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別に大したことはない

僕が話して
それを聞いてくれる人がいた


いろんな人に何度も話しているはずが
いつまでたってもまとまらない

途切れて 詰まって
駆け足で過ぎて
飛んでは 戻って
ぐちゃぐちゃになって
そして
突然まとまって

また崩れて

心はどんどん焦っていくのに
頭は妙に冷静に

まるで他人事のように語られる

『僕』の話


あの人はそんな話を

全部聞いて

たくさん悩んで

そして

ふわっと笑って

「そっか」

とひとことだけ呟いた

それが何よりも嬉しかった


初めて この人ともっと一緒にいたいと思った



それから

僕はたくさん話をして
あの人はいつも静かに笑っていていた

僕の世界を広げてくれた人は

自身の世界をゆっくりと畳んで
塵ひとつなくきれいに片付け


僕のそばから突然消えた



気がつけば 僕は話してばかりで
気がつけば あの人は何も語ってはくれなかった

喜びも 怒りも 哀しみも 楽しさも

あの人がどんな風に思い 考え 行動していたのか

僕は何も知らないまま



願わくば あの奇跡をもう一度


もう一度会えたなら

僕はきみを救えるだろうか


No1.『あの奇跡をもう一度』

10/3/2024, 9:37:23 AM