時30分
地域放送の音楽が流れ、一日の終わりを告げた木曜日。
いつも通りの夕暮れに
いつものほうじ茶をいれて
久しぶりの雨の日の音を聴いていると
久しぶりに使った乾燥機の終了ブザーが鳴った。
何でもない日だけど、「何でもない」が、実は、ほぼ奇跡だなんて、ずいぶん、大人になってから知りました。
でも、いまだに実感がないから、何でもないこと(幸せ)を、つい、「何もない(つまらない)ことですのよ」と卑下したように言ってしまいます。
だけど、それはちょっとした社交辞令の一つだったり、場面によってはその方が円滑だと残念ながら思っているのできっとやめられない。
奇跡をもう一度なんて叫ばなくても
実は奇跡はそのへんにごろごろしていて
ひとはそれに気づかないだけなんだよ
…というような、子供の頃読んだ物語を思い出したけれど「そうは言ってもねえ〜」と思いながら冷めかけたほうじ茶をまたすする。
猫舌なので…。
#奇跡をもう一度
理屈じゃ説明できないからって、
奇跡だの運命だのなんなんだ。
そんなの都合が良すぎるだろ。
縋るな。期待するな。
そんなもの存在しない。
物事には絶対に理由はある。
考えることを放棄するな。
ー奇跡をもう一度
もう奇跡は起きなくて良いよ
1歳半健診の先生が泣いて話してくれたこと
我が子と同じ先天性疾患の子どもを自分は助けられなかった
この子がこうして生きていることは凄いことなんだよ
って
我が子が今生きていて、すくすくと大きくなっていることが
たった一度の奇跡
願わくば、私より長く生きてほしいかな
「奇跡をもう一度、ご覧に入れましょう」
世にも奇妙な奇術師は、高らかにそういった。
舞台は地下で執り行われた。
天井は高く、観客席は低く。そして奇術師のいるステージはほどよい高さとなっていた。
奇術師の行うことは、ただ待つことだった。
タネも仕掛けもない。
事前にハトを用意したり、カードや杖、水槽なども持ち込むことはない。
そもそも、彼はマジックを行うこともない。
ペテン師である彼は、しかし、世界の25%程度の人たちを虜にさせた。それは今も、現段階で増え続けている。カルト的人気。それ以上の終末論的風潮。奇跡。彼の起こす奇跡。それを待ちのぞんだ。
十五年前、彼は「奇跡」を呼び起こした。
彼がテレビの公開収録の出演を承諾し、代わりに寄越した条件が「核シェルターを作ってほしい」とのことだった。
番組スタッフらは、マジックで何か使うのだろうと一人分には広すぎるほどの地下シェルターの設計図を渡したが、奇術師はにこりと笑い「これでは狭すぎる」といった。
「少なくともこれの100倍は欲しい」
「そんな規模のものは、私たちには作れない」
「なら、わたしの起こす奇跡に押しつぶされるがいい……」
奇術師はそう言って、颯爽と楽屋をあとにした。
数年後、彼はYouTubeで25万人を抱えるYouTuberになっていた。生配信前に大々的な予告をし、けれども芳しくない集客力だった。
奇跡を起こす前では2000人集めればそれでよかったが、予告通り、彼が「奇跡」を起こしたあと、視聴者数は100万人をかき集めた。
それから数十年が経過した。
老齢となった奇術師は、野太くなった声で先ほどのことを宣言する。
彼の起こす「奇跡」とは、すなわち地震だった。
「奇跡」の通称は、南海トラフ、と呼んでいた。
南海トラフは彼の呼び声のみで発生するのだ――と、数多の予測を無き者とした。
彼の導きとともにいる、核シェルターに逃げ込んだ観客層は、退職金やボーナスなど莫大な金を彼に貢いでこの席を手に入れた。ありていに言えば富豪たちだった。それ以外のものどもは地上にいる。
カタカタ、とシェルター内が小さく揺れ、予告通りであることに大変喜んでいた。
私たちは選ばれし人間たちであり、やはり信仰は存在するのだ! と歓声を巻き起こした。
一方、奇術師は別のことを考えていた。
この奇跡は代償を伴う。一度目は自身の若さを犠牲にした。今回は違う。犠牲はちゃんと用意した。
代償は、目の前の者たちで足りるだろうか……。
奇跡の源の在り処、天を仰いだ。
ああ、主よ……。私のことを見守っていますか。
核シェルターの天井がどれだけ高かろうが、空は見えない。それで良いのだ。私の最期には、それがふさわしい。
天に見放されたように、奇術師は暗く笑った。
奇跡がもう一度あったら
それはもう必然では?
#奇跡をもう一度
奇跡をもう一度
年下の推しと結婚した私は友達や知り合いに『奇跡だね!』と言われてた
夜 推しと同じベッドで推しに抱き締められながら寝て、朝は目が覚めると推しの寝顔が見れる
こんな生活、奇跡としか言えないと私も思う
「ちぃ」
「何?」
ニコニコと楽しそうな笑顔で近付いてくる彼に洗い物をする手を止めて、顔を上げると後ろから抱き締められた
「大好き!」
「ありがとう
私も大好きだよ」
彼に軽く身体を預けて甘えると嬉しそうに笑う彼が可愛くて仕方がない
奇跡をもう1度 貰えるなら彼との子供が欲しい
別に大したことはない
僕が話して
それを聞いてくれる人がいた
いろんな人に何度も話しているはずが
いつまでたってもまとまらない
途切れて 詰まって
駆け足で過ぎて
飛んでは 戻って
ぐちゃぐちゃになって
そして
突然まとまって
また崩れて
心はどんどん焦っていくのに
頭は妙に冷静に
まるで他人事のように語られる
『僕』の話
あの人はそんな話を
全部聞いて
たくさん悩んで
そして
ふわっと笑って
「そっか」
とひとことだけ呟いた
それが何よりも嬉しかった
初めて この人ともっと一緒にいたいと思った
*
それから
僕はたくさん話をして
あの人はいつも静かに笑っていていた
僕の世界を広げてくれた人は
自身の世界をゆっくりと畳んで
塵ひとつなくきれいに片付け
僕のそばから突然消えた
*
気がつけば 僕は話してばかりで
気がつけば あの人は何も語ってはくれなかった
喜びも 怒りも 哀しみも 楽しさも
あの人がどんな風に思い 考え 行動していたのか
僕は何も知らないまま
*
願わくば あの奇跡をもう一度
もう一度会えたなら
僕はきみを救えるだろうか
No1.『あの奇跡をもう一度』
君と再び出会えた事
君と今度こそ手を取り合えた事
穏やかで平凡な日々の中
他愛無いことで笑い合えた事
長い生を最期まで隣に居れた事
僕がずっと願っていた事で
奇跡的な今生だと思ってた事
君がずっと叶えたかった事で
その為に何でも出来てしまった事
不意に現れたその異形が
代償だと嘲笑うまで
その全てを知らなかった事
‹奇跡をもう一度›
黄昏は誰彼、
かわたれは彼誰、
その何方もが薄暗く、
出逢うヒトが誰であるか
確信できない明るさの時間。
だからきちんと誰が分かるまで、
見えた素振りをしてはいけないよ。
と、隣で手を繋ぐ君が言う。
全く見知らぬ君が言う。
酷く熱い掌が
大丈夫だと震えている。
‹たそがれ›
奇跡をもう一度
奇跡だと感じた瞬間はあっただろうか。大切な人、大切な猫に今日が峠だと言われたとき、私は見たこともない神に奇跡を願った。結局その祈りは長い夜に散ってしまった。
奇跡とは起こるものではない。一生のうちに体験したその出来事は、そういう運命だった。それだけのことだ。
「奇跡をもう一度」か、、
私はあまり奇跡を信じないというか
私の人生に奇跡があったことはない。
全部、なにか裏付けがあるのだと思う。
何もしなかったら、何も起こらない。
出来た事とか叶った事とかは全部その裏には
努力があるんだと思う。
努力した日々を奇跡という言葉で片付けたくない。
あの子がおもむろにきみのリュックをタイキックするときのうつくしい足の上がり方 笑って逃げて追いかけて、傍若無人なふたつの背中が羨ましい気がする
奇跡をもう一度
奇跡。
このことを皆んなは信じるかい?
僕は信じるよ。
だって奇跡は本当に起こるんだからね。
僕は今の仲間が居てくれたら、こんなにも楽しい生活は過ごせなかっただろうね。
これこそ僕にとっては
奇跡
さ。
こんな奇跡、もう一度起こるといいね。
奇跡をもう一度 ______
僕達は世界を嘆きながらでも奇跡をひとつ繰り返してる
【お題:奇跡をもう一度 20241002】
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(´-ι_-`) 溜まりすぎだなぁ。(。-`ω´-)ンー